小説「孤独なヒーローと瞳に映る2つの光」~新たな舞台と新たな任務~

タキの記憶が戻り、平穏な日々を取り戻してから2年の月日が流れ…みんなはそれぞれの日常を過ごしつつ、お互いの時間も大切にしていた。

少し変わった事と言えば…2年前と比べて体つきが成長したことと、まめおとタキ、ペコ、フーは髪型が変わった事だろうか。

そして…最近のイカ達の間で持ちきりな話題、それは

【新しいナワバリの舞台】である。

何でも、最近ハイカラシティの2つ隣の駅の近くにある街「ハイカラスクエア」で新しいナワバリバトルのステージが用意されており、もうすぐオープンするのだとか。

後日、みんなでその場所を見に行く約束をした帰り道で…まめみはタキにこう切り出した。

まめみ「ねぇタキ君…新しい舞台でも、あたし達ずっと一緒にナワバリ出来るかな。」

タキ「もちろんだよ、どんなステージがあるか楽しみだね。」

まめみ「うん。」

嬉しそうに笑いながらお互いの握る手に力を込める2人。

すると、今度はタキがこう切り出した。

タキ「ねぇまめみ、久しぶりに2人でプラベしようか?」

まめみ「うん、いいね!」

タキ「今日は…ブキを使って追いかけっこしてみようか。」

まめみ「ブキを使って…どうやるの?」

タキ「ホッケふ頭で、まめみがパブロで逃げ回るのを、俺が追いかけるの。進路を塞ぐ手としてボールドマーカーのサブ、ビーコンを置くのもいいね。」

まめみ「面白そう!」

タキ「よし、決まりだね!」

2人はロビーに入り準備を始めた。

まめみはパブロで素早く逃げ回り、タキはそれを捜しながら…時には鉢合わせして驚きつつも楽しんだ。

タキの提案したビーコンは進路を塞ぐのにピッタリで、さらに楽しみは増した。

しかし…だんだんやっていく内に…まめみに変化が現れた。

本人の無自覚の内に例の力…ブキとシンクロする力が発動してしまったようで…。

まめみ「…っ…!」

パブロ「(まめみ!)」

ドサッ

タキ「まめみ!?まめみ!!」

まめみは試合後に気を失ってしまった。

一時的に黄色に変化していた髪も…タキが抱き抱えて家に着いた頃には桃色に戻っていた。

しばらくして…

まめみ「ん……。」

タキ「まめみ!」

まめみ「タキ君…あたし…。」

タキ「力を使いすぎだよ、まめみ…。」

まめみ「あっ……。」

タキ「無理しないでって言ってるのに…どうして…!」

まめみ「……大丈夫だよ、タキ君…あたしは大丈夫、まだまだやりたいの…」

そう言って起き上がろうとしたまめみだったが…タキはまめみをぎゅっと強く抱きしめた。

タキ「俺はまめみを失いたくないんだ!まめみはその力の影響で前よりもほんの少しだけ体が弱い…ナワバリに行くのはいいけど無理だけはしないで、まめみにもしもの事があったら俺は…!」

そう話すタキは震えていて…まめみを抱きしめる腕に更に力が入る。

まめみ「ありがとう…無理はしないよ、約束する。」

タキ「まめみ…。」

まめみ「大好きだよ…タキ君。」

タキ「俺も…大好きだよ、まめみ。」

そう言うと2人は指を絡めて…優しいキスをした。

まめみ「…タキ君、この力が発動しちゃった次の日はナワバリに行けないけど…その代わりに、これをタキ君に預けるね。」

そう言ってまめみは起き上がり、首からかけているクローバーペンダントをタキに渡した。

これは、2年前にタキがまめみにプレゼントした四つ葉のクローバーのペンダント…その後事故に遭い、そのせいで葉は一枚欠けて今は三つ葉になっていた。

タキ「まめみ…。」

まめみ「…あたしは、あたしの気持ちはいつもタキ君と一緒だよ。そのペンダントに…あたしの想いを込めたから。」

タキ「ありがとう、まめみ。」

優しく笑うまめみを見て、タキもまた、優しく笑った。

そしてもう一度キスをすると…ペンダントを首にかけた。

少し短かった為…後に紐の部分だけ変えたが、タキはそれ以来ペンダントを肌身離さず常に首からかけている。

一方まめみも…タキから預かった紐で新たなペンダントをかけていた。

それは欠けた最後の一枚の葉をペンダントにしたもので、黄緑色のハートの様だった。

後日、フーが休みのタイミングでみんなはハイカラスクエアに向かった。

ロビーも完成して骨組みの撤去が始まっており、1週間後にはオープンするとの事だった。

まめお「楽しみだなー!」

タキ「新しいブキ種『マニューバー』も出たし、早く試したい!」

まめみ「ステージはどれくらいの種類があるのかな?1週間後が待ちきれない!」

みんなそれぞれオープンを楽しみにしつつ、その場を後にした。

その帰り道で電車を待っていると…

ブルルッ…マナーモードにしていたタキのイカスマホのバイブが…

一体誰が…?不思議に思ったタキはまめみ達から少し離れて、ズボンのポケットに入れていたイカスマホを取った。

すると…

タキ「………………!!」

驚いて目を見開いたタキ。

画面に出ていた人物の名前は…

『アタリメ司令』

ドクン…ドクン…タキの胸の鼓動が速くなり、うるさくて聞こえてしまうのではと思うくらいだ。

タキは少し汗ばんだ手で、通話のボタンを押した。

アタリメ「おぉ…久しぶりじゃな3号!」

タキ「……お久しぶりです…アタリメ司令…。」

アタリメ「ワシがオヌシにこうして電話をかけたのには理由があるんじゃ…。」

タキ「…はい…。……まさか…奴らがまた……?」

アタリメ「いや…今回はある岬の調査に行くんじゃが…それに一緒に来て欲しいんじゃ。」

タキ「………1号と2号は…?」

アタリメ「知っての通り、2人は忙しくてのぅ…オヌシにしか頼めないのじゃ。…出発は明日の朝8時、頼んだぞ3号…2年前に皆を救ったヒーローよ!」

プツッ…ツー…ツー…

そう言うとアタリメ司令は電話を切ってしまった。

タキはその場で少しだけ俯き、ターコイズブルーの瞳を静かに伏せ、誰にも聞こえないくらい小さな声で…静かにこう呟いた。

タキ「ヒーローは昔の話…もうやめたんだ。」

テン、テテン……

まめみ「タキ君、電車来たよー!」

タキ「…うん、今行くよ!」

ハイカラ節のホームメロディが流れて、電車が駅に着いた。

タキはモヤモヤしつつもまめみ達と電車に乗り、ハイカラシティへ戻った。

フー「それじゃあな。1週間後は夜勤明けだから、そのまま見に行けると思う。」

スー「じゃあね。」

ペコ「また当日にね。」

まめお「おう、またな。」

まめみ「またねー!」

みんなそれぞれ帰って行き、その場にはタキとまめお、まめみの3人が残った。

まめお「1週間後、楽しみだな!」

タキ「……………。」

まめみ「タキ君?」

タキ「…あ、あぁ…うん、そうだね!」

まめみ「大丈夫?何だか顔色が悪いよ。」

タキ「…ちょっと疲れたみたい、ごめん…今日はこのまま帰るよ。」

まめみ「分かった、気を付けてね。」

まめお「ゆっくり休めよ、タキ。」

タキ「うん…ありがとう。」

そう言うとタキはゆっくりと歩き出し、まめおとまめみも家に向かって歩き出したが…

まめみ「わぁ、このぬいぐるみ可愛い!」

歩いているタキの後ろから、まめみの声が聞こえてきた。

振り返ってみると、まめみが大きなぬいぐるみの抱き枕を抱き上げていた。

薄いピンクの体に長い手…長い耳…可愛らしい顔のぬいぐるみ。

タグにはどうやら「うさぎ」と書いてあるらしい。

まめお「そうかぁ~?俺には可愛く見えねぇけど…。」

まめみ「え~可愛いよー!えっと、お財布は…。」

すっかり気に入ったまめみは財布を取り出したが…

まめお「おい、足りねぇぞ…。」

まめみ「あらら、本当だ…しょうがないから明日また買いに来ようっと。」

そう言うとまめみはぬいぐるみを戻した。

まめお「帰るぞまめみ。」

まめみ「待ってよ~!明日お迎えに来るから待っててね。」

ぬいぐるみにそう言い残すと、まめみはまめおを追いかけて帰って行った。

タキは引き返しそのお店へ…

そして、まめみの見ていたぬいぐるみを抱き上げた。

ふかふかで柔らかく、良い夢が見られそうだ。

タキはぬいぐるみを購入して、プレゼント用のラッピングをしてもらった後に家へ戻った。

次の日の朝…

タキはヒーローヘッズ、ヒーロージャケット、今回はヒーローキックスでは無くシーホースHIゴールドに身を包み…上からF-190を羽織った。

2年前…まめみ、まめおと3人で買ったお揃いのF-190は、タキにとっても大切な宝物の1つ。

少し古くなり、2年前より成長した今では前のチャックを閉める事は出来なくなっていた。

アタリメ指令官の元へ向かう30分前に、タキは家を出た。

その手には昨日買ったプレゼントの袋が…。

まだ誰も起きていない静かなハイカラシティを眺めつつタキはまめおとまめみの家へ向かい、合い鍵でそっと家に入りまだ寝ているまめみの部屋へ…

まめみ「すー…すー…。」

タキ「…………。」

何も気づかないまめみは、安心しきった表情で眠っている

タキはそっとまめみの机の傍にプレゼントを置き、そのまま部屋を出ようとしたが…

まめみ「ん…タキ…く…ん…。」

タキ「(まめみ!?)」

起こしてしまったのか!?焦って振り向いたタキだったが、まめみはぐっすりと眠っている…どうやら寝言だったようだ

しかし、その口元はうっすら笑っていて…

まめみ「タキ…くん…だい…す…き……。」

タキ「……………!!」

まめみ…俺は…俺は…!

タキはまめみの元へ行き…そっとまめみにキスをした。

調査はいつ終わるのか…1週間後に間に合うかも分からない…

けれど…ヒーロー3号である事を明かしてはいけない…

すごく心配をかけてしまうだろう…それが申し訳無い…

けど…必ず…必ず無事に帰ってくるから…!

強い決意を秘めたタキは、まめみへのキスを止めて彼女の頬を優しく撫でた。

まめみ「すー…すー…。」

タキ「まめみ…行ってくるよ。」

小声でそっと呟くと…タキは部屋を出て、そっと家を後にした…。

そして…ハイカラシティのマンホールに入り…

次に目を開いた時は、2年前に激しい戦いを繰り広げた戦場…タコツボバレーに居た。

アタリメ「おぉ…相変わらず早いのう、3号…。」

タキ「…New!カラストンビ部隊…ヒーロー3号、参りました!」

そう言うとタキはアタリメ司令に敬礼をした。

アタリメ「では3号よ…任務を開始するぞ。」

タキ「はい。」

同じ頃…まめみが目を覚ました。

ふあぁとあくびをしながら伸びをして…ふと机の方を見ると…

まめみ「あれ…プレゼント…?」

一体誰が…?

不思議に思いつつラッピングを外してそっと開けて見ると…

そこに入っていたのは、昨日欲しがっていたうさぎのぬいぐるみ抱き枕。

驚いて目を見開くまめみだったが…そこからハラリとメッセージカードが落ちた…。

そこにかかれていたのは…

まめみ

Present for you

byタキ

タキからのプレゼント…それだけでまめみの心は暖かくなり、その表情はとても嬉しそうで、頬はほんのり赤く染まるのだった。

To be continued…