小説「夢結ぶ星りんご」~大人の香り~

アイシェの話を聞き終えたドロッチェは、その赤い瞳でアイシェを真っ直ぐと見つめたまま口を開いた。

ドロッチェ「だからオレの事も知っていたんだな。それにしてもオレ達が君の世界では架空の存在だったなんて…不思議な感覚だな。」

アイシェ「この世界に生まれ変わって1年過ぎたけど…今でも不思議な気持ちなの、カービィ達やマホロアが居て…でもみんなと一緒に過ごしていける毎日が幸せで楽しい。」

そう話すアイシェは心から幸せな笑顔で、それを見たドロッチェは赤い瞳を細めて優しく笑う。

ドロッチェ「君は素敵だな、アイシェ。」

アイシェ「えっ?」

ドロッチェ「君はカービィと似ている…とても心優しい所がね。」

アイシェ「私が…でも、カービィの方がずっと優しくて強いよ。」

そう言って青い瞳を少し伏せて優しく笑うアイシェに、ドロッチェは突然頭を下げて覗き込んできて…

ドロッチェ「その芯の強さや心の美しさから来る優しさは、アイシェだけのものだ。」

アイシェ「ドロッチェ……あり…がとう。」

再び頬を真っ赤に染めて照れつつも、アイシェがお礼を言うと…

ドロッチェ「どういたしまして。」

ドキン…

とても穏やかな笑みを浮かべるドロッチェに、アイシェの胸は高鳴った。

マホロアには無い魅力が彼にはあって…

低い声は心地良く、年齢を重ねた大人の落ち着き…鋭く光る赤い瞳の奥に見える優しさ…紳士な振る舞いやつけている香水も更に彼の魅力を増していて、アイシェはドキドキが止まらない。

一方、それを遠くで見ていたマホロア達は…

マホロア「離せよマルクーーーボクは今すぐアイシェを連れ帰らないといけないんだカラ!」

マルク「落ち着けマホロア、今出たら事態が悪化するのサ!」

怒って飛び出そうとするマホロアを、マルクが翼を出して必死に抑えていて…それをタランザが呆れた様子で見ている…。

タランザ「マホロアはもう少し落ち着きを持った方がいいのね。(あのドロッチェという男、女性の扱いに慣れてるの…あれは要注意なのね。)」

紳士の嗜みを身に付けているタランザには、ドロッチェの振るまいが長年の経験によって積み重ねられてきたという事が伝わってきて…アイシェがその雰囲気に「飲まれてしまわないか」を心配していた。

そんな3人の様子を知る由も無く、ドロッチェは立ち上がって口を開いた。

ドロッチェ「話を聞かせてくれたお礼に、カワサキの店でスイーツでもどうだい?」

アイシェ「うん、行きたい。」

ドロッチェ「決まりだな、ではお手をどうぞ。」

そう言ってドロッチェは鋭い爪の生えた手をそっと差し出し、アイシェも優しく手を乗せた。

そして2人はゆっくりとカワサキの店に歩き出したのを見ていたマホロア達は…

マホロア「アイシェ、ドコ行くノ!?」

マルク「食事でもすんじゃねーのサ?」

マホロア「暢気な事言ってんじゃネーヨ!もしかしタラこのままアジトに連れて行かれテ…!」

アイシェ『ドロッチェ…何をするの…!?』

ドロッチェ『オレの送ったドレスで来てくれてたって事は…そういう事だろう?』

そう言いながら、ドロッチェはアイシェをゆっくりとベッドに押し倒して…

アイシェ『やっ…マホロア助けて…!』

ドロッチェ『誰も来ないさ、ここはオレ達2人きり…さぁ、楽しませて貰おうか。』

そう言ってドロッチェがアイシェのドレスをやや乱暴に剥いでいって……

マホロア「ウワアァァァーーーボクのアイシェが泥棒ネズミにアンナ事やソンナ事をされチャウ!!」

マルク「お前、流石にその妄想はヤベーだろ!」

タランザ「いくら何でも妄想が過ぎるのね!ていうかそれ自分がアイシェにやるつもりでしょ!?」

マホロア「ボクがソンナ野蛮な事をするワケないダロ?ボクはムードを作ってカラ、まず太ももを撫で回してゆっくりと脱がしていって…何なら魔法で拘束しちゃうのもイイカモネェ。拘束されてるアイシェがボクの手で恥じらいながらモ……フフ…フフフッ…!」

マルク「うわ…お前いつもそんな感じなのサ…?」

タランザ「ド変態なのね…。」

1人で妄想を繰り広げるマホロアに、マルクもタランザもドン引きしていて…そうこうしながら追ってる間に2人はカワサキのお店に到着し、その時もアイシェを先に店内に入れるというレディーファーストな振る舞いを披露して…驚くマホロア達を背にスイーツを食べ始めた。

ドロッチェ「どうだい?」

アイシェ「美味しい!」

ガトーショコラを美味しそうに食べるアイシェを、頬杖をつきながら優しい笑みを浮かべて見るドロッチェ…端から見ればまるで恋人同士の様な光景だ。

そして、2人に追いついて遠くから様子を見ていたマホロア達は…

マルク「やっぱり食事だったのサ、お前の気持ち悪い妄想とはかけ離れてるのサ。」

マホロア「気持ち悪いとか言うなヨォ!恋人として当たり前の心配ダロ!?」

タランザ「さすがにそこまでの心配はしないのね。」

マルク「お前ヤベー部類の恋人だと思うのサ、まぁ素がヤベー奴だし仕方無いけどな。」

マホロア「テメーさっきカラ聞いてレバ、ボクを貶してるダケダロ!」

タランザ「マルクの言う通りなの、大体マホロアがド変態過ぎるのね。」

マホロア「アイシェが受け入れてくれてるんダカラ、それでいいんダヨ。」

マルク「アイシェの優しさに甘えてるのサ。」

タランザ「度が過ぎると良くないのね。」

呆れるマルクとタランザをよそに、マホロアはアイシェをじっと見ていて…

マホロア「(何でソンナ楽しそうに食べてるんダヨォ…ボクと一緒に食べた方が絶対いいノニ…。)」

そう思うマホロアの黄色い瞳は揺れていて…アイシェを信じている気持ちと不安が混ざり合って、複雑なのだった。

To be continued…