小説「夢結ぶ星りんご」~嵐は突然に~

マホロアが帰ってきて、早くも2週間が経過していた

かつて支配しようとしていたポップスターでの暮らしは快適で、ローアで読書する時もあれば日帰りで遠くの星にお買い物に行ったり、カービィ達と遊んだりアイシェとデートしたり…彼の日常は充実していた。

「ただ一つの誤算」を除けば…

その誤算とは、愛しのアイシェが一緒にローアで暮らしてくれない事である。

事あるごとに猛アタックしているのだが、肝心のアイシェは首を縦には振ってくれない…

この前その事をマルクに話したが…

マルク『お前が下心しか無いイカサマタマゴって分かってるから、自衛してるのサ。』

…その後はもちろん喧嘩になった。

マホロア「今思い出しテモ腹が立つヨォ、あのクソピエロ!」

いつかポップスターから追い出して、遠い銀河の果てにでも追放してやる…そんな恐ろしい事を考えながら、マホロアは今日も懲りずにアイシェを説得する為にカービィの家へ向かっていた。

すると彼の家の方角からキラキラした物が飛んで来て…その正体はワープスターに乗ったカービィだった

カービィ「あれ、マホロアー!」

マホロア「カービィ、どこかにお出かけカイ?」

カービィ「うん、海に釣りに行くんだー!アイシェにお魚を食べさせてあげるの!」

無邪気な笑顔で話すカービィに対して、表情こそ笑顔のマホロアだが、その腹の中は真っ黒で…

マホロア「チョー大きな魚が釣れるとイイネェ~!」

カービィ「うん、じゃあボク行くねー!」

マホロア「行ってらっシャーイ!」

満面の笑みでブンブン手を振るマホロアの心は弾んでいた

今、家にはアイシェのみ…自分が行けば2人っきり…きっと今日こそ首を縦に振ってくれるに違いない!

マホロアは急いで家に向かい、呼吸を整えるとドアをコンコンと叩いた。

アイシェ「はーい!」

中から可愛い声が聞こえ、アイシェが居る事は確定した。そうなればもう後は何も心配する必要は無い、マホロアは勢いよく扉を開けて入った!

マホロア「アイシェ~キミのマホロアダヨォ~!今日は天気がイイカラ、ボクとロー…」

そこまで言いかけてマホロアは気づいた…視線の先には掃除用具を持って笑顔で迎えてくれたアイシェと、もう1人の人物が居る事に。

アイシェ「いらっしゃいマホロア!」

マルク「先にお邪魔してるのサ~。」

マホロア「マルク、テメー何で居るんダヨ!」

一番会いたくない奴の顔を見てしまったマホロアは、眉間に皺を寄せてあからさまに嫌な顔をした

マルク「ボクはアイシェの友達なのサ、だから遊びに来たのサ。」

マホロア「フ〜ン、ご苦労様ダネェ~。」

マルク「…何が言いたいのサ?」

アイシェ「2人共、仲良くして…!」

困った様子で止めるアイシェだが、2人はバチバチと火花を散らしていて…

マホロア「クククッ…キミはホント~に馬鹿だカラ教えてヤルヨ、ボクとアイシェは友達なんかの関係じゃ無クテ「恋人」ダヨォ?」

若干眉間に皺を寄せ、呆れた表情でハァ〜とわざとらしく盛大な溜息を吐くマホロアは、完全にマルクを馬鹿にしきっている

マルク「馬鹿は余計だろ!そんな事分かってるのサ!」

マホロア「馬鹿じゃないナラ、ボクとアイシェの2人きりの時間を邪魔しない様に、サッサと帰ってヨネ!」

そう言ってシッシッと手を振るマホロアにマルクはカチンと来て…

マルク「そもそもボクが先にアイシェと出会って、友達になったのサ。」

マホロア「順番なんテ関係無いヨォ~、現にこうしてアイシェと恋人同士なんだカラ。」

マルク「どーせ2人きりだったらすぐに手を出すんだろ!」

マホロア「ボクはこう見えて紳士ナノ、すぐに手を出すワケ無いダロ。」

アイシェ「(マホロアの嘘吐き…。)」

マルク「無害そうに見えて腹の中で色々と企んでる所は相変わらずだな、腹黒魔術師!」

マホロア「エ、何のコトカナ〜ボクさっぱり分かんないヨォ?コレも嘘吐き道化師の戯言カイ?」

アイシェ「2人共、喧嘩しないで!」

さっきよりちょっと強めに言うと、漸く2人は喧嘩を止めた。

マホロア「ところでアイシェ、その服はどうしたノ?」

今日のアイシェはいつものドレス姿では無くて、首元に細くて小さな青いリボンが付いた白いノースリーブシャツにホライゾンブルーのフレアスカート姿で、膝より少し上な丈のスカートからは彼女の綺麗な脚が見える

長い銀髪も今日はツインテールにしていて、いつも以上に可愛さが引き立っていた。

アイシェ「ふふっ、大王さまがプレゼントしてくれたの!」

デデデ大王が自身のガウンを作っている職人に頼んでくれたらしく、他にも何着か服を作って貰っている事を嬉しそうに話してくれる

清楚で可愛らしい彼女によく似合っている、マホロアは心からそう思った。

マホロア「アイシェによく似合ってるヨォ~、髪型もチョー可愛いネ!」

アイシェ「えへへ、ありがとうマホロア。」

頬を赤く染めて喜ぶアイシェに、マホロアは「恋人である自分だけの特権」だと優越感を得たが、マルクは少しだけ気に入らない様子でアイシェの方を向いて口を開いた

マルク「アイシェ、掃除はいつ終わるのサ?」

アイシェ「もう少しで終わるよ、後は窓を拭いてカーテンレールを綺麗にするだけ。」

マホロア「手伝おうカ?」

アイシェ「ううん、すぐ終わるから平気だよ。マルクもマホロアも喧嘩はダメだからね!」

マルク「分かったのサ。」

マホロア「約束するヨォ。」

アイシェ「終わったら、新しいりんごのお菓子作ってあげるね。」

マホロア「ワォ、楽しみダネェ~!」

マルク「大人しく待ってるから、さっさと終わらしてちょーよ!」

アイシェ「ふふっ、うん。」

優しく笑うとアイシェは掃除を再開し、マホロアとマルクはそれぞれ本棚から本を取り出して読み始めた。

その後、アイシェは窓を拭き終わってベッドに乗ったが…カーテンレールにハタキがギリギリ届くくらいで苦戦している様子だ

それを見たマホロアは…

マホロア「アイシェ、コレなら届くヨ。」

ふわっ…マホロアが魔法でアイシェを浮き上がらせてくれた。

アイシェ「ありがとうマホロア、すごく掃除しやすいよ!」

喜ぶアイシェにニコニコしながら手を振っていたが…マホロアは気づいてしまった

本を読むフリをしつつ、ゆっくりと近づいて…コテッとベッドの近くに寝転がると、彼の予想通りアイシェのスカートの中が思いっきり見える。

マホロア「(予想通りダヨォ、コレはお手伝いしたボクへの最高のご褒美ダネェ!)」

アイシェ「わっ…埃がすごい…ケホッケホッ!」

全く気づかないアイシェは掃除を続けていて…

マホロア「(薄い水色で左右に白いリボンが付いてるネェ…下着もボク好みだなんテ、ブラボーダヨォ!)」

しかし、この状況を楽しんでいるのはマホロアだけでは無かった…

マルク「(白のリボン付きかぁ…おっほっほっほっ、見れて超ラッキーなのサ!)」

何とマルクも同じ事を思いつき、うつ伏せで本を読むフリをしながらアイシェのスカートの中を覗いていたのだ!

喜ぶ2人…マホロアはクックと笑い、マルクもキシシと笑った所で…お互いに覗いていた事に気づいた!

マホロア「マルク、テメー見てんじゃネーヨ!!」

マルク「お前こそ見るんじゃないのサ!!」

アイシェ「マホロア、マルク!?」

大人しく本を読んでいたはずなのに、突然再発した喧嘩にアイシェは驚いてしまった!

マホロア「ボクはアイシェの恋人だカラいいんダヨ!」

マルク「うるせーよエロロア!」

マホロア「何ダヨその名前ハ!?」

マルク「ドスケベなお前にピッタリなのサ!」

アイシェ「えっ……きゃあっ!」

そこで漸く気づいたアイシェは、膝を曲げてスカートを押さえた!

マホロア「マルクだって見てたダロ、このドスケベクソピエロ!」

マルク「お前にだけは言われたくないのサ!」

マホロア「それはコッチのセリフダヨ!」

アイシェ「やめて…喧嘩しないって約束したでしょ!」

そんなアイシェの制止も虚しく、マホロアとマルクは喧嘩を始めてしまったのだった…。

To be continued…