勝手に弄るのも悪いと思いつつ、アイシェはピアノを弾き始めた
脳裏に浮かんだメロディーは「雲の夢」、生前のアイシェが一番好きだった曲だ
カービィのゲームの世界観だけでなく音楽も大好きだったアイシェは、よくサウンドルームで聞いていたのも覚えていて…
ピアノは透き通った美しい音色を奏でて部屋に響き、アイシェは聞きながら歌い始めた。
一方のマホロアは作業を続けていたが、部屋の方から聞こえてくるピアノの音に気がついた。
マホロア「コノ音色は…。」
手にスパナを持ったまま、フラフラと引き寄せられる様にマホロアが部屋へ入ると、視線の先ではアイシェが夢中でピアノを弾きながら歌っていた。
その姿は綺麗で、マホロアは思わず息を飲んで見惚れていたが…視線に気がついてアイシェは演奏を止めた。
アイシェ「あ、マホロア…。」
マホロア「…そのピアノが気に入ったカイ?」
アイシェ「うん、えっと…勝手に触ってごめんなさい…。」
マホロア「ウウン、キミならいいヨ。トコロでさっきの曲は何て言うノ?」
アイシェ「これは「雲の夢」っていう名前だよ、私が一番好きな曲なの。」
マホロア「雲の夢…聞いたコトが無いネェ、デモ…すごく綺麗で落ち着く良い曲だと思うヨ。」
アイシェ「マホロアも気に入ってくれたみたいでよかった。」
そう言って優しい笑みを浮かべるアイシェに、マホロアは思わずドキッとしてしまった。
マホロア「アイシェが良ければ、好きなダケ弾きながら歌っテいいヨ。」
アイシェ「ほんと?」
マホロア「ウン。」
アイシェ「ありがとうマホロア!」
そう言って嬉しそうに笑うアイシェに、マホロアもつられて優しい笑みを浮かべ…
それ以来、マホロアは作業をしながらアイシェのピアノの演奏に耳を傾けるのが密かな楽しみになったのだった。
そしてカービィ達もまた、アイシェのピアノを聞きながら僅かな休息を取る様になっていて…この日はレーズンルインズに落ちていたローアの右ウィングを持ち帰ってきて、次のパーツが落ちているオニオンオーシャンへ向かう前に休憩していた。
デデデ「アイシェのピアノは気持ちが落ち着くな。」
アイシェ「ふふっ、ありがとう大王さま。」
メタナイト「他にもお気に入りの曲はあるのか?」
アイシェ「うん、この曲もお気に入りだよ。」
そう言って今度はレインボーリゾートの曲を演奏すると、目を瞑って聴き入っていた。
バンワド「アイシェは色んな曲を知ってるね。」
カービィ「こうやって歌や曲を聴いてると、ボクも歌いたくなってきたよ!」
その一言に、マホロアを除く全員の表情が一瞬で凍り付いた!
デデデ「おい、やめろ馬鹿!」
メタナイト「今は歌うな!」
カービィ「え~何で!?」
バンワド「今ここで歌われたらボク達が大変な事になっちゃうよ!」
アイシェ「せめて外なら……ううん、また別の機会にお願い!」
しかし事情を全く知らないマホロアは暢気で…
マホロア「せっかく歌っテくれるんだカラ、ミンナデ聴こうヨ。」
デデデ「お前はアイツの歌を知らないから…!」
マホロア「どういうコトなんダイ?」
デデデ「いいか、アイツの歌は壊…」
カービィ「それじゃあ行っくよーー!」
デデデがそこまで言った所で、意気揚々とどこからかマイクを取り出したカービィ!
バンワド「あぁ…神様…!」
メタナイト「すぐに耳を押さえるんだ!」
マホロア「エ、一体どういう意味…」
状況を飲み込めないマホロアが疑問を口にしたのが最後…
カービィの歌声がローア中に響き渡った!!
ビリビリと体中を襲う電流の様な衝撃波、鼓膜が破れるんじゃ無いかと思う程の酷い歌声…
傍で耳を押さえてしゃがみ込んでいるアイシェ…その姿を見届けて、マホロアの意識は途絶えた。
どれくらい時間が経っただろうか…
ロア…マホロア…
アイシェ「マホロア。」
目を開けるとソファに居て、アイシェの顔が目の前にあった。
マホロア「アイシェ…ボクどうしたんダッケ…?」
アイシェ「カービィの歌を聴いて、そのまま気絶しちゃったの。」
マホロア「歌…そうダ…何ナノあの酷い歌…イヤ、歌ですら無いヨォ…!」
アイシェ「カービィは酷い音痴なの、本人は自覚してないからあんな風に歌っちゃうんだけどね…。」
マホロア「ウゥ…酷い目に遭ったヨォ…。」
アイシェ「お水飲む?」
マホロア「ン…そうダネ、お願いするヨ。」
アイシェ「分かった、ちょっと待っててね。」
そう言うとアイシェはキッチンへ向かい、マホロアはソファに横になったまま辺りを見渡した
マホロア「(確か歌ヲ聴かされたのハ朝、今は午後くらいカ…随分長い間気を失ってイタんダナ…。)」
アイシェ「はい、お水だよ。」
マホロア「ありがトウ。」
アイシェ「どういたしまして。」
マホロア「ハァ…今日ハ作業出来そうな気分じゃナイ…そうダ!」
アイシェ「どうしたの?」
マホロア「気分転換ニ、海でも見に行こうヨ。」
アイシェ「海?」
マホロア「カービィ達は今オニオンオーシャンに居るカラ、ドコか違う海の方が良さそうダネ。」
アイシェ「それなら、リップルフィールドならどうかな。」
マホロア「そういう名前の場所があるんダネ、ドレ…。」
パネルで操作した後にローアの大きなスクリーンに場所が映し出され、マホロアは出かける準備を整えるとアイシェと共に外に出た。
To be continued…