小説「夢結ぶ星りんご」~勘違いにご用心~

シャワーを浴び終えて、マホロアと共にご飯を食べた後に家まで送ってもらったアイシェは、カービィに彼と暮らす事を伝えた。

カービィ「そっか、アイシェの中で決心がついたんだね。」

アイシェ「うん。」

カービィ「いつ頃ローアに行くの?」

アイシェ「マホロアと話し合って、1週間後に決めたよ。」

カービィ「1週間後かぁ…一人暮らしで寂しくなっちゃうけど、いつでも会いに行くよ。」

アイシェ「今まで本当にありがとうカービィ、これからもよろしくね。」

カービィ「うん、ボクの方こそよろしくね。」

そう話す2人は、お互いに満面の笑顔で…その日から少しずつ荷造りを始めた。

翌日…カービィが散歩に行ってる中、家で荷造りを進めるアイシェだったが…

マルク「アイシェ~遊びに来たのサ…って何してるのサ?」

アイシェ「あ、いらっしゃいマルク。ローアでマホロアと一緒に暮らす事になったから荷造りしてるの。」

それを聞いたマルクは、紫の瞳を小さくすると驚いた顔をして…

マルク「マホロアと暮らすとか、正気なのサ!?」

アイシェ「そこまで驚かなくても…。」

マルク「ボクはオススメしないのサ…だってアイツ、虚言の魔術師だぞ?」

アイシェ「でも、今はもう悪い事はしてないよ。」

マルク「今は…な、アイツ結構ムッツリだしすぐ手出しそうだし、嫉妬で狂ったら何しでかすか分からないのサ。」

アイシェ「えぇ…!?」

マルク「暮らした初日から、手を出されるかもしれないぜ?」

そう言われた瞬間、ローアでの出来事を思い出して…アイシェの頬は真っ赤に染まった。

アイシェ「…気をつけるよ。」

もう既に手遅れだったが、マルクに悟られるのも恥ずかしい…アイシェは何とか言葉を絞り出して、その場を乗り切った。

しかしマルクは退屈な様子で、ちょこちょこアイシェにちょっかいを出してくる…

マルク「荷造りなんて一旦止めて、一緒に遊ぶのサ!」

アイシェ「でも1週間後にはローアに行くし、少しでも進めないと…。」

マルク「遊んでくれないなら、イタズラするのサ?」

そう言ってマルクはニヤッと笑うと翼を出して、鋭い鉤爪でアイシェの背中を優しくつつつーっとなぞった。

アイシェ「ひゃあっ!?」

ゾクゾクゾクッ…何とも言えないくすぐったさがアイシェを襲い、ビクッと敏感に反応した。

マルク「キシシッ、いい反応するのサ!」

イタズラ好きなマルクにとってアイシェの反応は想像以上で、ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら今度はアイシェの脇腹をくすぐり始めた!

アイシェ「ひゃっ…あはははは…っ…ダメ…マルクっ…!」

マルク「何がダメなのサ~?」

アイシェ「そこは…くすぐったいからぁ…!」

体を捩らせて抵抗するアイシェだが、その反応はマルクを更に楽しませるという逆効果になってしまい…

マルク「じゃあ、もっとくすぐってやるのサ!」

アイシェ「あはははは…ダメ…だってばぁ…あははっ!」

頬を真っ赤にして涙を流しながら笑うアイシェに対し、マルクは意地悪な笑みを浮かべたままくすぐり続けている

同じ頃、マホロアはアイシェの荷物を運ぶ為にカービィの家へ向かっていた。

マホロア「少しでも運んで、アイシェがスムーズに来れる様にしないトネ。」

雲の夢を口ずさみながらご機嫌で向かうマホロアだったが、いざカービィの家の前に行くと…

アイシェ「はぁ…はぁ…もうダメぇ…!」

何やら息が荒い、もしかして何かあったのか!?

マホロア「アイシェ、どうしたノ!?」

驚いたマホロアが勢いよく扉を開けると…

アイシェ「マホ…ロア…。」

そこには頬を真っ赤に染め、息を切らして自分を見るアイシェと…彼女の上に跨がるマルクの姿!

マホロア「………………。」

目の前の光景に、マホロアの思考は止まった。

まず、どうしてマルクがここに居るのか?

そして、どういう状況でこうなっているのか?

何故アイシェは頬を赤らめて、息を切らしているのか?

……………つまり、マルクがアイシェを押し倒して襲っていた?

マルク「チッ、もっと続けようと思ったのに…。」

舌打ちをしながらマルクがそう言った瞬間…

ブツッ…マホロアの何かが切れる音がした。

マホロア「…今、ココで消してヤルヨ。」

いつもとは明らかに違う、低くて禍々しい声でそう言うと…

ブワッ!

マホロアの体が禍々しい光に包まれて、周りには大きな魔法陣が出現した!

アイシェ「マホロア…何…するの…!?」

まだ息を切らしているアイシェが驚いて聞くと、マホロアはマルクの方を見ながら口を開いた。

マホロア「ボクの全魔力を注いで、このクソピエロを消し炭にするンダ。」

マルク「ちょ…どうしてそうなるのサ!?」

マホロア「この後に及んで白を切るナンテ、その帽子と一緒でどこまデモ頭がお花畑なんダネェ。」

そう言われて、マルクは漸く状況を理解してハッとした!

マルク「お前、勘違いしてるのサ!別に押し倒してた訳じゃないのサ!」

マホロア「言い訳ナンテ聞きたく無いネ、耳障りダヨ…何なら目障りデモあるカラ今すぐ消エロ。」

マルク「おまっ…あんまりなのサ!」

アイシェ「マホロア、本当に違うの…!」

マホロア「アイシェ、このクソピエロを消しタラ…ボクとすぐにローアへ行くヨ。そしてモウ一度キミの体に、ボクの愛をた~っぷり教えてアゲルヨォ。」

マルク「えっ何…もうそこまで進んでたのサ!?」

アイシェ「…………!!」

突然の爆弾発言にマルクは驚き、アイシェの頬も再び真っ赤に染まったが…楽しそうに言うマホロア自身の黄色い瞳は全く笑っていなくて…

今の彼の瞳に宿っているのは、マルクに対する「殺意」のみ…

嫉妬に狂うとここまで恐ろしくなる…2人はマホロアの様子を見てそう感じ、背筋が凍り付いた…。

マホロア「ボクの恋人に手を出したのが運の尽きダネ、せいぜい地獄で頑張るとイイヨォ。」

マルク「地獄行き確定かよ!?」

マホロア「天国に行けるワケネーダロ。」

ビキビキビキ…マホロアの両手から大きな魔力球が作られ始めたその時!

アイシェ「くすぐられてたの…!」

マホロア「…くすぐられテタ?」

彼の動きがピタッと止まって魔力球が消え、魔法陣も薄くなっていく…

アイシェ「荷造りしてたら、マルクがイタズラしてきて…くすぐられて抵抗してたらこんな事に…。」

マホロア「…ナ~ンダ、それナラそうと言ってヨォ!」

ハァ~と盛大に溜息を吐いて、マホロアは魔法陣を消した。

マルク「…悪かったのサ。(はぁぁぁぁ~~~命拾いした…勘違いで殺される所だったのサ!)」

命拾いをしたマルクはアイシェからそっと離れて、彼女の手を取って起こした。

アイシェ「ありがとうマルク…そしてマホロア、誤解を招いてごめんなさい…。」

マホロア「アイシェは悪く無いヨ、全部マルクのせいダカラネッ!」

そう言ってジト目で見るマホロアに、マルクはバツの悪そうな表情をしていて…事実だから何も言い返せずにいた。

アイシェ「ところで、マホロアはどうしてここに?」

マホロア「キミの荷物を取りに来たんダヨ、少しデモ運んでおけばスムーズに来れるデショ?」

アイシェ「マホロア…ありがとう。」

マホロア「どういたしましテ、とりあえずコレを運べばいいのカナ?」

アイシェ「うん、残りはまた後でするよ。」

マルク「じゃあ………ボクは帰るのサッ!」

アイシェ「あ、マルク!」

そう言い残して、マルクは逃げる様に外に飛び出してそのまま飛び去ってしまった…。

マホロア「マルクにしては気が利くジャン。」

アイシェ「え、どういう…」

そこまで言ってアイシェは気づいた!マルクが逃げてしまったので、今は2人きり…

マホロア「荷物を運ぶ前に、チョットダケ…ネェ?」

アイシェ「ま…マホロア…!」

マホロア「ボクとイチャイチャしようヨォ~!」

満面の笑顔で迫ってきたマホロアは、そのままアイシェを押し倒して…しばらくその場で抱きしめたりキスをしたりしながら、2人だけの時間を満喫したのだった。

To be continued…