オリジナル小説「看病」

些細な事で喧嘩をしてしまったスマラとアクア

仲直りをしないまま夜があけた一方、陰謀の闇はすぐそこまで近づいてきていた…。

~看病~

 

次の日の朝、アクアは早く目覚めた

体が熱くて重い…隣で寝ているスノウを起こさない様にそっとベッドから降り甲板へ出ると、潮風が頬を撫で気持ちいいが夜明けの海はまだ寒く、顔はほんのり赤く目はトロンとしている…そこへスマラがやって来た。

スマラ「アクア…。」

アクア「…………。」

スマラ「昨日は本当にごめん…お前があんなに頑張ってるって知らなくて…その…日記の話を聞いて…というか勝手に見たんじゃないんだ!ち…じゃなくてラクト様が心配して部屋を訪れたらそれを見つけてそれで…って何だかこれじゃ回りくどいな、つまり何が言いたいかと言うと…本っ当に悪かった!」

スマラはその場で謝ったが、アクアからの返事はいつまで経っても無い…許してもらえないのかと思いつつスマラが顔を上げたが…

アクア「スマ…ラ…。」

スマラ「ん、どうした……アクアっ!」

アクアは突然フラっと倒れかけ、スマラが体をしっかりと抱き留めた。

まず最初に彼に伝わってきたのは熱くなったアクアの体で、額に手を当てるとすごく熱い。

この後アクアはスマラによってすぐ部屋に運ばれ、みんなが集まってきた。

スノウ「ずっと具合が悪いのを黙っていたのか…海の上は気候の変化が激しいからな…。」

ラクト「今までの疲れもあったんだろう…しばらくゆっくり休ませた方がいい、誰か部屋に残って他の者は今後について話し合いたい。」

スノウ「俺がここに残る。」

ラクト「だがスノウ、お前がいなければ始まらない。」

アルマ「スノウ様、話し合いが終わるまで私が代わりにアクアを見てましょう。」

スノウ「それなら助かる、頼んだぞアルマ。」

アルマ「はい。」

こうして少しの間看病をアルマに任せ、スノウ達は話し合いを進めた。

万が一ダーク一族の手の者が襲ってきた場合、それ以外の敵襲があった場合の事などを話し合っていた。一方、アルマは何度もタオルを氷水に冷やしアクアの額に乗せ、看病をしていた。

そして…。

アクア「んっ…。」

倒れてから意識を失っていたアクアが目を覚ました。

アルマ「アクア、大丈夫か?」

アクア「アルマ…ここは…?」

アルマ「アクアの部屋だ、何があったか覚えてるかい?」

アクア「確か…甲板に居て、スマラが謝ってきて…でもその後は覚えてない。」

アルマ「あの後倒れてしまったそうだ。スマラが受け止めて、ここまで運んできてくれたんだよ。」

アクア「スマラが…?」

アルマ「お前の事を心から心配してる…勿論俺もみんなも。今日は何も心配しなくていい、俺達が全部やるから体をゆっくり休ませて治すんだ。」

アクア「ありがとう…アルマ…。」

申し訳なさそうな顔をしながらもアクアは頷き、アルマは優しく微笑んだ。

そして…話を終えたスノウが部屋に入ってきた。

スノウ「アクア、気がついたか。」

アルマ「それじゃあ、今おかゆ作ってくるから。」

そう言ってアルマは部屋を出て行った。

スノウ「気分はどうだ?」

アクア「まだボーッとするけど…でもだいぶ楽になったわ。」

スノウ「よかった…ところでアクア、お前に渡したい物がある。」

そう言うと、スノウは綺麗なシルバーチェーンに、クリスタルの飾りが付いていたブレスレットを手渡した。

アクア「綺麗…ありがとう!」

スノウ「どういたしまして。…アクア、その腕輪はお前を危険な事から護ってくれるお守りだ、肌身離さず付けていると約束してくれ。」

アクア「えぇ、約束するわ。」

波の牙は、マリンが身につけていた…その為ガーラスにさらわれた時に一緒に持ち去られ、残るは海の牙ただ一つ

スノウがずっと持っていたが、先ほどの話し合いでラグシーの血を引くアクアに持たせるのが一番良いと考え、自らの力を込めてクリスタルの結晶を作りだし、その中に海の牙を入れたのだ

これなら簡単に取り出される事も無い為、安全と考えていた。尤もブルースが偽の牙を所持している為、相手は上手く騙されているだろうし恐らく今も気付いていない…アクアが狙われる可能性はほぼゼロに近いだろうとスノウは思っていた。

しかし…その予想は大きく裏切られる事となった。

さらわれたマリンが目を覚ますと、辺り一面真っ暗で何も見えない…しかし、奥の方ではオレンジ色の光が見える。

マリンは立ち上がり、ゆっくりとその光の方向へと歩い行くと…

目の前に居たのはコバルトブルーの体をしたとても大きなワニ。息づかいは荒く、辛そうなその姿に反して、オレンジ色の光の正体…蝋燭の光は美しく、怪しげにその体を照らす

マリン「あ…貴方…!」

そう、このワニの正体…それは三大ワニ【ラグシー】の血を引く一族の王ブルース!マリンの気配に気がついたのか、ゆっくりと目を開け体を少し持ち上げて、ゆっくりと呟いた。

ブルース「マ…リン…!」

マリン「ブルース!」

愛する夫の元へ駆けつけて抱きつくマリンだが、ブルースはもう人の姿に変わる力も無い程弱っていて…真の姿であるワニになっていた

そして、足下には闇の様に黒い足枷が…

ブルース「マリン、幻じゃないんだな…本当にお前なんだな…だがどうしてここに…?」

マリン「ガーラスにさらわれて…そう、ブルースの行方が分かったってラクトが言って、スノウ達と貴方を助けに行く話をしてて…!」

ブルース「という事は…スノウ達は今ここに向かっているのか…!?」

マリン「ええ、そうよ。」

ブルース「駄目だ…ここに来てはいけない…すべてあいつの思うツボなんだ。」

マリン「え、それはどういう…」

謎の声「ブルース…随分と口が過ぎないか?」

再会を果たした2人の前に現れた謎の人物の正体は?そして2人の運命は!?

 

~To be continued…~