小説「Aiming for the ground Octo」~遭遇~

ポナが待ち合わせの場所へ向かうと、既にアタリメ司令が待っていた。

アタリメ「おお、来たか3号。」

ポナ「New!カラストンビ部隊…ヒーロー3号、参りました!」

そう言ってポナが敬礼をすると、アタリメ司令は深く頷いた。

アタリメ「では早速、パトロールに向かうかの。」

ポナ「はい。…あ、司令…。」

アタリメ「ん、どうしたんじゃ?」

ポナ「司令は確か、タコの言葉が分かりますよね…読み方のメモとかってありますか?」

アタリメ「うむ、ならばこれをやろう…タコの言葉をアイウエオ順に書いてあるメモじゃよ。」

そう言って、アタリメ司令は小さなメモをポナに渡した。

ポナ「ありがとうございます。」

アタリメ「では、今度こそ出発するかの。」

ポナ「はい。」

ポケットにメモをしまうと、ポナはアタリメ司令と共にパトロールへと旅立った。

一方…地下へ戻った2人だったが、ツネは別室で待機を命じられ…先にエンがタコワサへの報告を終えた。

タコワサ『……………………。』

エン『…ツネはもう限界です、一刻も早い休息が必要な状態でしょう…。』

2人はしばらく話し合いをした末…

タコワサ『……ツネをここへ呼べ。』

エン『はっ!』

その後、エンはツネを呼びに行き…

ツネ『…お爺様…。』

タコワサ『……話はエンから聞いた、ツネ…お前にはしばらく任務から外れて貰う。』

ツネ『!!』

タコワサ『今のお前の状態では倒れてしまうのも時間の問題…エンとも話し合った末の決断だ。』

ツネ『そんな…エンやみんなが捜索を続けているのに、僕だけ任務を外れて休めと…!?』

タコワサ『ツネ、お前の気持ちは痛い程分かる…だがお前に何かあったらワシは…』

ツネ『それは僕も同じだ!ざくろやサマーニャ…仲間達を早く見つけないと…万が一の事があったら…!』

タコワサ『ツネ、これは命令だ。』

ツネ『……っ………!!』

タコワサの言葉を遮り抗議するツネだったが、冷静に『将軍命令』である事実を突きつけられた。

タコワサ『…分かっておくれツネ、ワシもエンもお前が心配なのだ…少しでもいい、今は休息を取ってくれ。』

ツネ『……だ……。』

タコワサ『…ツネ…?』

ツネ『……だ…嫌だ……。』

タコワサ『ツネ…!』

ツネ『嫌だ!』

タコワサ『ツネ、落ち着け!』

ツネ『嫌だ、僕は行くんだ!』

自分の命令を無視して飛び出そうとクアッドホッパーブラックを持って駆け出すツネの腕を、タコワサはタコ足で掴んで止めた。

タコワサ『ツネ、いい加減にしないか…!』

ツネ『離してくれ…お爺様…!』

グググ…ツネは全力でタコ足を押して振り解こうとしていて…

タコワサ『…ならば…仕方が無い…!』

そう言うとタコワサは瞳を閉じ、再びゆっくりと開いた…

しかしその瞳は…タコの瞳孔になっていて…赤く光っていて…

ツネ『ぐっ…!』

タコワサの瞳は…ツネと同じ「催眠」を使う瞳になっていたのだ。

ツネも瞳を変えて催眠の力を発動し、タコワサの力に抵抗したが…

タコワサ『……諦めろツネ、お前であってもワシの力には遠く及ばん…。』

ツネ『ぐっ…うっ…ぅ…お爺…様……!』

ぐらっ…ツネの体は大きく傾き、その瞳はゆっくりと閉じて腕は力なくぶらんと垂れ…

カシャンッ……クアッドホッパーブラックは床に落ちた。

タコワサ『…許せ…ツネ…。』

エン『将軍…!』

部屋の外で待機していたエンが駆け寄ると…タコワサの腕の中でツネが規則正しい寝息を立てて眠っていた。

ツネ「すぅ…すぅ…。」

タコワサ『…ツネが起きたら、こう伝えてくれ…。』

エン『…分かりました。』

タコワサはエンの耳元でそっと囁き、彼も深く頷いた。

そしてツネはタコワサによって休憩室へ運ばれ、ベッドに寝かされて布団を掛けられた。

タコワサ『エン、今回の案件は危険を伴う…だからこそ状況判断に優れているお前に頼みたい。周囲の捜索…及び現地の指揮を、代わりに引き受けてくれるか?』

エン『分かりました。』

タコワサ『済まない…ワシもここで指揮を取り、情報を集めよう。』

エン『お願いします。』

タコワサ『うむ、気をつけるのだぞエン。』

エン『はい。』

同じ頃…地上ではまめみが家の窓から外を眺めていた。

まめみ「……………。」

朝、別れたばかりなのに…心はぎゅっと苦しくて…

まめみは首から掛けられたペンダントに手を当ててポナの事を考えていた。

まめお「まめみ。」

まめみ「…まめお…。」

まめお「…ポナ、任務に行ったんだな。」

まめみ「…うん…。」

まめお「大丈夫だ、ポナは必ず帰ってくる…一緒に帰りを待とうな、まめみ。」

まめみ「うん…。」

まめおは何も言わず優しく抱きしめ、まめみは抱き返しつつ胸に顔を埋め…閉じた桃色の瞳からは涙の滴が零れて、まめおの服に消えた。

数時間後…ツネはゆっくりと目を覚ました。

ツネ「んっ…。」

エン『目が覚めましたか?』

ツネ『エン…僕は…そうだ…お爺様に…。』

エン『将軍も苦渋の決断でした…全てはツネを思っての事ですよ。』

ツネ『うん…分かってる…。』

ゆっくりと起き上がったツネだが、今まで無理をしていた反動が来て…体は鉛の様に重かった。

エン『将軍からの伝言です、『しばらくは地上で…まめみの傍で待機せよ。』との事でした。』

ツネ『お爺様…どうして…。』

エン『ツネの精神安定を考えての事でしょう…その間の指揮は私が任されました。彼女の…まめみさんの所で少し体を休めて下さい。』

ツネ『エン…怖いんだ…君まで失うのが…。』

エン『私は大丈夫ですよ、戦闘部隊では無いですが…貴方達に引けは取りません、それはよく知っているでしょう?』

ツネ『うん…でも…それでも…。』

エン『約束します、必ずみんなで再会しましょう。』

ツネ『エン……うん、約束だよ。』

エン『えぇ。』

ツネはエンと抱き合い私服に着替えると…ゆっくりと地上へ向かって歩き出した。

エンはそれを見届けると、再びタコマスクを付けて任務へと戻った。

夕方…

アタリメ司令「お疲れさん3号、今日はここで休もう。」

ポナ「はい。」

アタリメ「今晩ごはんの準備をするぞい、少し休んでいてくれ。」

ポナ「ありがとうございます。」

パトロールの任務で動き回り疲れ果てていたポナは、その場にゆっくりと座り空を見上げた。

地下世界なのに夕暮れから徐々に夜に変わりつつある空には星が輝いていて…ポナはそれを眺めつつ、まめみの事を思い浮かべていた。

今は晩ごはんの準備をしている頃かな…帰ったら、また2人でモンガラキャンプ場のあの場所に星を見に行こう…そんな事を考えながら、ポナはゆっくりと伸びをした。

同じ頃…まめおはサラダを作る為に野菜の買い出しに出かけ、まめみは自宅で晩ごはんの準備をしていた。

すると…ピンポーンとインターホンが鳴り…

まめみ「まめおかな…いつもは鍵で入ってくるのにどうしたんだろ?」

不思議に思いながらまめみが鍵を外してドアを開けると…そこに立っていたのはツネだった。

ツネ「…まめみ…。」

まめみ「ツっくん…最近全然遊びに来なかったけど、どうしたの…それに顔色も悪いし…目の下も酷いクマだよ…!」

ツネ「…………………。」

驚いてしまったまめみに対して、ツネは何も答えず…そっとまめみに寄りかかった。

まめみ「ツっくん…!」

ツネ「…まめみ…朝…あいつに……ポナに会った……。」

まめみ「ポナ君に…!?」

ツネ「……あいつは…僕にこう言ったよ……。『ツネ…君の任務が終わってからでいい…まめみの…まめみの傍に居てあげて欲しい…。』『俺はしばらく任務で帰れない…まめおも傍に居るけど…幼馴染みの君が居れば…まめみはもっと安心してくれると思う…お願いだ…俺が帰るまで…彼女を守ってくれ…。』ってね……。」

まめみ「……………!!」

ツネ「…あいつに言われたのは癪だし…言われなくてもそうするけど…僕がまめみの傍にいる…必ず守るから…。」

そう言って、ツネはまめみをぎゅっと少し強めに抱きしめた。

まめみ「ツっくん…ツ…っ…くん……!!」

桃色の瞳から大粒の涙をボロボロと流すまめみ…

そのまま抱きしめるツネの背中にそっと手を回して…優しく抱きしめた。

その後…まめおが帰って来た後に事情を説明し、しばらくツネはまめみ達の家に居候する事になった。

次の日…ポナはアタリメ司令と共にタコツボバレーのパトロールを終え、地上へ出ると今度はナンタイ山の方へと向かった。

アタリメ司令「ナンタイ山は広いからのぅ…時間をかけてゆっくりと回るぞい。」

ポナ「分かりました。」

アタリメ司令と共に歩き出したポナだが、ふと背後から視線を感じた…

しかし振り返っても誰も居ない…

アタリメ司令「どうしたんじゃ、3号?」

ポナ「いえ…何でもないです。」

気を取り直してポナは再びパトロールを再開したが…

場所は同じくナンタイ山…

1人のタコゾネス…ツミが単独で任務に来ていた。

ツミ『………………。』

紫の髪を揺らし、辺りを警戒するツミ…

すると…目の前にアタリメ司令とポナが現れた。

ポナ「アタリメ司令。」

アタリメ「タコゾネス…デラではないが油断は禁物じゃ、3号。」

ポナ「はい。」

私の目の前に現れた、イカの若者と老人。
若者のイカが羽織るマントが風でなびき、老人のイカは杖を私に向けて何やら指示を送っている。

彼らはヒーロー3号とその上司に当たるアタリメ司令…頭の中で瞬時に彼らの情報と状況を理解したが…

私は敵であるイカに対し『羨ましい』と言う感情が芽生えた

私の傍にはだれも居なかった…誰にも近寄らず、誰にも近寄られず…だから私は孤独なのだ

泣きそうになるのをぐっと堪え戦闘体勢に入った私を見て、相手もヒーローシューターを構え戦闘体勢に入った。

ツミ「私の使命はお前を倒す事!」

流暢なイカの言葉で話すと、ツミはヒーロー3号であるポナに狙いを定めて地面を蹴り走り出した…。

To be continued…