小説「緑髪の少年(出会い編)」~狙われたまめみ~(前編)

翌朝…タキは窓のカーテンから射した光で目を覚ました。

タキ「んっ…。」

まだ眠そうに黄色い瞳をショボショボさせていると…目の前にはぐっすりと眠っているまめみがいた

まめみ「すー、すー。」

安心しきった表情で眠るまめみの口元は、うっすらと笑ってる様に見えて…その表情を見てタキもまた安心感を覚えるのだった。

布団の中でボーッとしていたタキだが…トイレに行こうと思って起きようとした瞬間!

まめみ「んっ…。」

タキ「えっ!?」

突然まめみがタキに抱きついてきた!

ぎゅっと抱きつき足まで絡めて、まるで抱き枕を抱いているかの様で…

まめみ「んん…大好き…。」

タキ「(えぇ…!?)」

驚いて頬を赤く染め瞳の色が青に変わるタキだが…

まめみ「大好き…ハイドラント…。」

タキ「(まめみちゃん…僕はハイドラントじゃないよ…!)」

我慢が出来なくなってきたタキはまめみの体からそっと離れ、ピンクのイカクッションを傍に置いて起き上がって部屋を出た。

まめみ「んっ…。」

タキが部屋を出てから少しして、寝ていたまめみが目を覚ました

床で寝ていたはずなのにベッドに居る、誰が運んでくれたのかな…眠い目を擦りながらそんな事を考えて起き上がったまめみはリビングへ向かった。

するとまめおが起きてきて…

まめお「ふあぁ…おはよう。」

まめみ「おはようまめお、何飲むー?」

まめお「ん、お茶を一杯くれ。」

まめみ「分かった。」

そう言ってまめみはキッチンへお茶を取りに向かった。

一方…トイレを終えたタキが出てきて、リビングへと向かうと、椅子で寛ぐまめおと飲み物を持ってきたまめみが居た

まめみ「はい、まめお。」

まめお「ありがとな。」

まめみ「あ、タキ君おはよう。」

まめお「おはようタキ。」

タキ「おはようまめみちゃん、まめお君。」

まめみ「タキ君は何飲む?」

タキ「あ、僕もお茶が欲しいな。」

まめみ「はーい、ちょっと待っててね。」

そう言ってまめみは再びキッチンへ

まめおとタキは2人でくつろぎながら、テレビをつけて見始めた。

今日のナワバリバトルのステージは…タチウオパーキングとデカライン高架下

まめお「今日はタチウオとデカラインか…俺は行くけどタキはどうする?」

タキ「僕も行くよ、ギアとブキは何にしようかな…。」

2人が話をしていると、まめみがお茶を持ってきた

まめみ「お待たせタキ君、どうぞ。」

タキ「ありがとう、まめみちゃん。」

まめみ「どういたしまして。」

可愛らしい笑顔で返事をするまめみに、タキの表情も穏やかになり、胸はまた高鳴った。

その後朝食を済ませ、3人はナワバリバトルへ向かった。

この日、タキはタコマスクを付けて行ったが…それがちょっとした災難となるのだった…

まめお「どれ、ナワバリに行くか。」

すると…

ガシッ!!

突然何者かに腕を捕まれたタキ!驚いて振り返ったら…

警察「ハイカラシティ警察です、少しお話を聞かせて下さい。」

タキ「えぇ!?」

驚きを隠せないタキの瞳は青に変わり…

まめお「ちょっと待ってください!」

まめみ「タキ君は何もしてません!」

警察「落ち着いて、少し話しを聞かせてもらうだけだから。」

事情を聞くと…どうやら最近ナワバリバトルにて、ガールが敵チームに強姦される事案が相次いでいるらしい

被害者達の話を聞くと、その相手は「タコマスク」をしているという

それで警察は、タコマスクをつけたボーイに職務質問しているという事だった。

まめみ「そんな事が…。」

タキ「びっくりした…。」

まめお「酷い話だな…。」

警察「とにかく、気を付けて下さいね。」

まめみ「はい。」

職務質問が終わり、警察は帰って行った。

まめお「物騒な話だな…。」

まめみ「大丈夫だとは思うけど…怖い…。」

タキ「まめお君と僕が、必ずまめみちゃんを守るよ。」

まめお「タキの言う通りだ、俺達が必ず守ってやる…だから安心しろまめみ。」

まめみ「タキ君、まめお…ありがとう!」

不安そうな表情だったまめみだが2人の言葉を聞いて安心し、いつもの明るい笑顔を見せた。

2週間後…一緒に暮らし始めて最初は少し緊張気味だったタキも、今ではすっかり馴染んで3人での暮らしを楽しんでいた。

朝早く…

まめお「ふぁ…それじゃあ行ってくる。」

まめみ「行ってらっしゃい、気をつけてね。」

この日、まめおはスルメさんのお店の手伝いをする為に朝早く出かけて行った

それからまめみが朝ご飯を作っていると…タキが起きてきた

タキ「ふあぁ…おはよう、まめみちゃん。」

まめみ「おはよう、タキ君。」

長いゲソを後ろで一つに纏めたエプロン姿で相変わらずの優しい笑顔で挨拶するまめみに、タキも優しい笑顔で返した。

タキ「あれ、まめお君は…?」

まめみ「まめおは今日スルメさんのお店のお手伝いなの、だから朝早くに出かけたよ。」

タキ「そうだったんだね。」

まめみ「今、朝ご飯作ってるから待っててね。」

そう言ってパタパタと台所へ戻っていったまめみだが、タキはドキドキしていて…

タキ「(という事は…僕とまめみちゃんの2人きり!?えぇ…な…何か緊張してきた…!)」

ドキドキするタキに気づく事無く、まめみはご飯を作り…

まめみ「お待たせ、朝ご飯が出来たよ!」

タキ「あっ…う、うん…!」

まめみ「どうしたのタキ君…目の色が青いけど…?」

タキ「えっ!?ううん…大丈夫だよ…!」

まめみ「そう?それなら良いんだけど…。」

タキ「朝ご飯食べよう?せっかく作ってくれたのに冷めちゃうし…!」

まめみ「う、うん…。」

まだ少し心配するまめみだったが、タキに言われるままテーブルへ向かい…

2人「いただきます!」

タキ「美味しい!」

夢中で朝ご飯を食べるタキの瞳も黄色に戻っていたので、まめみはやっと安心してご飯を食べられたのだった。

朝食を終えた後しばらくのんびりしてから、タキとまめみは着替えてハイカラシティへ…

今日のハイカラシティも、警察がタコマスクを付けたボーイに職務質問をしていた。

まめみ「今日も警察がいる…まだ捕まらないんだね…。」

タキ「早く捕まると良いんだけど…。」

そんな話をしながら、2人はロビーへ

今日のステージはハコフグ倉庫とアンチョビット・ゲームズで、2人は同じチームになった。

まめみ「最初のステージはハコフグ倉庫だね。」

タキ「ステージが狭い分、押さえ込まれ易いから気を付けないとね。」

そんな話をしていると…

ボーイ「ねぇねぇ、そこの彼女~。」

まめみ「え…?」

振り返ると、同じチームのボーイが2人立っていた

1人はアロハシャツを着たチャラチャラしたボーイ、もう1人はナイトビジョンを付けたボーイ

どちらもいやらしい目つきで自分を見ていて、まめみは内心嫌悪感を抱いていたが…

ボーイ「可愛いね~、何て言うの?」

まめみ「えっ…あの…えっと…!」

人見知りの激しさが出てしまっているまめみ…

ボーイ「え~何?緊張しちゃってるの?可愛いなぁ~!」

まめみ「…………。」

頬を真っ赤にしてタキの服をぎゅっと掴み、ぴったりとくっついている…

ボーイ「…彼氏?」

まめみ「えっ!?えっと…あの…!」

タキ「……そうだよ、まめみちゃんは僕の彼女なんだ。」

そう言ってタキはまめみを抱き寄せた。

まめみ「(タキ君…!!)」

ボーイ「へぇ~まめみちゃんって言うんだ…でもさ、そんな弱っちい優男よりも俺の方が良いんじゃない?」

タキ「!!」

まめみ「なっ…!?」

ボーイ「ほら、俺のウデマエS+だよ?ちなみに俺の仲間もみんなS+なの。」

まめみ「…………。」

タキ「……………。」

ボーイ「だから俺の方が良いだろ、守ってあげるよ?」

タキ「馬鹿にするな…僕だってウデマエSだ、お前達に引けは取らない!」

ボーイ「な…何だよ……とにかく、お手並み拝見と行こうか?」

怒るタキに少し怯んだものの、そう言って行ってしまったボーイ2人だが…タキはしばらくまめみを抱き寄せたまま離さなかった。

いざ試合が開まると、さっき絡んできたボーイ2人は口だけでは無かった様で…ウデマエS+に十分な実力を兼ね備えており、敵を翻弄して見事な動きを見せていく

一方タキもそれに負けじと、いつも以上に俊敏で攻撃的な動きでチームを有利に導いていき…最近まめおと共にウデマエSになったばかりのまめみにとっては、ついていくだけでも精一杯だった。

結果は…勝利!

試合終了後…ロビーに戻ったタキとまめみだったが…

まめみ「タキ君、ごめんね…あたしのせいで…。」

タキ「まめみちゃんは悪くないよ、僕の方こそ…怖がらせてごめんね…。」

まめみ「ううん、そんな事無いよ!…嬉しかった…タキ君ずっと、あたしの傍で守ってくれたから。」

タキ「まめみちゃん…。」

まめみ「ありがとう…タキ君。」

お礼を言うまめみに対して、優しく笑うタキの瞳は黄色に戻っていた。

しかし…またあのボーイが声をかけてきた…

ボーイ「ま・め・み・ちゃ~ん!どうだった、俺カッコ良かったでしょ~これで分かっただろ?こんな奴よりも俺と…」

まめみ「…こい。」

ボーイ「…え?」

まめみ「しつこいのよ!」

ボーイ「えぇっ!?」

まめみ「あんたなんか知らないわよ!タキ君の方がずっと優しくて強くてかっこ良くて頼りになるんだから!!」

そう言ってタキにぎゅっと抱きついたまめみだが…一方のタキは頬を真っ赤にして瞳も青に変わり、思考停止していた…

タキ「ま…まめみ…ちゃ…ぼ、僕がかっこいい…!?」

まめみ「行こうタキ君!」

そう言ってタキの手を掴んで行ってしまった…。

ボーイ「…………。」

1人その場に立ち尽くすボーイ。すると、後ろからさっき味方だったナイトビジョンのボーイが声をかけた

ボーイ2「あ~あ、フラれちまったな?」

ボーイ「…ちょっと気が強い感じも可愛いじゃねぇか、ますます気に入ったよ…まめみちゃん。」

ボーイ2「お、完全に目を付けちゃった感じ~?」

ボーイ「あぁ…必ずまめみちゃんを喰ってやるぜ、あんな美味しそうな女の子そうは居ないしな…。」

そう言って舌舐めずりをしたボーイの瞳はギラリと光り、まめみの後ろ姿を捉えていた…。

一方…ハイカラシティから出てきた2人は…

タキ「ま、まめみちゃん…。」

まめみ「…あっ!ご、ごめんねタキ君…あたし…!」

ハッと我に返ったまめみは、慌ててタキの手を離した

タキ「まめみちゃん…。」

まめみ「…本当にごめんねタキ君…あたし許せなかったの…タキ君が悪く言われて…凄く嫌…だった…の…。」

タキ「………!」

ポタッ…ポタッ…

うつむいたまめみの体は震えていて…足下には涙が零れ落ちてシミが出来ていく…

まめみ「うっ…ひっく…ひっく…!」

タキ「………。」

まめみ「っ……!」

突然タキに抱きしめられ、まめみは驚きで桃色の瞳を見開いた

タキ「まめみちゃん、僕すごく嬉しかった。僕の為にあいつらに怒ったり、たくさん褒めてくれてすごく嬉しかったよ。」

まめみ「タキ…君…!」

タキ「でも、まめみちゃんは笑顔が一番だよ…だから泣かないで。」

まめみ「…タキ君…タキ君…!」

泣き止まないまめみだったが、口元は笑っていて…タキの背中に手を回して、しばらくお互いに抱きしめ合っていた。

その後は家に戻り、2人でゲームをして遊んだりして過ごして夕方にはまめおも帰ってきた

そして3人で今日の出来事を話しながら…1日は終わった。

To be continued…