小説「緑風と桃花は愛を紡ぐ(試練編)」~ツネの実力~

2人きりの濃密な時間を過ごした後、まめみはイカスマホを見た。

まめみ「あ…ツっくん…。」

ポツリと呟いた彼の名に心がざわめくポナだったが、先程のまめみとの時間を思い出してそれもじきに収まった。

少し彼とやりとりしていたまめみだが…何だか様子がおかしい…

ポナ「どうかしたのかな?」

まめみ「あ…ポナ君…ツっくんがね、これからナワバリをやろうって…。」

ポナ「…………ツネが…?」

まめみ「あたしブキは家に置いて来ちゃったし、どうしようかなって。」

ポナ「…………………。」

まめみ「ポナ君、取りに帰ってナワバリ行ってきてもいいかな?」

ポナ「……いいよ、その代わり俺も一緒に行く。」

まめみ「ほんと?ポナ君も一緒ならきっと3人で楽しめるね。」

何も知らないまめみは嬉しそうに無邪気に笑う

ポナも表情は優しい笑みを浮かべていたが…その内心は沸き上がる強い対抗心に満ちていた。

それからしばらくして…

ツネ「あ、まめ…み………。」

まめみ「ポナ君もツっくんと一緒にナワバリやりたいみたいなの、せっかくだからみんなで一緒にやろうよ。」

ツネ「………………………。」

ポナ「………………………。」

まめみ「ツっくん?」

ツネ「…あぁ、ごめんね…もちろんだよ。」

まめみ「よかった~!あ、ステージの確認してくるね。」

そう言ってまめみはロビー前に先に走っていったが…ポナとツネはお互いに険しい表情で睨み合っていた…。

ツネ「……君は呼んでないんだけど。」

ポナ「まめみは俺の家に泊まりに来てたからさ、一緒に居た方がいいと思って。」

ツネ「どういう意味かな。」

ポナ「そのままの意味だけど?」

お互いに睨み合う2人の間にはバチバチと火花が散っている…

しかし何も知らないまめみが呼びに来た。

まめみ「2人共、ナワバリ始めようよ!」

ツネ「うん。」

ポナ「今、行くよ。」

ステージはバッテラストリート、3人は同じチームだった。

しかし試合が始まる直前、まめみはツネのブキに気づいた。

まめみ「あ、もしかしてそれ…最近発売されたばかりの新作マニューバー『クアッドホッパーブラック』かな?」

ツネ「うん、よく分かったねまめみ。」

まめみ「テレビのCMでやってたの…転がるタイプのスライドが出来ない代わりに、攻撃したまま滑るように4回のスライドが出来るんだよね。」

ツネ「僕はマニューバーをよく使うからね、お爺……祖父がプレゼントしてくれたんだ。」

まめみ「そうなんだ、優しいお祖父ちゃんだね。」

ポナ「………試合が始まるよ。」

まめみ「あ、本当だ。」

楽しそうに話すツネとまめみにポナは心底不快だった…それ故に少しぶっきらぼうになってしまったが、まめみは気づいていないようだ。

試合が始まり、最初は順調だったが…

ポナ「まめみ、敵が!」

まめみ「きゃあっ…!」

2人の敵が挟み撃ちしながらまめみを追い詰めていく…

ポナ「くっ…!」

黒ZAPを持っていたポナは急いでまめみの元へ向かったが、敵が行く手を阻んで間に合わない…!

パブロを振りながら必死に応戦するまめみ、しかしインクが切れてしまい足場を取られてその場に尻もちをついてしまった。

まめみ「(もうダメ!)」

目をぎゅっと瞑って覚悟を決めたその時!

ツネ「まめみに近づくな。」

そう言って橋から目の前に飛び降りて来たのは…ツネ!

バシュッ!バシュッ!

ポナ「!!」

まめみ「あ…!」

華麗な4連スライドからの、全く隙の無い攻撃であっさりと目の前の敵2人を倒してしまった。

ポナ「(あいつ…何だあの動きは!?全く隙が無かった…それにエイムも的確で…まるで軍隊にでも居たかの様な洗練された動き…!)」

ツネ「大丈夫、まめみ?」

まめみ「ツっくん…あり…がとう…。」

驚きでまだペタンと座り込んだままのまめみだったが…ツネが優しく手を伸ばして、その手を取って立ち上がった。

ツネ「どういたしまして。まめみは僕が守るよ、なるべく近くで戦うからね。」

そう言うとツネは塗りに戻っていった…。

まめみ「ツっくん…。」

ポナ「…………………………。」

その後無事に試合には勝ち…何戦かした後にツネと別れ、まめみと共に家に向かう道中

まめみ「楽しかった…また一緒にやりたいなぁ。」

ツネとのナワバリを思い出して楽しそうにしているまめみに対して、ポナの表情は険しかった。

まめみを助けられなかった自分への憤り…

仲むつまじい2人の様子…

まるで自分がそこから切り離された様な寂しさ…

あらゆる感情が混ざり合い、ポナの心はぎゅっと締めつけられたのだった…。

To be continued…