ツネ「…ん……っ……!」
重たい瞼を開けてると…目の前には天井があった
僕はどうしたんだっけ…そんな事を思いながら起き上がると…
ポトッ…濡れたタオルが落ちて、奥の扉からからまめみが出てきた。
まめみ「あ、気がついた?」
ツネ「まめみ…僕は……?」
まめみ「ツっくん、あの後意識を失って倒れちゃったの。」
ツネ「そうか…ごめん…。」
まめみ「ううん、大丈夫だよ。まめおは何日か帰って来ないから、治るまで家で休んでってね。」
ツネ「(まめお…まめみの従兄だったな…一緒に暮らしてるのか。)まめみ…ありがとう…。」
まめみ「どういたしまして、今お粥作ってくるね。」
そう言ってまめみはゲソを1つに纏めてポニーテールにすると、お粥を作る為に台所へ向かい…ツネは再びソファに横になり、辺りを見渡した。
リビングの写真立てには…まめみとまめお…そしてポナの3人が仲良く並んで笑顔の写真があった
髪型も違うし顔つきも少し幼い…場所もハイカラシティである事から2年前の写真だろう…ツネはそう思った。
…気に入らない…自分よりも長く一緒に…傍にいられたポナが憎い…
しかし熱のせいもあってツネの思考はそれ以上は進まなかった
ツネ「(……しばらく…ここで休むのも悪くない…まめみと一緒に居られるのなら…それでいい…。)」
そう思いながら、ツネは深く深呼吸をすると…まめみがお粥を持ってきた。
まめみ「はい、お粥が出来たよ。」
ツネ「ありがとう。」
まめみ「食べさせてあげるね。」
ツネ「うん…お願い…。」
まめみ「ふー、ふー、はい、あ~ん。」
ツネ「あーん……美味しい。」
まめみ「ふふっ、よかった…ゆっくり食べていこうね。」
自分にお粥を食べさせてくれて…その後はまめおの服を借りて着替え、まめみの部屋のベッドに横になった
まめみのベッドはふかふかで優しい香りがしてツネは安心感に包まれ、まめみは濡らしたタオルをおでこに乗せ傍で手を握っていてくれる
今は自分だけを見ていてくれる…自分とまめみの2人だけの時間…
…………………………
この時間を…永遠のものに……
ツネ「まめみ…あったかい…安心する…。」
まめみ「ゆっくり休んでね…眠るまでずっとこうしてる。」
ツネ「ありがとう…。」
彼が眠るまでずっと手を握っていたまめみ…
その後、ツネが眠ったのを確認してそっと部屋を出てお粥の器を洗っていると…
コンコン…ガラス戸の方から音がした。
まめみ「あ、とぐろさんかな。」
ガラス戸を開けると、そこに居たのはとぐろとドスコイまるだった。
とぐろ「遊びに来たぜ、まめみ。」
ドスコイまる「キュッキュッ!」
まめみ「とぐろさん、ドスコイまる、いらっしゃい!わぁ…ドスコイまるまた少し大きくなった?」
そう言ってドスコイまるを抱き上げたまめみに対して彼は大喜びな様子で、それを見たとぐろも嬉しそうに優しく笑った。
とぐろ「…ん、誰か先客が居るのか?」
まめみ「あ、匂いで気づいたのね。…実は幼馴染みが熱を出していて今日は上げられないの…ごめんなさい…。」
とぐろ「おっと、そういう事だったか…それなら仕方ないな、お前さんが気にする事はないぜまめみ。」
まめみ「ありがとう、とぐろさん。」
ドスコイまる「キュッ!キュッ!」
とぐろ「帰るぞ、ドスコイまる。」
ドスコイまる「キュ~…。」
まめみ「ごめんねドスコイまる、また今度ね。」
ドスコイまるを抱っこしたまま、まめみはとぐろと共に用水路に来た。
すると…水中からオオモノシャケの『モグラ』が顔を出した。
とぐろ「お、迎えに来てくれたのか。」
まめみ「このモグラ…確か前にザンナさんと一緒に威嚇をしてきた…。」
とぐろ「こいつの名前はモグモグって言うんだ。…マナーの悪いイカによって声帯を傷つけられてしまってな…ほとんど声を出す事が出来ないんだ…その代わり、今は行動で仲間と意志疎通をしてる。」
まめみ「そうだったのね…可哀想に…。」
そう言うとまめみはモグモグにそっと手を伸ばし…鼻先を優しく撫でた。
すると…モグモグはうっとりした様子で気持ちよさそうにしている…そして、まめみに近づいてすり寄った。
とぐろ「どうやらモグモグはまめみの事が気に入った様だな。」
まめみ「ふふっ、嬉しい…よろしくねモグモグ。」
モグモグをしばらく撫でた後に、とぐろはドスコイまるをまめみから受け取り、モグモグに乗って帰って行った。
そしてまめみは彼らを見送ると、自宅へと戻った。
しかし…帰る間、とぐろはある事が引っかかっていた。
とぐろ「(ドスコイまるにまめみ以外の匂いが付いているな…しかしこの匂い……覚えがあるんだが誰だったか思い出せない…。)」
一方…シャケト場では…。
おシャケさま「おや、とぐろはどうしたんだい?」
テツ「ドスコイまるを連れて、まめみの所へ行ってますよ。モグモグがさっき向かったから、じきに戻ってくるんじゃないですかね。」
ザンナ「ふん、イカと慣れ合い等と…。」
テツ「ザンナ、そう言いつつこの前まめみが持ってきた料理を…後からこっそり美味そうに食べてたじゃねぇか。」
ザンナ「なっ…テツ!貴様どこから見ていた!?」
おシャケさま「ははは…ザンナも素直じゃないねぇ。」
ザンナ「おシャケさま…!」
頬を真っ赤に染めて照れながら怒るザンナ…
口では悪態を吐きつつも、最近はまめみ達イカへの見方も和らいできた様だ。
皆でしばらく雑談をしていると…とぐろ達が帰って来た。
ドスコイまる「キュッ!」
おシャケさま「おかえり、とぐろにドスコイまるにモグモグ。」
とぐろ「ただいま戻りました、おシャケさま。ありがとなモグモグ。」
ドスコイまるを抱っこしたまま、とぐろはヒレでモグモグの鼻先を優しく撫で、モグモグは海の中へ潜って行った。
すると…おシャケさまが何かに気づいた様で口を開いた。
おシャケさま「ん…ドスコイまるに何やら気になる匂いが付いてるね…。」
テツ「本当だ…けど嗅ぎ慣れて無ぇ匂いだな…。」
とぐろ「まめみの所へ行ったら…幼馴染みが熱を出して寝込んでるって事で上がれなかったんだ…まめみがドスコイまるを抱っこしたから、それで匂いが付いたんだろう。」
おシャケさま「だが…この匂い、初めてでは無いね…。」
とぐろ「そうなんです…あっしも覚えはあるんですが…誰のものかが思い出せなくて…。」
おシャケさま「はて…誰だったかな……最近思い出すのに少し時間がかかる時があるからね…。」
テツ「(それって…もう歳の影響が出てきてるんじゃ…。)」
おシャケさま「…聞こえているよ、テツ。」
テツ「いっ!?」
ボソッと呟くように言ったのだが、おシャケさまにはしっかり聞こえていて…何という地獄耳であろうか…。
すると…ドスコイまるに近づいて匂いを嗅いだザンナが口を開いた。
ザンナ「この匂い…タコワサ殿の傍にいた孫とかいう奴の匂いではないか。」
その瞬間、とぐろ達の目が見開かれた!
とぐろ「そうだ!あの孫…確かタコとも違ってて…ありがとうザンナ!」
ザンナ「な…!?あ…あぁ…礼には及ばんぞ…。」
自分はただ気づいて言っただけなのに、突然とぐろに感謝されて驚いてしまうザンナなのであった…。
テツ「タコワサ殿の直系の孫では無いって話だったな…。」
おシャケさま「という事は…既にまめみちゃんと接触しているんだね…。」
とぐろ「でもまめみは気づいてる様子は全然無かった…このままでは…!」
おシャケさま「…最大の試練の時は…近づいている様だね。」
とぐろ「おシャケさま…!」
おシャケさま「…運命の歯車は止まらない…我々に出来るのは見守る事、ポナ君とまめみちゃん…2人の絆の強さを信じる事のみ…。」
そう話しながら…おシャケさまは2人の事を案じるのだった…。
To be continued…