小説「巡る虹色四季模様(絶望編)」~溶けた心~

白の悪魔が逃げていくのを遠くから確認したタキは、ツネ達の元へ向かった。

少しして到着すると、ツネは俯いていて…ざくろとエンも驚いた表情をしていて…

タキ「ツネ…一体何が…?」

何か起きた…瞬時にそう察したタキはそのまま質問をぶつけた。

ツネ「……白の悪魔…あれは…イカであり…タコでもある…。」

タキ「それはどうい………まさか……!?」

そこまで言いかけたタキは、ツネの言葉の意味に気づいた!

ツネ「…その通りだよ、

彼女は僕と同じ……インクリングとオクタリアンのハーフだ…!」

タキ「なっ…!?」

ざくろ「…ツネ以外に地上に同じ者が居たなんて…それに偵察までしてたのに今まで全く気がつかなかった…!」

エン「私も地下から彼女の動向は見ていましたが…そんな様子は1つも無かった…。」

タキ「どうしてハーフだと…!?」

ツネ「さっき抵抗されたから、力を発動した…そしたら…彼女も同じ力を使ったんだ…それで僕の力を跳ね返して…その隙に…。」

タキ「そういう事か…。」

ツネ「でもこれで確信した…あの赤い瞳…白の悪魔は予想通り、アイカで間違い無い。」

タキ「どうする?」

ツネ「再び動くのを待とう、相手も僕と同じ力を持つ者…今度こそ捕らえるよ。」

まだ動揺しているツネだが、その瞳は強い決意に満ちていた。

それから数週間後…夏は終わり、季節は秋に入り始めた頃…

ツネ達は怪しまれぬ様にアイカの観察を続け、一方でルイはアイカに会いにロブのお店へ通い…アイカもまた、ルイと交流を深める一方で、シキのナワバリにも一緒に付き合うなど楽しい日々を送っていた。

そんなある日の事

アイカ「あ…。」

お手伝いを終えたアイカが帰ろうとしていると、ロビーの方から歩いてくるシキの姿が…しかしいつもの元気な様子では無く、俯いていて…

シキ「……………。」

アイカ「シキちゃん、ナワバリ行ってきたの?」

近づいたアイカが声をかけたが、シキは俯いたまま震えていて…

シキ「……………。」

アイカ「シキちゃん…?」

心配したアイカが再び声をかけると…

シキ「アイカ…ちゃ…!」

アイカ「シキちゃん、どうしたの…!?」

顔を上げたシキの顔は涙でぐしゃぐしゃになっていて、アイカは驚いてしまった。

シキ「う…うぅ…また…あのリスキルの人達…に…!!」

アイカ「あの時の…!?」

シキ「一生懸命…頑張った…けど…また…一方的に狙われて…あたし…才能…無いの…かなぁ…!!」

そう言って彼女は、最近買ったばかりのお気に入りのブキ「スクリュースロッシャーベッチュー」をギュッと握りしめて…

閉じた瞳からも大粒の涙が零れ落ちて地面を濡らしていく…

アイカ「そんな事無い…そんな事無いよ、シキちゃんとっても上手くなってるもの…!」

シキ「あ…アイカちゃん…うっ…うあぁぁぁん!!」

アイカ「シキちゃん…!」

ゴトッ…スクリュースロッシャーベッチューを優しく落とし、アイカの胸に飛び込んで大泣きするシキ…アイカはそれを悲痛な表情で強く抱きしめる事しか出来なかった…。

そして、それを遠くから見ていたツネとエンは…

ツネ「…白の悪魔として動くきっかけは出来たね。」

エン「今夜が勝負…万全の準備をしましょう。」

お互いに顔を見合わせて強く頷くと、2人は準備を進める為にその場を去った。

夕方、買い物をしていたまめおとまめみは家に向かっていた。

まめお「今日はいつものサラダ作ってやるからな。」

まめみ「まめおの作ってくれるあのサラダ、すごく美味しいから楽しみ!」

嬉しそうに笑うまめみにまめおは優しく笑い、仲良く帰っていたが…

まめお「ん、あれは…。」

まめみ「アイカちゃん…?」

2人の視線の先には、1人歩くアイカの姿が

その手にはパラシェルターソレーラを持っていて…

ナワバリの帰りかな?そう思っていた2人だったが…

謎の声『(お願い…誰か私の声が聞こえるのなら…助けて…この子を…!)』

まめみ「…この…声……!!」

それは前に聞いたブキの声で…

まめお「まめみ…?」

心配して声をかけたまめおだったが…

謎の声『(お願い…この子を…アイカを止めて…助けて…!!)』

まめお「……………!!」

アイカは去って行ったが、2人はそこで立ち尽くしていて…

まめみ「まめお…あたし今…!」

まめお「俺にも聞こえた…!」

まめみ「まめおにもあのブキの声が…!?」

まめお「あぁ、しっかりと聞こえた…!」

まめみ「まめお…!」

まめお「タキに連絡しよう、今夜…何か起きそうな気がする。」

まめみ「うん…。」

夜…

ツネ達の予想通り、白の悪魔は再び姿を現した!

エン「現在リスキルチームはここに居ます、じきに動き出すかと。」

ツネ「なら僕達も向かって…」

ルイ「ツネ隊長、エン…?」

そんな話をしていると後ろから声がして、振り返るとそこにはルイの姿があった。

ツネ「ルイ…。」

ルイ「何かの任務中ですか…?」

ツネ「…そうだよ。」

ルイ「……アイカの事ですね?」

そう話すルイに、ツネとエンは驚いた表情をした

エン「どうしてそれを…?」

ルイ「…ツネ隊長はこの所、ロブのお店でよくアイカを見ていましたよね…僕だって将軍護衛部隊の者、気づきますよ。」

ツネ「…ルイ…。」

ルイ「アイカが最近噂の「白の悪魔」と疑ってるみたいですが…根拠はあるんですか?」

ツネ「…僕から言えるのは1つ…ルイ、アイカには会うな。」

ルイ「なっ…!?」

エン「貴方の事を思っての事です、ルイ。」

ルイ「エンまで…!どうして…アミの事だったら少しずつ乗り越えられてきている…彼女とは顔こそ合わせられないものの少しずつ仲良くな…」

ツネ「君の事情は関係ない、これは隊長命令だ。」

ルイ「っ…!!」

そう言い放ったツネの瞳も言葉も冷たくて…ルイは抵抗したいものの、隊長命令なのもあって従うしか無かった…。

エン「…ルイ、貴方の為なんです…すみません。」

そう言うと、エンはツネと共にその場を去り…

残されたルイは俯いて右手を強く握った…。

ツネ「(…すまない…ルイ…。)」

心の中で謝罪しつつ、ツネは目的の場所へと向かった

そして到着すると…ざくろと共にタキ、そしてヒーロー4号姿のまめおとまめみの姿も

エン「2人共…どうしてここに?」

タキ「俺が頼んで一緒に来て貰ったんだ。夕方アイカを偶然見かけて、彼女のブキの声が聞こえたみたいで。」

ツネ「再びまめみに語りかけてきたのか…。」

タキ「いや、今度はまめおも一緒に聞こえたんだ。」

ツネ「まめおも?」

まめお「あぁ、まめみが反応した直後…俺にも聞こえてきた。『アイカを助けて』と言ってたから間違い無い。」

ツネ「彼女のブキは白の悪魔としての彼女の行動を止めたい様だね。」

ざくろ「あ、動いたよ!」

ボーイ1「ひぃ…!」

ボーイ2「や…やめろ…!」

白の悪魔「……………。」

カチッ…

パンッ!!

足下を取られて動けず、怯えるリスキルチームのボーイの頭に96.ガロンの銃口を当ててそのまま倒す彼女の赤い瞳は冷たくて…

ボーイ3「ひ…ひぃぃ…!」

ボーイ4「た…助けて…!」

ツネ「よし、行こう!」

逃げていくボーイ達を追いかけようとする白の悪魔に、ツネ達が動き出した!

ざくろ「今度こそ逃がさないよ!」

ズドォン!!

エン「同じ失敗は繰り返しません。」

白の悪魔「!?」

ざくろがスプラスコープコラボで彼女の足下を狙って撃ち、エンがポイズンミストで退路を断ち…

振り返ると、そこにはツネとタキ…まめおとまめみの4人が居た。

ツネ「前回は逃げられたけど、今日こそ捕らえさせて貰うよ。」

白の悪魔「…………!!」

じりじりと近づくツネに後ずさりする白の悪魔…

ツネ「これで終わりだ。」

そう言ってクアッドホッパーブラックを向けたその時!

ルイ「止めて下さい!」

そう言ってルイが白の悪魔の前に庇う様に立ち塞がった。

ツネ「ルイ、どうしてここに…!?」

ルイ「…後でどんな重い処分も受けるつもりです。」

ツネ「ルイ…!」

驚くツネ達に背を向けて、ルイは白の悪魔の方を向いた。

ルイ「…もう止めて…白の悪魔…ううん…アイカ。」

アイカ「…ルイ…く…どうして…」

ルイ「…過去のつらい体験からこんな事をしているのかな…でもこれでは負の連鎖だし何よりアイカ、君自身が傷ついていくだけだよ。」

アイカ「わ…私…は…」

ルイ「……これなら信じてくれる…?」

そう言うとルイはゆっくりと近づき、アイカの背中に手を回して…彼女の体をぎこちなくも抱きしめた。

アイカ「…………!!」

エン「ルイ…!」

ルイ「…っ…アイカ…こんな…だけど…僕を…僕を信じて…欲しい…!」

震える手で抱きしめているが、その手は…体は温かくて…声は優しくて…

アイカ「っ…私…前の街で…リスキルの為のヘイト稼ぎをする道具として使われてて…っ…私は仲間だと思ってて…仲間を守る為に動いてた…けど向こうは最初から道具としか見てなくて……ある日…上手くいかなかった雨の日に…腹いせに裏切られて…それで…逃げる様にここに…!」

まめみ「っ………!」

タキ「何て酷い仕打ちを…!」

アイカ「ロブに…ルイ君に助けられて…優しくされて…毎日が楽しくて…でも…ここでも初心者の人が苛められる事があって…大切な友達も…被害に…許せ…なく…て…っ…!」

ツネ「…そういう事情だったのか…。」

ざくろ「だからって自分を犠牲にする事は…。」

アイカ「私が傷ついても…友達を守れるのなら…私は…私は…う…うぅ…っ…!!」

ルイ「…僕が守るよ。」

アイカ「え…?」

ルイ「…リスキルをする様な奴らは残念ながら今後も消える事は無い…つらい思いをする人もたくさんいると思う…けど、その度にアイカが傷ついていくのはもう見ていられないんだよ…だから僕が守る…友達としてアイカを守るから…だからもう自分を傷つけないで…。」

アイカ「ルイ…く…うっ…ひっく…ごめ…な…さ…ごめんなさい…ごめんなさい…っ…!!」

言葉を絞り出すとアイカはルイにしがみついて思いっきり泣き出して…

エン「どうしますか、ツネ。」

ツネ「これで白の悪魔は滅んだんだ…任務は完了という事でお爺様に報告しないとね。」

ざくろ「あの件は?」

ツネ「別件で調査するよ。」

タキ「ひとまず事件は解決だね。」

まめみ「よかった…本当によかった。」

まめお「そうだな。」

ツネ「さぁ、帰ろう。」

そう言ってツネはルイとアイカに優しく手を差し伸べた。

To be continued…