小説「夢結ぶ星りんご」~その涙は甘い味~

楽しいパーティーの時間はあっという間に過ぎ、皆が帰った後にデデデの食事をする部屋で、いつものメンバーによる打ち上げが始まった。

アイシェ「はい、アップルパイをどうぞ!」

綺麗に切り分けて運ばれたアップルパイは、とても美味しそうな甘い香りが漂ってくる

カービィ「わーい、いただきまーす!」

大喜びのカービィは一番乗りで食べ始めて…

バンワド「ボクもいただきます!」

次々とみんなも食べ始めた。

デデデ「ん~今回も美味いな!」

メタナイト「また腕が上がったな、アイシェ。」

アイシェ「ふふっ、ありがとうメタさん。」

カービィ「はぁ~アイシェのアップルパイって、食べるとすごく幸せな気持ちになれるよ。」

アイシェ「えっ?」

カービィ「きっと、アイシェの気持ちがこもってるからだね!」

アイシェ「カービィ…!」

マルク「カービィも、たまにはいい事言うのサ。」

カービィ「一言余計だよーマルク!」

マルク「おっほっほっほ、よそ見してるとボクが食べちまうのサ?」

カービィ「絶対ダメ!!」

アイシェ「ふふっ、まだあるから喧嘩しないで。」

賑やかに談笑しながら食べる中、マホロアは無言で黙々と食べていて…突然俯いてしまった。

マホロア「………………。」

アイシェ「マホロア、どうしたの?」

マホロア「………………。」

気がついて声をかけたアイシェだが、マホロアは俯いたままプルプルと震えていて…

アイシェ「美味しくなかった?」

カービィ「えーこんなに美味しいのに?」

バンワド「もしかして具合が悪いんじゃ…?」

デデデ「おい、大丈夫か?」

マホロア「………………。」

メタナイト「マホロア…?」

アイシェ「マホロア、どうし…」

心配したアイシェがそっと触ると…

マホロア「アイ…シェ……アイシェ……ッ……!!」

アイシェ「マホロア!?」

顔を上げたマホロアはボロボロと涙を流していて、アイシェを含めてみんな驚いてしまった!

マルク「おまっ…一体どうしたのサ!?」

マホロア「ウッ…ウゥ…グスッ……ッ……!!」

流石のマルクも驚いた様子でマホロアを見ていて…しかし当の本人は気にする様子も無く溢れ出る涙を一生懸命拭っているが、どんどん涙が出てきて止まらない…。

アイシェ「マホロア…どこか痛いの?」

マホロア「ウウ…ン…違…違うんダ…ッ……!」

ぎゅっ…人目もはばからず、マホロアはアイシェを痛いくらい強く抱きしめて離してくれなくて…

デデデ「…バンワド、客人用の部屋に2人を案内してやれ。」

バンワド「分かりました。」

デデデ「何か思い出しちまったのかもしれねぇ、今夜は泊まっていけばいい、アイシェが傍に居てやれ。」

アイシェ「うん、ありがとう大王さま。」

バンワドの案内でアイシェは泣いているマホロアを連れて部屋を出て行き、その場にはカービィ達が残された。

カービィ「マホロア、あんなにアップルパイ食べるの楽しみにしてたのに…どうしちゃったんだろ?」

マルク「アイツが素であんなにボロ泣きしてんの、初めて見たのサ。」

知り合いとはいえ、それなりに付き合いの長いマルクでもあんな姿のマホロアを見たのは初めてで…かなり驚いている様子だ

メタナイト「アイシェのアップルパイが、マホロアの心に刺さったんじゃないだろうか?」

カービィ「どういう事、メタナイト?」

メタナイト「あの時と今では状況が全然違う…過酷な1年を乗り越えて手に入れた安心感に、緊張の糸が切れたのかもしれない。」

カービィ「そっか…アナザーディメンションに迷い込んで…更にパラレルワールドの世界に居たって言ってたもんね。」

メタナイト「1年前…アイシェがローアにマホロアはいつか必ず戻って来ると言われたと話していたな…ローア自身はいずれマホロアを迎えに行くつもりだったのだろうが、本当はこうして戻って来てアイシェと再会出来たのも奇跡なのかもしれないな。」

カービィ「…ボク、このアップルパイを部屋に届けてくるよ!」

そう言うと、カービィはマホロアの食べかけのアップルパイのお皿を持って出ていった。

デデデ「メタナイトにマルク、お前らも泊まるか?」

メタナイト「いや、明日も剣の修行で早いからな…食べ終えたら帰る。」

マルク「ボクも夜の散歩に行くから、帰るのサ。」

デデデ「そうか、気を付けてな。」

アップルパイを囲んで3人は談笑を続ける一方、バンワドに案内されて着いた部屋で泣き続けるマホロアに、アイシェは静かに寄り添っていた。

バンワド「何かあったら、いつでも呼んでね。」

アイシェ「うん、ありがとうバンワドくん。」

カービィ「アイシェ、マホロア。」

アイシェ「カービィ。」

バンワド「どうしたの?」

カービィ「マホロアの食べかけのアップルパイを持ってきたんだ、ここに置いとくね。」

そう言って、カービィは小さなテーブルにそっとアップルパイのお皿を置いた。

アイシェ「ありがとうカービィ。」

カービィ「どういたしまして。」

ニコッと笑って手を振ると、バンワドと共に部屋を後にしたカービィ…

そして泣いていたマホロアも、漸く口を開いた。

マホロア「グスッ…ゴメンネ…アイシェ…。」

アイシェ「ううん、気にしないで。」

優しい手つきで背中を撫でてくれるアイシェの手は温かくて、マホロアはとても安心した。

マホロア「…アイシェのアップルパイを1年振りに食ベテ……すごく美味しくテ……キミと初めて会った時のコト…過ごした時間……ボクが犯した過チ…離ればなれダッタ1年…全部一気に押し寄せて来テ…涙が止まらナク…テ…。」

アイシェ「もう大丈夫、これからはずっと一緒だからね。」

マホロア「ウ…ン……ウン…ッ…アイシェ…!」

泣きながらも笑って抱きしめるマホロアを、アイシェも優しく笑って抱き返した。

その後…漸く落ち着きを取り戻したマホロアは、改めてアイシェのアップルパイを口にした。

アイシェ「どうかな?」

マホロア「全宇宙デ一番、美味しいヨ!」

アイシェ「ふふっ、大げさなんだから。」

マホロア「大げさなんかジャないヨ、ホント~に全宇宙デ一番ナノ!」

アイシェ「あははっ……うん、ありがとうマホロア。」

プンプンとちょっとだけ怒るマホロアに、アイシェは思わず笑ってしまったが…彼の本音が聞けた事…今まであまり見れなかった「素のマホロア」がどんどん見れている事に喜びを感じていた。

マホロア「…キミの作った味ヲ、一緒に味わいたいナァ。」

アイシェ「え、どういう意…」

聞き終える前にマホロアの口が自分の口を塞ぎ…そのまま舌で優しくこじ開けられて、口内に甘いアップルパイが広がった。

マホロア「2人で一緒に食べタ味はどうダイ?」

アイシェ「…美味しい。」

ドキドキしつつもゴクリと飲み込むと、マホロアは満足そうに笑って残りを平らげた。

その後ベッドに横になった2人は…

マホロア「アイシェ…ずっと抱きしめててイイ?」

アイシェ「うん。」

マホロア「アリガトウ、アイシェ…温かいヨ。」

アイシェ「マホロアも温かいよ。」

お互いの体温は心地良くて、2人をあっという間に眠りの世界へと誘い…それでも朝までお互いを離す事は無かった。

To be continued…