白の悪魔の件も解決し、人々の記憶からもその存在は消えた
シキはつらい思いをしつつもそれ以上に楽しみを見い出して腕を上げていき、アイカもロブのお店で手伝いをしつつ…新たにまめみ達とも仲良くなって充実した日々を送っていた。
一方ツネも白の悪魔の事は解決したものの、アイカの事は個人的に気になっていて…
ツネ「アイカ。」
アイカ「あ、ツネ君。」
ツネ「体調はどうだい?」
アイカ「うん、落ち着いてるよ。」
ツネ「よかった、無理だけはしないで欲しい。」
アイカ「ありがとう。」
ざくろ「(……ツネ……。)」
ツネは時間を見つけてはアイカに個別に接触していて…楽しそうに会話する2人の様子に、ざくろは内心モヤモヤしていた…。
そんなある日の事…ツネはまめみが見たがっていた映画のチケットを2枚入手して、彼女を誘った
そして当日…
まめみ「おはようツっくん。」
ツネ「おはよう、その服よく似合ってる。」
まめみ「ふふっ、ありがとう。」
ツネ「どういたしまして、それじゃあ行こうか。」
まめみ「うん。」
仲良く歩き出した2人だが、それを遠くから見ている2つの影…
タキ「ツネぇぇぇ…まめみを映画に誘うなんて…何を企んでいるんだ…!」
まめお「落ち着けよタキ…とにかく映画が終わるまでは待ってようぜ…。」
そんな2人に気づく事無くツネとまめみは映画を楽しみ、その後も昼食やデザートを食べたりショッピングを楽しんだ後…
夕方、ツネの誘いでムツゴ楼の夕陽を見ていた。
まめみ「いつ見ても、ここの夕陽は綺麗だね。」
ツネ「うん、今日は雲が無いから一段と綺麗だ…まめみと見れてよかった。」
まめみ「今日は本当にありがとうツっくん、あの映画ずっと見たかったからすごく嬉しかったよ。」
ツネ「僕もチケットが手に入ってよかったよ、こうしてまめみと最高の時間を過ごせたからね。」
まめみ「ふふっ、あの仮面舞踏会のシーンとかすごく綺麗だったね。」
ツネ「うん。」
まめみ「いいなぁ…あんな風に踊ってみたい。」
夕陽を見ながら映画のシーンを思い出してふぅ…とため息を吐いたまめみに、ツネは優しく笑い…
ツネ「今、ここで踊ってみようよ。」
そう言ってまめみに優しく手を差し伸べた。
まめみ「えぇ…でもあたし踊った事なんて無いよ…!」
ツネ「大丈夫、僕がエスコートするよ。」
まめみ「う…うん…。」
まだ緊張しつつ、まめみがツネの手を取り…2人はゆっくりと踊り出した。
ツネ「ここで足を後ろに動かして。」
まめみ「こ、こう…?」
ツネ「上手だよ、今度は右に…。」
まめみ「あ…映画と同じ様に踊れてる…すごい!」
ツネ「ふふっ、上手だよまめみ。」
まめみ「ありがとうツっくん、すごく嬉しい!」
ツネ「どういたしまして。」
桃色の瞳をキラキラさせて喜ぶまめみに笑みを浮かべるツネの表情も優しくて…2人はしばらくその場で踊った
そして、踊り終えるとまめみが余韻に浸りながらくるくると回って楽しんでいて…
まめみ「すごく楽しかった、タキ君とも踊れるかな。」
無邪気にそんな事を話す彼女に、ツネはゆっくりと近づいて…
ツネ「まめみ。」
先程とは違い、真面目な表情でまめみを見ていて…それを見たまめみは不思議そうな表情をした。
まめみ「ツっくん、どうしたの?」
ツネ「まめみ、僕の…僕の恋人になって欲しい。」
まめみ「ツっくん…。」
タキ「あの野郎!」
まめお「落ち着けタキ!」
遠くから見ていたタキは怒って行こうとするが、まめおがそれを必死に止めていて…
そしてそれを別の場所から偶然見てしまったのは…
ざくろ「……………。」
ズキン…
込み上げる強い胸の痛みを右手で押さえながら、ざくろはそっとその場を去り…
しかしツネはそれらに全く気づく事は無く、続けて話し始めた。
ツネ「タキが好きなのは知ってるよ、でも僕は…幼い頃に共に過ごした僅かな時間…あの時からずっとまめみの事が好きだった、成長したら必ず迎えに行くと決めていた。」
まめみ「ツっくん…あたし…。」
ツネ「今すぐじゃなくてもいい、けどまめみ…僕はまめみを家族として迎えたい…生涯を共にしたい。」
真っ直ぐ見つめるツネの黄色い瞳…
しかし、彼の瞳に潜む迷いにまめみは気づいていて…
まめみは桃色の瞳を寂しげに揺らしながら口を開いた。
まめみ「あたし…ツっくんのその想いには応えられない…。」
ツネ「まめみ…さっきも言ったけど今すぐじゃなくてもいいんだ、僕の事も1人の男性として…恋人の候補として見て欲しい。」
断られたにも関わらず、想いを伝え続けるツネだったが…まめみからは驚くべき言葉が待っていた。
まめみ「ツっくんがあたしに抱くその想いは、既に別の人に対してあるはずだよ。」
ツネ「まめ…み…!」
ドクン…ドクン…
瞳は揺れ…その手は微かに震えていて…
激しい動揺を隠せないツネだが、それは自分の気持ちを「見透かされている」様に感じていて…
それを慰める様に、ツネはまめみを強く抱きしめた。
まめみ「(ツっくんがあたしに抱いてるのは恋愛感情じゃなくて、幼馴染みのあたしを守りたい気持ち…今までの様子から分かるの、ツっくんが本当に愛しているのは…)」
そんな事を思いつつ、まめみはツネを抱き返したのだった。
夜…ツネは1人星空を見ながら物思いにふけっていて…
ざくろ「…ツネ…もう遅いから休まないと…。」
ツネ「……悪いけど今は1人にしてくれ。」
心配して声をかけたざくろだが、ツネは振り返る事も無く、明らかに不機嫌そうな声が返ってきて…
ざくろ「…でも…あたしツネが心配で…」
ツネ「心配してくれるのはありがたいけど、今は不要だ。」
ざくろ「……っ………そんな言い方しなくても…いいじゃない…!」
ツネ「余計なお世話だ。」
ざくろ「あたしじゃ…あたしじゃダメ…?」
ツネ「何がだ…僕は今機嫌が悪いんだ、もう構わないでくれ。」
ざくろ「ツネの…分からず屋!!」
少し苛立っているツネは彼女につらく当たってしまい…感情が爆発したざくろは彼に激しく気持ちをぶつけてしまった。
ツネ「いい加減にしてくれざくろ…!」
ざくろ「…ツネにとってあたしは何……あたしだって…小さい頃からずっと…見て……」
ツネ「何を…」
ざくろ「ツネ…!」
ツネ「っ……!?」
突然何を聞くのか…そんな疑問を抱いた直後、ざくろはツネにキスをしてきて…!
突然の事に頭が真っ白なツネは、黄色の瞳を見開いたままで…
キスを止めたざくろの赤い瞳からは大粒の涙が止めどなく溢れていて…
ざくろ「……っ………。」
ツネ「ざくろ…。」
ざくろ「…ごめんなさい……ツネ……。」
彼女の名前を口にしたツネだが、ざくろは涙を流しながら謝罪して…
ガチャ…パタン…!!
そのまま家を出て行ってしまい…残されたツネはその場に立ち尽くす事しか出来なかった…。
巡る虹色四季模様(絶望編)~Fin~
海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!
小説「巡る虹色四季模様(絶望編)」はこれにて完結しました。
アミを失ったルイの深い悲しみと絶望から始まった章ですが、エンや皆の支えもあり彼は少しずつ前を向き始めました。
そんな中、新たに現れた深い悲しみと傷を持つ少女アイカ
ルイはイカガールが大の苦手になってしまったはずなのに、アイカに対しては何故かほっておけなくて…
そしてツネとざくろの交わらない想い…ですがツネの中では変化が起きていて…?
それら全てが次回から始まる新章で明らかになります。
それでは次のお話でお会いしましょう!
ここまで読んで頂きありがとうございました!
2021/8/13 海賊ダイル