小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」最終話~ただいま、ボクの愛するキミ~

季節は巡り、プププランドではもうすぐ春が訪れる報せの優しい風が吹いていた。

アイシェ「あれから1年…マホロア、どこにいるの…。」

彼の帰りを今も待ち続けるアイシェは、夢の泉まで散歩した後に噴水の傍に腰掛けて、今日も空を見上げていた。

この1年は平和だったが、寂しい1年でもあった…

デデデ城にあるピアノを借りて演奏したり歌ったり、新しいお菓子作りに挑戦したり…それでもマホロアの事を忘れた事は1日たりとも無かった。

会いたい…いつになったら会えるの…?

アイシェの頬を伝い、涙が零れ落ち…

マホロアの事を想い、アイシェは1人「雲の夢」を口ずさみ…しばらくして泣き疲れて眠ってしまった。

一方、カービィ達は居なくなったアイシェを心配して捜していた。

カービィ「どこ行っちゃったんだろ、アイシェ…。」

バンワド「あれから1年…落ち着いてきたとはいえ、最近は落ち込んでる様子だったもんね…。」

デデデ「思い当たりそうな場所は捜したんだが…。」

メタナイト「捜索範囲を広げてみるか…。」

そんな話をしていたその時!

空に異空間の穴が空いて…ローアが出現した!

カービィ「ローア!」

バンワド「どうしてここに!」

デデデ「ローアが自らの意思で来たのか…それともまさか!?」

メタナイト「…………!」

驚く4人の前にローアは着陸して…扉が開いてスロープを降りて来たのは…

マホロア「カービィ、ミンナ…。」

カービィ「マホロア!」

マホロア「エット…ただ…いまっテ言ってイイの…カナァ。」

恥ずかしそうに頭をポリポリ掻いて目を合わせようとしないマホロアだったが…

カービィ「お帰りマホロア!」

満面の笑みでカービィはマホロアに飛びついた!

マホロア「わっ…カービィ!……ただいま、そしテ…本当にゴメンネ…。」

デデデ「全く…戻って来るのが遅ぇんだよ!」

バンワド「でも無事でよかった、お帰りマホロア!」

メタナイト「もう二度と、あんな事をするんじゃないぞ。」

マホロア「ウン…約束するヨ…ミンナも本当にゴメン…そしテ、アリガトウ。…あの…ミンナ…。」

カービィ「どうしたの?」

マホロア「…もう一度、ボクと友達になってくれる?」

自分の気持ちに正直になって伝えたマホロアだが…カービィ達は一瞬キョトンとして、すぐに笑い出した。

カービィ「あははっ、何言ってるのマホロア~!ボク達もうとっくに友達じゃん!」

マホロア「カービィ…!」

デデデ「そういう事だ、もう何も心配すんな。」

バンワド「マホロア、これからはここで暮らすの?」

マホロア「うん、そのつもりダヨ。でも夢の実現の為二、チョット旅に出たりする事はあるケドネ。」

メタナイト「テーマパークを作りたいと言ってたな、くれぐれも人々を操ったりするなよ?」

マホロア「酷いナァ~メタナイト、そんな事しないヨォ!」

メタナイト「ははっ、冗談だ。」

マホロア「モウッ!」

素直な言葉が自然に出てくる…感情も素直に出てくる…そしてみんな満面の笑みで自分を迎えてくれた…その温かさをマホロアはとても心地良いと感じた。

しかし1つだけ満たされない…それはアイシェの姿が無い事で、それを察したカービィが口を開いた。

カービィ「マホロア、アイシェがどこにも居ないんだ…。」

マホロア「エッ…いつカラ!?」

カービィ「朝は居たんだけど、気がついたらどこにも…今みんなで捜してた所なんだよ。」

マホロア「ボクも捜すヨ!」

すぐにマホロアも捜索に加わり、引き続きアイシェを捜したが…やはり見つからない。

バンワド「どこに行っちゃったのアイシェ…。」

マホロア「(アイシェの気を感じ取れればイイんダケド…。)」

そう思いながら、マホロアは魔力を集中させると…僅かだがアイシェの気を感じ取った!

どうやらアイシェが身に付けている何かに自分の魔力が反応している様で、マホロアはその方向へ飛んだ。

飛んで行くとプププランドの外れにある夢の泉に辿り着き、ゆっくりと降りて辺りを見渡すと…泉の傍で眠るアイシェを見つけた!

アイシェ「すぅ…すぅ…。」

眠るアイシェの睫毛は涙で濡れていて、彼女の左耳には…

マホロア「アイシェ、あの時のリボンをずっと付けてくれてタノ…?」

さっきアイシェの気を感じ取れたのハ、このリボンを付けてくれていたカラなんダ

マホロアはそう思いながら、そっと彼女の頬を撫でると…

アイシェ「マホロア…。」

ポツリ…と彼の名前を呟いたアイシェに、マホロアはもう一度優しく頬を撫でて声をかけた。

マホロア「アイシェ…起きてアイシェ。」

アイシェ「んっ…カービィ…?」

ゆっくりと目を開けると、そこに居たのはカービィでは無くて…

マホロア「アイシェ。」

アイシェ「マホ…ロア…!?」

青い瞳を見開き驚いた様子のアイシェに、マホロアは優しく笑い…

マホロア「ただいま、アイシェ。」

アイシェ「マホロア……今まで…どこに…。」

マホロア「それについては後でゆっくりトネ…アイシェに会いたくテ…コノ気持ちを伝えたくテ…。」

アイシェ「気持ち…?」

深呼吸をするとマホロアはマフラーを下げ、黄色い瞳はアイシェの青い瞳を真っ直ぐ見ながら口を開いた。

マホロア「アイシェ、ボク……アイシェの事が好きなんダ。」

アイシェ「マホロア…!」

マホロア「アンナ酷いコトしチャッタケド…アイシェの事がずっと忘れられなくテ…大好きなんダ。」

アイシェ「マホロア…マホロアぁ…!」

両手で口を覆ってボロボロと涙を流すアイシェに、マホロアは優しく涙を拭った

マホロア「アイシェの気持ち、教えテ?」

アイシェ「マホロア…私も大好きだよ。」

マホロア「アイシェ…!」

アイシェ「このリボンがきっと、再会の約束になるって信じてずっと待ってた…会いたかった…お帰りなさいマホロア!」

マホロア「アイシェ、アリガトウ…もう二度ト離さないカラネッ!」

そう言ってマホロアはアイシェを思いっきり抱きしめた!

アイシェ「ふふっ…マホロア痛いよぉ…。」

マホロア「アッ…ゴメン…!」

お互いに頬を真っ赤に染めて見つめ合う2人…その心はとても暖かくて、相手への想いがどんどん溢れてくる

すると、そこにメタナイトが降り立った。

メタナイト「アイシェ、ここに居たのか!」

アイシェ「メタさん。」

メタナイト「アイシェが居なくなって、皆で心配して捜していたんだ。」

アイシェ「そうだったのね、ごめんなさい…!」

メタナイト「いや、無事でよかった。」

そう言うと、メタナイトはコツコツと歩いてきて…マフラーを上げて口元を隠したマホロアの前に立って剣を抜いた。

アイシェ「メタさん!?」

メタナイト「マホロア、私はアイシェをずっと想い続けていた…だがアイシェの気持ちが既に決まっている事も知っていた。」

アイシェ「……………!!」

マホロア「メタナイト…。」

メタナイト「…もう二度とアイシェを悲しませるな、次に約束を違えた時は…」

ザシュッ!

アイシェ「きゃあっ!!」

パサッ…

メタナイトが剣を一振りすると、マホロアのマフラーが真っ二つに切れて彼の素顔が露わに…

しかしマホロアは微動だにせず、メタナイトの顔をしっかりと見て口を開いた

マホロア「コノ約束は守るヨ、必ずネ。」

その黄色い瞳に迷いは無く、強い想いと決意が伝わってきて…

メタナイト「ふっ…ならば私から言う事はもう何も無い。」

剣を収めたメタナイトは、今度はアイシェの前に来た。

アイシェ「メタさん…。」

メタナイト「アイシェ…私はこれからも大切な友として、其方を守る。」

アイシェ「メタさん…ありがとう。」

穏やかな表情でアイシェの手を握ると、メタナイトは飛び去って行き…

マホロア「……ハァ~流石にビビったヨォ…!」

彼の姿が見えなくなったのを確認すると、マホロアは脱力してその場に両手を着いた。

アイシェ「マホロア、大丈夫?」

心配したアイシェがマホロアに寄り添うと、マホロアは呼吸を整えた後に優しい笑顔を見せる

マホロア「もう大丈夫ダヨ、これカラはずっとアイシェが居てくれるからネ。」

アイシェ「マホロア…約束だよ、もう離さないで。」

マホロア「約束するヨ、絶対に離さナイ。」

アイシェ「マホロア…。」

マホロア「愛してるヨ、アイシェ…。」

そう言うと、マホロアはゆっくりと顔を近づけてきて…アイシェもそっと瞳を閉じ…

2人は夢の泉の前で、熱く甘い口づけをかわしたのだった。

彼方からの旅人と夢色金平糖~Fin~

海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!

小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」はこれにて完結しました!

初めてのカービィ小説、しかもお相手はあの虚言の魔術師イカサマタマゴマホロアというまたクセの強いキャラw

マホロア自身はWii時代から大好きなんですが、まさか今年リメイクが出てここまで彼に対する思いが突き抜けるとは思わなかったです(特に真格闘王でメンタルも時間もお土産アイテムもゴリゴリに削られたw)

何はともあれ、生きててよかったです本当に!当時から救いは無いのかと嘆いていたので今作で色々と掘り下げて下さってH〇L研様ありがとうございます!

これからもドノツラフレンズ…ゲフンゲフン、最高のベストフレンズとして更なる活躍を期待してますね!(今後は裏切りだけはやめてくれマジでwあとマルクももっと出番増えるといいねという願望)

マホロアとアイシェはお互い好き合っていたのに、結局すれ違ったまま別れを迎えて…1年の時を経て再会、今度こそお互いに気持ちを伝えあって結ばれました。

野望に燃えるマホロアでしたが、彼の唯一の誤算はアイシェとの出会いです。カービィ達だけでなく、彼女との出会いもマホロアの心を大きく変えてくれたのです。

今回は始まりの物語「Wiiデラックス編」として書いたので、お話はタイトルが変わってこれからも続きます!

反省はしても根本が黒いマホロアなので、マルクと一緒に色々とやらかす未来しか見えませんが…w

新しく始まる物語「夢結ぶ星りんご」で、また会いましょう!

2023/8/20 海賊ダイル