小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」~平和な国に降りた少女~

生まれつき体が弱かった娘「アイシェ」は、優しい両親から惜しみない愛情を受けて育った

外で遊ぶ事も叶わなかったけど、大好きなゲーム「星のカービィ」シリーズが心を癒やしてくれて…平和な国プププランド、そしてそれを形造る自然豊かな美しい星ポップスターはとても魅力的で「こんな世界に住んでみたい」そう思っていた。

最後に遊んだのは「星のカービィwii」

完全クリアまで遊び尽くせたのは良かったけど、「彼」を救う結末が無かったのは悲しかった…。

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太陽の暖かい光を感じる…頬をくすぐるのは優しい風…草の良い香りがする…

『ねぇ…起きて…』

可愛い声が聞こえてきてゆっくりと目を開けると、目の前にはキラキラした青い瞳とピンク色が見える

アイシェ「んっ…。」

カービィ「あ、よかった~気がついたんだね!」

そう言って安堵するカービィだが、アイシェは目の前に居る「星のカービィ」に驚いた!

するとカービィの側に居たもう1人の存在が口を開いた。

バンワド「えっと…具合は大丈夫かな?」

何とカービィだけでは無く「バンダナワドルディ」まで居る!

アイシェ「え…えと…だ…大丈夫…です…!」

まだ状況が飲み込めないアイシェだが、何とか返事をすると2人は安堵した表情を浮かべた。

カービィ「突然空がキラって光ったと思ったら、小さな星が夢の泉に落ちて行ったんだよ!こうキラキラーってね!」

そう言ってピンクのまん丸な体を使って表現をするカービィはポヨンと跳ねて可愛らしく、傍に居たバンダナワドルディも話し始めた。

バンワド「何だろうって急いでカービィと一緒に見に来たら、君が夢の泉の前で倒れてたんだ。」

目をぱちぱちさせるアイシェ…ふと自分の手を見ると、とても小さい人間の様な指で…そっと泉の水面をのぞき込むと…

カービィと同じ様な青い瞳、毛先がほんのりホライゾンブルーな長くてふわふわした銀髪、青くてピコピコ動く耳…その耳はまるで彼女が最後に遊んだゲームに出てきたあのキャラクターの様で…

アイシェ「私…これが…私…?」

白いふわふわした肌触りのケープは腰の辺りまであって…その下には同じくふわふわした軽くて白いビスチェドレス…

柔らかい髪…プニプニした耳を不思議そうに見ながら触るアイシェに、カービィとバンワドは「?」を浮かべて顔を見合わせた。

カービィ「ねぇ、君の名前は?」

バンワド「その前に、まず僕達から名乗るのが先でしょ。」

カービィ「そうだった…えへへ、ボクはカービィ!」

バンワド「僕はワドルディ、みんなからはバンワドって呼ばれてるんだ!」

アイシェ「私はアイシェ……すごい…本物のカービィとバンワドくんだ…。」

カービィ「え?」

バンワド「本物?」

アイシェ「あっ…!」

カービィ「ねぇねぇ、アイシェはどこから来たの?」

アイシェ「え…と……その……」

答えに困っていたアイシェだったが…

ぐうぅ~…

彼女のお腹から空腹の合図がした

バンワド「あっ…!」

アイシェ「ご、ごめんなさい…恥ずかしい…!」

頬を真っ赤に染めて慌てるアイシェだったが、カービィはニコニコしながら彼女の手を取り…

カービィ「美味しい物を食べに行こう!」

アイシェ「えっ…?」

バンワド「か、カービィ!?」

そう言ってワープスターを呼び出して2人を一緒に乗せると、満面の笑みでこう叫んだ。

カービィ「デデデ城に出発ーー!」

その後は少し大変で…突然来たカービィとバンワド、客人であるアイシェに「デデデ大王」達は少し混乱に陥ったものの…彼女の空腹事情を知るとすぐに食事を用意してくれた。

デデデ「全く…客人を連れて来るなら事前に言ってから連れてこいよ。」

少し呆れた様子でカービィに言うデデデ大王だが、当の本人は食事に夢中で気がつかない

アイシェ「あの…突然来たにも関わらず、お食事まで…ありがとうございます。」

デデデ「あーいいって事よ、それよりアイシェはどこから来たんだ?」

カービィ「さっきボクも聞いたんだ!でもその時にアイシェのお腹が鳴っちゃって…。」

バンワド「僕達の事を「本物」って言ってたよね?」

アイシェ「…………。」

デデデ「言い辛い事だったら無理しねぇでいいぞ。」

アイシェ「どうして初対面の私をそこまで…信じてくれるの?」

素朴な疑問をぶつけたアイシェだが、その答えはカービィから真っ先に返ってきた。

カービィ「だって、ボク達もう友達だもん!」

アイシェ「友達…。」

バンワド「そうだよ!」

デデデ「という事だ、何でも頼ってくれていいぜ。」

そう言って豪快に笑うデデデ大王と、満面の笑みを浮かべるカービィとバンワドに、アイシェの心は暖かいものが湧き上がった

言わなきゃ…こんなに信頼してくれているんだから、正直に全て話そう…そう決意したアイシェだったが、突然の訪問者によりその雰囲気は一変する。

バンッ!!

少し乱暴に扉が開いたと思うと、そこに居たのは仮面の騎士「メタナイト」!

メタナイト「失礼する。」

デデデ「どうしたメタナイト?」

メタナイト「夢の泉に星が落ちてきたと聞いて飛んできたが…その者は?」

デデデ「アイシェだ、夢の泉に倒れてたのをカービィとバンワドが見つけてな、ここに連れてきたんだよ。」

メタナイト「ふむ…そうであったか。」

アイシェ「メタ…ナイト…。」

仮面の中から光る黄色い眼光はアイシェを捕らえて放さない…恐怖と言う名のビリッとした電流が体を駆け巡り、どうすればいいか分からない…。

すると、カービィの柔らかい手がアイシェの手を掴んだ。

カービィ「大丈夫だよ、アイシェは敵じゃない。」

アイシェ「カービィ…!」

バンワド「そうだよ、今だってみんなで楽しくお食事してたんだから!」

メタナイト「……………。」

デデデ「そういう事だ、お前が心配するのは分かるがアイシェからは敵意を全く感じねぇ…それでも納得がいかないか?」

何なら俺様が相手になるぞと言わんばかりに身を乗り出したデデデ大王に、緊張の糸が走る!

一触即発…かと思われたその時!その緊張を破ったのはアイシェ自身だった

アイシェ「あのっ…私、全部話します…私自身の覚えてる限りですけど…!」

そう言うと、アイシェは語り始めた

元々は人間だった事、目が覚めたらここに居た事…カービィ達は元の世界でゲームとして存在していた事…覚えている事は全て隠さずに話した。

デデデ「つまり…俺様達は、アイシェの世界では架空の存在だったって事か…。」

メタナイト「その話が本当だとしたら、元の世界の其方はどうなったのだ?」

アイシェ「亡くなったんだと思います。」

彼女のその発言に、一同はとても驚いた顔をした。

バンワド「亡くなったって…アイシェが?」

アイシェ「人間だった頃の記憶はほぼ無いけど…カービィのゲームが大好きだった事、体が生まれつきとても弱かった事くらいしか…。」

メタナイト「そうか…だとしたら、どういう運命か…其方がこの世界の者として生まれ変わってきたという事だな。」

アイシェ「生まれ変わり…この世界の者に…。」

さっきまでの雰囲気はどこへやら、紅茶の入ったティーカップを器用にずらした仮面の下で飲んだメタナイトに、デデデ大王もりんごのタルトを食べながら口を開いた。

デデデ「お前はほとんど記憶が無ぇみたいだが、生前は親からたくさんの愛情を貰ったんだろうな。」

アイシェ「えっ?」

バンワド「アイシェを見ていれば分かるよ、とっても優しい雰囲気が伝わってくるしね。」

アイシェ「バンワドくん…。」

すると今まで黙って食べていたカービィが、ここで漸く口を開いた。

カービィ「難しい事はよく分かんないけどさ…アイシェが友達なのは変わらないし、みんなで一緒にご飯食べたらデデデ達もアイシェの友達だよ!」

満面の笑みで話すカービィに、デデデ達も笑って返していて…メタナイトも仮面で表情こそ分かりにくいものの、柔らかい雰囲気になっているのが伝わってくる。

アイシェ「ありがとう、カービィ…バンワドくん、大王さま、メタ…さん。」

デデデ「へへっ、大王さまか~アイシェみたいな可愛子ちゃんにそう呼ばれるのは気分がいいな。」

メタナイト「メタさん…か、悪くない。」

カービィ「デデデとメタナイトがニヤニヤしてるー。」

メタナイト「なっ…余計な事を言うなカービィ!」

デデデ「まぁいいじゃねぇか、改めてアイシェ…これからよろしくな!」

アイシェ「はい、よろしくお願いします!」

こうして、アイシェは無事にプププランドの住民として迎えられたのでした。

To be continued…