小説「夢結ぶ星りんご」~愛の戴冠~

一方で、マホロアはタランザとチェスをしていた。

マホロア「コレならどうダイ?」

タランザ「むむ…チェスなんてあまりやらないのかと思ったら…中々の策士なのね。」

マホロア「ククク…ボクだってコレ位の嗜みはあるんだヨォ?」

タランザ「言うねぇ…でも、これならどう?」

マホロア「ン…そう来るカァ…。」

高度な心理戦はお互いに頭をフル回転させ、長期戦にもつれ込んだが結果はタランザとマホロアが一勝ずつ…そして最後は「ステルスメイト」で引き分けとなった。

タランザ「まさかステルスメイトになるとはね。」

マホロア「キミは相変わらず読めないネェ。」

タランザ「それはボクも同じなの…さすが虚言の魔術師…隠すのが上手いのね。」

マホロア「クックック…ボクの力を舐めて貰っちゃ困るヨォ。」

タランザ「駒を掠めたりするかと思ったら、しなかったのね。」

マホロア「ヤダナァ~流石にそんなズルはしないヨ?」

タランザ「どうだか…それにしても、もう夕方になるのにアイシェは帰って来ないのね。」

マホロア「もうすぐ帰って来るんじゃないカナ?」

タランザ「その様子だと、少しは落ち着いたみたいなのね。」

マホロア「流石に反省してるヨ、状況を考えなかったのは悪かったシ…。」

タランザ「アイシェが帰って来たら、ちゃんと謝るのね。」

マホロア「分かってるヨ。」

しかし、その後いくら待ってもアイシェは帰って来なくて…2人は焦りを感じていた。

タランザ「月も出てるのに、一体どこに行っちゃったの…。」

マホロア「…アイシェ、アイシェ聞こえル?」

ローアのパネルを操作して、マホロアは通信機チャームに連絡をするが…アイシェからの応答は無い。

タランザ「アイシェは確かにチャームを持って行ったはずなのに…。」

マホロア「それナラ、アイシェが身に付けてるリボンから場所を探るヨ。」

そう言うとマホロアは目を閉じ集中して、アイシェの気配を探し始め…

少しして、彼女の気配を察したマホロアはゆっくりと目を開けた。

タランザ「アイシェの場所が分かったの?」

マホロア「ウン、アイシェがお気に入りの花畑があるんダケド、そこに居るみたいダネ!」

タランザ「あ、待つのねマホロア!」

そう言うとマホロアは飛び出し、タランザも慌てて追いかけて行った。

しばらく飛んで行くと、月夜に照らされながら一面に広がる花畑が見えてきて…そこに横たわるアイシェを見つけた!

マホロア「アイシェ!!」

タランザ「アイシェ、大丈夫!?」

驚いた2人は慌ててアイシェの元へ降り立ち、マホロアはそのまま抱き上げたが…

アイシェ「すぅ…すぅ…。」

マホロアの腕の中で、アイシェはぐっすりと眠っていて…傍に置かれたお弁当が入ったバスケットの上には桜の花冠と、白い花冠が置かれていた。

マホロア「眠ってル……モウ、どれダケ心配したと思ってるんダヨォ…!」

タランザ「何事も無くてよかったのね…!」

安堵する2人だが、アイシェは眠り続けていて…マホロアは頬を優しく撫でて口を開いた

マホロア「アイシェ、起きてアイシェ。」

アイシェ「ん…んぅ…マホ…ロア…?」

眠そうに目を擦りつつ、ゆっくりと青い瞳をマホロアに向けるアイシェにマホロアはほんの少し溜息を吐きつつも、優しい表情を向けている。

マホロア「モウ夜ダヨ、すごく心配したんダカラ。」

アイシェ「え…そ…なの…?」

まだ寝ぼけているアイシェはぼーっとしながらマホロアを見ていて…マホロアはそんな彼女の様子に思わず笑ってしまう

マホロア「フフッ…アイシェ、キミはホント~に…。」

そう言ってアイシェの頭を撫でると、嬉しそうにふにゃっと笑いながらマホロアのマントをぎゅっと握った。

タランザ「もう大丈夫そうなの、ボクはフロラルドに帰るのね。」

マホロア「ウン、気をつけて帰ってネ。」

タランザ「…まさかキミからそんな言葉をかけられる日が来るなんてね、ありがとうマホロア。」

そう言うとタランザはふわふわと飛びながら帰って行き…マホロアはそれを見届けると、マフラーを下ろしてアイシェに優しくキスをした。

マホロア「可愛いボクのお姫様、ココで何をしてたんダイ?」

アイシェ「お花で冠を作ってたの。」

漸く起きたアイシェは優しく笑いながら起き上がり、そっとバスケットの上に乗せられていた白い花冠を手に取って…

ふわっ…マホロアの頭に乗せた。

マホロア「アイシェ…コレ…。」

アイシェ「桜の花冠のお礼、そして…マホロアにも王冠を作ってあげたかったの。」

白い花冠…それは白いアネモネの花で、優しい夜風で小さな花がゆらゆら揺れている。

マホロア「アイシェ…!」

アイシェ「ふふっ…あの王冠みたいに立派じゃないけど、今のマホロアは素敵な王様だよ。」

そう言って少しだけ頬を赤く染めて笑うアイシェが可愛くて愛おしくて…マホロアの心の中は彼女への想いで熱いものが溢れてくる。

マホロア「ありがトウ、アイシェ…嬉しい…ボクすっごく嬉しいヨォ!王冠だってコレの方がずっとずーーーっと魅力的で素敵なんだカラ!」

愛する人の手作りした、自分だけの王冠…それを被ったマホロアの心は幸せで満ちていて…ぎゅっとアイシェを抱きしめてスリスリして、再びキスをすると青い瞳は星空を映してキラキラ輝き…

アイシェ「どういたしまして、ふふっ…喜んで貰えてよかった。」

マホロア「デモ…今のボクは王様じゃナイ、愛するアイシェの王子様ダヨ。」

すると、アイシェは一瞬驚いた顔をしたが…さっきより更に瞳をキラキラ輝かせて嬉しそうに笑った。

アイシェ「えへへ、そうだね…私の大切な王子様。」

マホロア「フフッ…ボクのお姫様、王冠をドウゾ。」

そっと桜の花冠をアイシェの頭に乗せると、アイシェはさっきより頬を赤く染めて優しく笑い…

アイシェ「マホロア…大好き。」

マホロア「ボクも大好きダヨ、アイシェ…昨日はゴメンネ…。」

そう言ってマホロアはアイシェを抱きしめた。

アイシェ「マホロアに求められるのは嬉しいよ、もう少しだけ場所を考えてもらえたら嬉しいな。」

マホロア「ウン、気をつけるヨ。」

無事に仲直りした2人は、再びキスをして…しばらく2人で夜空の星を眺めた。

その後は手を繋いで帰り、夕食を済ませて…マホロアの部屋で抱きしめ合って眠りについた。

マホロアの部屋にはまた1つ宝物が増えた

カービィから貰った絵は大切に飾っていて…アイシェからプレゼントされたアネモネの花冠は、マホロアが魔法で枯れないようにして机の上に大切に飾られ…

2人はローアが送る優しい風に頬を撫でられながら、幸せな夢の世界を楽しんでいた。

To be continued…