小説「夢結ぶ星りんご」~想いは愛となって~

2人は夢の泉の前に座り、お互いの今までの出来事を話した。

魔力を失ったマホロアがアナザーディメンションを彷徨い、力を取り戻しながら最後はマスタークラウンを自らの手で完全に滅ぼした事…プププ王国というパラレルワールドで万屋の店主として勇者カービィ達を支え、平和を見届けた後にローアが迎えに来てくれて戻って来れた事…

ローアがマホロアはいつか必ず戻ってくると教えてくれた事…アイシェが告白の件でマルクと和解した事…新しいお菓子作りを始めたり、デデデ城でピアノを演奏して歌ってた事…

お互いを1日たりとも忘れた事が無かった事…

そしてアイシェが隠していた秘密…全てを話した。

マホロア「ローアの声が聞こえたコトもビックリしたケド、アイシェが元々コノ世界に居なかったなんテ………というコトはボクが出ていたソノ「星のカービィWii」ッテいう作品が、生前のアイシェが遊んだ最後の記憶なんダ?」

アイシェ「うん。」

マホロア「全てを知ってたカラ、一生懸命ボクを止めようとしてくれてたんダネ。」

アイシェ「うん…でも私が生前に遊んだ時、マホロアは救えなかった…。」

マホロア「エッ?」

アイシェ「その作品では…マホロアはソウルになって、最後はカービィが魂を解き放って光の中に消えてそのまま…。」

マホロア「そうだったんダ…アイシェの時と、大きく状況が変わったノカ…。」

アイシェ「最初にマホロアがカービィ達にサポートの提案をしたよね、あれも私が遊んだ作品では無かった事なの。」

マホロア「ゲームの世界と状況が変わり過ぎてるネ、それがどうしてかは分からないケド…今アイシェとこうして一緒にいられるんだカラ最高ダヨ!」

アイシェ「…マホロアは嘘を吐いてたけど……私も一緒だよ。」

マホロア「エッ?」

アイシェ「結末を知っていながら話さなかった…もっと早く話してれば、もしかしたらって…この1年ずっと思ってたの…。」

そう話すアイシェの表情は悲しげで、マホロアは彼女の頭を優しく撫でた。

マホロア「アイシェが話していたとシテも、あの時のボクはきっとキミの話を信じてなかっタ…あの計画を止めるコトは無かったと思うんダ。」

アイシェ「マホロア…。」

マホロア「結果的にああなったケド、こうして再会出来タ…だからコレでヨカッタんダヨ。」

アイシェ「恋人同士になったばかりだけど、このお話を聞いて嫌いにならなかった…?」

突然何を言い出すのかと黄色い瞳を丸くして驚くマホロアだったが、アイシェの青い瞳は真剣そのもので…

マホロア「嫌いになるハズが無いヨ、それにボクの本性を全て知った上でアイシェはボクを受け入れて好きになってくれたんダカラ…逆にモット大好きになっちゃっタヨ!」

そう言うとマホロアは、アイシェの頬にちゅっとキスをした。

アイシェ「マホロア…ありがとう。」

マホロア「どういたしましテ。…マルクの恋人になってなくてホント~に安心したヨォ。」

アイシェ「マルクは私自身よりもずっと私の事を分かってくれてたよ、でもあの事が無かったら私はマホロアへの気持ちに気づかないままだったのかもしれない。」

マホロア「アイツがボク達の恋のキューピッド役カァ……すっごい癪だケド、感謝してヤルカ。」

少しだけ顔をしかめて言うマホロアに、アイシェはふふっと笑う

温かくて心地良い…ずっと止まっていた時が、再び動き出した様な不思議な気持ちを2人は感じていた。

すると、アイシェがマホロアの手をそっと握って…彼の黄色い瞳を真っ直ぐ見て口を開いた。

アイシェ「マホロア、本当に…本当に魔力はもう大丈夫なの?」

マホロア「ウン、本当ニ大丈夫ダヨ。」

アイシェ「…嘘ついてないよね?」

マホロア「クククッ…いくらボクが大切な恋人とは言え、虚言の魔術師ダカラ疑ってるのカイ?」

アイシェ「ううん、でも私はもう…マホロアを失いたくないの…。」

伏せられた青い瞳は揺れていて…漸く会えた嬉しさの反面、再び失う事への恐怖に襲われていて…それを理解したマホロアは、アイシェを優しく抱きしめた。

マホロア「夢の実現の為ニ少し旅に出たりシテ留守にするコトはあるケド、もうボクは消えたりしないヨ。あんな思いはコリゴリだからね…ボクもアイシェを二度と失いたくないモン。」

アイシェ「約束だよ。」

マホロア「ウン、約束するヨ。」

お互いに優しい笑みを浮かべて見つめ合う2人は、約束のキスをかわしてその後もしばらく抱きしめ合った。

トクン…トクン…

アイシェ「マホロア…温かい。」

彼の規則正しい胸の鼓動が聞こえてきて、自分の傍にいる…ちゃんと生きているんだと証明して安心させてくれる

しばらくして、マホロアは切れたマフラーを合わせ、ベルトを少し長く引っ張って縛り、自身の口元を隠した。

マホロア「ミンナが心配してるカラ、帰ろうアイシェ。」

そう言うとアイシェを突然抱き上げて、ふわっと浮き上がった!

アイシェ「きゃあっ!?」

マホロア「アハハッ、キミはいつも抱き上げると可愛い反応するネェ。」

アイシェ「だ…だってぇ…!」

いきなり抱き上げるし「お姫様だっこ」だからドキドキしてしまう…

そして今度は「恋人になってから初めて」であり、アイシェはさらにドキドキして彼を直視出来ない…。

マホロア「ボク達が誰ニモ引き裂けない熱くて深~い関係ダッテ、ミンナに見せツケテやらないトネッ!」

アイシェ「えぇ…ま、マホロアぁ…!」

「雲の夢」を口ずさみながらルンルンで飛んでいるマホロアだが…

マホロア「(アイシェはホント~に可愛いネェ。……恋人になったカラ、これからはあんなコトやこんなコトも……クッククク!)」

反省はしたが、人を驚かせたり物作りをしたり…そして自分の欲に正直な所だけは変わっていない様で…

それでも、それを悟られない様に隠すのが得意なのも「虚言の魔術師マホロア」なのだ

マホロアが邪な事を腹の中で考えてるとも知らず、アイシェは彼の胸元にそっと手を添えつつ、頬は真っ赤に染まってしばらく直視出来ずそっぽを向いてるのだった。

その後、2人はカービィ達の元へ戻り…

カービィ「アイシェ、心配したんだよー!」

バンワド「メタナイトから夢の泉に居たって聞いたんだ、無事でよかったよ!」

アイシェ「みんな、心配かけてごめんなさい!」

デデデ「まぁこうして戻って来たんだし、結果オーライだ。」

カービィ「ところで…どうしてマホロアはずっとアイシェを抱っこしてるの?」

アイシェ「…マホロア、もう下ろして…。」

頬を真っ赤にしながらお願いするアイシェだが、マホロアは満面の笑みで…

マホロア「ボク達、恋人同士になったんダヨ!」

何と堂々と交際宣言をしてしまうのだった!

しかしカービィ達は…

カービィ「やっと気持ちが通じたんだね、おめでとうアイシェ、マホロア!」

バンワド「よかったね、アイシェ!」

デデデ「もうアイシェを泣かせんじゃねぇぞ!」

祝福してくれる3人に、マホロアは驚いていて…

マホロア「エェ…どうしてそうなるノォ!?」

カービィ「だってマホロアがアイシェの事を大好きなのは、あの時から分かってたもん。」

バンワド「あの時のマホロア、アイシェを大事に隠してたもんね。」

デデデ「アイシェはボクだけのモノだ!って言ってたじゃねぇか。」

マホロア「ワーーーそれはモウいいヨォッ!!」

かつてアイシェを自分の「モノ」扱いしていたのは、今のマホロアにとっては黒歴史以外の何物でも無くて…

プシュウゥゥ…マホロアは恥ずかしさで真っ赤になってしまい、アイシェをそっと下ろしたのだった。

To be continued…