小説「青と水色が混ざり合うと」~素直になれない心~

あれから2日後…スーは借りていたワンピースを洗濯して乾かした後に綺麗に畳み、それを袋に入れてまめおの家へ向かった。

すると、ちょうど向こうからまめおが歩いてきた。

まめお「スー、どうしたんだ?」

スー「借りてたワンピースを返しに来たの。…まめみは…?」

まめお「まめみはポナと一緒にペコの所に行ってるんだ。」

スー「そうなのね…。それじゃあ…悪いけど、まめおから渡しておいて…。」

まめお「…おう…。」

そう言うとスーはまめおに袋を渡し、まめおも受け取った。

スー「この前はありがとね…そして…酷い事言ってごめん…。」

まめお「どういたしまして…俺こそ…ごめんな…。」

スー「……………。」

まめお「ど…どうした…?」

スー「な…何でも無い…。」

まめお「……まぁ…何だ…その……友達…そう…友達だからさ…。」

スー「友…達…?」

まめお「あぁ…お前も大事な友達だからさ…その…助け合いは必要だろ!」

そう言って背中を向けて頭をポリポリ掻いてしまうまめお

しかし…スーはその場に立ち尽くしたまま何も言わない…

友達…?

あたしは…あたしは…まめおを…

でも…まめおはあたしの事は…「友達」としか見てなくて…

きっと…他の女の子にも……同じ様に…優しくして…助…け…る…

スー「…………………………………。」

まめお「…って…どうしたスー……」

振り返ったまめおは目を見開いた。

目の前のスーは…いつもの様に気が強くて喧嘩越しでは無く…

頬を真っ赤に染めて…今にも泣き出しそうな顔で…

スー「……………っ………………!」

まめお「お…おい、スー!!」

驚いたまめおが彼女の名前を呼ぶものの…一度も振り返る事は無く…走り去ってしまった…。

まめおは袋を抱えたまま…しばらくその場に立ち尽くしていたが…

その後…来た道を引き返し自宅に戻った。

一方スーは夢中で走り続けていて…

その時…前方からはポナとまめみが歩いて来ていた。

まめみ「ペコちゃん、残念だったね。ナワバリのお誘いしようと思ってたんだけど…。」

ポナ「フーと会う約束してるなら…言ってくれればいいのに…姉さん。」

そんな事を話しながら歩いていると…

ドンッ!

ポナ「わっ!」

まめみ「ポナ君!スーちゃん!」

前も見ずに走っていたスーと、まめみと会話しながら歩いていたポナがお互いに気づかずぶつかってしまった。

ポナ「痛た…。」

まめみ「ポナ君、スーちゃん…大丈夫…?」

ポナ「僕は大丈夫だけど…スーは…?」

まめみ「スーちゃ…」

そう言ってまめみがスーの肩に触れると…

スー「まめ…み…。」

まめみ「スーちゃん…!」

ポナ「!」

スーは緑の瞳から涙を流していて…2人は驚いてしまった。

その後近くの公園に移動して、ポナは近くの自販機で飲み物を買いに行き、その間…まめみはスーの傍で背中を優しく撫でていた。

スー「ひっく…ぐす…ごめんね…まめみ…。」

まめみ「謝らないでスーちゃん、大丈夫だからね。」

ポナ「お待たせ、とりあえずこれを飲んで落ち着こうね。」

そう言うとポナは買ってきたオレンジジュースを差し出した。

スー「ありがとう…ポナ…。」

3人はオレンジジュースを飲み、少し落ち着いて来た頃スーは全てを話し…ポナとまめみは真剣に話を聞いていた。

ポナ「そっか…そんな事が…。」

まめみ「それでスーちゃん…苦しくなっちゃったのね…。」

スー「あた…し…あたしは……っ……!」

そう呟くスーの頬を再び涙が零れ落ちた…

ポナ「まめみ、まめお…今どこに居るかな…?」

まめみ「まめおは、きっと家に帰ってると思う。」

ポナ「僕、まめおと話して来るよ。」

そう言うとポナはまめおの所へ向かった。

まめみ「(お願いね、ポナ君…!)」

泣き続けるスーの背中を摩りながら、まめみはポナの後ろ姿を見ていた。

しばらくして…

スー「ありがと…まめみ…。」

落ち着いて来たスーの様子を見て、まめみが口を開いた。

まめみ「スーちゃん…まめおね、本当はスーちゃんの事、大好きなの。」

スー「え…?」

驚いて目を見開くスーに、まめみは更に話を続けた。

まめみ「まめお、いつもスーちゃんと喧嘩してて…怒ってるけど…それを話してる時…何かどことなく嬉しそうでもあるの。」

スー「まめおが…?でも…でもまめおは友達だって…」

まめみ「それはまめおが意地張ってるだけ。だって…あたしが聞いて無くても…自然とスーちゃんのお話たくさんしてるもの。本当にスーちゃんの事が大好きなんだなって…伝わってくるの。」

スー「まめみ…!」

まめみ「スーちゃん、まめおの事が大好きだよね?」

スー「あたし…あたしは…。」

まめみ「その気持ち、隠さないでまめおに伝えてあげて。あたし…スーちゃんにもまめおにも、幸せになって欲しいの。」

スー「まめみ…まめみ…!」

何度も彼女の名前を呼びながら強く抱きしめるスーに、まめみも強く抱きしめた。

まめみ「大丈夫だよ、スーちゃん。」

スー「うん…ありがとう、まめみ。」

涙を拭って笑うスーは穏やかで…とても可愛らしい笑顔だった。

同じ頃…ポナはまめおの家に着き、合い鍵で入った。

ポナ「まめおー。」

まめお「ポナ…どうしたんだ…?」

不思議そうに出迎えるまめおに、ポナはいきなり切り出した。

ポナ「…さっきスーと会ったんだ。」

まめお「スーと…?」

明らかに動揺するまめおに、ポナは更に話を続けた。

ポナ「泣いてたから落ち着かせて…スーから聞いたんだ。」

まめお「そう…なのか…。」

やっぱりさっき言った言葉で傷つけてしまった…?

気まずそうにしているまめおだったが…

ポナ「まめお、スーの事が好きなんだよね?」

まめお「なっ…お…お前まで何言い出すんだよポナ…!」

ポナ「スー…まめおへの気持ちを正直に話してたよ。彼女はまめおと正面から向き合おうとしてる。…まめお、自分の気持ちに正直にならないと、お互いに苦しいままだよ。」

まめお「ポナ…!」

ポナ「意地を張らないでまめおの正直な気持ち、ちゃんと伝えてあげよう?まめおもスーと正面から向かい合わないとね。」

まめお「…そう…だよな……そうだよな、ポナ。」

ポナ「うん。」

その時…ポナのイカスマホの電話が鳴った。

まめみ「ポナ君、まめおと話せた?」

ポナ「うん、今まめおの家で…ちょうど話を終えたところだよ。」

まめみ「スーちゃん、ショッツルで散歩して待ってるって。まめおの事…待ってるって言ってた。」

ポナ「うん、分かった。伝えておくね。」

そう言うとポナは電話を切った。

まめお「まめみか…?どうしたんだ…?」

ポナ「うん、まめみだよ。そしてまめみから伝言、スーがショッツルで散歩して待ってるって。」

まめお「ショッツル…そこは確か…俺が初めてスーに会った…。」

ポナ「行っておいで、まめお。」

まめお「…あぁ、行ってくる!ありがとな、ポナ!」

ポナ「どういたしまして、気をつけてね!」

まめお「おう!」

ポナと互いに腕をガシッと交差させ、まめおは家を出た。

途中でまめみとすれ違い…

まめみ「まめお、頑張ってね!」

まめお「あぁ、ありがとな!」

まめみはそのまま家に戻り、待っていたポナとお茶を飲み始めた。

一方まめおは…ショッツルへ向かう途中に通りかかった店に飾られていた1つのブレスレットが目に入った。

それは…青と水色が混ざり合った…透明感のある綺麗なブレスレットで…手に取って光にかざすと…まるで水の中の光景を見ている様な不思議な感覚になる…。

まめおはブレスレットを購入し、綺麗な水色のリボンでラッピングして貰うと……再びスーの待つショッツルへ向かって歩き始めた。

To be continued…