新たに仲良くなった少女、スー。
フレンド登録もして、ナワバリでよく遊ぶようになった…が。
まめお「だからここは俺が塗っとくから、お前は先に行けって言ってんだろ!」
スー「テスラは遅いのよ!ここは動きの速いパーマネント・パブロ使ってるあんたが先攻するべきでしょ!」
まめお「お前のテスラの方が敵を倒しやすいだろ!」
スー「あんたのダイオウイカは飾りなの?」
まめお「何だと!?」
スー「何よ!」
似た者同士な2人…よくナワバリをやっては喧嘩になってしまうのだ。
まめみ「まめおとスーちゃん、ほんと仲良しだね~。」
ポナ「仲がいい…のかなぁ…?」
それを遠くから見て嬉しそうにニコニコしてるまめみと、喧嘩する2人の様子とまめみの反応を見て、複雑な心境のポナ…。
そんなこんなで一悶着あったが、結果は勝利。
何戦かした後、スルメさんのお店にお昼を食べに行ったが…お店は臨時休業になっていた。
まめみ「あれ…どうしたんだろう?」
まめお「裏口から行ってみるか。」
そう言って4人は裏口へ回り、まめおが裏口のドアを開けて入った瞬間…!
バサッ!!
まめみ「まめお!」
まめお「おわっ!?」
突然大きな布が落ちてきて、まめおは身動きが取れなくなってしまった。
スー「な、何なのこれ…!?」
ポナ「まめお、大丈夫…!?」
まめお「だ、大丈夫だ…けど…これは…?」
すると、電気が付いて…
スルメさん「ついに捕まえたで!…って、まめみ、ポナにスーまで…どうしたんや?」
まめみ「それはこっちのセリフよスルメさん!」
ポナ「まめおが布に…!」
スー「早く助けてあげて!」
スルメさん「まめおだったんか、そら悪かったわ!」
そう言うとスルメさんは、急いでまめおに掛かっている大きな布を取った。
まめお「ぷはぁ!あ~暑かった…!」
スルメさん「スマンかったな、まめお。」
まめお「びっくりしたぜ…。」
スルメさん「それにしても、裏口からどうしたんや?」
まめみ「スルメさんのお店にお昼食べに来たら、臨時休業になってたから…どうしたのかと思って。」
スルメさん「あぁ、それな。とりあえず中においでや。」
言われたまま4人はお店に入り、席についた。
すると、台所の方からよっちゃんが出てきた。
よっちゃん「あら、みんなどうしたの?」
スルメさん「お昼食べに来たんやけど臨時休業にしてたさかい、心配して裏口から来てくれたんや。まめおをあの仕掛けに引っかけてしまったけどな…。」
よっちゃん「あらあら、そうだったのね。ごめんなさいまめお君…。」
まめお「大丈夫だよっちゃん、それよりも…一体何があったんだよ。」
スルメさん「それがな…食べ物が消える件…どうやら本当に泥棒が入ってたみたいなんや。」
スー「泥棒が…!?」
よっちゃん「スルメさんがね、警察に聞いてみたら…どうもハイカラシティのお店で度々あるみたいなのよ…。被害にあってるお店は食べ物屋さんではないけど、決まって無くなるのは食べ物だけだって言うの…。」
スルメさん「だからお店を臨時休業にして、犯人を捕まえてやろうと思ったんや。」
ポナ「そういう事だったんだね。」
よっちゃん「驚かせちゃってごめんなさいね。お詫びと言っては何だけど、お昼ご飯を作ってあげるわ。」
まめみ「よっちゃん、あたしも手伝うよ。」
スー「あたしにも手伝わせて。」
よっちゃん「まめみちゃん、スーちゃん…2人共ありがとう。それじゃあ、お願いするわ。」
そう言って3人は台所へ行き、しばらくしてお昼ご飯が完成した。
そしてみんなで食べ始めたが…
まめお「なぁ、泥棒捕まえるの…俺達も手伝うよ。」
スルメさん「まめお…気持ちはありがたいが、危険やで…ここはボクらに任せて…」
まめみ「2人だけでは人手が足りないでしょう?あたし達にも手伝わせて欲しいの。」
ポナ「窓とかお店の入り口とか…逃げ口を塞げば犯人も逃げられないし…捕まえやすいと思うんだ。」
スー「いつもお世話になってるんだから、こういう時こそ…あたし達にも手助けさせて。」
スルメさん「みんな…スマンな…。」
よっちゃん「本当にありがとうね…。」
スルメさんとよっちゃんはお礼を言って、まめお達も協力することになった。塞ぐ場所に対してあと1人足りなかったので、ペコも呼んで事情を説明し協力してもらう事に。
みんなは準備を進め、それぞれ逃げ道を塞ぐように配置に着いた。
ペコ「これでいいわ、みんなそれぞれブキも準備したし…これで大丈夫でしょう。」
そして夕方になり…。
辺りはすっかり暗くなってきた頃…。
お店の裏口がそっと開いた…。
そこには大きな黒い影…シルエットからしてボーイの様だ。
バサッ!!
大きな布が落ちてきたが…それを軽々とかわし、慣れた手つきで食べ物を物色し始めた。
スルメさん「(アイツが泥棒か…しかもあの仕掛けを軽々とかわすとは…かなり洞察力に優れてる奴やな…!)」
じりじりと間合いを詰めるスルメさん。
そして…持っていた別の布を持って飛びかかった!
泥棒「!!」
スルメさん「堪忍しろや!」
しかし…ボーイはサッとかわして走り出した!
スルメさん「まめお、そっちへ行ったで!」
まめお「おっと!ここは行き止まりだぜ!」
そう言うとまめおはパーマネント・パブロを振った。
泥棒はそれを避け、少し後ずさりした後に今度は違う方向へ。
まめお「今度はそっちへ行ったぞ、まめみ!」
まめみ「了解!ここはあたしが通さないわよ!」
そう言うとまめみはチャージしていたハイドラントを発射した!
泥棒「くっ…!」
するとまた別の方向へ。
まめみ「ペコちゃん、そっちへ行ったよ!」
ペコ「分かったわ。残念だけど、ここは通せないわ!」
そう言ってペコはオクタシューターで泥棒の足下の床を撃った。
泥棒はそれを間一髪でかわし、今度はお店の入り口の方へ…
ペコ「ポナ、そっちよ!」
ポナ「分かった!…ここは通さないよ。」
泥棒「お前は…あの時の…!」
ポナ「………!?」
泥棒はポナの姿を見て驚いたが、ポナは全く覚えが無い…しかも相手は暗くて姿もよく見えない為…少し戸惑いを覚えた。
泥棒「ちっ…お前を相手にはしたくない…!」
そう言うと泥棒はまた別の道へ…
ポナ「待て…!スー、そっちに行ったよ!」
スー「任せて!さぁ来なさい、テスラでこらしめてやるわ!」
そう言いながらテスラを構えたスーだったが…
泥棒「スー…!?」
泥棒はスーの名前を口にすると、来た道を戻って裏口の方へ!
スー「!?待ちなさいよ!みんな、泥棒が裏口へ!」
スルメさん「いくでよっちゃん!」
よっちゃん「任せてスルメさん!」
2人は見事なコンビネーションで泥棒を包囲して…そして!
泥棒「うあぁ…!」
大きな布を被せて、ついに泥棒を捕まえた!
まめお「すっげぇ!」
よっちゃん「まめお君、電気を付けてちょうだい。」
まめお「分かった。」
カチッ…いち早く駆けつけたまめおが電気を付けて、抑えていた布を取ると…下からはターコイズブルーの髪のボーイが…。
泥棒「くそっ…離せ…!」
スルメさん「お前やな、食べ物をずっと盗んでた奴は!」
よっちゃん「食べ物をどうしていたの…?」
泥棒「く…そ…離せ…離せぇ…!」
そう言って顔を上げた泥棒…
スーとそっくりの切れ長の目に緑色の瞳…
眉間には皺を寄せていて鼻には大きな傷跡があり…片方の牙が長い…。
そして…後からポナと共に来たまめみを見て…目を見開いた。
泥棒「お前…あの時…リスティヒの奴に…!」
まめみ「リス…ティヒ…!!」
ドクン…!!
まめみの中で嫌な記憶が蘇る…!
まめお「まめみ…!」
まめみ「い…やぁ…!」
怯えてガクガク震えるまめみだったが…
ポナ「まめみ…落ち着いて…大丈夫、僕がいるよ。」
まめみ「ポナ…君…!」
ポナがそっと、優しくまめみを抱きしめた。
その温もりはあの頃と同じで…まめみは安心感に包まれた。
一方…ペコと共に駆けつけたスーは…泥棒を見て驚いた。
スー「兄…貴…兄貴…!」
ペコ「えっ…!?」
まめみ「兄貴…って…それじゃあこの人が…スーちゃんのお兄さん…!?」
フー「…………スー……お前…どうしてここに……!」
スー「それはあたしが聞きたいわ!兄貴こそ、どうしてこんな事してんのよ!!」
スルメさん「…よっちゃん、とりあえずコイツを奥の部屋に連れてくで。」
よっちゃん「えぇ…そうね。皆もいらっしゃい。」
こうして、泥棒…フーはお店の奥へ連れて行かれた。
スルメさん「…で、お前スーの兄さんなんやろ?何で泥棒なんかしてたんや。しかも…まめみのあの一件も何か知ってるみたいやな。」
しばらく沈黙を保っていたフーだが…部屋に置かれていたまめおのフェイスゴーグルが目に入った。
フー「………それを貸してくれ。」
まめお「これか?…あぁ、いいぜ。」
フー「………これで分かるか?」
フェイスゴーグルをしたフーを見て…まめおとまめみは目を見開き驚いた。
まめみ「あなた…あの時の…!」
まめお「3Kスコープ使いの…フーリッシュ!」
フー「…あぁ、そうだ。…フーリッシュ…それは俺があいつらと一緒にチームを組んでた時のコードネーム…。…そいつは俺の事を覚えていないのか?」
ポナ「……………?」
フーがチラッとポナを見たものの、当のポナは怪訝な表情で見ていた…。
まめみ「…ポナ君は……事故で記憶を失ってるの…。だからあの事も…覚えてない…。」
フー「!!…そうなのか…。」
スルメさん「…お前もまめみに手を出したんかいな?」
まめみ「ううん…この人はあたしには何もしてないよ。」
スー「……リスティヒは…兄貴とあたしの幼なじみなの…。」
フー「…………俺とスーは…親に捨てられたんだ。」
一同「!!」
フー「……捨てられる時に抵抗して付けられたのがこの傷だ…。」
ペコ「何て…酷い事を…。」
ポナ「………………。」
スー「ある日…兄貴はナワバリで稼ぐと行って出て行ったまま…帰って来なかった…。」
フー「リスティヒに…お前が養子に引き取られたと聞いて…お前の為にも…俺は会わない方が良いと…。」
スー「!…リスティヒ…騙したのね…。」
よっちゃん「そんな事が…あったのね…。」
フー「…言い訳にしかならないが…強姦に加わった事は一度も無い…。だが…助ける事が出来なかったから同罪だ…。…済まなかった。」
フーはフェイスゴーグルを外し、まめみの顔をしっかりと見て…謝罪の言葉を口にした。
まめみ「………っ………。」
まめお「……………。」
ポナ「………………………。」
何も思い出せない…
その時に僕はそこにいたはずなのに…何一つ…
でも…まめみが不安で悲しそうにしているのを…放っておけなかったんだ。
ポナは今にも泣き出しそうな表情のまめみを、強く抱きしめていた…。
スルメさん「………お前達、帰る家はあるんか?」
フー「……家なんて無い…。」
スー「…あたしも…家は無いわ。」
ハイカラシティのイカ達は帰る家を持たない者も多く、無料の宿泊施設や道端で一夜を明かす者もいる。スルメさんは深いため息を吐くと、よっちゃんの顔を見て口を開いた。
スルメさん「よっちゃん、この2人を家に置きたいんやけど…ええかな。」
フー「!?」
スー「えっ…!?」
目を閉じて黙っていたよっちゃんだが、目をゆっくりと開けて…優しく笑った。
よっちゃん「…えぇ、もちろんよスルメさん。私も同じ事思っていたもの。」
スルメさん「さすがボクの幼なじみであり相棒やな。」
よっちゃん「ふふっ。」
フー「お…おい…あんたら正気なのか!?スーはともかく…俺は泥棒だぞ!警察に突き出し…」
スルメさん「警察に突き出さん代わりに、ここでボクらが面倒見るっていってるんや。お前にもしっかり働いてもらうで。」
フー「………!」
よっちゃん「スーちゃんも、それで大丈夫かしら?」
スー「あ…あたしは…もちろん大丈夫だけど…ほ、本当にいいの…?」
スルメさん「大丈夫や、子供らが増えたと思えば嬉しいもんやで。」
よっちゃん「ふふっ、毎日のお料理が更に楽しくなるわね。」
スー「あ…あり…がとう…!」
フー「………………感謝する……。」
まだ戸惑いつつも嬉しそうにしているスーと、ぶっきらぼうにそっぽを向きつつ、感謝の言葉を呟いたフー。
その2人を見て、まめお達も安堵の表情を浮かべた。
まめみ「よかったね、スーちゃん!よろしくね、フーさん!」
フー「お…お前…。」
まめお「こいつは…まめみはこういう奴なんだよ。昔っから気を許すと底抜けに明るい笑顔を見せる。」
フー「…………………。」
こうして…スルメさんのお店に住む事になったフーとスーの兄妹。
新しい生活が幕を開けたのだった。
To be continued…