オリジナル小説「再会」

謎のワニの策略により、アクアは記憶を取り戻した。

しかし、力をコントロールできず命を落としそうになる…!

その時スマラのアクアを想う気持ちに牙が目覚め、一命を取り留める。

アクアの無事と記憶復活に安心したスノウ達だが…全てあの者の思い通りに進んでいるに過ぎなかった…!!

 

~再会~

 

スノウ「どこから話そうかと思ったが…お前の記憶が戻った今、もう何も隠す必要はあるまい。」

アクアが頷くと、スノウは静かに語り始めた…。

65年前のあの日に何があったか、父ブルースがセイレーン・ケイヴに母マリンと共に居る事を…。そして…あの者の事も…。

アクア「あの人の事も私は思い出したわ。でも…そんな事をするなんて…!」

スノウ「俺も信じたくはない…だがあいつがお前を狙っていたのは事実。何があろうと…牙を渡してはならない…!」

アクア「スノウ…。」

ラクト「セイレーン・ケイヴにまもなく着くぞー!」

スノウ「遂にここまで来たか。2人を必ず助け出すぞ、アクア。」

こくりと頷いたアクアの瞳には、強い決意が秘められていた。

全員が用意を済ませて甲板に出た頃、ミーティア号はセイレーン・ケイヴに到着した。船から降りたアクア達を待っていたのは、大きく口を開けた洞窟…。

すると…音が聞こえてきた…。

アクア「…歌?誰かが歌っている…?」

ラクト「歌ではないんだよ、これはこの洞窟の名前に由来しているんだ。至る所に開いている小さな穴に潮風が出入りすることで奏でられる音が、洞窟の中で響いて歌声の様に聞こえるんだ。」

スノウ「つまり、神話に出てくる『セイレーン』が歌っている様に聞こえた…そこからセイレーン・ケイヴと名が付いたと言うことか。」

ラクト「ご名答だスノウ。さて…謎も解けたところで…行くか!」

セイレーン・ケイヴへと足を踏み入れた一行。真っ暗闇の中、スノウが発する光で進む。しばらく進んだところで…アクアが足を止めた。

ペルラ「どうしたアクア?」

アクア「…気のせいかしら?視線を感じたような…。」

スノウ「奴らか?…いずれにしても、急いだ方が良さそうだな。」

一方…ブルースとマリンは、洞窟内を響く足音に気付いた。

ブルース「誰か来るな…。」

マリン「私が見てくるわ。」

一行は足を速め、更に奥へと進んで行った。

すると…奥の方に淡いオレンジ色の光が見える。警戒しつつもゆっくりと進んでいくと、誰かが歩いてきた。

アクア「ママ!」

一行はマリンの元へ駆け寄り、母と娘は強く抱きしめ合った。

そして…スノウは今までの出来事を全て話した。

マリン「そうだったの…遂に記憶が。ならもう何も隠す必要はないわね。ブルースの所へ案内するわ。足音が聞こえたから…あの人を危険な目に遭わせたくなくて…それで1人でここまで来ちゃったわ。」

ラクト「何て無茶をするんだ…お前のそういう所は昔っから変わらないんだから…。」

無茶振りに苦笑いしつつ、マリンの案内で奥へと進んだ一行。

そして…

マリン「分かるアクア?貴女のお父様よ。」

アクア「パパ…!」

ブルース「アクア…俺の娘…!」

ゆっくりと体を上げたブルースに、アクアは優しく抱きついた。こうして、遂にアクアは両親との再会を果たしたのである。

しかし…一つ問題があった。

スノウ「この足枷をどうにかしないことにはブルースを連れ出せない。くっ、どうすれば…!」

その時、闇の中から1人の男が現れた。アクア達からかなり距離を置いて立つ男は重い口を開いた。

ガーリル「そろそろ名乗らねばなるまい、俺はガーリル・ダーク・ガビアル。ダーク一族の血を引く王だ。ブルースを繋いでいるのは、俺の力で創り出した物だ。」

ラクト「ガーリル、一体何があったんだ。何故こんな事を…。お前はそんな事をする奴では無かったはずだ。」

ガーリル「俺は変わってしまったんだ、兄上。もう戻れない…!」

スマラ「(兄上…!?一体どういう事だ…!?)」

アクア「ガーリル…貴方は昔、私にとても優しくしてくれたわ…!それなのにどうして…お願い!足枷を外して!」

ガーリル「…良いだろう、ただし『条件付き』だ。アクア、お前が俺と共に来るのならば、な。」

ブルース「それは駄目だ!お前はアクアの力を利用して、剣を手に入れるつもりなのだろう!?」

ガーリル「ブルース、物事は慎重に考えた方が良いぞ。『娘の命』は俺の手にかかっている。お前がどうしても駄目というなら…分かるな?俺も出来るなら最悪の手段は取りたくない。」

暫くの沈黙の末、アクアはガーリルの方へと歩いていった。

ブルース「アクア!」

アクア「大丈夫、必ず帰ってくるから。」

ガーリル「約束通り、足枷を外そう。早々に立ち去れ。」

そう言うと、ガーリルはアクアを連れて消えた。

親子の再会も束の間に…。

ブルース「くっ…アクア!」

スノウ「駄目だブルース、今動くと体に障る!とりあえず船へ運ぶぞ。」

ラクト「俺とスノウで抱えて行こう。」

そう言うと、スノウとラクトはワニの姿に戻り、ブルースを抱えて歩き出した。

マリン「アクア…!」

スノウ「マリン、気持ちは分かるがここはいったん退こう。策を練ってアクアを必ず助け出す!」

こうして…やむを得ず、船へと戻った一行。

一方ガーリルとアクアは…。

アクア「どこまで行くの?」

ガーリル「もうすぐだ。」

ブルースの解放と引き替えに、連れ去られてしまったアクア。

全て計画通りに進んでいるはずなのに、どことなく寂しげな表情のガーリル。

アクアが身につけている、海の牙の封印された腕輪は、かすかに蒼く光っていた…。

 

~To be continued…~