小説「巡る虹色四季模様(希望編)」~愛の契り~

ざくろが眠りについたのと同じ頃、ツネも…

ツネ「(一見すると複雑だけど、慣れてしまえばサクサク進むな。)」

そう思いながら丁寧に編んでいたが、気がつくと夜中の1時を回っていて…

流石に寝ないと明日に障る…作業を中断してざくろの部屋で眠るプッチンの様子を見に行くと、枕元で大人しく眠っていた。

プッチン「ぷ…ぷ…。」

小さく可愛い寝息を立てながら眠るプッチンにツネは優しく笑って、そっとざくろのベッドに横になりうとうとする意識の中で、ある事に気がついた

それは、エンに作って貰っている睡眠薬を最近飲んでいない事…

飲まなくても眠れる…逆に言うと、眠れなくなる程に強い不安に襲われる事が無かったのだ

思い返せば、それはざくろが自分と暮らし始めてからで…

最初は家事を分担すると約束したのに、地上への興味が勝ってしまうざくろに少し鬱陶しいと思う時もあった…

だが共に過ごす内にその生活は心地良いものになっていて、いつの間にかその視線はいつもざくろを追っていて…

…そうか、自分自身が気持ちを自覚する前から…ずっと…

ツネ「エンの言う通りだ、僕は鈍すぎだな…。」

上を向いて右手で目を覆い、少し呆れた様に笑うと…ツネはそのままざくろのベッドで眠りについた。

次の日も、その次の日も…ツネとざくろはお互いに時間を見つけては1人で黙々と編んでいき…

それから一週間後の朝

プッチン「ぴっ?」

ツネ「これはおもちゃじゃないよプッチン、この飾りをここに付けて…よし、出来た!」

プッチン「ぴっ!ぴっ!」

ツネ「プッチン、喜んでくれるのかい?」

プッチン「ぴっ!」

ツネ「ふふっ、ありがとう。」

そう言って優しく笑い、プッチンを人差し指で優しく撫でたツネだったが…立ち上がって何やら準備を始めた

プッチン「ぴっ?」

ツネ「ちょっと出かけてくるよ。」

そう言ってツネはアナアキニットアオソデに着替えるとイカスマホを手に取り、ある人物に連絡をした。

一方ざくろの方も…

ざくろ「完成した!」

まめみ「おめでとうざくろちゃん!」

ざくろ「ありがとうまめみ!」

まめみ「どういたしまして、すごく綺麗なお守りだね。」

ざくろ「うん。」

完成したお守りを太陽にかざすと、飾りがキラキラと輝いていて…まめみとざくろは目を細めて魅入っていた

すると…

ピリリリリ…突然まめみのイカスマホが鳴り、画面を見ると相手はタキだった。

まめみ「もしもし、タキ君?うん、分かった…気をつけてね。」

ピッ…

ざくろ「タキ、どうかしたの?」

まめみ「ここに来る約束だったんだけど、ツっくんから連絡が来たみたい。」

ざくろ「ツネが?何だろう…。」

まめみ「分からない、喧嘩とかにならないといいけど…。」

2人がそんな話をしているとも知らず、タキはツネに呼び出された場所…ムツゴ楼に来ていた

タキ「ツネ?」

ツネ「ここだよ、まぁ座りなよ。」

彼に促されるまま、タキは少し距離を空けてツネの隣に座った

タキ「話って何?」

ツネの黄色い瞳をじっと見て、タキは疑問をぶつけ…ツネも彼のターコイズブルーの瞳をじっと見て口を開いた

ツネ「タキ…君はどんな事があっても、まめみを愛し続ける覚悟はあるかい?」

タキ「突然何を…最初から俺はまめみしかいない、例えどんな未来が待ち受けていたとしても俺は彼女を愛するよ。」

ツネ「なら僕にそれを約束して欲しい、どんな事があったとしてもまめみを愛して守り続けるとね。」

タキ「ツネ……それって…。」

ツネ「君がもしその約束を違えた時、僕は躊躇せず君を始末する。」

タキ「!!」

ツネ「…その覚悟はもちろんあるんだろう、タキ?」

タキ「…もちろんだ、俺は半端な覚悟で言ってるんじゃない。」

ツネ「……………。」

タキ「……………。」

ツネ「…ふっ…その言葉しかと聞いたよ。」

タキ「ツネ…!」

ツネ「まめみを頼んだよタキ、立場は違えど…僕にもまめみを守らせて貰うけどね。」

タキ「ありがとう…ツネ。」

お互いに優しい笑みを浮かべて、堅い握手を交わした2人…この瞬間から、タキとツネは真の友人となったのだ。

結局タキが来たのは午後で…

まめみ「いらっしゃいタキ君、ツっくんと何を話してたの?」

タキ「男の話…かな、まぁ詳しくは後でね。」

まめみ「むぅ…そうなの?」

そんな話をしていると、今度はまめみにツネからイカラインのメッセージが届き…

内容はムツゴ楼に来て欲しいと言う内容だった。

タキ「行っておいで、まめみ。」

まめみ「タキ君…?」

タキ「大丈夫だよ、待ってるからね。」

まめみ「う、うん…。」

ツネからの突然の呼び出しに少し戸惑うまめみだったが、穏やかな表情のタキに促されるまま着替えてムツゴ楼へ向かった。

しばらくしてムツゴ楼へ到着すると、ツネが立っていて…

ツネ「まめみ。」

まめみ「ツっくん。」

ツネ「…あれから僕はずっと考えていたんだ、まめみと出会ったあの日…今までの時間…。」

まめみ「ツっくん、答えが…?」

ツネ「うん、出たよ。…まめみ、僕はまめみが好きだ。」

まめみ「あたし……」

ツネ「ずっとまめみが好きだよ、これまでもこれからもずっと………でもね、今までの好きとは意味が違うんだ。」

まめみ「え、どういう事?」

ツネ「まめみに言われて…ざくろと喧嘩して…地下でエンや部下達に指摘されて以来ずっと考えて…気がついたんだ、自分の本当の気持ちに。」

まめみ「自分の本当の気持ち…」

ツネ「うん、僕の本当の気持ち…今のまめみへの好きは「幼馴染みを守りたい」意味の感情だったんだ。」

まめみ「ツっくん…!」

ツネ「まめみは僕が自分の気持ちに気づくずっと前から気がついていたんだね…気づかせてくれてありがとう。」

まめみ「どういたしまして。」

ツネ「全く…こんなに自分が鈍いとは思わなかったよ。」

まめみ「あたしも最初は自分の気持ちに気づかなかったよ…昔タキ君から「まめみは本当に鈍い」って言われたもの。」

ツネ「ふふっ…お互い様だね。」

まめみ「ふふっ…うん。」

ツネ「このお守りはまめみに返すよ、幼いあの時の約束は果たされたんだ…それにこれからはずっと一緒に居られるからね。」

そう言ってツネは手首に巻いていたお守り…幼い頃に再会を約束したまめみの髪飾りをそっと外して返した。

まめみ「ありがとう。」

ツネ「どういたしまして。大好きだよ、まめみ…君はずっと僕の大切な幼馴染みだ。」

まめみ「ありがとう、あたしも大好きだよ…ツっくんと幼馴染みで本当によかった。」

お互いに優しく笑いながら抱きしめ合い、その後は2人で幼い頃の思い出話に花を咲かせ…

ツネ「最後に、1つお願いをしていいかな?」

まめみ「うん、いいよ。」

ツネ「ありがとう、それじゃあ……」

そう言うとツネはまめみに耳打ちをして…まめみは頷くと家に帰った。

家に着くと、もう夕方になりかけていて…

まめみ「ただいま。」

タキ「お帰り、まめみ。」

ざくろ「まめみ…その髪飾りはツネが…!」

まめみ「ツっくんが返してくれたの、約束は果たされたからね。」

ざくろ「約束…?」

まめみ「ざくろちゃん、ツっくんから伝言だよ。」

ざくろ「え…あたしに…?」

まめみ「前に買ってあげたアナアキニットキソデを着て、ムツゴ楼に来てって言ってたよ。」

ざくろ「でもあの服は…家に…。」

まめみ「大丈夫、ツっくんから預かって来たよ。」

ざくろ「ツネ……まめみ、ありがとう。」

まめみ「どういたしまして。」

タキ「行っておいでよ、ざくろ。」

ざくろ「タキ…うん、あたし行ってくる。」

まめみ「気をつけてね。」

ざくろ「うん、2人共…ほんとにありがとう!」

そう言うとざくろは部屋でアナアキニットキソデに着替え、作ったお守りをラッピングすると大事に抱えてムツゴ楼へ急いだ。

到着した頃にはもう夕陽が沈み始めていて…綺麗な夕陽が建物を照らし、空は星空を纏った夜空と夕暮れののグラデーションで美しかった

ツネ「ざくろ、待ってたよ。」

ざくろ「ツネ…。」

喧嘩をした日とは違って、ツネは穏やかな表情で…ざくろは息を整えるとゆっくりと歩いて彼の前に立った。

ツネ「ざくろ、僕はまめみに気持ちを伝えたよ。」

ざくろ「……うん…。」

ズキン…心が痛み、涙が出そうになるのをぐっと堪えて…ざくろはツネの話に耳を傾けた

ツネ「その日の夜に君にあんな事をされて……それからずっと考えていた…そして、気づいたんだ。」

ざくろ「…ツネ…あたし……」

ツネ「待ってざくろ、先に言わせて欲しい。」

ざくろ「…っ………!」

『後悔しない様に』まめみに励まされた事を思い出して、勇気を絞り想いを伝えようとしたざくろだったがツネに遮られてしまい…俯いてぎゅっと目を瞑った

しかし、彼の口から出てきたのはざくろが想像していたのとは真逆の答えで…

ツネ「ざくろ、君が好きなんだ。」

ざくろ「え……えっ……?」

驚いたざくろが顔を上げると、そこには優しい笑みを浮かべるツネが居て…

ツネ「…幼い頃からずっと一途に想い続けてくれてありがとう、そして…ずっとつらい思いをさせて本当にごめん。」

そう言うと、ツネはざくろを抱きしめた

ざくろ「ツ…ネ…あたしで…あたしで…いいの…?」

ツネ「ざくろがいいんだ、それ以外は考えられない。」

ざくろ「でも…でもツネはまめみを…!」

ツネ「まめみへの感情は幼馴染みとしての好きだと気づいた、そして…僕の本当の気持ち…ざくろを心から愛しているという事もね。」

ざくろ「…………!!」

まめみ…ツネの気持ちに既に気づいていて…だからあたしに…!!

ツネ「ざくろ、君の口からも聞かせて?」

ざくろ「ツネ…あたしも…あたしもツネが好き…ずっと、ずっと好きだったの…!」

そう話すざくろの赤い瞳からは大粒の涙が溢れていて、ツネは親指で優しく拭った

ツネ「ありがとう、ざくろ…大好きだよ。」

ざくろ「ツネ…あたしも大好き!」

ツネ「ざくろ…もう離さない、僕達はずっと一緒だ。」

ざくろ「うん。」

ツネ「君に渡したいのがあるんだ。」

ざくろ「あたしもツネにプレゼントがあるの。」

そう言ってお互いにプレゼントを渡し、開封すると…

そこに入っていたのはお互いに作っていた紐のお守りで…

ツネ「え…ざくろもこれを?」

ざくろ「ツネも作ってたの?」

ツネ「何だ…お互いに考えてる事は一緒だったみたいだね。」

ざくろ「ふふっ、そうだね。」

2人の作った紐のお守り…ツネは石榴色の糸をベースに銀色の飾り、ざくろのは銀色の糸をベースに石榴色の飾りが付いていて、まるで2人を表している様で…

ツネ「本当は足首に付けるみたいだけど、ここに結ぼう。」

ざくろ「うん。」

お互いの手首にお守りを結ぶと、ツネはざくろの頬に優しく手を添えて…

ツネ「このお守りは2人を繋ぐ大切な物、この契りにかけて、僕はどんな事があってもざくろを愛して傍で守る。」

ざくろ「ありがとうツネ、あたしも同じ…ずっとツネを愛して守り続けるよ。」

そう言うとざくろはゆっくりと瞳を閉じ、ツネも顔を近づけて瞳を閉じて…

2人は夕陽が照らすムツゴ楼で、優しくも熱い口づけを交わした。

To be continued…