小説「夢結ぶ星りんご」~仲直りの印~

カービィ「落ち着いた?」

アイシェ「うん、ありがとうカービィ。」

カービィ「どういたしまして。」

いつもの笑顔を見せてくれるカービィに、アイシェの気持ちはとても落ち着いた

初めて会った時から変わらない、カービィはいつだって包み込んでくれる暖かさを持っていて…何度も救われてきた。

実はマホロアと暮らす事に抵抗があるのは、カービィの事もあるのだ…彼は恩人であり、大切な友達。家にも住まわせて貰ってるのに何も恩返しが出来ていない、それなのに自分だけ幸せな思いをするのは…そう思っていた。

今日だって少しでも恩返しが出来ればと掃除をしていたのに、結局またカービィに助けられてしまった…

アイシェ「(2人にも酷い事言っちゃったし…どうしよう…。)」

すると、カービィが落ち込んで俯いてしまったアイシェを見て口を開いた

カービィ「アイシェ、悩み事?」

アイシェ「えっ…どうして…?」

カービィ「落ち込んだり悩んでる時のアイシェは、耳が横に垂れちゃうから…。」

アイシェ「えっ…そうなの?」

カービィ「ずっと一緒に暮らしてるから、気づいたんだ。」

自分が知らない癖もカービィは知っている…彼はいつだって他人の事も思いやれる心の優しい性格なのだ、そしてそれをアイシェ自身もよく知っていた。

アイシェ「…カービィ、私ね…」

そう言うと、アイシェはマホロアから度々ローアで一緒に暮らしたいと言われている事を打ち明けた。

カービィ「そうだったんだ…でも恋人同士だもん、一緒に居たいって思うのは当然だよね。」

アイシェ「でも…私カービィが心配で…。」

カービィ「えっ、ボクが?」

アイシェ「私がこの世界に生まれ変わってから、カービィはずっと一緒に居てくれた…私をここに住まわせてくれて、何度も助けてくれた…それなのに私はカービィに何も恩返しが出来てない…。」

カービィ「アイシェ…。」

アイシェ「カービィ、私が居なくなっちゃったら…ご飯どうしようとか…寂しくないかな…とか…私だけ幸せになっちゃうのは…って…考えて…。」

ポツリ…ポツリと少しずつ言葉を絞り出すアイシェに、カービィは真剣な表情で聞いてくれて…ホットココアを飲み干すと口を開いた。

カービィ「アイシェ、ボクはアイシェが居なくなったら寂しいけど、ローアに毎日でも会いに行けるよ。」

アイシェ「えっ…?」

カービィ「確かにずっとアイシェと一緒に暮らしてたから、また一人暮らしは寂しいと思う…けど、友達が大好きな恋人と一緒に暮らしたいのを我慢してまで、ボクと一緒に暮らすのは違うと思うんだ。」

アイシェ「カービィ…!」

カービィ「ボクはアイシェもマホロアも大好きだよ、だから2人が幸せなのが一番なんだ。それにアイシェは何も恩返しが出来てないって言ったけど…たくさんもらってるよ。」

アイシェ「えっ…どういう事?」

カービィ「アップルパイや他のお菓子を作ってくれたり、ピアノや歌を聴かせてくれたり…一緒に遊んだり…キミが居てくれるのがボクにとっての恩返しなんだよ。」

アイシェ「カービィ…そんな…それでいいの…?」

カービィ「そもそも恩返しなんて言葉自体が要らないよね…だって大事な友達なんだから!」

アイシェ「カービィ…カー…ビィ…!」

そう言って両手を口に当てて再び泣き出してしまったアイシェに、カービィは立ち上がると頭を優しく撫でた。

カービィ「アイシェ、もう何も心配しなくていいよ。」

アイシェ「うん…うん…ありがとうカービィ…!」

ぎゅっ…アイシェはカービィを抱きしめ、カービィも満面の笑みでアイシェを抱き返した。

カービィ「それにしても…何かいいね。」

アイシェ「えっ?」

カービィ「釣りに行って帰ってきたら部屋がぐちゃぐちゃで、それをアイシェと一緒に綺麗にして…今までなら無かった事だもん。」

アイシェ「確かに…カービィは怒ってないの?」

カービィ「ん、全然怒らないよ。」

アイシェ「どうして?」

カービィ「マホロアが帰って来たって安心するんだ。こうやってドタバタするのもマホロアが居ないと起きなかったし、マルクもあぁ見えて楽しそうだし…あの2人、何だかんだ言って仲良しなんだと思うよ。」

アイシェ「…ふふっ、確かにそうだね。」

思えば、マルクがあそこまでムキになる相手もマホロアしか居ない…お互いに反発し合っているけど、心の底では認めているのかもしれないとアイシェは思った。

カービィ「あ、そうそう…見てよアイシェ、おっきいの釣れたよー!」

そう言ってカービィは台所から大きな魚を持って来た

アイシェ「わぁ、すごい!」

カービィ「今夜これを食べようよ!」

アイシェ「うん!…あ、そういえば…。」

カービィ「ん?」

アイシェ「2人に掃除の後、新しいりんごのお菓子を作るって言ったの…でもあんな酷い事言って追い出しちゃって…。」

カービィ「大丈夫だよ、謝れば仲直り出来るから。」

アイシェ「カービィ…うん、そうだよね。」

カービィ「新しいりんごのお菓子って、あれ?」

アイシェ「うん、きっと喜んでくれると思うの。」

カービィ「ボクも手伝うよ。」

アイシェ「ありがとう。」

2人は台所に並んで、仲良く作り始めた。

同じ頃…

マルク「ぶえっくし!」

マホロア「ウワッ…いきなり何ダヨ!?」

マルク「きっと誰かが噂してるのサ…。」

マホロア「悪い噂が流れてるんダネ~。」

マルク「お前よりはマシなのサ、そんな事言ってないで早く準備するのサ。」

マホロア「マルク、ホント~にコレでアイシェの機嫌が直るのカイ?」

マルク「アイシェはこれが好きだから、間違い無いのサ。」

マホロア「…マルクの方がアイシェの事に詳しいネェ…。」

マルク「そりゃあ、お前が来る少し前から知ってるからな。」

マホロア「…ボクはまだアイシェの事…知らない方が多いヨォ…。」

そう言って落ち込んでしまったマホロアだが、マルクは溜息を吐くと口を開いた。

マルク「これからはお前がたくさん知ってく事になるのサ、だから落ち込んでないでさっさと作るのサ。」

マホロア「…分かったヨ。」

すごく癪だが、マルクの言う通りこれから知っていけばいいんだ…マホロアはそう思ってひたすらに作り続けた。

結局準備を終えた頃には夕方になっていて…2人がカービィの家に着くと、甘いりんごの香りが漂ってきた。

コンコン…扉を叩くとカチャッと扉が開いて、カービィが出迎えてくれた。

カービィ「あ、マルクにマホロア。」

マルク「えっと…その…。」

カービィ「アイシェなら居るよ、入って。」

笑顔でカービィは迎え入れてくれて…言われた通り2人が入ると、奥の本棚の前にアイシェが座っていた。

アイシェ「マホロア、マルク…。」

マルク「…アイシェ…その…悪かったのサ…。」

マホロア「…ボクもホントに…ゴメンヨォ…。」

しょんぼりしつつ、2人はそっと背中に回していた手を前に出して…

そこには色とりどりの、小さくて綺麗な花束があった。

アイシェ「わぁ、これ…私に?」

マホロア「ウン…。」

アイシェ「ありがとう2人共…ふふっ、良い香り。」

花束を受け取り、とても喜んでいるアイシェを見て…マルクとマホロアはお互いの顔を見て笑顔になり、心底安心した。

マホロア「アイシェ、許してくれる…?」

アイシェ「うん、そして…私の方こそごめんなさい。」

カービィ「仲直り出来たね、それじゃあみんなでごはん食べよう!」

その後はカービィが釣ってきた魚を刺身にしたり焼いて食べて…デザートに2人が作った「焼きりんご」を食べた。

アイシェ「新しいお菓子、どう?」

マホロア「すごく美味しいヨォ!」

マルク「また違った美味さがあるのサ!」

2人にも大好評で、アイシェはとても嬉しそうに笑うのだった。

To be continued…