オリジナル小説「海に祝福されし王女」

ワニ達の暮らす蜃気楼の島、ミラージュアイランド…太古の昔より3つの強大な力をもつワニ達が島を支えているという伝説がある

そのワニ達は…広大な蒼き海の力を授かりし【ラグシー】眩い光の力を授かりし【ルーエ】暗黒の闇の力を授かりし【ダーク】

彼らは【三大ワニ】と呼ばれ、その力は一族の者に代々受け継がれてきた

そして、その三大ワニを支える存在がいる。暖かき波の力を授かりしワニ【ザフィーア】空に舞う雪の力を授かりしワニ【スノウ】闇に潜む影の力を授かりしワニ【ネグロ】彼らは互いの存在を認め合い、助け合って生きてきた。そのお陰で今まで争い事もなく平和に暮らしてきたのである。

こうして時は流れ…

ここは海底にあるラグシー一族の国

王宮には花が美しく咲き乱れ、庭にある噴水は太陽の光を浴びてキラキラと輝いている庭に、人がやってきた

彼の名はブルース・ラグシー・ディール、ラグシーの血を引く国王だ。隣にいる女性はマリン・ザフィーア・ディール、ブルースの妻でありザフィーア一族の女王でもある。

そしてマリンが抱いているのは2人の娘、アクア・ラグシー・ザフィーア・ディール

ラグシーとザフィーアの血を引く2国の王女である彼女に、様々な出会いや出来事が待ち構えている等、当時は誰も知る由もなかった…。

 

~海に祝福されし王女~

 

2つの一族を繋ぐアクアの誕生…それは誰にとっても喜ばしいことであり、両親だけでなく国民にも祝福された

両親の愛情を受けたアクアはすくすくと育ち、人間年齢の2歳(実年齢10歳)の誕生日を迎えたのである

アクアを抱くマリンの手を取り、王宮の外へ出たときに3人を迎えたのは国民の祝福の声…その声は絶えることなく続き、無事に誕生日パーティーを終えたのだった。

王家騎士「お疲れ様でした、今年のお誕生日パーティーも盛り上がりましたね。」

ブルース「これも皆のおかげだ、ありがとう。」

王家騎士隊「はっ、勿体なきお言葉!」

マリン「アクア…あなたは私達の宝よ。」

王家騎士「ラクト様、スノウ様、ガーリル様がお見えになられました。」

ブルース「通してくれ。」

王家騎士「はっ。」

しばらくして…王家騎士の案内の元、ルーエ、スノウ一族の国王スノウ、ネグロ一族の国王ラクト、ダーク一族の国王ガーリルが部屋に入ってきた。

スノウ「久しぶりだな!」

ラクト「おめでとうアクア!」

ガーリル「おっ、また大きくなったなー!」

そう言ってガーリルはアクアを抱き上げた。

ブルース「みんなとは久々の再会だ、俺達は家族同然の付き合い…ゆっくりしていってくれ。」

マリン「ガーリル、国のほうは大丈夫なの?」

ガーリル「まだ完全に元通りになった訳じゃないが、スノウの協力もあって大分落ち着いてきたよ。」

スノウ「これからも惜しみなく協力していくつもりだ。」

ブルース「俺達もいつでも力を貸そう、遠慮無く言ってくれ。」

ガーリル「ありがとう。」

スノウ「話は変わるがラクト、あれからスマラの様子はどうだ?」

ラクト「何事もなく元気だ、まるであの悪夢が夢のように今日もアルマ、ペルラと一緒に遊んでいる。」

マリン「クロスカルによる呪い、一体何が目的で…。」

ラクト「分からん…だが奴はスマラの何かに目を付けていることは確かだ。」

ガーリル「今の俺達にできる事は様子を見るだけか…。」

スノウ「呪いにより右目は紅く染まり、時折現れる傷…何としても解決策を見つけねば。」

アクア「がぁ…りゅる」

スノウ「ん、何だアクア?」

ブルース「もしかして、ガーリルって言ってるのか?」

マリン「そうみたい、ふふっ…可愛い。」

ラクト「どうやらアクアはお前の事が気に入ってるようだな。」

ガーリル「何ならアクアが大きくなったら俺の嫁にくれるか?俺達はどうせ見た目と実年齢が大きく異なるんだし、問題ないと思うぜ。」

アクアを抱っこしながらガーリルはニヤッと笑いブルースに言うと、その場は笑い声に包まれた。

ラクト「アクアはマリンに似てきたな、美しく成長して皆の誇れる良き女王になるだろう…みんなの顔も見れて気が楽になった、ありがとう。」

マリン「よかったわ、ラクト。」

この後3人はブルース達と別れを告げ、王宮を後にした。

ラクトは一足先に国へ戻り、2人はしばらくその場で思い出話などをして過ごした。そして…

スノウ「それじゃあな、ガーリル。」

ガーリル「…あぁ。」

スノウ「ガーリル…そんな寂しそうな顔するなよ。俺達は互いに助け合う運命の一族、幼なじみでもあり親友でもあるんだ…何かあったらいつでも俺に言え、それにラクトだってお前の事をいつでも気にしてるんだから。」

ガーリル「そうだよな…本当にありがとうスノウ。」

元気づけられたガーリルは彼と別れて国へ戻り、お風呂に入って疲れを癒やした後に自室に戻って今日の事を思いだして居た

すると突然部屋の中が薄暗くなり、何やら不気味な気配を感じる…

只事では無い、そう察したガーリルは戦闘態勢に入ったが…その直後に部屋中に不気味な声が響いた

謎の声『フフフフフ…まさか王族に生き残りがいたとはな…とんだ誤算だったわ。

ガーリル「その声…ま…まさか!?」

謎の声『そうだ…かつてお前の両親とその仲間の王族を滅ぼした張本人だ。

ガーリル「貴様っ!!」

謎の声『ククク…憎いだろう?我が倒せると思うのなら追ってくるがよい…ただしそれぞれの一族の持つ【牙】が必要だがな、恨みと引き替えに友人との関係を絶ち切れるのなら…フフフ…フハハハハハ!!

そう言い残すと謎の声は消え、ガーリルはそのままベッドに座り込んだ

仇を討つべきか今の幸せな時間を大事にしていくか、何時間も悩み続けた結果…

ガーリル「おい、誰かガーラスを呼べ。」

王家親衛隊「はっ、ただいま。」

ガーラス「王家親衛隊長ガーラス、参りました。」

親衛隊の隊長であり、彼の右腕でもあるガーラスの姿を確認すると…深呼吸をしてゆっくりと口を開いた。

ガーリル「ガーラス…奴が現れた。」

ガーラス「それは本当ですか!?」

ガーリル「あぁ…だが奴を倒すにはそれぞれの一族の【牙】が必要だと言っていた。」

ガーラス「しかしガーリル様、それは憎しみに身を売るようなもの…いくら話した所でブルース様達が渡すとは思えません。」

ガーリル「……牙を奪い仇を討つ。」

ガーラス「ガーリル様…!」

ガーリル「俺や皆の両親の命を奪ったあの悪魔を俺は決して許さない…俺が仇を討つ!すまない……………許してくれ。」

ガーラス「…分かりました、それが我らの主君ガーリル様の御決意なさった事なら…私達はどこまでもお供いたします。」

ガーリル「ガーラス…!」

ガーラス「我が命は既にあなた様に託しております、私達は命に代えてもガーリル様をお守り致します…どうぞ我らに命を!」

ガーリル「…すぐに準備しろ、牙を奪うぞ!」

例え仲間達との絆を絶ち命を落とす事になっても、もう後戻りは出来ない…彼の瞳に迷いは無く、強い決意が秘められていた

数日後

スノウがガーリルの元を訪れたが、城の中はまるで廃墟になったかのように静で人の気配は無く…長い間人が住んでいないような雰囲気さえする

いつもなら親衛隊が出迎えて、ガーリルがとても嬉しそうな顔をして自分を迎え…幼き頃の話などをして盛り上がるのに…

いつだって2人は一緒だった、遙か昔から変わらないルーエ一族とダーク一族の繋がり…光と闇は一心同体、決して離れられない運命なのだ

とても嫌な予感がスノウを襲う一方、その知らせはブルースの元にも届いていた。

ブルース「ガーリルが居ない?」

王家親衛隊「はい、先ほどルーエ一族の騎士から連絡があり、ブルース様にお伝えして欲しいとの事でした。」

ブルース「変な話だな、今までそんな事は無かったんだが…もしかしたらガーリルの身に何かあったのかも知れん、今からスノウの所へ行ってくる。」

マリン「気をつけて。」

ブルース「すぐに戻るからな。」

マリンの額に口づけをして優しく抱きしめたブルースは、彼女に見送られスノウの元へ向かうため陸へ向かい…

マリンは無事を祈りつつ、抱き抱えた娘アクアと共に海面に向かって泳いでいく彼の姿をずっと見ていた。

今こうして一つの『悲劇』が起ころうとしていた…動き出した運命の歯車は止まる事を知らない…

そして、アクア自身にも危険が迫っている事も…。

~To be continued…~