小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」~告白と恋の自覚~

アイシェへの気持ちを自覚して以来、マホロアはアイシェの事をよく目で追い観察する様になった

耳を弄られるのが弱い事、歌うのが好きな事、彼女の好きな曲…よく笑う明るい一面もあれば、時折悲しげな瞳をする事も…マホロアはアイシェの事を知れば知る程、彼女に夢中に…そして独り占めしたい独占欲が湧き上がるのだった。

一方でカービィ達との交流も大事にし、彼らがエナジースフィアとパーツを集めて来てくれる事で順調に修理が進んでいて…昨日の夜オニオンオーシャンからローアの左ウィングを持ち帰って来たカービィ達はローアに泊まり、朝食を食べ終えた後に雪山ホワイトウェハースに出発しようとしていた。

バンワド「次は雪山かぁ。」

デデデ「寒いから気をつけろよ。」

カービィ「雪遊びしたいなー!」

メタナイト「そんな暇は無いぞ。」

カービィ「え~メタナイトのケチ!」

メタナイト「無駄口を叩いてないで行くぞ。」

ブーブー文句を言うカービィをメタナイトは引きずって行き…

デデデ「それじゃあ行ってくる。」

アイシェ「気をつけてね。」

バンワド「ありがとうアイシェ。」

4人を乗せたワープスターは飛んで行き、アイシェは暖かい日差しを浴びながら伸びをした。

アイシェ「いい天気、お洗濯物もよく乾きそう。」

するとアイシェの上空に大きな影がかかり、見上げるとマルクの姿が

マルク「アイシェ。」

アイシェ「あ、マルク。」

マルク「お前、あれからここで過ごしてるのサ?」

アイシェ「うん、ちょっと前に異空間の敵に襲われて大怪我しちゃって…マホロアが助けて治療してくれたから今はもう大丈夫だけどね、危ないからローアで一緒に過ごす事になったの。」

マルク「…ふーん。」

マホロアの名前を聞いた瞬間、マルクは露骨に気に入らないという反応をした

アイシェ「マルク…マホロアに気をつけろって言ったけど、何も酷い事はされてないよ。」

マルク「それはアイツがアイシェを気に入ってるからなのサ。」

アイシェ「気に入ってる?」

マルク「今に閉じ込めるかもしれないのサ。」

アイシェ「そんな…マホロアは友達だよ、酷い事はしないよ…。」

マルク「お前、まだそんな暢気な事言ってるのサ!?」

アイシェ「マルクが友達として心配してくれてるのもよく分かってるよ、でも…」

マルク「友達じゃないのサ!!」

言葉を遮り突然声を荒げたマルクに、アイシェは驚いてビクッと震えた…

アイシェ「マルク…?」

マルク「どんだけ鈍いんだよ!」

アイシェ「え…鈍いって何が…?」

マルク「アイシェが鈍いんだよ!」

アイシェ「そんな…突然そんな事言われてもどういう意味か全然分からないよ…。」

マルク「…なら今、分からせてやるのサ。」

ドサッ

困った表情のアイシェに痺れを切らしたマルクは、翼の鉤爪でその場に押し倒した!

フワッ…風と草の良い香りが漂う中、草むらに押し倒された驚きで見開いたアイシェの青い瞳は、マルクの紫の瞳を映していて…

アイシェ「マル…ク…どうしたの…?」

マルク「ボクはアイシェが好きなのサ。」

アイシェ「……………!!」

マルクの口から告げられた言葉は紛れも無い「愛の告白」で…アイシェの頬は一気に熱く赤く染まった

マルク「アイシェはどうなのサ。」

アイシェ「わ…私は……私は…マルクの事は大事な友達…だよ…。」

マルク「…他に好きな奴がいるのサ?」

アイシェ「そ…そんな事…」

「無い」と言いかけて、アイシェは言葉に詰まった

脳裏にマホロアの姿が浮かんだのだ…

どうしてそんな…だって彼も友達で…混乱するアイシェにマルクは更に迫った。

マルク「ボクを、1人の男として見て欲しいのサ。」

アイシェ「マル…ク…私は…」

相変わらず頬を真っ赤に染めたアイシェは呼吸が荒く、青い瞳は今にも泣きそうで…マルクは一番気づきたくなかった事に気づいて…そのままアイシェから離れた。

マルク「…アイシェ…お前…」

そこまで言いかけたマルクだったが…

マホロア「…キルニードル。」

自分の足下が光り、マルクは咄嗟にかわしたが…

ピッ!鋭い棘が擦り、頬から赤い血が流れた。

視線の先にはマホロアが居て…

マホロア「何シテるんダ。」

アイシェ「マホロア…!」

マルク「…お前さえ居なければ…!」

そう言って戦闘態勢に入り、マホロアを睨みつけながら敵意を剥き出しにするマルクだったが…

マホロア「アイシェに手を出したナラ、本気デ消さないトネ。」

マルク「っ……!」

そう話すマホロアの黄色い瞳はマルクだけを捉えていて…無表情の彼からとてつもなくドス黒く強い力を感じたマルクは、思わず息を飲んだ…

アイシェ「マホロア…やめて…!」

マホロア「アイシェ。」

アイシェ「お願い…!」

マホロア「…アイシェ、ローアに戻るヨ。」

そう言うとマホロアはアイシェの手を引いてローアに戻り…

マルク「アイシェ…マホロアの事を…クソッ!!」

気づきたくなかった彼女の「本当の気持ち」を知ったマルクは、苦しみつつも飛び去っていった。

アイシェ「……………。」

告白をしてきたマルクの目は真剣で、でもアイシェの心の中では何故かマホロアの姿が強く浮かんで…それがどうしてなのか自分でも分からなくて…

マホロア「怖かったネ、もう大丈夫ダヨ。」

そう言ってぎゅっと抱きしめてきたマホロアに、アイシェは素直に体を預けると…

トクン…トクン…アイシェの胸の鼓動は高鳴り、今まで感じた事の無い感覚に戸惑いつつも、マホロアの温もりに安心した。

アイシェ「マホロア…温かい…。」

マホロア「落ち着くまでずっとこうしてるカラネ。」

アイシェ「ありがとう…。」

じわ…溢れてきた涙はマホロアの服に消え、しばらくアイシェは彼の腕の中にいて…漸く気持ちが落ち着くとマホロアは外を見ながら口を開いた。

マホロア「アイシェ、雪でも見ニ行こうカ。」

アイシェ「雪を?」

マホロア「カービィ達にはチョット申し訳無いケド…雪遊びなんてドウ?」

彼なりに自分に気を遣って元気づけようとしてくれている…アイシェはそう感じて心はじんわりと暖かくなった

アイシェ「うん、行きたい。」

マホロア「決まりダネ。」

それから2人は、暖かい格好をしてホワイトウェハースに出発した。

程なくして到着すると、そこは一面銀世界が広がっていて…

アイシェ「わぁ…綺麗!」

マホロア「素敵な景色ダネェ!」

アイシェ「わっ、冷たい。」

そうは言いつつも、アイシェは雪玉を作って転がし始めた。

マホロア「何シテるんダイ?」

アイシェ「雪だるまを作ろうと思ったの。」

マホロア「一緒に作ろうヨ。」

アイシェ「うん。」

2人でそれぞれ雪玉を転がして…大きくなってからは一緒に転がして更に大きくして…

マホロア「最後は魔法で上に乗せて…完成ダヨォ!」

アイシェ「わぁ~大きい!」

頑張って作った甲斐もあり、とても大きな雪だるまが出来上がって2人は大満足な様子だ。

マホロア「アイシェと一緒に作れて、楽しカッタ!」

アイシェ「私も楽しかったよ!」

2人で顔を見合わせて笑い合っていたが、空はみるみる灰色の雲に覆われて…強い吹雪に襲われた!

マホロア「天候が急変したネェ…かまくらを作って凌ゴウ…!」

魔法でかまくらを作って中に入り…

ボッ…マホロアのレボリューションフレイムで焚き火を起こして、2人は身を寄せ合って温まった。

アイシェ「吹雪、しばらく止みそうにないね。」

マホロア「ソウだネェ…もしかしたら一晩中このままカモ。」

アイシェ「一晩中…。」

マホロア「怖いカイ?」

アイシェ「1人なら怖いけど…マホロアが居るから怖くないよ。」

マホロア「エヘヘ…ソンナ事言われると照れちゃうヨォ…。」

焚き火の炎は体を温めるだけでなく、気持ちをリラックスさせて眠気も誘ってきて…

アイシェ「ふあぁ…。」

あくびをすると、同じく眠そうな様子のマホロアがアイシェをぎゅっと抱きしめてきて…

マホロア「今は休モウ…。」

アイシェ「うん、そうだね…。」

マホロア「おやすみアイシェ…。」

アイシェ「おやすみマホロア…。」

トクン…トクン…

マホロアの寝息がおでこにかかり、アイシェの胸の鼓動は再び高鳴った…それは今まで感じた事の無い気持ちで、アイシェはマルクに押し倒されて告白された時にマホロアが脳裏に浮かんだ理由を理解した。

私…マホロアの事が…

ドキドキしつつもじきに眠りについたアイシェだったが…眠る2人はお互いの手を決して離さなかった。

To be continued…