小説「緑髪の少年(再会編)」~昔からの因縁と新たな嵐との出会い~(後編)

新たに仲良くなった少女、スー。

フレンド登録もして、ナワバリでよく遊ぶようになった…が。

まめお「だからここは俺が塗っとくから、お前は先に行けって言ってんだろ!」

スー「テスラは遅いのよ!ここは動きの速いパーマネント・パブロ使ってるあんたが先攻するべきでしょ!」

まめお「お前のテスラの方が敵を倒しやすいだろ!」

スー「あんたのダイオウイカは飾りなの?」

まめお「何だと!?」

スー「何よ!」

似た者同士な2人…よくナワバリをやっては喧嘩になってしまうのだ。

まめみ「まめおとスーちゃん、ほんと仲良しだね~。」

ポナ「仲がいい…のかなぁ…?」

それを遠くから見て嬉しそうにニコニコしてるまめみと、喧嘩する2人の様子とまめみの反応を見て、複雑な心境のポナ…。

そんなこんなで一悶着あったが、結果は勝利。

何戦かした後、スルメさんのお店にお昼を食べに行ったが…お店は臨時休業になっていた。

まめみ「あれ…どうしたんだろう?」

まめお「裏口から行ってみるか。」

そう言って4人は裏口へ回り、まめおが裏口のドアを開けて入った瞬間…!

バサッ!!

まめみ「まめお!」

まめお「おわっ!?」

突然大きな布が落ちてきて、まめおは身動きが取れなくなってしまった。

スー「な、何なのこれ…!?」

ポナ「まめお、大丈夫…!?」

まめお「だ、大丈夫だ…けど…これは…?」

すると、電気が付いて…

スルメさん「ついに捕まえたで!…って、まめみ、ポナにスーまで…どうしたんや?」

まめみ「それはこっちのセリフよスルメさん!」

ポナ「まめおが布に…!」

スー「早く助けてあげて!」

スルメさん「まめおだったんか、そら悪かったわ!」

そう言うとスルメさんは、急いでまめおに掛かっている大きな布を取った。

まめお「ぷはぁ!あ~暑かった…!」

スルメさん「スマンかったな、まめお。」

まめお「びっくりしたぜ…。」

スルメさん「それにしても、裏口からどうしたんや?」

まめみ「スルメさんのお店にお昼食べに来たら、臨時休業になってたから…どうしたのかと思って。」

スルメさん「あぁ、それな。とりあえず中においでや。」

言われたまま4人はお店に入り、席についた。

すると、台所の方からよっちゃんが出てきた。

よっちゃん「あら、みんなどうしたの?」

スルメさん「お昼食べに来たんやけど臨時休業にしてたさかい、心配して裏口から来てくれたんや。まめおをあの仕掛けに引っかけてしまったけどな…。」

よっちゃん「あらあら、そうだったのね。ごめんなさいまめお君…。」

まめお「大丈夫だよっちゃん、それよりも…一体何があったんだよ。」

スルメさん「それがな…食べ物が消える件…どうやら本当に泥棒が入ってたみたいなんや。」

スー「泥棒が…!?」

よっちゃん「スルメさんがね、警察に聞いてみたら…どうもハイカラシティのお店で度々あるみたいなのよ…。被害にあってるお店は食べ物屋さんではないけど、決まって無くなるのは食べ物だけだって言うの…。」

スルメさん「だからお店を臨時休業にして、犯人を捕まえてやろうと思ったんや。」

ポナ「そういう事だったんだね。」

よっちゃん「驚かせちゃってごめんなさいね。お詫びと言っては何だけど、お昼ご飯を作ってあげるわ。」

まめみ「よっちゃん、あたしも手伝うよ。」

スー「あたしにも手伝わせて。」

よっちゃん「まめみちゃん、スーちゃん…2人共ありがとう。それじゃあ、お願いするわ。」

そう言って3人は台所へ行き、しばらくしてお昼ご飯が完成した。

そしてみんなで食べ始めたが…

まめお「なぁ、泥棒捕まえるの…俺達も手伝うよ。」

スルメさん「まめお…気持ちはありがたいが、危険やで…ここはボクらに任せて…」

まめみ「2人だけでは人手が足りないでしょう?あたし達にも手伝わせて欲しいの。」

ポナ「窓とかお店の入り口とか…逃げ口を塞げば犯人も逃げられないし…捕まえやすいと思うんだ。」

スー「いつもお世話になってるんだから、こういう時こそ…あたし達にも手助けさせて。」

スルメさん「みんな…スマンな…。」

よっちゃん「本当にありがとうね…。」

スルメさんとよっちゃんはお礼を言って、まめお達も協力することになった。塞ぐ場所に対してあと1人足りなかったので、ペコも呼んで事情を説明し協力してもらう事に。

みんなは準備を進め、それぞれ逃げ道を塞ぐように配置に着いた。

ペコ「これでいいわ、みんなそれぞれブキも準備したし…これで大丈夫でしょう。」

そして夕方になり…。

辺りはすっかり暗くなってきた頃…。

お店の裏口がそっと開いた…。

そこには大きな黒い影…シルエットからしてボーイの様だ。

バサッ!!

大きな布が落ちてきたが…それを軽々とかわし、慣れた手つきで食べ物を物色し始めた。

スルメさん「(アイツが泥棒か…しかもあの仕掛けを軽々とかわすとは…かなり洞察力に優れてる奴やな…!)」

じりじりと間合いを詰めるスルメさん。

そして…持っていた別の布を持って飛びかかった!

泥棒「!!」

スルメさん「堪忍しろや!」

しかし…ボーイはサッとかわして走り出した!

スルメさん「まめお、そっちへ行ったで!」

まめお「おっと!ここは行き止まりだぜ!」

そう言うとまめおはパーマネント・パブロを振った。

泥棒はそれを避け、少し後ずさりした後に今度は違う方向へ。

まめお「今度はそっちへ行ったぞ、まめみ!」

まめみ「了解!ここはあたしが通さないわよ!」

そう言うとまめみはチャージしていたハイドラントを発射した!

泥棒「くっ…!」

するとまた別の方向へ。

まめみ「ペコちゃん、そっちへ行ったよ!」

ペコ「分かったわ。残念だけど、ここは通せないわ!」

そう言ってペコはオクタシューターで泥棒の足下の床を撃った。

泥棒はそれを間一髪でかわし、今度はお店の入り口の方へ…

ペコ「ポナ、そっちよ!」

ポナ「分かった!…ここは通さないよ。」

泥棒「お前は…あの時の…!」

ポナ「………!?」

泥棒はポナの姿を見て驚いたが、ポナは全く覚えが無い…しかも相手は暗くて姿もよく見えない為…少し戸惑いを覚えた。

泥棒「ちっ…お前を相手にはしたくない…!」

そう言うと泥棒はまた別の道へ…

ポナ「待て…!スー、そっちに行ったよ!」

スー「任せて!さぁ来なさい、テスラでこらしめてやるわ!」

そう言いながらテスラを構えたスーだったが…

泥棒「スー…!?」

泥棒はスーの名前を口にすると、来た道を戻って裏口の方へ!

スー「!?待ちなさいよ!みんな、泥棒が裏口へ!」

スルメさん「いくでよっちゃん!」

よっちゃん「任せてスルメさん!」

2人は見事なコンビネーションで泥棒を包囲して…そして!

泥棒「うあぁ…!」

大きな布を被せて、ついに泥棒を捕まえた!

まめお「すっげぇ!」

よっちゃん「まめお君、電気を付けてちょうだい。」

まめお「分かった。」

カチッ…いち早く駆けつけたまめおが電気を付けて、抑えていた布を取ると…下からはターコイズブルーの髪のボーイが…。

泥棒「くそっ…離せ…!」

スルメさん「お前やな、食べ物をずっと盗んでた奴は!」

よっちゃん「食べ物をどうしていたの…?」

泥棒「く…そ…離せ…離せぇ…!」

そう言って顔を上げた泥棒…

スーとそっくりの切れ長の目に緑色の瞳…

眉間には皺を寄せていて鼻には大きな傷跡があり…片方の牙が長い…。

そして…後からポナと共に来たまめみを見て…目を見開いた。

泥棒「お前…あの時…リスティヒの奴に…!」

まめみ「リス…ティヒ…!!」

ドクン…!!

まめみの中で嫌な記憶が蘇る…!

まめお「まめみ…!」

まめみ「い…やぁ…!」

怯えてガクガク震えるまめみだったが…

ポナ「まめみ…落ち着いて…大丈夫、僕がいるよ。」

まめみ「ポナ…君…!」

ポナがそっと、優しくまめみを抱きしめた。

その温もりはあの頃と同じで…まめみは安心感に包まれた。

一方…ペコと共に駆けつけたスーは…泥棒を見て驚いた。

スー「兄…貴…兄貴…!」

ペコ「えっ…!?」

まめみ「兄貴…って…それじゃあこの人が…スーちゃんのお兄さん…!?」

フー「…………スー……お前…どうしてここに……!」

スー「それはあたしが聞きたいわ!兄貴こそ、どうしてこんな事してんのよ!!」

スルメさん「…よっちゃん、とりあえずコイツを奥の部屋に連れてくで。」

よっちゃん「えぇ…そうね。皆もいらっしゃい。」

こうして、泥棒…フーはお店の奥へ連れて行かれた。

スルメさん「…で、お前スーの兄さんなんやろ?何で泥棒なんかしてたんや。しかも…まめみのあの一件も何か知ってるみたいやな。」

しばらく沈黙を保っていたフーだが…部屋に置かれていたまめおのフェイスゴーグルが目に入った。

フー「………それを貸してくれ。」

まめお「これか?…あぁ、いいぜ。」

フー「………これで分かるか?」

フェイスゴーグルをしたフーを見て…まめおとまめみは目を見開き驚いた。

まめみ「あなた…あの時の…!」

まめお「3Kスコープ使いの…フーリッシュ!」

フー「…あぁ、そうだ。…フーリッシュ…それは俺があいつらと一緒にチームを組んでた時のコードネーム…。…そいつは俺の事を覚えていないのか?」

ポナ「……………?」

フーがチラッとポナを見たものの、当のポナは怪訝な表情で見ていた…。

まめみ「…ポナ君は……事故で記憶を失ってるの…。だからあの事も…覚えてない…。」

フー「!!…そうなのか…。」

スルメさん「…お前もまめみに手を出したんかいな?」

まめみ「ううん…この人はあたしには何もしてないよ。」

スー「……リスティヒは…兄貴とあたしの幼なじみなの…。」

フー「…………俺とスーは…親に捨てられたんだ。」

一同「!!」

フー「……捨てられる時に抵抗して付けられたのがこの傷だ…。」

ペコ「何て…酷い事を…。」

ポナ「………………。」

スー「ある日…兄貴はナワバリで稼ぐと行って出て行ったまま…帰って来なかった…。」

フー「リスティヒに…お前が養子に引き取られたと聞いて…お前の為にも…俺は会わない方が良いと…。」

スー「!…リスティヒ…騙したのね…。」

よっちゃん「そんな事が…あったのね…。」

フー「…言い訳にしかならないが…強姦に加わった事は一度も無い…。だが…助ける事が出来なかったから同罪だ…。…済まなかった。」

フーはフェイスゴーグルを外し、まめみの顔をしっかりと見て…謝罪の言葉を口にした。

まめみ「………っ………。」

まめお「……………。」

ポナ「………………………。」

何も思い出せない…

その時に僕はそこにいたはずなのに…何一つ…

でも…まめみが不安で悲しそうにしているのを…放っておけなかったんだ。

ポナは今にも泣き出しそうな表情のまめみを、強く抱きしめていた…。

スルメさん「………お前達、帰る家はあるんか?」

フー「……家なんて無い…。」

スー「…あたしも…家は無いわ。」

ハイカラシティのイカ達は帰る家を持たない者も多く、無料の宿泊施設や道端で一夜を明かす者もいる。スルメさんは深いため息を吐くと、よっちゃんの顔を見て口を開いた。

スルメさん「よっちゃん、この2人を家に置きたいんやけど…ええかな。」

フー「!?」

スー「えっ…!?」

目を閉じて黙っていたよっちゃんだが、目をゆっくりと開けて…優しく笑った。

よっちゃん「…えぇ、もちろんよスルメさん。私も同じ事思っていたもの。」

スルメさん「さすがボクの幼なじみであり相棒やな。」

よっちゃん「ふふっ。」

フー「お…おい…あんたら正気なのか!?スーはともかく…俺は泥棒だぞ!警察に突き出し…」

スルメさん「警察に突き出さん代わりに、ここでボクらが面倒見るっていってるんや。お前にもしっかり働いてもらうで。」

フー「………!」

よっちゃん「スーちゃんも、それで大丈夫かしら?」

スー「あ…あたしは…もちろん大丈夫だけど…ほ、本当にいいの…?」

スルメさん「大丈夫や、子供らが増えたと思えば嬉しいもんやで。」

よっちゃん「ふふっ、毎日のお料理が更に楽しくなるわね。」

スー「あ…あり…がとう…!」

フー「………………感謝する……。」

まだ戸惑いつつも嬉しそうにしているスーと、ぶっきらぼうにそっぽを向きつつ、感謝の言葉を呟いたフー。

その2人を見て、まめお達も安堵の表情を浮かべた。

まめみ「よかったね、スーちゃん!よろしくね、フーさん!」

フー「お…お前…。」

まめお「こいつは…まめみはこういう奴なんだよ。昔っから気を許すと底抜けに明るい笑顔を見せる。」

フー「…………………。」

こうして…スルメさんのお店に住む事になったフーとスーの兄妹。

新しい生活が幕を開けたのだった。

To be continued…