ドロッチェが旅立って数日後、アイシェは遊びに来たマルクと一緒にローアの外で、彼の作ってきた「タマゴサンド」を食べていた。
アイシェ「ふふ、美味し~い!」
マルク「だろ~?だから言ったのサ、ボクだってコレくらいは作れるって。」
アイシェ「だってマルクはいつも食べる方だから、あんまり作ってるイメージが無いんだもの。」
マルク「ボクのイメージが変わったのサ?」
アイシェ「うん、こんなに美味しいのが作れてすごいなぁ~って思うよ。」
マルク「キシシ、もっと褒めてちょーよ。」
アイシェ「マルクはとっても強いし、頼もしいよ。」
マルク「おっほっほっほっ、よく分かってるのサ!」
そう話すマルクはご機嫌で、アイシェもそんな彼の様子を見ながらたまごサンドを頬張って満面の笑みを浮かべた。
マホロア「調子に乗りすぎだヨ~マルク。」
少しだけ呆れた様子でローアからマホロアが出てきて、フゥ…と溜息を吐いた。
アイシェ「あ、マホロア。」
マルク「ホントの事だからいいのサ。」
アイシェ「マホロアも食べる?」
マルク「アイシェの分しか作ってねーのサ。」
アイシェ「もーマルクったら、またそんな意地悪言って…。」
マルク「ま、ボクに土下座してお願いするなら作ってあげてもいいのサ?」
マホロア「ソンナ事する必要なんかネーヨ。」
意地悪な笑みを浮かべるマルクに対してそう言いつつ、マホロアはマフラーを下げてアイシェの横に来て目を瞑り…
アイシェ「はい、どうぞ。」
タマゴサンドを食べさせてもらった。
マホロア「アリガトウ、アイシェ………ン、マルクにしては美味しいジャン。」
マルク「一言余計なのサ。」
アイシェ「マルクのタマゴサンドはパンもふわふわだし、タマゴが半熟ですごく美味しいよね。」
マルク「アイシェは半熟が好きなのサ?」
アイシェ「うん、このオレンジ色にトロっとしてるのが一番好きなの。」
マルク「それなら、ボク流の半熟の作り方を教えてやるのサ。」
アイシェ「ほんと?ありがとうマルク!」
喜ぶアイシェにマルクも嬉しそうな一方、それを見たマホロアは気に入らない様子で…
マホロア「ボクも今度作ってアゲルヨォ!」
アイシェ「マホロアもタマゴサンドを作ってくれるの?」
マホロア「ウン、アイシェに極上のタマゴサンドを用意するヨ。」
アイシェ「ありがとう、楽しみ!」
マホロアがマルクに張り合っているとは知る由も無く、アイシェはご機嫌だった。
その後は3人で穏やかな時間を過ごしていたが、アイシェはアップルティーを飲みながら何やら考えている様子で…
マホロア「どうしたノ、アイシェ?」
アイシェ「ん、ちょっと考え事…。」
マルク「何を考えてたのサ?」
そう聞かれたアイシェは、マホロアの顔をじっと見て…一方のマホロアはニコニコしながらアイシェを見つめた。
マホロア「どうしたのアイシェ~、ソンナに今日のボクも魅力的カイ?」
アイシェ「うん。」
マホロア「エヘヘ、照れチャウヨォ~!」
マルク「鼻の下が伸びてるのサ。」
嬉しさでデレデレしているマホロアを見て、マルクは呆れた様子だが…
アイシェ「…タマゴって…マホロアみたい。」
ポツリ…とそう呟いてしまった。
マホロア「…エッ??」
それを聞いたマホロアは固まってしまい…一方のマルクは…
マルク「ブフッ…ギャーーーハッハッハッハッ!!」
大声で笑い始めてしまった…
アイシェ「えっ……あっ…!」
思わず呟いてしまいハッとしたアイシェだが、マルクは椅子から転げ落ちると翼を出してゲラゲラと笑い…
マルク「傑作なのサ!イカサマタマゴなんて呼ばれてるけど、まさかアイシェの口からタマゴってマホロアみたいなんて言葉が…ギャハハハハハ!!」
アイシェ「私は悪意があって言ってる訳じゃ…!」
マルク「アイシェ、お前サイコーなのサ!」
アイシェ「マルク…!」
腹を抱えて笑うマルクにアイシェは困ってしまったが、黙って俯いていたマホロアは…
マホロア「…よっぽど消えたいみたいダネ、このクソピエロ。」
そう言って大きな魔法陣と共に色違いのウルトラソードを出すと…
ズガンッ!!
横向きにしてハンマーの様にマルクの頭を叩いた!
マルク「ぐはぁっ!!」
叩かれたマルクは地面に頭からめり込んでピクピクしていて…
アイシェ「マルク!!」
驚いたアイシェが椅子から降りてマルクの元に行こうとすると、その細い手首をマホロアが掴んだ。
マホロア「ドコ行くんダヨ、アイシェ。」
アイシェ「マホロア、マルクを助けなきゃ!」
マホロア「その馬鹿ピエロにはしばらく反省して貰うヨ、それよりもアイシェ…タマゴがボクみたいってどういう事カナァ~?」
そう話すマホロアの目は全く笑っていなくて、邪悪なオーラが見える気がする…
アイシェ「え…と…タマゴの形がマホロアみたいって思って…それで…」
マホロア「ソレってつまり、ボクはタマゴって事なのカイ?」
アイシェ「そういう意味では…」
マホロア「ボクはタマゴなんかじゃなクテ「アイシェの恋人のマホロア」ダヨォ?」
アイシェの言葉を遮り迫るマホロアは、表情こそ真顔だがその声音は低く…不機嫌なのは明らかだ。
アイシェ「う…うん、そうだね…。」
マホロア「タマゴは喋らナイし、エッチな事しないヨネェ?」
そう言うと、マホロアはアイシェを抱き寄せて…いきなり首筋に吸い付いた。
アイシェ「ひゃっ…マホロア…!」
マホロア「アイシェにタマゴとして食べられちゃうノモ悪くないケドォ…ボクはこうして恋人としてアイシェを食べちゃう方がイイネェ。」
ちゅくちゅくと音を立てながら甘噛みするマホロアに、アイシェの頬は真っ赤に染まって…
アイシェ「あ…ぅ…マホロアぁ…!」
甘い声を漏らしてしまうアイシェに、マホロアの瞳は弓なりに細められて…
マホロア「ボクの部屋でもイイケドォ…誰も居ないし、今すぐココで味見しちゃいたいナァ~。」
そう言うと、アイシェの背中と後頭部を手で固定して…甘く熱いキスをする
アイシェ「んっ…ふぅぅ…。」
舌を入れて深くキスをすれば、アイシェからは甘い声が漏れて…ズルズルと力が抜けて行く彼女をゆっくりと支えながら、その場に押し倒して…
マホロア「頂きマース!」
ペロッと舌なめずりをしてアイシェの首筋に顔を埋め、手は体を撫で回して徐々に太ももを厭らしく撫で上げていく
アイシェ「はぁ…マホロア…やぁ…ん…誰かに見られたら恥ずかしい…!」
恥ずかしさで抵抗するアイシェだが、マホロアはビクともせずに彼の思うがまま…
マホロア「コンナとこまで誰も来ないヨ…ローアの陰になってるんダカラ。」
アイシェ「せめて夜まで待って…あぁん…!」
マホロア「夜までお預けデモイイケド、今はもうチョット堪能させて欲しいナァ〜。」
お構いなしに愛撫を続けるマホロアだが…
タランザ「何をしてるのね!!」
ガンッ!!
マホロア「グアッ!!」
突然タランザの声が聞こえたかと思うと、マホロアの後頭部をタランザボウルが襲い…勢いで吹っ飛んだマホロアは、草むらの上で気絶してしまった!
そして危機一髪で助かったアイシェはゆっくりと起き上がり…
アイシェ「タランザ…!」
タランザ「アイシェ、大丈夫なのね?」
アイシェ「うん、ありがとう…でもマホロアが…。」
タランザ「気絶しただけだから大丈夫、じきに目が覚めるのね。全く恋人とはいえとんでもないのね!」
そう言いながらタランザはマホロアの体を糸でぐるぐる巻きにしてしまった。
その後…助け出されたマルクと、気がついたマホロアは…
マルク「酷い目にあったのサ…。」
マホロア「タランザ、テメー余計な事するんじゃネーヨ!」
タランザ「アイシェから話を聞いたけど、まずマルクはマホロアを揶揄い過ぎたのね。」
マルク「ぐっ…!」
タランザ「そしてマホロア!キミはボクがこの前教えた事を忘れたの!?」
マホロア「忘れてネーヨ!ケドそれを試した上でアイシェからハ、ありのままのボクでイイって言われたんダヨ。」
タランザ「だからといって、外であんな事するのはただのド変態なのね!全く、あれからどうなったかと思って来てみれば…!」
マホロア「悪かったヨォ…。」
タランザ「反省してる態度とは思えないのね!」
マホロア「ホント~に反省してるッテ!」
タランザ「その手には乗らないのね!」
そう言ってガミガミと説教をするタランザに、マホロアはしょんぼりしつつ耳がペタンと垂れていて…
アイシェ「タランザ、マホロアを許してあげて。」
タランザ「アイシェ…でも本当に反省してるか分からないのね。」
アイシェ「マホロアは本当に反省してる時、しょんぼりして耳がペタンってなるの。」
心配するタランザだが、アイシェは穏やかな表情で彼の癖を話していて…
マホロア「(アイシェ…ボクが自分で気がついてない癖を知ってたんダ…!)」
そこまで自分を分かってくれている事に、マホロアは嬉しさが込み上げてきて…その頬は赤く染まった。
タランザ「アイシェに免じて許してあげるのね、今度あんな事したらもっとキツイお仕置きをするのね。」
そう言うと、タランザは拘束していた糸を解き、マホロアは開放された。
マホロア「ウゥ…分かったヨォ…。」
タランザ「分かればいいのね。それにしてもアイシェ、どうしてタマゴがマホロアみたいなんて言ったの?」
そう尋ねられると、アイシェは少しだけ頬を赤く染めて口を開いて…
アイシェ「その…今度お料理の時にタマゴをマホロアみたいな感じに飾り付けしたら可愛いかなって…思って…。」
マホロア「エェーーそういう事ナノ!?エットォ…ソノ……ゴメンヨ、アイシェ…。」
アイシェ「私の言い方も悪かったの、ごめんなさい…。」
料理の飾り付けを考えていただけなのに、勘違いからちょっとした騒動になってしまって…マホロアは気まずそうにしつつもちゃんと謝り、アイシェも誤解を招く言い方をした事を謝った。
タランザ「料理のアイデアを考えてただけだったのね。」
マルク「笑ったのは悪かったけど、巻き込まれなのサ…。」
マホロア「悪かったヨ、詫びればイイんダロ…。」
完全に巻き込まれたマルクとアイシェを助けてくれたタランザに、マホロアは少し苦い顔をしつつもお詫びにアップルティーとお菓子を用意して、マルクとタランザの機嫌も直り4人で再び穏やかな時間を過ごしたのだった。
To be continued…