あれから3日後…この日の朝、事態は大きく動き出した。
まめみ達が食事を終えると…
コンコン…
外から音が聞こえて来る。
まめみ「あれ…またガラス戸の方から…。」
まめお「来るとしたらシャケくらいしか…。」
とぐろ「まさか…まさかザンナがここに…!?」
まめお「だとしたら油断出来ねぇな…!俺が行く、まめみはとぐろさんとドスコイまると一緒にそこに居ろ。」
まめみ「まめおぉ…!」
まめお「大丈夫だ、な?」
まめみ「うん…。」
まだ心配は残るものの、まめみはその場に残った…。
パブロを構え、まめおはガラス戸の前へ…
そして…戸を勢いよく開けた!
まめお「ここは通さね…うわぁぁぁ!」
まめみ「まめお!」
???「おわっ…すまねぇな兄ちゃん、大丈夫かい!?」
とぐろ「て…テツ!?」
勢い余ってまめおの上に飛び乗ってしまったシャケの正体は…テツだった!
テツ「とぐろ~やっと見つけたぜ!お、盛りが来たか、ヒレと喉元の赤がイカしてるぞ。」
そう言うとテツはまめおから下り、とぐろの背中をヒレで優しく叩いた。
とぐろ「テツ…どうしてお前さんがここに…!?」
テツ「ずっとお前を探してたんだぞ~とぐろ!水臭ぇじゃねえか…手紙だけ残して行っちまうなんて…。」
まめお「痛て…。」
まめみ「まめお…大丈夫…?」
まめお「あぁ…それにしても…何だったんだ…?」
とぐろ「すまなかったなまめお…こいつは幼馴染みのテツだ。」
テツ「テツだ、よろしくな。」
まめお「まめおです、こいつは従妹のまめみ。よろしく。」
まめみ「よろしくお願いします。」
テツ「堅苦しい挨拶は無しでいこうぜ、気楽に接してくれ。」
まめみ「それじゃあテツさん…どうしてここにとぐろさんがいるって分かったの?」
テツ「とぐろの匂いを辿ってきたんだ。仕事の合間に少しずつだったから時間はかかったけど…やっと見つけられたぜ。」
とぐろ「テツ…。」
テツ「話はザンナから聞いた…シャケ子ちゃんが毎日ずっと泣いて過ごしてるぜ…。」
とぐろ「シャケ子…。」
テツ「お前1匹で暮らすつもりでいたのか…?」
とぐろ「いや、新しい住処を見つけてから…シャケ子を迎えに行くつもりだった。」
テツ「そうか…けどシャケ子ちゃんにそれをちゃんと伝えねぇと…。」
とぐろ「お前さんから伝えてくれ…テツ…あっしが今戻ればシャケ子も…お前さんも危ない…。」
テツ「ザンナの奴…あれからますます荒れて酷いもんだぜ…内部抗争が勃発してる…。それにシャケ子ちゃんも…お前に会いたがってて…誰が訪問しても一向に出てこない状態だ…。」
とぐろ「そんな…そのままじゃシャケ子の体が…!」
テツ「…俺が通ってきた水路…お前も通ってここに来たんだろ、とぐろ?それなら…そこ経由でなら…ザンナも気がつかないと思うぜ。それにザンナは今、シェケナダムに行ってる…今の内なら大丈夫なはずだ。」
とぐろ「………………………。」
まめみ「とぐろさん…!」
とぐろ「…テツ、あっしをシャケ子の所へ連れて行ってくれ!」
テツ「そう来ねぇとな、任しとけ!」
まめみ「あたしも行く!」
まめお「まめみ!?何言ってるんだお前…危険だぞ!」
まめみ「それは分かってる!でも…とぐろさんとテツさんだけ危険な目に遇わせてあたし達はここで待ってるなんて出来ないよ!」
まめお「まめみ…。」
とぐろ「まめみ…お前さんは本当に……。大丈夫か、テツ?」
テツ「いざという時は、俺が何とかアイツを足止めするさ。」
とぐろ「頼りになるぜ、相棒。」
そう言うと、とぐろとテツはヒレを合わせてガシッと握った。
まめお「俺も行くぜ。」
とぐろ「あぁ、みんなで行こう。」
こうして、シャケ子に会いに行く事にした一同。
準備をしている間にポナが来て事情を話し、ポナも一緒に行く事になった。
そして準備が完了して行こうとしたその時…
ドスコイまる「キュ!」
まめみ「ドスコイまる…?」
ドスコイまる「キュ、キュ!」
まめみの元へよじ登り、ぎゅっと抱きついてきて離れないドスコイまる…
ポナ「もしかして…一緒に行きたいのかな…?」
とぐろ「…何か感じるものがあるのかもしれないな…まめみ、ドスコイまるも連れてってやってくれないか?」
まめみ「うん、分かった。」
こうして急遽ドスコイまるも追加して一向は出発し…水路の前まで来た。
テツ「行くぜ、とぐろ。」
とぐろ「あぁ。」
2匹の通る水路はとても大きい空洞があり…とぐろがまめみとポナを…テツがまめおを背中に乗せて泳いだ。
しばらく薄暗い水路を通ると…シャケ達の住む穢れた海に出た。
テツ「シャケト場まで少しかかるな…急ぐぞ。」
とぐろ「しっかりつかまってろよ。」
まめみ「うん。」
そこから20分くらいかけて泳ぎ続け…とぐろの家が見えてきた。
とぐろ「シャケ子…!」
ようやく家に着き…一行は扉の前へ…。
コンコン…
しかし反応は無い…。
テツ「シャケ子ちゃん、俺だ…テツだ。」
シャケ子「テツさん…。」
中からは疲れ切ったシャケ子の声が聞こえて来て…とぐろの胸は締めつけられた。
テツ「シャケ子ちゃん…とぐろを連れてきたぜ。まめみ達も一緒だ。」
シャケ子「テツさん…私を慰めてくれる気持ちは嬉しいけど…ダーリンはもう…。」
とぐろ「…シャケ子…。」
シャケ子「その声…ダーリン…ダーリンなの!?」
とぐろ「あぁ、あっしだ…シャケ子…!」
キイィ…小さな音を立てて扉が開き…中からシャケ子が姿を現した。
シャケ子「ダーリン…あぁ…ダーリン!!」
とぐろ「シャケ子…!!」
2匹は力強く抱きしめ合った。
まめみ「よかった…とぐろさん…シャケ子さん…。」
ポナ「とぐろさん…ずっと寂しそうだったもんね…。」
とぐろ「すまなかったシャケ子…あっしは新しい住処を見つけたら迎えに行って…夫婦で暮らすつもりだったんだ…。」
シャケ子「ダーリン…そうだったのね…ずっと…ずっと会いたくて寂しかったわ…!」
とぐろ「シャケ子…本当にすまなかった…!」
テツ「シャケ子ちゃんも出てきてくれたし…俺もホッとしたぜ。」
とぐろ「ありがとな、テツ…!」
テツ「礼には及ばねぇよ、お前と俺の仲だろ。」
しばらく抱き合い落ち着いた後、シャケ子とまめお達も自己紹介して少し話をした…。
すると…まめみの服の中に隠れていたドスコイまるが、胸の間から顔を出した。
ドスコイまる「キュ…。」
シャケ子「あら、この子は…?」
とぐろ「ドスコイまるって言うんだ。…シェケナダムで弱っていたのを助けて、傷が治るまでの間こうして育ててくれてたんだ。」
シャケ子「そうだったのね…。…この子…この顔つき…それに…この匂いは…!」
とぐろ「あぁ…そうだシャケ子…。」
シャケ子「あぁ…よかった…本当によかったわ…!」
そう言って泣き崩れるシャケ子の背中を優しく撫でるとぐろ…
しかしまめみ達には何の事だかさっぱりで…
まめみ「ねぇ…ドスコイまるが…どうかしたのかな…?」
とぐろ「まめみ…実はドスコイまるは…」
そう言いかけたその時!
ザンナ「貴様…何故戻って来た!!」
恐ろしい声が響いて振り返ると、そこにはザンナとたくさんのオオモノシャケやシャケ達が居た!
とぐろ「ザンナ…!」
テツ「ザンナ…お前シェケナダムに仕事のはずじゃ…!?」
ザンナ「シャケが見つけて知らせに来たのでな…こうして戻って来てみたら…あの時のイカ共まで連れて来ていたとは…!」
そう言ってギロリとまめみ達を睨みつけるザンナ…。
まめみ「………………!」
ザンナ「ブキを取れ、イカ共め…ここで決着させてやろうではないか!」
まめみ「あたし達…ブキなんて持ってないよ!」
ザンナ「……何だと?」
まめみ「あたし達がここに来たのは戦う為じゃない…だからブキなんて持ってきてない。」
ザンナ「…そうか…ならば………ここで殺して楽にしてやろう。」
まめみ「っ………!」
ポナ「まめみ…!」
まめみを強く抱きしめるポナ、まめおもまめみの前に立って守る体勢に入った。
タワー「ペルファング…ブキも持たぬイカに手を出すのはさすがに…」
ザンナ「黙れ!貴様、俺に指図するつもりか!?」
タワー「いや…そんな事は…!」
テツ「ザンナ…お前という奴は…!」
ザンナ「覚悟するがよい…憎きイカ共め!!」
そう言ってザンナがヒレを振り上げたその時!!
???「やめるのだ、ザンナ。」
ピタッ…!!
ザンナの動きが止まった…それだけでは無い…シャケ達が硬直し…緊張感が走っている…
何が起こったのか分からないまめみ達だったが…とぐろが口を開いた…。
とぐろ「あの…あの声は…おシャケさま…!」
まめみ「おシャケ…さま…!?」
そう言った直後…海の中が金色に輝いて……
ゆっくりと頭を出したのは…金色の鱗が輝く…
とても大きな『キンシャケ』だった。
To be continued…