小説「緑髪の少年(再会編)」~新たな出会いと寂しげな瞳の少女~

あれから何日かして…まめみは今日もポナの元へ向かい、まめおはナワバリバトルへ出かけた。

しかし…今日はまめおにとって「運命の出会い」の日になる事は、まだ誰も知る由はなかった。

ステージはアロワナモールとショッツル鉱山。

まめお「(まずはショッツルか…頼むぞ、パーマネント・パブロ。)」

そんな事を思いながら試合を開始!

まめおがベルトコンベアの付近を塗っていると…

ガール「危ない!」

まめお「!!」

ベルトコンベアの上から敵が!

まめおが覚悟を決めたその時!

ガール「させないわよ!」

バーン!!

声の主であるガールがダイナモローラーテスラを振り下ろして敵を倒し……そのまま…まめおの上に落ちてきた!

まめお「なっ…!」

ドッシーン!!ガールはまめおに直撃して、2人共その場に倒れた。

ガール「んっ…!」

『むにゅっ』

まめお「(痛ってぇ…何だこの感触)……っ……!!」

痛みを感じつつ目を開くと…自分の鼻を挟むようにガールの胸が!

ガール「痛た…あ、大丈夫?」

そう言うとガールはまめおから離れた。

鋭い目つきの緑色の瞳のガールに、まめおは全身にビリッと電流が流れるような感覚を覚えた。

まめお「(な…何だコイツは…)あ…あぁ大丈夫だ、ありがとな。」

ガール「どういたしまして。」

そう言うとガールは立ち上がってテスラを担いだ…が。

突然まめおの方を振り向いてじっと見ている。

まめお「な…何だよ、何か用か?」

ガール「…あんた。」

まめお「…何だよ。」

ガール「もう少し周りを見て塗んなさいよ。ボケッとしてるとさっきみたいに不意を突かれてやられるわよ~。ま、あたしが助けてあげたからやられずに済んだけどね。」

まめお「なっ…!?」

ガール「じゃーね。」

そう言い残すと、ガールはテスラを振りつつ塗りに行ってしまった。

まめお「…な…な…何なんだよあの女!?」

何て生意気な女だ!まめおは怒りを覚えつつも塗りに戻っていった…。

試合後、改めてガールに話しかけようと思っていたが…既に姿はなかった。

一方まめみは…。

ポナ「えっと…まめみとまめおは…ブキと会話が出来るんだよね…?」

まめみ「うん、そうだよ。あたしとまめおは…お母さん達から受け継いだ力で、ブキと心を通じ合わせて会話をする事が出来るの。」

ポナ「不思議な力だなぁ…。」

まめみ「ポナ君も、事故の前は感情に合わせて目の色が変わってたんだよ。」

ポナ「そうなんだね…覚えてないや…。」

まめみ「あ、そういえばね…この前ポナ君のお姉さんに会ったんだよ。」

ポナ「姉さんに…?どうして姉さんの事を知ってるの…?」

まめみ「記憶を失う前に…ポナ君が教えてくれたの。ペコちゃんって言うんだよね?」

ポナ「うん、そうだよ。ペコ姉さん…この前お見舞いに来てくれたんだ。」

そう話すポナの表情はどこか嬉しそうで…まめみは心が暖かくなった。

あれからポナは順調に回復して…もう何日かすれば退院するまでになっていた。

すると…

コンコン、ガラッ…。

まめお「ポナ!まめみ!」

まめみ「まめお!」

ポナ「まめお…来てくれたんだね。」

まめお「最近来れなかったからな…ポナ、調子はどうだ?」

ポナ「うん、おかげでもう少ししたら退院できるよ。」

まめお「そっか、それならよかったぜ。」

ポナ「心配してくれてありがとう。」

この時のポナは今までの様な固い表情ではなく、柔らかい表情で口元はうっすら笑っていて…少しずつ打ち解けてきた様子に、2人も安堵の表情を浮かべた。

まめみ「あ、そういえばまめお…今日のナワバリはどうだったの?」

まめお「それがさ…変な女に出会っちまってよ…」

そう言いかけたまめおだったが…

コンコン…ガラッ…

ペコ「ポナ、今日の具合はどう…?」

ポナ「姉さん。」

まめお「ね…姉さん!?」

まめみ「あ、こんにちは!」

まめお「まめみ…!?知ってるのか…?」

まめみ「うん、前にポナ君から聞いた事があるの。それにこの前偶然会って…」

そう言ったまめみだったが…ペコの口からは衝撃の言葉が…

ペコ「初めまして…あなた達は…誰…?」

まめみ「え…!?あの…私…まめみです…この前会ったじゃないですか…!」

ペコ「………?ごめんなさい、記憶がないわ…。」

まめみ「そんな…!?」

ポナ「…えっと…姉さん、僕…少し喉が渇いちゃった…飲み物買ってきて欲しいな。」

ペコ「えぇ、分かったわ。ちょっと待っててね。」

そう言うとペコは飲み物を買いに病室を出て行った。

ポナ「…ごめんね、まめみ…びっくりしちゃったでしょ…。」

まめみ「どういう事なの…ポナ君…?」

ポナ「…姉さんは昔から…一日経つと記憶が消えてしまうみたいなんだ…。」

まめみ「え…!?」

まめお「記憶が…消える…!?」

驚く2人に、ポナはこくり、と頷いて…話を続けた。

ポナ「家族…僕の事は覚えていられても…他の人や出来事までは…。」

まめみ「そうなんだね…。」

まめお「それでなのか…すごく…寂しげな目をしてたな…。」

ポナ「…まめみ、まめお…姉さんとも…仲良くしてあげてくれる…?」

まめみ「ポナ君……うん、もちろんだよ。」

まめお「もちろんだポナ、断る理由がねえよ。」

ポナ「ありがとう…2人共。」

少しして…ペコが戻ってきた。

ペコ「ポナ、飲み物買ってきたわ。2人もどうぞ。」

2人「ありがとうございます!」

ポナ「ありがとう、姉さん。…紹介するよ、まめみとまめお…僕の大切な友達だよ。」

まめみ「初めまして、まめみです。さっきは…あたしの勘違いだったみたいで、ごめんなさい。」

まめお「まめおです、まめみとは従兄妹で…。」

ペコ「そうなのね、私はペコ…よろしくね。」

2人「よろしくおねがいします。」

ペコ「…かしこまらなくていいわ、気軽に…タメで話しましょう。」

まめみ「えっと、それじゃあ…よろしくね、ペコ…ちゃん。」

まめお「よろしくな、ペコ。」

ペコ「改めて、よろしくね…まめみ、まめお。」

そう言って、お互いに握手をした3人。

4人での会話も弾み…その後病院を出てペコと別れ…スルメさんのお店に向かって行ったまめおとまめみだったが…。

スルメさん「おかしいな…どこに行ったんやろ…。」

よっちゃん「どこにも無いわねぇ…スルメさん、食べちゃったの忘れてるんじゃ無いの?」

スルメさん「失礼やな!ボクはまだボケとらんで!」

まめお「おいおい…どうしたんだよ2人共…。」

まめみ「何か探してるの?」

スルメさん「おぉ…まめお、まめみ。」

よっちゃん「ご飯作ろうと思ったんだけど、よそっておいたご飯とおかずが消えてるのよ…。」

スルメさん「2人で探しとるんやけど、どこにも無いんやわ…。」

まめお「何だそりゃ…変な話だな…。」

よっちゃん「これ以上探してもキリが無いから…作り直すわ。」

まめみ「よっちゃん、あたしも手伝うよ。」

よっちゃん「ありがとうまめみちゃん!助かるわ~。」

そう言って2人はご飯を作りに台所へ向かった。

スルメさん「それにしても…ホンマにどこに行ったんやろ…。」

まめお「まさか…泥棒が入ったとかじゃねぇよな…?」

スルメさん「それは無いと思うんやけど…他には何も無くなっとらんし…。」

まめお「そうか…。」

そんな会話をしている頃…。

ハイカラシティの…誰も居ない路地裏で…

作られたおにぎりと、おかずを無心で貪る人影が1人…。

この前明かりを眩しそうに眺めていたボーイだ。

ボーイ「………………。」

そして食べ終えるとイカの姿になり、暗闇に紛れて消えた…。

To be continued…