小説「夢結ぶ星りんご」~朝の誘惑~

早朝、窓から差した朝陽でマホロアは目を覚ました

自分の腕の中にはアイシェが居て、自分を抱きしめながら規則正しい寝息を立てて眠っている。

マホロア「アイシェ、ありがトウ…。 」

彼女への感謝を口にして、マホロアはそっとアイシェの頭を撫でた

こうして寝顔を見ていると、ホワイトウェハースで雪だるまを作った後に、かまくらで吹雪を凌ぎながら眠ったあの時を思い出す

あの時は野望の為に動いていたが、今は彼女と共に生きて夢を叶える為に動いている…そして今のマホロアは、心が満たされていた。

しかし、ふと下を見ると…アイシェはケープを外していて、普段隠されている首回りや胸元が見えていて…

アイシェ「すぅ…すぅ…。」

全く起きる様子も無く眠り続けるアイシェだが、マホロアはじっと見ていて…

マホロア「(こんなに間近デじっくり見たのハ初めてダナァ……アァ…ムラムラして来ちゃッタ…。)」

目の前に大好きな恋人が居て、こんな無防備な姿で寝ているのを何も出来ずに眺めてるだけなのはマホロアにとって生殺しでしか無くて…

そっと彼女の腰を撫でて、抱き寄せてより密着してみると…

むにゅっ…

アイシェの柔らかい胸の膨らみがマホロアの体に密着して、柔らかい感触と共に形を変えて…それを見てしまったマホロアはゴクリッ…と生唾を飲んだ。

体はどんどん熱くなって息も荒くなり…下半身はもぞもぞとしてしまう…

頭では理性で抑えようとしていても、体は本能のままに彼女を求めてしまい…マホロアはアイシェを抱きしめておでこにキスをした。

アイシェ「んっ…。」

小さくも可愛い声が聞こえて、アイシェが目を覚ましたが…

マホロア「おはようアイシェ…ッ…!」

アイシェ「おはよう…マホロア…。」

寝起きでまだボーッとしているアイシェは、マホロアの興奮した様子にも全く気づいて無くて、青い瞳は彼のギラギラした黄色い瞳を映していて…あまりにも対象的だ

マホロア「ッ…アイシェ…アイシェ…!」

アイシェ「っ…!?」

マホロアはアイシェの上に覆い被さるとやや激しいキスをして、そのまま彼女の頬や首筋に唇を這わせていく。

マホロア「ハァ…アイシェ…大好きダヨ…ッ…!」

マホロアの唇に感じてしまったり、熱い吐息がかかって少しくすぐったい一方で、アイシェはマホロアの体をぐっと押して抵抗していて…

アイシェ「んっ…マホロア…朝からそんな…それにここは大王さまのお城…だよ…!」

マホロア「分かっテル…ケド…!」

アイシェ「はぁ…ん…マホロアぁ…!」

マホロア「アウゥ…アイシェ…ェ…我慢出来ない…ヨォ…!」

アイシェ「でも…でもここではダメ…!」

マホロア「ハァ…ハァ…生殺しダヨォ…!」

彼の茶色い耳がコテッと垂れ、黄色の瞳もまだギラギラしつつもしょんぼりとしてしまって…彼の下半身からは熱を感じて、こういう時はどうすればよかったんだろうとアイシェは少し戸惑っていた。

アイシェ「マホロア…とりあえず起きよう…?」

マホロア「ウッ…ウゥ…。」

息が荒いマホロアは渋々アイシェの上から退き、下半身に手を当てて背を向けてしまった

アイシェ「マホロア…?」

マホロア「ッ…ハァ…ハァ…フゥ…!」

パアァ…!!

体が少しブルッと震えたかと思うと、突然マホロアの体から小さな光が出てきて…そのまま彼の体に消えていった。

アイシェ「マホロア、今のは…?」

心配な表情のアイシェが訪ねるとマホロアは振り返ったが…先程の興奮した様子とは一転して、落ち着いた表情をしていた。

マホロア「性欲ヲ魔力に変えたんダヨ。」

アイシェ「そんな事が出来るの?」

マホロア「今まではずっとそうしてたんダ、ボクにとって性欲ハ不要だったカラネ。」

アイシェ「(…不要……。)」

それは即ち、誰ともそういう関係になった事が無いという証拠で…マホロアが今までずっと誰とも深い関わりを持たず孤独に生きてきた事への寂しさと同時に、その欲を今はこうして求めてくれるのも「自分が初めて」という事実に安心と満足してしまう自分もいて…

何てわがままな感情なんだろう…アイシェは自己嫌悪に陥り、俯いてマホロアのマントをぎゅっと掴んだ。

マホロア「…妬いてくれるのカイ?」

アイシェ「えっ?」

マホロア「ボクが誰かと関係を持っタ経験が無クテ、安心したんダヨネ?」

アイシェ「どうして…分かったの…?」

マホロア「ボクがコノ話をした後ニ、その反応だったカラネ。」

アイシェ「あっ……。」

幻滅されたかもしれない…そう思ったアイシェだが、マホロアの反応は全く正反対のもので…

マホロア「アイシェが妬いてくれるなんテ…チョー嬉しいヨォ!」

そう言ってマホロアはとても嬉しそうに、アイシェを抱きしめた

アイシェ「マホロア…嫌じゃないの…?」

マホロア「全然嫌じゃないヨ!」

アイシェ「どうして…?」

マホロア「アイシェはそれ程マデにボクが大好きってコトデショ?こんなに嬉しいコトは無いヨォ。」

アイシェ「マホロア…。」

嬉しそうにニコニコしているマホロアに、アイシェは拍子抜けしてキョトンとしてしまって…

マホロア「クククッ、な~んて顔してるんダイ?」

そう言ってちゅっと頬にキスをして、ベッドを先に降りてマントを手に取ったマホロアに対して

アイシェ「…マホロア、大好き。」

溢れてくる想いを抑えきれず、アイシェはマホロアに後ろから抱きついたが…

マホロア「アイシェ、抱きついてくれるのはチョー嬉しいケド……そろそろ起きて大王達に挨拶しなきゃダシ、ケープを羽織らないとネ。」

アイシェ「うん、そうだね。」

特に深く考えずに、椅子に掛けられていたケープを羽織りに行くアイシェだが…マホロアはそんな彼女を見て…

マホロア「(フゥ…アイシェの胸が当たって、またムラムラしかけチャッタヨォ……そういうトコ、ホント~に鈍いんダカラ…。)」

でも心は弾んでいて…これが惚れた弱みってやつなのかと思ったが、同時に独占欲の強いマホロアは心底満足していた

アイシェが「妬いてくれるくらい」自分だけに「恋人としての愛」が向いているという事が分かったのだから

アイシェ「はい、これで大丈夫。」

マホロア「(可愛いボクのお姫様、これからた〜っぷり時間をかけテ、モットモットボクに夢中にさせテやりたいネェ。)」

アイシェ「マホロア?」

マホロア「今行くヨォ。」

黒い思惑が湧き上がって思いっきり笑い出したくなるのを堪えながら、マホロアは黄色の瞳を弓形に細めて、マフラーの下で静かに笑ったのだった。

To be continued…