悩むスマラの気持ちをよそに、自らの想いをアクアに伝えたガーリル。
ガーリルの優しさに触れているうちに揺らいでしまったアクアの恋心…。
ラクトとガーリルの兄弟の絆…。
様々な感情が交ざり合う中…忌まわしきあの存在が再び姿を現す。
~アンデット・クロン~
夜、皆が眠りに中いつもと様子が違う者が居た。
スノウ「うっ…うぅっ!」
何やらうなされているのはスノウ。掛けている毛布を強く握りしめ、苦痛で顔が歪んでいる。
夢の中で彼の身に起こっている事…それは自分の目の前でみんながアンデット・クロンの手にかかる瞬間…。自分は何かに捕まりその場から動く事ができないでいる。そして最後に彼が見たのはガーリルが目の前で倒れる姿…地面は血で紅く染まって…彼の名を呼ぶのと同時に目が覚めて現実に引き戻された。起きた時の自分は汗だくで、胸の鼓動も速く落ち着かない…。
スノウは居ても立ってもいられずにそっとみんなの部屋を覗き、何事も無く眠っている姿を見て安心するのだった。
…しかし最後に訪れたガーリルだけは様子が違った。先程の自分と同じ様に酷くうなされているのだ。
ガーリル「うぅっ!スノウ…兄…上…スマラ…!!」
スノウ「おいガーリル、ガーリル!」
眠っている彼に呼びかけると次の瞬間ハッと目を覚まし、そっとスノウの方を見たのだった。
ガーリル「スノウ…何故俺の部屋に?」
スノウ「悪夢を見たんだ…お前が…みんながあいつの手にかかるという…。」
ガーリル「スノウ…お前も見たのか!?」
スノウ「という事は、ガーリルもなのか…。俺達2人だけが同じ夢を見たようだな。」
ガーリル「くそっ、信じるものか…みんながいなくなるなど!約束したんだ、必ずあいつを倒して生きて帰ると!そうだろうスノウ!」
スノウ「あぁ、勿論だ。だが…2人が全く同じ夢を見るなんて…考えたくは無いが嫌な予感がする。まさか…まさかアンデット・クロンがこの悪夢を見せたんじゃ…!?」
ガーリル「そんな馬鹿な!?…いや、しかしもし奴がこの近くにまだ潜んでいたとすれば…?」
その時!外から不気味な声が響いた…。
アンデット・クロン『ほう…よく気付いたな。ルーエ一族とダーク一族の末裔よ。』
2人が甲板に出た時、ブルース達も声に気付き、牙が姿を変えた剣を片手に外に出てきていた。…。
上空には不気味に光る赤い目が…。
ブルース「どういうつもりで姿を現してきたのかは知らんが…いまこそ貴様を倒す!」
ガーリル「全ての一族が力を合わせれば…例え実体のない貴様でも勝ち目は無いはずだ。」
アンデット・クロン『…随分強気だな、ダーク一族の王子…いや、今は王だったな。お前があの時あの場にいなければ両親は死なずに済んだだろうにな?』
ガーリル「っ…!」
ラクト「我が弟への侮辱は、私が許さんぞ!隙を見せるなガーリル、あいつはそうやってお前を追い詰めてを狙ってくる!」
ガーリル「兄上…!」
アンデット・クロン『ふん、少しは利口になった様だな。ククク…そういえばお前達兄弟に最高のプレゼントを用意してやったぞ。』
ラクト「プレゼント…だと?」
アンデット・クロン『今ここで見せてやっても良いが…楽しみは後に取っておいた方が面白い。我はセイレーン・ケイヴのもう1つの姿、新月の夜にのみ姿を現す島【アンデッド・アイランド】に居る。お前達が我を倒せると確信しているのなら…来るが良い。その時にお前達には『絶望』と言う名の楽しみをくれてやろう。フフフ…フハハハハハッ!!』
そう言うとアンデット・クロンは姿を消した…。
スマラ「新月は…明日だ。」
ブルース「俺は65年間ずっとセイレーン・ケイヴに居たが…何か変化はあったかガーリル?」
ガーリル「いや、何も無かったはずだ。その様な島の存在すら聞いたことが無い…。」
初めて聞く名の島アンデッド・アイランドに疑問を感じるブルース達であったが、とりあえず次の日に備えて再び眠りにつくのだった。
次の日、ガーリルは朝早くから甲板へ出ていた。
その手にはダークサーベルが…
剣を振る度に『ヒュンッ』と風を切る音が聞こえてくる…ガーリルは剣を見つめ、厳しい表情をしていた。
そこへ、ガーラスがやってきた。
ガーラス「おはようございますガーリル様。」
ガーリル「おはようガーラス、だがどうしてここに?」
ガーラス「お部屋を訪ねたらいらっしゃらなかったので…。」
ガーリル「ガーラス、奴が言っていた島…あると思うか?」
ガーラス「私も聞いた事が無い故不審に思う所がありますが…島の名前がどうも気になります。アンデッド・アイランド…死霊の島という意味です。アンデット・クロンは実体を持たない存在…もしやあの者自身が創りだした幻影の島なのでは…?と思います。」
ガーリル「なるほど、確かにお前の説も一理あるな。全ては今夜明らかに…か。」
今の2人の心を表すかのように、海は少し荒れているのだった…。
昼間。アクアは1人部屋でボーッと考え事をしていた。
アンデット・クロンの事、ガーリルからの告白の事、スマラの事…しかし考えるほど頭の中がモヤモヤして答えは見つからない。
一方ブルース達は来るべき時に備えて警戒していた。
マリン「…波が荒れているわ。」
ブルース「…不安なんだな、マリン?」
マリン「えぇ…相手は実体の無い存在…本当に倒せるのかしら…。もし倒せずに先代と同じ道を辿る事になってしまったら?アクア達は…」
次の瞬間ブルースはマリンを自分の所へ抱き寄せた。
ブルース「マリン、俺も同じ気持ちだ。きっとガーリル達も…だが…今ここで不安になっていては力を発揮できない。アンデット・クロンもそういう心の隙を狙ってくるだろう…大丈夫だマリン、俺がいるから何も恐れるな…信じるんだ自分とみんなの力を。」
マリン「そう…ね、私が弱気になっていては駄目よね。ありがとうブルース、もう大丈夫よ。」
ブルース「マリン…愛している。」
そう言うとブルースはマリンに優しく口づけした。
一方、相談しようと両親の部屋を訪れたアクアだったが、ドアの隙間から2人のやりとりを偶然見てしまった。邪魔をしては悪いとそのまま自室へ引き返してきてしまったが、相変わらずモヤモヤ感は取れないのであった…。
一方、スマラの方も…。
ペルラ「どうしたスマラ?ずっと沈んだ顔して…。まだ仲直りしてないのか?」
スマラ「ペルラ…お前はどうしてそう核心を突くかなぁ…。」
ペルラ「悪い…図星だったみたいだな…。」
スマラ「…謝っても許してもらえるかどうか…第一会ってさえもらえるかも分からないだろ。」
アルマ「しょうがないなぁ…ほれ。これ持って謝ってこい。」
そう言うとアルマはスマラに手品で出した一輪の薔薇を渡した。
スマラ「ありがとうアルマ!」
彼が出した一輪の薔薇を持って、スマラはアクアに謝りに行くべく部屋へと向かった。
~To be continued…~