小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」~全てが終わって…~

カービィが攻撃のチャンスを伺う中、マホロアがディメンションホールを開けて召喚した敵の中からスーパーコピー能力を持つ敵を見つけ出し、すかさず吸い込んでコピーしてドラゴストームを2回当てた!

マホロア「グッ…おのレ…!」

奥に引いたマホロアは右手を左に動かし、左手をグルッと時計周りに回すと、衝撃波が来てドラゴストームを強制解除されてしまった!

アイシェ「頑張ってカービィ!」

カービィ「うん!」

デデデ「他の攻撃は俺様達に任せろ!」

カービィ「ありがとうデデデ!」

魔力球等の攻撃は他の3人が引き受けて、カービィは次々とスーパーコピー能力を使ってマホロアのリフバリアを壊していく!

マホロア「邪魔を…するなヨォッ!!」

激しい攻撃をしてくるマホロアだが、カービィはスーパーコピー能力「ウルトラソード」を振りかざし、マホロアに斬りかかった!

最後のリフバリアが壊され、今度こそマホロアに止めの一撃を当てたが…マホロアはグッと手で押さえて弾き返そうとしてくる!

アイシェ「カービィ…負けないでーーー!!」

カービィ「目を覚まして、マホロアぁーーー!!」

ザシュッ!!

願いを込めてマホロアの上にあるクラウンを斬ったカービィ!

マホロア「グッ…ウアァァァーー!!」

バチバチと爆発音を響かせながら、マホロアは光に包まれた…しかし、様子がおかしい!

アイシェ「カービィ、まだダメ!」

カービィ「アイシェ…もしかしてキミはこの事も知って…!?」

そこまで言いかけたカービィの前に現れたのは、巨大化し銀色に変化したマスタークラウンが絡みつく丸くて暗い緑色の体…ドラゴンにも影にも見える翼を広げ、大きく裂けた口から覗く真っ赤な1つ目…

「マホロアソウル」の姿がそこにあった!

マホロア「グ…オォ…ォ…!」

今までと違う状況がたくさん起きた

だから今度も違う事が起きる可能性がある

もしかしたら元に戻せるかもしれない

マホロアが助かるかもしれない

僅かに抱いた希望は目の前で粉々に砕け散った…

もう言葉にならないマホロアの声は悍ましい中、どこか悲しげで…アイシェは記憶の通り「もうマホロアは戻って来ない」事を悟った…。

アイシェ「カービィ、マホロアはもう…クラウンそのものに…!」

カービィ「そんな…元のマホロアに戻せないの!?」

アイシェ「マホロアを救うには…魂を解き放つしか……っ…!」

そう言ってアイシェは項垂れて、カービィも青い瞳に涙が滲んだ

アイシェ「カービィ…お願い…マホロアの…彼の魂を解き放って!」

カービィ「アイシェ…っ……分かったよ!」

青い瞳から大粒の涙を流しながら懇願するアイシェに、カービィは涙を拭って再びウルトラソードを手に立ち向かおうとしたが…

パンッ!!

マホロアソウルの両手が閉じられ、その衝撃波でウルトラソードを強制解除されてしまった!

カービィはしばらくすっぴんのまま、メタナイト達と共に戦い続けていたが…

…ビィ…カー……ビィ

マホロアソウルから声が聞こえてくる…

アイシェ「マホ…ロア…?」

マホロア「コン…ナ…ハズ…ジャ…」

アイシェ「マホロア…マホロアなの!?」

マホロア「アイ…シェ…。」

ゲームではクラウンそのものになってしまったマホロアを救う方法は、倒して魂を解き放つ事しかなかった

けど今のマホロアはまだ自分の意識が僅かながらも残ってる…それならクラウンさえ壊せばマホロアを体ごと助けられるんじゃ…?

カービィ「マホロア、マホロア聞こえる!?」

アイシェがそんな事を考えていると、今度はカービィがマホロアに声をかけた。

マホロア「カー…ビィ…?」

カービィ「今助けるからね、マホロア!」

マホロア「ボク…モウダメ……カエッテ…カー…ビィ…。」

カービィ「そんな事出来ない、大事な友達を置いて帰るなんて出来ないよ!!」

マホロア「カービ…ィ…。」

アイシェ「負けないでマホロア、クラウンに乗っ取られちゃダメ!!」

マホロア「デモ…アイ…シェ…。」

アイシェ「カービィを信じて、絶対に助けてくれるから!」

マホロア「アイシェ…!」

すると、クラウンからマホロアの脳内に直接言葉が聞こえてきた…

クラウン「愚かな生け贄よ…お前は我の傀儡となり、このローレルリースで永遠にその魂を啜り続けてやろう。」

マホロア「ウッ…アァ……!!」

マホロアソウルの口から覗く赤い目玉…マスタークラウンはアイシェをギョロリと見つめ…

アイシェ「っ……!!」

クラウン「お前が欲したその娘の清らかな魂も喰らってやる、お前が絶望の底に墜ちて憎悪を増幅させた時こそ…我への最高の捧げ物になるのだ。」

マホロア「アイシェ…ニ…テヲダス…ナ…!!」

マスタークラウンは内からマホロアの魂を支配し、アイシェに向けて深緑の大きな手を伸ばしたが、僅かに残るマホロアの意志が必死に抑えていて…

マスタークラウン「お前はもう逃げられぬ、我に啜られ続けるのだ。」

マホロア「ヤメ…テ…アッ…!!」

アイシェ「マホロア!」

デデデ「おいマホロアしっかりしろ、お前はそんな事でヘタれるような奴じゃねぇだろ!」

バンワド「みんなでまた一緒に、アイシェの歌とピアノを聴こうよ!」

メタナイト「過ちはやり直せる、自我を奪われるな!」

カービィ「マホロア、みんなで一緒に帰ろう!」

マホロア「カァー…ビ…ィ…!ミン…ナ…デモ…デモ…!」

アイシェ「マホロア…夢は、夢はどうするの!」

マホロア「アイシェ…ボクノ…ユメ…?」

アイシェ「全宇宙のみんながキャーキャー言っちゃう様な…驚きと楽しさでいっぱいの…夢のテーマパークを作るんでしょ…?」

マホロア「アイ…シェ…!」

アイシェ「一緒に夢を叶えようよ…マホロア!」

マホロア「アイシェ…アイシェ…ェ…!!」

口の上に残るマホロアの白くなった瞳から大粒の涙が零れ落ち、意識が徐々に強くなってきて…

アイシェ「マホロア…!」

すると今度はカービィの方を向いて話し始めた

マホロア「…カービィ、ボクはキミが苦手ダナァ…騙されたのにキョトンとしちゃってサァ…。」

カービィ「マホロア…ボクは…!」

マホロア「何度もキミに頼るのは癪だケド、もう…イイヤ。星のカービィ、頭のコレを早くぶっ壊してヨ…そしたら…マタ…クックックッ…揶揄ってやるヨォ!」

アイシェ「マホロアったら…素直じゃないんだから…。」

それは素直になれないマホロアなりの精一杯の「助けて」のメッセージで、希望を見出だせた事にアイシェは泣きながらも優しい笑みを浮かべ、彼のメッセージを受け取ったカービィは…

カービィ「待っててマホロア、今助けてあげるからね!」

メタナイト「カービィを援護するぞ!」

マホロアの意思とは関係なく、マスタークラウンが彼を操って激しい攻撃を仕掛けてくる!

マホロア「頑張…ッテ………カービィ…ッ……!」

カービィ達は諦めなかった、マホロアを…友達を必ず救うと強い決意の元で戦い続けた!

そしてついに…

カービィ「マホロア、戻って来て!!」

ズバッ!!

カービィはソードでマホロアソウルのクラウンを叩き割った!

パキッ…ミシミシ…

マホロア「カァーービィィィィーーー!!」

クラウンにヒビが入り、マホロアソウルは低い呻き声を上げながらカービィの名前を呼び、青緑の炎に包まれた。

アイシェ「マホロア!」

魔力で覆われたシャボンは消え、アイシェは駆け寄って手を伸ばしたが…

マホロア「アイ…シェ…ゴメ…ンネ……ボク…キミの事…ガ…」

緑の大きな手がアイシェにそっと向けられたが、その手は消えて眩い光に包まれた直後…そこにはクラウンを被ったマホロアの姿が…

パリンッ…マスタークラウンは砕け、マホロアは光に吸い込まれていく…

アイシェ「マホロア、待って…行かないで!!」

しかし、アイシェの願いも伸ばした手も虚しく…マホロアは消滅してしまった…。

カービィ「マホロア!!」

アイシェ「うっ…あぁ…いや…いやあぁぁ…マホロア…マホロアぁ…!!」

その場に崩れ落ちて、両手で顔を覆うアイシェ…彼女の手の間から大粒の涙が零れ落ちて、キラキラと光りながら地面に消えて行く…

何も伝えられなかった、自分の気持ちも…こうなる事も…

全てが遅かった…彼を生きて救う事が出来なかった…

デデデ「アイシェ…!」

バンワド「そんな…こんなのって…!」

メタナイト「……………!」

泣き続けているアイシェの姿を見て、彼女のマホロアへの気持ちを察したメタナイトは俯き、何も言わずに自身の手を握り締めた。

しかし、カービィはゆっくりとアイシェに近づいて口を開いた

カービィ「アイシェ…マホロアはきっとどこかで生きてるよ。」

そう言って、カービィは泣いているアイシェの傍に行き背中を撫でると、彼女は漸く顔を上げた。

アイシェ「カー…ビ…ィ…!」

カービィ「どうしてかはボクにも分からないけど…でも強くそう感じるんだ。信じよう、いつか必ずマホロアは帰ってくるって!」

そう話すカービィの青い瞳は何も迷いがなく、アイシェも不思議とそう思えてきた

アイシェ「うっ…ん…カービィ…カービィ…!」

彼に倒れ込むように抱きついたアイシェを、カービィはしっかりと抱きしめたが…

ゴゴゴゴゴ…!!

アナザーディメンションが崩壊して周りの空間や足下が崩れていき、ポップスターへの空間も閉ざされようとしていた…

デデデ「このままじゃ全員ここに閉じ込められちまうぞ!」

困っていたカービィ達だったが…

後ろからローアとランディア達が現れ、カービィ達を乗せた!

カービィ「ランディア、無事だったんだね。」

ランディア「ギャア!」

カービィとアイシェを乗せたランディアが吠えると、ローアがエ厶ブレムから光を放ちポップスターへの空間を大きく開き、そのまま全員が入っていくと閉ざされた。

暖かい…草の良い香りがする…まるでこの世界に初めて来た時の様に…

カービィ「んっ…。」

蝶がカービィのお腹に止まり、目を覚まして起き上がると…バンワドとメタナイトも目を覚ました

そして傍に倒れていたアイシェも…

アイシェ「んっ…ここ…は…?」

メタナイト「ポップスターだ、無事に帰って来れた様だな。」

バンワド「よかった…って大王様は?」

そう言ってふと見ると…

デデデは頭から地面に埋まっていて…バタバタともがきながら頭を抜くと…

スポッ!頭に花が付いていて、そこに蝶が止まった。

デデデ「あ~酷ぇ目に遭ったぜ…。」

しかしその様子を見たカービィ達は…

カービィ「あははっ、デデデの頭に花が咲いた!」

バンワド「あははは、何やってんですか大王様~!」

メタナイト「はははっ!」

アイシェ「ふふっ!」

皆が笑っていると、上空を次々と影が横切り…見上げるとそこにはランディア達とローアの姿が…

ランディア達はカービィの方を見ると、開かれたディメンションホールへ次々と入っていき…ローアもそこに飛び込んで行ったが…

アイシェの頭の中に、優しい声が聞こえてきた…

マホロアは生きています…今すぐは無理ですが、いつの日か必ず彼は貴女の元へ戻ってくるでしょう。

アイシェ「(この声…もしかしてローアが…?)」

カービィ「またねランディア、ローア!」

自分にしか聞こえていなかった様で、カービィ達はランディアとローアの去った空に手を振っていた。

アイシェ「(マホロア…。)」

私、ずっと帰りを待ってるよ

帰ってきた時は、今度こそ私の気持ちを伝えさせて…

大好きだよ、マホロア

そう思いながら青空を見上げたアイシェの視線の先には、綺麗な虹がかかっていた。

To be continued…