謎のワニ「これは牙の力を借りて創りだした幻影だ。」
スノウ「…アクアを離せ。」
謎のワニ「それは出来ない。目的の為にもアクアに記憶を取り戻してもらわねばならない。」
スノウ「俺はお前とは闘えない。それに無理に記憶を呼び覚まそうとしたら…お前も分かっているだろう?アクア自身も危険だ。」
アクア「スノウ…一体何の話をしているの…?私には何の事だか全然分からないわ…。」
謎のワニ「アクア、記憶を取り戻せ。お前の中に眠る強大な力と共に…。」
そう言うと謎のワニはアクアを闇の鎖で縛り、海の牙がしまわれている腕輪を外した。そしてアクアの目の前にそれを掲げた。
スノウ「やめろ!」
アクアの傍へ行こうとするが、闇の鎖で手足を拘束され動けない…!!
アクア「これ…は…?」
目の前に映っているのは幼い頃の自分の姿…。傍には母マリンと…見知らぬ男性…。
蒼い髪に、自分と同じトパーズイエローの瞳。初めて見るはずなのに…どこか懐かしく感じる男性…。
謎のワニ「思い出せ、お前の本当の姿を!お前の本当の名前は…アクア·ラグシー=ザフィーア=ディール。ラグシーとザフィーアの血を色濃く引く王女だ!」
アクア「王女…私が……じゃあ…この男性は…!」
謎のワニ「お前の父親、ブルース·ラグシー=ディールだ。」
アクア「あっ…あぁ…お父様!私…は…わ…たし…は…!!」
そう呟くと、アクアの頬を伝って涙がこぼれ落ち…
突然腰からヒレが生えた!
ラクト「アクア…遂に…目覚めたのか…!?」
スノウ「記憶を…取り戻した…!?」
白い肌は海色の鱗に変わり、尾が生え牙が伸びて…。
次の瞬間アクアは本来の姿であるワニに…。
2つの一族の血を引くアクア、その姿は想像を絶する美しさであった…!
謎のワニ「記憶が戻ったようだなアクア。セイレーン·ケイヴでその力を見せて貰う事、楽しみにしているぞ。」
そう言い残し、謎のワニは姿を消した。
スノウ達も解放されたが…アクアの様子がおかしい!その場に倒れ込み、苦しそうにしている!
スノウ「まずい!力をコントロール出来ないんだ!」
スマラ「アクア!」
ラクト「待てスマラ、今行くと危ない!」
スマラ「けどアクアが…!!」
体を引きつらせ、激しい呼吸をしながら苦しむアクアの姿に、スノウ達は為す術も無くその場に立ち尽くすしかなかった…。
しかし我慢の限界に達したスマラは危険をかえりみず、アクアの元へ駆け寄った。
アクア「うっグゥ…グルルルル…!!」
スマラ「アクア。」
アクア「ウガァッ!!」
次の瞬間、アクアはスマラの右肩に噛みついた!肩には牙が食い込み、右腕を紅く染めていく…。
ラクト「スマラ!」
スマラ「大丈夫!これ位何でもない。アクア…聞こえるか?俺の事が分かるか?」
アクア「………。」
スマラ「…大丈夫。この腕が無くなろうとも、俺はお前を離さない。苦しみが無くなるまでずっとこのままでいい。だから…いつものアクアに戻ってくれ…!頼む…!!」
血で染まった右腕を必死に持ち上げ、アクアを優しく抱きしめた。
すると…海の牙が突然光り出した!
ペルラ「また牙の暴走!?」
アルマ「いや、暴走とは違う…?」
スノウ「アクアの記憶が蘇った事により、海の牙が本来の力を取り戻した…。牙自身も再び目覚めた、というべきか。」
海色の光は2人を優しく包み込んだ。アクアは噛みついていたスマラの右肩から口を離し人の姿に。スマラの右肩の傷は光がみるみるうちに癒し、怪我が消えた。
アクア「…スマラ…?」
スマラ「アクア、大丈夫か?」
アクア「私…思い出したわ、全てを…。海の牙が…私を助けて…くれ…た。」
スマラ「アクア!?しっかりしろ!」
ラクト「大丈夫、気を失ってるだけだ。」
スノウ「良かった…。」
再び人へ姿を変え運ばれたアクア。眠っているアクアの手をスマラはずっと握りしめていた。
スマラ「父上、教えてくれ。何故アクアは…記憶を封じなければならなかったのか…。」
ラクト「…ブルースを失い、故郷に帰ることも叶わないアクアが、感情のままに力を発動させた場合…自らの命すら奪いかねなかった。あの出来事は…まだ幼いアクアにとってはあまりに辛く、重すぎる事だったんだ…。」
スノウ「記憶が蘇り、力をうまくコントロール出来なかったが、スマラのアクアへの想いが海の牙を目覚めさせた。もう大丈夫。次からは自分で力をコントロールできるだろう。」
アクア「んっ…。」
ラクト「気がついたか?」
アクア「私…スマラに噛みついて…!!」
スマラ「傷ならこの通りだ。海の牙が癒してくれた。何よりも無事で良かった、アクア…。」
アクア「スマラ…ごめんなさい。そして…助けてくれてありがとう。」
一安心したスノウ達であったが…。
セイレーン·ケイヴでは新たな罠を仕掛ける者がいた…。
謎の男「遂に目覚めたかアクア…その強大な力を大いに利用させて貰おう。」
無事に記憶が戻ったアクアだが、さらなる罠が彼女を襲おうとしていた…。
To be continued…