帰る道中、マホロアはタランザの教え通りアイシェの歩くスピードに合わせて帰った。
そしてローアに到着すると…
マホロア「アイシェ、お茶デモしようヨ。」
アイシェ「うん。」
マホロア「ココにドウゾ!」
そう言って椅子を引くものだから、アイシェは驚いてしまった。
アイシェ「マホロア、どうしたの…!?」
マホロア「イイカラ、座って。」
アイシェ「う、うん…。」
驚きと戸惑いの中で彼に促されるままに座ると、丁寧に押してくれた。
マホロア「最近すれ違ってたカラ、アイシェとちゃんと話さなきゃっテ思ったんダ。」
アイシェ「マホロア…。」
マホロア「アイシェ、この前ハ乱暴な事をしてゴメンネ…。」
アイシェ「ううん、私こそあんな事してごめんなさい…マホロアに心配させたくなかったのに、かえって心配させちゃった…。」
マホロア「一言相談シテくれれば…デモ、アイシェはボクを想ってそうしたんダネ…何もされなくテ安心したヨ。」
その後はいつも通りの穏やかなティータイムが始まり、アイシェはドロッチェとの事をちゃんと話した。
マホロア「惚れ薬!?あのネズミ何てモン使ってんダヨ!」
アイシェ「私もびっくりしたよ…でもすごくドキドキしちゃってた理由もこれで分かったし、マホロアのおかげで打ち勝てたの。それでね、これをドロッチェに返そうとしたけど友好の証として持ってて欲しいって。」
そう言うと、アイシェはガラス細工を見せた。
マホロア「その花は月下美人ダネ。」
アイシェ「月下美人?」
マホロア「満月の夜にダケ咲く花ダヨ。」
アイシェ「だから「夜にしか見れない代物」って言ってたのね。」
マホロア「全く…相変わらずキザな奴ダネェ。」
溜息を吐いてアップルティーを飲むマホロアを見て、アイシェは「いつもの光景」が戻って来た事に安堵したと同時に、それがどれだけ幸せな事なのかを再認識した。
その後ティータイムは終わったが、アイシェが立とうとするとマホロアが前に来て手を差し出して…
アイシェ「マホロア…?」
マホロア「お手をドウゾ。」
アイシェ「え…えぇ…!?」
マホロア「どうしたんダイ?」
アイシェ「えっと…何でもない…。」
差し出された手にそっと手を乗せて、椅子から下りたアイシェ…そのままソファに誘導されたが…
マホロア「アッ、座る前にコレを敷かないトネ。」
そう言うと今度はハンカチを敷いて…ニコニコしながらそこに座るように促してきて…
アイシェ「(どうしちゃったの、マホロア…?)」
戸惑いつつもアイシェは座り、隣にマホロアが座ったが…彼の変化は他にもあった。
いつもならぎゅーっと抱きしめてきたり、キスをしたり頬ずりしたり…何ならそのまま押し倒されてしまう事もある
それなのに、何もせずにアイシェの頭を優しく撫でたり髪を手櫛で梳かすだけで…明らかに様子がおかしい。
マホロア「イイ天気ダネェ~。」
窓の外を見ながら言うマホロアに、アイシェはそっとマホロアの方を向いて口を開いた。
アイシェ「…マホロア?」
マホロア「ン、どうしたんダイ?」
アイシェ「何か…イタズラをしようと思ってる?」
彼女の言葉に、マホロアの黄色い瞳は大きく見開かれて…
マホロア「エェーーー何でダヨォ!?」
アイシェ「だって突然こんな事して…いつものマホロアじゃない…。」
マホロア「エェーーーーーッ!?」
後ろから思いっきりギガトンハンマーで打たれた様な気分だった…タランザからの教えで紳士の振るまいをしただけなのに、アイシェからは疑われてしまう結果になり…マホロアはショックを受けてしまった…。
アイシェ「ま、マホロア!?」
マホロア「ウゥ…ボク、アイシェの為にタランザに紳士の嗜みを習ったの二…。」
アイシェ「えぇっ…!?」
マホロア「部屋で休むヨォ…。」
そう言ってマホロアはすごすごと部屋へ行ってしまった。
タランザ『アイシェを奪われない様に、しっかりやるのね!』
マホロア「ハァ…頑張ったのにナァ…。」
愛するアイシェを失いたくない…その為の努力なら惜しまない、そう思っていた…
正直あのドレス姿を見る度に欲情して、本当なら押し倒して身ぐるみを剥いでそのまま彼女と熱く甘い時間を過ごしたいくらいで…ずっとお預けが続いていたので尚更だ。
どうしたらよかったんだろう…そんな事を思いながらベッドでうつ伏せになるマホロアだったが…
アイシェ「マホロア…。」
そっと声をかけて、アイシェが入ってきた。
マホロア「アイシェ…ボク不安だったんダヨ…キミがアイツに取られテしまいそうデ…ダカラ紳士の嗜みを身につければ、ボクの方を見てくれるのかなっテ…。」
落ち込むマホロアは耳をペタンと垂らしてしょんぼりしていて…アイシェはベッドにそっと座ると口を開いた。
アイシェ「紳士の嗜みが無くても、マホロアはそのままでいいのに…。」
マホロア「アイシェ…ソウナノ…?」
アイシェ「うん、いつものマホロアでいいの。」
マホロア「エ…デモ、アイシェは紳士の方がいいんジャ…?」
アイシェ「確かに紳士な方は素敵だけど、私はありのままのマホロアが大好きだよ。だってたった1人の愛する人だもの。」
マホロア「アイシェ…ボクをそこマデ…!」
アイシェ「うん、だからこんな事しなくていいの…いつものマホロアでいて。」
彼女はこんなにも自分を求めてくれている、紳士じゃなくても自分だけを愛してくれている…マホロアの中には今まで以上に自信が湧きあがってきて、心が暖かくなった。
マホロア「アリガトウ、アイシェ…大好きダヨ。」
アイシェ「どういたしまして、私も大好きだよマホロア。」
2人は今までのすれ違っていた時間を埋めるように、ぎゅっと抱きしめ合った。
すると…マホロアがアイシェの腰を触りだして…
マホロア「モウ我慢しなくてイイヨネェ?」
顔を見ると、マホロアはマフラーを下ろしていて…弓なりに細くなった瞳とニタァ~と笑う口元で、これから何が起こるかを察したアイシェは頬を真っ赤に染めた
アイシェ「ま、マホロア…!」
マホロア「ありのままのボクでイイって言ったヨネ?」
アイシェ「言ったけど、それとこれは話が…!」
マホロア「ボクの中では一緒ダヨォ。」
マホロアは頬を真っ赤に染めるアイシェの反応を楽しみつつ、ゆっくりと押し倒した。
To be continued…