マホロアが目を覚ますと、外は晴れて夕陽が差していた
腕の中ではアイシェがぐっすり眠っていて…マホロアは彼女の寝顔をじっと見た
マホロア「(可愛いナァ……目的ダケじゃなくテ、アイシェをボクだけのモノにする為にも「アレ」を早く入手しないトネ。)」
腹の中で渦巻く真っ黒な感情を現すかの様に声を押し殺して笑うマホロア、するとアイシェがもぞもぞと動いて目を覚ました
アイシェ「マホロア…。」
マホロア「吹雪は止んダヨ、今の内に帰ろウ。」
アイシェ「うん。」
作ったかまくらや雪だるまとの別れを惜しみつつ、2人はホワイトウェハースを後にしてローアに帰還した。
それからもカービィ達が冒険を進める中、マホロアもローアの修理を進めながらアイシェとの時間を満喫し、2人でお散歩したりお茶したりと充実した日々を過ごした。
数日後、カービィ達がホワイトウェハースからローアのパーツであるエムブレムを持ち帰り、最後のパーツが落ちているナッツヌーンへ向かう事になった。
マホロア「次の場所だケド、とても強力なエネルギーを感じるヨ。」
メタナイト「強力なエネルギー?」
バンワド「ローアのパーツの事?」
マホロア「ウン、その影響デ巨大なディメンションホールが開いテ、ナッツヌーンの上空全体が歪み始めてるヨォ…。」
デデデ「なら、より気を引き締めて行かねぇとな。」
カービィ「このパーツを取り戻せば、ローアが元通りになるんだね。」
マホロア「ウン、そしたらコノ船でボクの故郷に連れてってアゲルネ。」
カービィ「マホロアの故郷かぁ~楽しみだよ!」
マホロア「長い旅になったケド、この星に来てキミ達とも仲良くなれテ…ホント~に感謝の気持ちでいっぱいダヨォ!」
カービィ「故郷に帰っても、またここに遊びに来てくれる?」
マホロア「もちろんダヨ!親切なキミと友達になれた…この出会いはきっと神様カラの贈り物ダネ。」
カービィ「えへへ、そこまで言われると照れちゃうけど…ボクもマホロアと友達になれてよかった!」
アイシェ「……………。」
そんな話をして盛り上がるカービィ達だったが、アイシェだけは浮かない顔をしていて…
マホロアの故郷…それはとても「故郷」とは言い難い場所で…その後は……
シェ…アイシェ…!
マホロア「アイシェ、大丈夫カイ?」
アイシェ「マホ…ロア…!」
考え込んでいたアイシェはマホロアの声で現実に引き戻され、そこには心配そうに自分を見る彼とカービィ達が居た。
カービィ「何か考え込んでる様子だったけど、どうしたの?」
アイシェ「ううん、大丈夫…ちょっと疲れちゃったみたいだから部屋で休むね。」
そう言ってアイシェはその場から逃げる様に部屋へ戻り、ベッドにそのままダイブした
その後カービィ達はナッツヌーンへ出発し、マホロアが部屋へ入って来て…
マホロア「アイシェ。」
アイシェ「マホロア…。」
マホロア「何か悩み事カイ?」
アイシェ「…マホロア…もし……もし自分がいけない事をしていたら…どうする?」
マホロア「いけない事カイ?」
アイシェ「うん…。」
マホロア「ボクがいけない事をしタラ、その時ハ…アイシェに止めて貰おうカナ。」
アイシェ「私に?」
マホロア「例えボクが何かしちゃったとしテモ、キミの言葉ならきっと届くと思うヨォ!」
目を弓なりに細めてゴマすりをしながら笑うマホロアに、アイシェは何だかおかしくなってしまって…つられて笑ってしまった。
アイシェ「ふふっ…うん、その時は止めるね。」
マホロア「約束ダヨ。」
アイシェ「うん。」
一見穏やかな会話だが、マホロアは内心引っかかる事があった…
前からそうだが、アイシェは何かを隠している…しかしそれが何かまでは分からない。けど「アレ」さえ手に入れてしまえばきっとそれも気にならなくなる、アイシェも自分のモノに…笑い出したくなる自分を抑え、マホロアは彼女との会話に専念した。
一方、カービィ達はナッツヌーンをどんどん上に進んでいた。
カービィ「マホロアが言ってた上空の歪み、上に進むに連れて強く感じる様になってきたね…!」
メタナイト「1つのパーツだけでここまで強い影響があるとはな…もし悪用されていたら、大変な事になっていただろう。」
デデデ「持ち主がマホロアでよかったな。」
カービィ「うん、だってマホロアは優しい心の持ち主だもん!」
満面の笑顔で話すカービィだが、バンワドは1人難しい顔をしていた…。
バンワド「(アイシェ…何か悩んでる様に見えたけど大丈夫かな…。)」
夢の泉で初めて出会った時から可愛いと思っていた女の子…友達になり、一緒に過ごす内に自然と惹かれていて…
あのスフィアローパーの件以来、もっと自分が強くなって彼女を守りたいという気持ちが強くなった。
カービィの様に無敵の強さも無ければ、メタナイトの様な優れた判断力や剣技、大王様の様な力強さも無い…
だけど、ボクにしか出来ないこの槍捌きがある…自分の強さを磨いていけば、きっとアイシェを守れる
大切な想い人の事を考えつつ、バンワドは更に気を引き締めて上を目指した。
同じ頃…アイシェは窓から外を眺めていた。
マホロアがローアのパネル操作をしつつも、チラチラとアイシェの方を見ていると…
アイシェ「……………。」
見られている事に気づいている様子は全く無く、アイシェの瞳は寂しげで…マホロアの心に僅かな闇を灯す
マホロア「(アァ…またダ…またソノ悲しげな顔…。)」
誰か他の男の事を考えているのだろうか…好きな人が居るのだろうか…
そう考えるだけでマホロアの中には激しい嫉妬心が生まれ、ドロドロと暗い感情が芽生える…
今すぐ後ろから抱きしめてそのまま部屋に連れて行き、繋いで閉じ込めてしまいたい…その綺麗な青い瞳に、自分だけを映していて欲しい…そんな独占欲が湧きあがるが、せっかくここまで来た計画を台無しにする訳にはいかない…
そう、何も焦る必要は無い…もうすぐ全てが上手くいく。湧きあがる黒く暗い感情をその腹の中に抑え込み、マホロアはパネルの操作に専念した。
それからまた数日後…カービィ達は無事に異世界のボス「グランドローパー」を倒して、最後のパーツであるマストを持ち帰って来た!
マホロア「ついにボクの船が元の姿に戻ったヨォ!」
カービィ「よかったねマホロア!」
マホロア「この時をどれダケ待ち望んだ事カ…キミ達にはホント~に感謝するヨォ!じゃあ約束通り、ボクの故郷「ハルカンドラ」に招待するネ!」
カービィ「ハルカンドラ?」
メタナイト「聞いた事の無い場所だな。」
マホロア「ハルカンドラはココとは違う別世界にあるんダ、すっごく遠くにあるけど…ローアならあっという間にひとっ飛びダヨォ。」
デデデ「この船はとんでもねぇ力を持ってるな。」
マホロア「ハルカンドラのテクノロジーが詰まっタ、とっても神聖な乗り物なんダ。異空間を超えるだけじゃなくテ、時には戦う事も出来ル…乗る人の心次第デ、色んな船二なるんだヨ。」
バンワド「すごい…!」
マホロア「さて…善は急げダ、早速ハルカンドラに向けて出発するヨォ~!」
そう言うとマホロアパネルを操作して目的地を設定し、ボタンを押した!
フワッ…ローアはゆっくりと浮かび上がり、異空間への穴を開けると…勢いよく飛び込んで行った!
マホロアの言う通り、あっという間に異空間を超えてハルカンドラへ到着したが…
デデデ「おい、あそこに何か居るぞ!」
バンワド「四つ首の…ドラゴン!?」
メタナイト「こちらを見ているが…まさか!」
マホロア「クソッ…また見つかっタ…アイツがローアを襲った犯人ダヨォ!」
アイシェ「(あれは…ランディア!!)」
生前ゲーム画面で見た光景…四つ首のドラゴン「ランディア」は目を光らせてこちらを睨み、それぞれが炎を吐いて来た!
ギリギリでかわしていたローアだが、最後の炎が当たり…
ガンッ!!大きな音を立てて、ローアは船尾から煙を出しながらハルカンドラの端に不時着した!
マホロア「ウッ……ウゥ……アイシェ!」
不時着する寸前にアイシェを抱きしめたマホロアは、そのまま衝撃で気を失っていたが…気がついてすぐにアイシェに声をかけた
アイシェ「んっ…マホ…ロア…。」
マホロア「ヨカッタ、アイシェ…。」
彼女の無事を確認すると、マホロアはパネルを操作した。
すると、ローアが炎を受けた場所と大きな咆哮を上げるランディアの姿が映し出された!
カービィ「うっ…何が起きたの、マホロア…?」
マホロア「カービィ…あのドラゴン…ランディアっていうんだケド、この星に昔から居てずっと眠ってたノニ、最近にナッテ急に目覚めた暴れん坊ナンダ…。」
バンワド「ランディアはどうして攻撃を?」
マホロア「ボクにも分からないヨォ…ローアでランディアの住む山に行った事はあるケド…いきなり攻撃してきてチョー怖いし、その時に船も壊されて散々ダヨォ…。」
メタナイト「縄張りに入ったと思っているのか、他に理由があるのか…いずれにしろ手強い相手なのは間違い無いな。」
デデデ「どうするカービィ、といっても聞くまでもねぇがな。」
カービィ「マホロア、ボク達に任せて!」
マホロア「カービィ…!」
カービィ「あのドラゴン、ランディアも懲らしめてくるよ。」
デデデ「という訳だ、俺様達に任しとけ。」
バンワド「マホロアの故郷だもん、僕も頑張るよ!」
メタナイト「其方が安心して暮らせる様に、我々も全力で戦おう。」
マホロア「ミンナ…ホント~に感謝するヨォ!!」
そう言ってマホロアは1人1人に握手をして、感謝の気持ちを述べた。
準備をしたカービィ達は、ランディアの居る火山へ向かう前に…ハルカンドラにも散り散りになってしまったエナジースフィアを集める為に、エッガーエンジンズへ向かう事にしたが…
バンワド「アイシェ、ちょっといい?」
アイシェ「うん、いいよ。」
バンワドに連れられてコピー能力お試し部屋エリアに向かったアイシェ、するとバンワドは深呼吸をすると真剣な表情で話し始めた
バンワド「これから危険な戦いになるから…先にアイシェに伝えておきたいの。」
アイシェ「私に伝えたい事?」
バンワド「アイシェ…僕、君の事が好きなんだ。」
アイシェ「えっ…!?」
突然の告白に、アイシェは驚きで青い瞳を見開いたのだった。
To be continued…