※小説「緑髪の少年(再会編)」最終話~取り戻したもの~のスピンオフ小説。
再会編から1年後のフーとペコのお話です。
ポナの記憶が戻り、まめおとスーが恋人になって1年…
それぞれ日々の生活を楽みつつみんな誕生日を迎え…まめみとポナは16歳、まめおとスーは17歳、ペコは18歳、フーは20歳になっていた。
ペコは記憶が消えてしまう故に実は自分の正確な誕生日も不明であり…弟のポナも彼女の本当の誕生日は知らなかった為、まめみの提案で彼女と出会った…あの冬の日が誕生日になった。
最近の変化は…ポナは一人称が俺に変わり、フーは警察官になる為に苦手なシューターの扱いに慣れる為の練習を始めていた。
幸せな日々を送るまめみ達だったが…1つ気になっている事があった。
それは…フーとペコの関係である。
まめみ「フーさんとペコちゃん…恋人なのかな?」
ポナ「イマイチ分からないんだよね…姉さんも自覚が無い感じというか…。」
まめみ「でも、2人でいる事が多いし…何かお互いの事話す時に嬉しそうだよね。」
ポナ「うん。」
まめお「フー兄はどうなんだよ、スー?」
スー「う~ん…あたしにもよく分からないわね。でも…毎日ペコが兄貴にお弁当を差し入れしてるのよね。」
ペコ「え、姉さんがそんな事を?」
スー「こないだ偶然見かけて、兄貴に聞いたらそう言ってたわよ。」
同じ頃…そんな話をされているとは知らず、ペコはお弁当を手にフーの元へ向かっていた。
ペコが練習場に着くと、フーはちょうどシューターの練習を終えて休憩しているところだった。
眠ると記憶を失うペコだが…フーの事は覚えていられる様になったらしく、毎日お弁当を作っては彼の元へ持って行くのだった。
フー「ふぅ…とりあえずこれで一旦休憩だな…。」
ペコ「お疲れ様、フー。」
フー「お、ペコ…今日もありがとうな。」
ペコ「どういたしまして。」
3Kスコープ使いのフー、愛用ブキの事情故に眉間には常に深い皺があり…鼻の傷や鋭い目つきも相まって一見怖そうな印象だが…本当は正義感が強く心優しい青年なのだ。
そしてペコの姿を見つけるとその表情は穏やかになり、口元は優しく笑っていた。
ベンチに座って蓋を開けると…そこには色とりどりのおかずとおにぎりが入っていた。
フー「お、今日も美味そうだ。」
そう言うとフーはおにぎりを手に取り頬張った。
ペコ「どうかしら?」
フー「ん、今日もすげぇ美味い!」
まるで子供の様に夢中で食べるフーを見て、ペコも嬉しそうに笑う。
ペコ「シューターの調子はどうかしら?」
フー「最初の頃に比べたらだいぶマシだが、まだまだ…だな。」
ペコ「あら、それでもかなりの的を倒せてるじゃない。」
フー「警察官になるには狙いを定められる様にならないと…いざという時に身を守れないからな。」
ペコ「そうなのね…。」
フー「…そんな顔をするなペコ、俺は簡単に死んだりしない。」
そう言うとフーは、ペコの頭を優しく撫でた。
ペコ「フー…。」
フー「ごちそうさん。…さて、練習を再開するか。」
そう言うとフーはシューターを持って再び練習を始めた一方、ペコは彼に撫でられた場所に手を当てて…その頬は赤く染まって…
その後夕方までフーが練習を続けるのをペコはベンチに座りながら見届けた。
練習を終えた後、フーはペコを自宅まで送り届けた。
ペコ「送ってくれてありがとう、フー。」
フー「あぁ。それじゃあ、また明日な。」
そう言うとフーは、またペコの頭を優しく撫でて帰って行った。
一方ペコは再び頬を赤く染めつつも…寂しげな瞳で彼の背中を見つめていた。
To be continued…