小説「緑風と桃花は愛を紡ぐ(試練編)」~力になりたい~

あれから数日後……

ポナから後で謝罪のメッセージは来て仲直りは一応したものの、ナワバリに一緒に行く事は拒まれてしまう日々が続いて…

今日も相変わらず拒まれ、まめみは落ち込んだ様子で公園の噴水の水面を眺めていた…。

まめみ「……ポナ君…。」

自分がつらい時は優しく力強く支えてくれるポナ、しかし今はポナ自身がつらいのに自分が支えようとするのを拒まれてしまう…

湖面に映る桃色の瞳は悲しげで、今にも泣きそうな顔をしていた。

すると後ろから肩をポンッと優しく叩かれ、驚いて振り返ると、そこに居たのは…

スー「ま~めみ!」

まめみ「スーちゃん…。」

スー「どうしたのまめみ、元気が無いわよ?」

まめみ「そ…そんな事無いよ…。」

スー「隠さないの!あたし達は仲間でしょ、無理強いはしないけど話せそうなら話して欲しい。」

まめみ「スーちゃんありがとう…実は……」

そう言うと、まめみはスーにポナとの事を話し…スーは真剣な表情で聞いていた。

スー「そんな事が……ポナ、まめみに対してそんな事言う人じゃないもの…つらかったわね…。」

まめみ「うん……。」

スー「きっとポナもつらくて気持ちに余裕が無かったんだと思うわ、だから感情が抑えきれなくてまめみを突き放す様な言い方しちゃったんだと思う。」

まめみ「あたし…自分がつらい時はポナ君が支えてくれた様に…あたしもポナ君を支えたい…力になりたいのに…。」

スー「まめみの気持ち、ポナにも伝わってるはずよ…でも彼は彼できっとまめみに心配をかけたくないっていう気持ちがあるんだと思う、男のプライドみたいなものもあると思うし…まめおだってそうじゃない?」

まめみ「確かに…まめおもあたしに心配かけないようにって、つらいのを言わない時がある。」

スー「ポナはまめみを大切に想ってるわ、それはあたし達から見てもはっきりと分かる。だから…時にはそっと遠くから見守ってるのもありかもしれないわね。」

まめみ「傍に寄り添うだけが支えだと思ってた…でもそうじゃなくて遠くからそっと見守るのも大事だよね…ありがとうスーちゃん、気持ちが楽になったよ。」

そう言うとまめみはいつもの明るい笑みを見せた。

スー「まめみはその太陽の様な明るさと笑顔が最高に可愛いのよ、ポナもあたし達も…そんなまめみが大好きよ。」

まめみ「ふふっ、ありがとう…あたしも大好きだよ。はぁ…スッキリしたらお腹空いてきちゃった。」

スー「よーし!今日はあたしと一緒にケーキ食べに行こ?食べ放題のお店があるから好きなだけ食べれるわよ~。」

まめみ「うん、行く!いっぱい食べようね~!」

スー「うん!」

そう言うとまめみは立ち上がり、スーと一緒にケーキ屋へ向かい、好きなだけケーキを食べて至福の一時を過ごしたのだった。

その後…お互いにお土産のケーキを買って、スーと別れた。

まめみ「ポナ君の大好きなチーズケーキ…喜んでくれるかな。」

ポナの家に向かい、ナワバリで不在の間に掃除を済ませ、晩ごはんを用意して待っていると…

ガチャ…パタン…。

鍵を開ける音が聞こえて…ポナが帰って来た

しかし……

ポナ「…………………。」

まめみ「あ、お帰りポナく……」

ポナ「………………………。」

キイィ…パタン……ガチャッ……

まめみの声に反応もせず目を合わせる事も無く…ポナは自分の部屋へ入って鍵を掛けて閉じこもってしまった。

まめみ「……ポナ君………。」

寂しさで泣きそうになるまめみだったが…スーの言葉を思い出しぐっと堪えた…

今は遠くからそっと見守る時…

そう言い聞かせて、まめみは晩ごはんの準備を進めた。

一方ポナはベッドに横になったまま、いつの間にかしばらく眠ってしまっていた

イカスマホを見ると夜の8時前で…

部屋を出るとまめみの姿は無く、代わりにテーブルの上にはラップで包まれた晩ごはんとメモが置かれていた。

ポナ君へ

今日もお疲れ様、晩ごはん作ったから置いておくね。

ポナ君の大好きなチーズケーキと明日の朝ご飯の分のおかずが冷蔵庫にあるよ。

まめみ

また冷たくしてしまったのに、それでも変わらず優しく支えてくれるまめみ…

ポナは晩ごはんを食べながらありがたさを感じると同時に、自分への憤りを感じずにはいられないのだった…。

次の日、ポナは再び単身ナワバリへ向かった

ポナ「………っ…………!」

様々なブキを試しながらイカスカルマスクで顔を隠して、淡々と試合を続けるポナ…しかし相変わらず結果は変わらない…

同じ頃…

ツネ「はぁ…はぁ…。」

自宅のベッドで1人…気怠そうにしているツネの姿があった。

体が熱い…視界はボーッとしていて…

でも自分はこんな所で休む訳にはいかない……

まめみに連絡をしてナワバリの約束をした後…ツネはフラフラしつつもオシノビニットで顔を隠して家を後にした…。

一方で…まめみはスルメさんのお店にしばらく泊まりながら手伝いをするというまめおと途中で別れ、ツネとの待ち合わせ場所に向かった。

しばらく待っているとツネが来たが……

まめみ「ツっくん、おはよう!」

ツネ「はぁ…はぁ…まめみ…おはよう…。」

まめみ「ツっくん…様子が変だよ…顔も赤いし…。」

ツネ「はぁ…はぁ…大丈夫…。」

まめみ「大丈夫そうに見えないよ。」

そう言ってまめみはツネのおでこに触れると…

ツネ「はぁ…はぁ…。」

まめみ「ツっくんすごい熱だよ、すぐに家に戻って休まなきゃ!」

ツネ「はぁ…はぁ…大丈夫……でも…ごめん…水が欲しい…。」

まめみ「あたしの家に行こう。」

ふらふらするツネを支えながら、まめみは家へ向かった。

ツネ「はぁ…はぁ…。」

まめみ「はい、お水。」

ツネ「はぁ…はぁ…ありがとう…。」

まめみ「マスクと帽子を取るね。」

そう言って、そっとオシノビニットを外したまめみ

ツネの頬は赤く染まり息は荒く、黄色の瞳は虚ろで苦しそうだ…

しかし、水をゆっくり一杯飲み干すと…ツネは苦しそうにしつつも口を開いた。

ツネ「はぁ…はぁ…まめみ…ナワバリ…行くよ…。」

まめみ「ダメだよ!」

ツネ「僕は…行く…んだ……。」

まめみ「ツっくん!」

フラッ…ドサッ

立ち上がったものの、ふらついたツネをまめみが支え…

そのまま2人はソファに倒れ込んだ。

To be continued…