ラクトの懸命な捜索のもと、遂にブルースの手がかりを掴んだスノウ達
しかし…捜しに行こうとした矢先、マリンがダーク・ガビアル一族王家親衛隊長ガーラスに連れ去られてしまった
救出に向かうべく、スノウ達が出発しようとした時に後ろから彼を呼び止めたのはアクアだった…。
~旅立ち~
スノウ「アクア…!」
目の前に居たアクアは動きやすい短めのドレスに、いつも下ろしている髪は一つにまとめ上げて黄色い髪飾りで縛り、腰元には短剣を入れたベルトが巻かれていた。
アクア「私も一緒に行きます。」
スノウ「アクア、しかし…。」
アクア「スノウが心配して言ってくれてるのは分かってるわ、でも私も心配なの…だから……!」
スノウ「…辛い旅になる…危険だってたくさんあるぞ、覚悟は出来ているんだな?」
アクアがと頷くと、スノウは少しだけ困った様に笑いながら、ポンッとアクアの頭に手を置いた。
スノウ「マリンの娘だな、一度言い出したら聞かないんだから…。」
アクア「それじゃあ…行って良いのね?」
スノウ「その代わり、俺の傍を離れるんじゃないぞ!」
アクア「はい!」
ラクト「大丈夫だスノウ、とっておきの護衛を付けるから。」
スノウ「とっておきの護衛?」
そう言うと奥から出てきたのはスマラと他の2人の騎士が…スマラと同じ年頃の青年だ。
ラクト「王宮騎士副隊長のアルマとペルラだ。今回は3人を共に付けた。
アクアの無事を保証する。頼んだぞ3人共!」
スマラ「はっ、お任せを。」
スノウ「準備は整ったようだな。では出発しよう!」
ラクト「出航―!!」
こうして一行は故郷であるミラージュアイランドを出航した、最速の船『ミーティア号』でもセイレーン·ケイヴに着くには1ヶ月程かかるので、2人の身を案じつつスノウ達は策を練る事にした。
一方アクアは変わらず続く海の景色を寂しげな表情で見ていて…
母マリンの事を思うと不安で堪らない…すると後ろからポンッと肩を叩かれ、驚いて振り向くとそこに居たのは…海賊風の姿をしたアルマだった
アクア「貴方は…アルマ様。」
アルマ「呼び捨てで宜しいですよ、アクア様。」
アクア「私も…アクアで。」
笑みを浮かべつつも辛そうな彼女の様子に、アルマは1本の白い薔薇をアクアにそっと差し出した。
アルマ「辛い心も…この白い薔薇が全部忘れさせてくれますよ。」
アクア「わぁ…綺麗、ありがとうアルマ。」
しばらく2人で談笑していると、ペルラとスマラがやって来た。
ペルラ「アクア様、ご機嫌いかがですか?」
アクア「そんなにかしこまらないで…普通に接して欲しいの。」
ペルラ「えっと…それじゃ遠慮無く、アクアで。」
アルマ「じゃあ俺達はこれで…いくぞペルラ。」
ペルラ「ちょっ…アル、マ…!」
アルマは半ば強引にペルラを引っ張って行ってしまい、その場に残されたアクアとスマラはお互いに頬を赤く染めて黙り込んでしまった…。
しばらく沈黙が続いたが、先にそれを破ったのはアクアだった
アクア「あの…」
スマラ「な、何でしょうアクア様……あっ!」
アクア「貴方は…呼んで下さらないの?」
スマラ「あ…アク…ア。」
照れくさくてうつむいたまま呟くように自分の名前を呼ぶスマラが恐る恐る顔を上げると、アクアはとても嬉しそうに頬を赤らめ笑っていた。
アクア「ありがとう…これからよろしくね、スマラ。」
スマラ「こちらこそ、アクア。」
旅を始めたアクア達…しかしミーティア号が通り過ぎた直後、海面から顔を出したのは1匹のワニ
そして船の行く先を見届けると、周りを闇が覆いそのまま消えた。
ガーラス「船が出発しました。それぞれの王族も乗っております。それと、どうやらスマラ王子とアクア王女も共に乗っている様です。」
謎の声「そうか……2人とも大きくなっただろうな…ところでガーラス、マリンの様子は?」
ガーラス「薬でよく眠られております、じきに目を覚ますでしょう。しかし波の牙は所持していたものの、海の牙がやはり見つかりません。」
謎の声「やはりマリンは持っていないのか…となれば、娘のアクアが持っている可能性が高いな。」
ガーラス「牙を奪って参りますか?」
謎の声「今は泳がしておけ、今ここで失敗すれば全てが水の泡になってしまう…それだけは避けなくてはならない。それにアクアが来たのなら好都合だ、アクアはラグシー一族とザフィーア一族の血を引いている…彼女が力を暴走させた場合、どうなるかはブルースとマリンも分かっているはずだ……これはうまく使えそうだな。」
ガーラス「それともう1つご報告が…奴の足取りが途絶えました。」
謎の声「…そうか、奴は【実体が無い】に等しい存在…すぐに行方が分からなくなるが焦る事は無い、全ては思惑通りに進んでいる…全て準備が整った時はきっと…きっと奴を…!!次に会った時は必ず仕留める、後もう少しの辛抱だ、頼んだぞガーラス。」
ガーラス「はっ!」
暗闇の中で光るエメラルドグリーンの瞳には、強い憎しみが籠もっていた…。
~To be continued…~