マホロアがアイシェを抱き抱えてしばらく飛んでいくと、リップルフィールドに到着した。
マホロア「ワァ…すごく綺麗ダネ!」
アイシェ「ポップスターには色んな海があるけど、ここは海水浴でも人気の場所だよ。」
マホロア「こんな二綺麗なんだモノ、納得ダヨォ。」
たくさんの海水浴客で賑わう中、誰も居ない離れのビーチを見つけたマホロアはゆっくりと降りた。
アイシェ「賑やかなのもいいけど、静かな場所で波の音を聞くのもいいね。」
マホロア「ソウダネ、心が洗われてく気がするヨ。」
アイシェ「…このまま気が変わるといいのに……。」
マホロア「ン、何か言ったカイ?」
アイシェ「ううん、何も言ってないよ。」
マホロア「ソウ?それナラいいケド。」
打ち寄せるさざ波はキラキラ輝きながら、アイシェの願いという名の独り言もその音で掻き消してしまった。
アイシェ「ね、せっかく海に来たんだから遊ぼうよ。」
そう言ってアイシェは靴を脱ぐと海に近づいて、ドレスの裾を持ち上げて足を浸し始めた
マホロア「遊ぶと言ってモ、どうヤッテ…。」
アイシェ「パシャパシャするだけでも楽しいよ。」
マホロア「ソレならコレは…どうカナ?」
そう言うとマホロアは手袋を脱いでヤシの木の根元に置き、海水をすくってアイシェに向かって…
バシャッ!!
勢いよくかけた!
アイシェ「きゃあっ!」
マホロア「クックックッ…何て顔してるんダイ?」
かつてゲームの中…「あのシーン」で聞いた様なセリフを吐くマホロアは、イタズラっぽく笑っていて…
アイシェ「もーマホロアったら!」
バシャッ!!
少しだけ頬を膨らませると、アイシェも小さな両手に海水をすくってマホロアに向かってかけた!
マホロア「ブッ!!」
アイシェ「えへへ、お返し!」
マホロア「……………。」
アイシェ「マホロア?」
俯いてプルプルしているマホロアに、アイシェが声をかけると…
マホロア「アイシェ…覚悟しろヨォ!!」
そう言うと、マホロアは魔力で海水の大きな球を作って…
アイシェ「えっ…ちょっとマホロア…!」
マホロア「行くヨ!」
パンッ!!
そう言ってマホロアは海水の球をアイシェの上で破裂させた!
ザバアァァァーー!!
大きな音と共に海水はアイシェを襲い…そこには全身ずぶ濡れのアイシェが居た…。
アイシェ「マホ…ロア…。」
マホロア「ボクを挑発するから、こうなるんダヨ。」
アイシェ「ならマホロアにもお返しするんだから!」
マホロア「ボクは簡単にはヤラれないヨォ~!」
2人は時間も忘れてお互いに海水を掛け合い…気がつくと陽が傾き始めていた。
アイシェ「お互いにびしょびしょだね…。」
マホロア「夢中になり過ぎたヨォ…。」
アイシェ「帰ったら洗濯しなきゃ…。」
そう言いながらアイシェはケープを脱いで、ドレスの裾をギュッと絞ると水が零れたが…
マホロア「ッ……!!」
びしょ濡れになったドレスが体に張り付き、夕陽に照らされて透けていて…マホロアは思わずゴクリ…と生唾を飲んで魅入ってしまった。
アイシェ「マホロア、どうしたの?」
マホロア「エ…アッ、何でも無いヨォ。」
アイシェ「そう?それならいいけど…。」
マホロア「(ビックリした…ケドこれはチョーラッキーダナァ。)」
アイシェに気づかれない様にチラチラと彼女の体を見るマホロア…自分より少し小さい体は意外と豊かで…普段ケープの下に隠されている胸元も今はしっかり見えていて…夕陽に照らされる美しい銀髪もキラキラ輝いている。
アイシェ「はい、マホロアの手袋…ふふっ。」
マホロア「どうしたんダイ?」
アイシェ「手袋だけが無事だなって思って。」
マホロア「アハハッ、確かにそうだネェ。」
何だかおかしくなってしまった2人はそこで笑い合い…
トクン…トクン…
マホロアは胸の高鳴りと体が熱くなるのを感じていて…同時にアイシェに初めて会った時から時折感じていたモヤモヤした感情の正体にも気づいた。
ボク……アイシェの事が好きナンダ…
陽がすっかり暮れて暗くなった頃、ローアに到着した2人は…
アイシェ「すぐにお風呂に入らなきゃ。」
マホロア「ボクは後から入るカラ、先に入っテ。」
アイシェ「え、でも悪いよ…。」
マホロア「大丈夫ダヨ、風邪引いたラ大変ダロ。」
アイシェ「ん…分かった、ありがとう。」
そう言い残してアイシェはお風呂場へ消えて行き…マホロアはフードと手袋を脱いで、出かける前に設定したローアのセキュリティ解除の手続きだけをしてしまった。
しばらくしてアイシェが上がって来て…すっかり温まった彼女は白いワンピースタイプのパジャマを着ていた。
マホロア「よく温まったカイ?」
アイシェ「うん。」
マホロア「ヨカッタ、それじゃあボクも入ってくるヨ。」
彼がお風呂場へ向かったのを見届けると、アイシェはマホロアが上がった後に飲むであろうコーヒーの為にお湯を沸かし、自身もホットミルクを作ってソファに座り飲み始めた。
アイシェ「楽しかったなぁ…こんな風にたくさん思い出を作って、マホロアが考えを変えてくれたらいいな…。」
そんな独り言を言いながらホットミルクを飲み干すと、じきにアイシェはウトウトしだして…
マホロア「フゥ…サッパリしたヨォ。」
お風呂から上がって替えの衣装を来たマホロアが戻って来たが…
台所では温まったポットが置いてあり、ソファではアイシェが夢の中に旅立っていた。
アイシェ「すぅ…すぅ…。」
マホロア「寝ちゃっテル…いくら何でも無防備ダヨォ。」
ふぅ…と溜息を吐きつつマホロアはアイシェをじっと見つめた…
閉じられた瞼に長い睫毛、小さくて綺麗な唇、規則正しい寝息
湧きあがる好奇心を抑えきれず、マホロアは手袋越しにそっと彼女の唇に触れると…
アイシェ「んっ…。」
ゾクゾクゾクッ…!
手袋越しなのにアイシェの熱と吐息が伝わってきて…マホロアの全身を電流の様な感覚が巡り、ゾクゾクとドキドキが止まらない。
もっと彼女に触れたい…何なら自分しか見ない様にしてしまいたい…そんなドス黒い感情が彼の中で渦巻く…
その時、ローアの扉が開く音がしてカービィが入ってきた。
カービィ「マホロア、スフィアをいくつか見つけたから持って来たよ。」
マホロア「ワォ、こんなニ見つけてくれたんダネ!」
カービィ「あれ、アイシェ寝ちゃってるね。」
マホロア「疲れタみたいダネ。」
カービィ「アイシェ、何だか天使みたい。」
マホロア「天使カイ?」
カービィ「白いふわふわのワンピース着てるし、まるで天使が眠ってるみたいだなって思ったの。」
マホロア「ヘェ~カービィでもそんなロマンチックな事を言うんだネェ。」
カービィ「ぼく「でも」ってどういう意味なのー!?」
マホロア「どういう意味ダロウネェ~?」
カービィ「もーマホロアったら!」
マホロア「プププッ…悪かったヨ、お詫びに冷蔵庫のプリンあげるからサ。」
カービィ「プリン!?うん、いいよ!」
マホロア「(単純ダネェ…。)」
揶揄ってはみたものの、内心はカービィの言葉に納得している自分がいて…彼女が天使なら、飛び立って行かないようにしっかりと繋ぎ止めておかなければ…とも思っていた。
あっさりとカービィの機嫌を直す事に成功したマホロアは、プリンをご馳走した後に再びパーツ集めに出かけた彼を見送り…眠っているアイシェを抱き上げて部屋へ運んだ
アイシェ「すぅ…すぅ…。」
ぐっすり眠っているアイシェをマホロアは黄色い瞳を弓なりに細めて見つめ、手袋を脱ぐとアイシェの耳の傷にいつも通り薬を塗り包帯を巻いた
マホロア「いつもハ悩ましい声ヲ出すケド、今日は寝息だけダネ。」
そんな事を言いながらアイシェの頭を撫でると、彼女の唇がうっすら笑みを浮かべている様に見えるのだった。
To be continued…