翌朝、とぐろが目を覚ますとドスコイまるは傍でぐっすりと眠り続けていた。
安心しきったその寝顔を見て、この家で…まめみとまめおに大事に可愛がられているのだと…とぐろは心から安心した。
その後まめみ達も起きてきて朝ご飯を食べ…
スルメさん達に連絡した後…幸いフーが休みだった為、お店を臨時休業にして全員が家に集まった。
お互いに自己紹介をした後…まめみ達は事情を説明し、スルメさん達も真剣な表情で聞いていた。
スルメさん「そうか…例のバクダンの理解は得られなかったんやな…。」
よっちゃん「それだけ私達に対する憎しみの心が強いって事でしょうね…仕方ないと言えば仕方ないのだけど…だからといって、とぐろさんやまめみちゃん達に向けるのは違うと思うわ…。」
とぐろさん「(…まめみ、この人は男…なんだよな…?)」
まめみ「(よっちゃんはあたしのお父さんだよ。喋り方はこうだけど悪い人ではないから気にしないでね。)」
とぐろ「(そうか…それなら安心したぜ。)」
シャケの世界にはオネェ口調な者がいない故にとぐろが少し戸惑ってしまったが、まめみと小声で会話した事によりよっちゃんへの警戒心も解けた。
スー「でも…やっぱりこのままじゃ何も変わらないわよね…。」
ペコ「そのバクダン…ザンナがほんの少しだけでも話を聞いてくれるといいんだけど…。」
フー「まめみ達だけではなく…仲間であるとぐろさんにも牙を剥いた以上、簡単に耳を傾けてくれる相手とは思えないけどな…。」
とぐろ「フーの言う通り、あいつは人の話に耳を傾ける奴じゃねぇ…。」
ポナ「他の仲間達も、ザンナには逆らえないの…?」
とぐろ「ザンナと同期なのは…あっしと幼馴染みのテツっていうシャケ…そして死んだ姉貴だけ…後のオオモノシャケは若い奴らだからな…ザンナには口出しできない…そもそも本名であるザンナを知ってるシャケもあっしを含めてごく一部しかいないんだ。」
まめお「そうなのか…ザンナを止められる奴は事実上…居ないって事なんだな…。」
とぐろ「いや、1匹だけいる…唯一ザンナを止められるのはあのお方だけだ…。」
まめみ「あのお方…?」
とぐろ「あっしらシャケ一族の長である金シャケの「おシャケさま」…あのお方が唯一ザンナを止められる…。」
ポナ「そのおシャケさまは…今回は止められなかったの…?」
とぐろ「おシャケさまは…用事でしばらく不在なんだ…今回はおシャケさまがいらっしゃらないタイミングでこんな事に…。」
まめみ「そうだったのね…。」
とぐろ「あっしはこうして安全にいられてるが…残してきたシャケ子やテツ…後輩や新人の仲間達の事が唯一気がかりでな…ザンナが余計な事をしてなければいいが……。」
ポナ「とぐろさん…。」
とぐろ「とにかく…一刻も早く新しい住処を見つけてシャケ子を迎えに行かねぇとな…。」
そう話すとぐろの決意は固く…まめみ達はシャケ子の心配をしつつも頷いた。
すると…
ドスコイまる「キュッ…キュ…。」
まめみ「ドスコイまる…?」
ドスコイまる「キュッ…キュッキュッ!」
起きてきたドスコイまる、いつもならまめみの元へ向かうが…そのままとぐろの元へ向かってピョンピョンとジャンプをしている。
とぐろ「どれ…あっしの所へおいで。」
そう言うと、とぐろはドスコイまるを優しく抱き上げた。
するとドスコイまるはキュッキュッと嬉しそうに鳴き声を上げた。
まめみ「ドスコイまる、とぐろさんに懐いたみたいだね。」
まめお「やっぱり同じシャケ同士、何か感じるのかもな。」
ポナ「まるで親子みたいだね。」
とぐろ「あぁ、そうだな…。」
親子みたい…か……。
…シャケ子…あっしらの子供はここで幸せに暮らしてるぜ。
…なぁ…シャケ子……新しい住処を見つけたその時は…
お前さんとあっし…そして……あっしらの子供と暮らしたいな…。
そんな事を思いながら、目の前のドスコイまるをあやすとぐろであった。
そんな中、季節は巡り秋になり…肌寒くなる日も増え、買っておいたF-190を着て出かける事も増えてきたある日の事
まめみ「あれ…とぐろさんヒレの色…そんなに鮮やかな赤だったっけ?」
頭の大きなヒレはいつもは赤い…しかし今のとぐろのヒレは鮮やかな「朱色」に変わり、喉元もうっすらと赤みを帯びていた。
とぐろ「あぁ…これは繁殖期の証だ。」
まめみ「繁殖期…?」
とぐろ「あっし達シャケは秋が一番の繁殖期でな、こうしてヒレの色も鮮やかになって、喉元も赤みを帯びるんだ。」
まめお「へぇ…そうなのか。」
その後、遊びに来たポナにも事情を説明した。
ポナ「へぇ~繁殖期かぁ。」
とぐろ「今の時期、番や恋をしているシャケはみんなこうなるんだ。同時に、番になる相手を巡って気性が荒くなる個体も居るな。」
そんな話をしつつ、とぐろはシャケ子へと思いを馳せた。
彼女は今、何をしているのだろう…
ザンナが酷い事をしていないだろうか…傷ついていないだろうか…
愛しのシャケ子、早く会いたい…
そう思いつつ、傍で眠るドスコイまるを穏やかな表情で見つめるのだった。
To be continued…