小説「緑風と桃花は愛を紡ぐ(試練編)」~灰色の狐は掠め取る~

まめみ「はぁ…はぁ…っ…!」

どれくらい走っただろうか…

ポナのあの言葉は自分の心に突き刺さり、激しい痛みを引き起こし…

同時にポナの悲しげな表情…自分があんな思いをさせてしまった事への申し訳なさで、まめみは心が引き裂かれそうだった…。

すると…

ドンッ!!

フー「おわっ…まめみ!?」

違う道から来たフーとペコ…まめみは気づかずに走り続けてフーにぶつかってしまったのだった

しかしまめみは下を向いたまま震えていて…

ペコ「まめみ、どうしたの?」

フー「どこか痛いのか?」

そう言ってフーがまめみの肩を優しく触った瞬間…

まめみ「フー…さ…ペコ…ちゃ…ん……っ……!」

2人は驚いて目を見開いた…目の前のまめみは泣きながら大粒の涙をボロボロと零していたのだ

ペコ「まめみ…!?」

まめみ「ひっ…く…ひっく…ペコ…ちゃ…あぁぁぁぁんっ…!!」

ペコの胸に飛び込み泣き崩れるまめみ…

フーもペコも驚いてしまったが…ペコはまめみの背中を優しく撫でた。

ペコ「とてもつらい事があったのね。」

フー「とりあえず、道の端に寄ろう。」

3人は道の端に寄り…座りながらペコはまめみの背中を落ち着くまで優しく撫でてくれた。

しばらくして…

まめみ「あり…がとう…ペコちゃん…。」

ペコ「落ち着いた?」

まめみ「うん…。」

フー「まめみ、よかったら話してくれないか?」

まめみ「…………………。」

ペコ「私達に出来る事なら力になりたいの。」

まめみ「………実…は…ポナ君と……」

そう言うと、まめみは話し始めた…

ポナに無理矢理襲われた事は言いづらかったが…それでもペコとフーは優しく言葉をかけて包み込んでくれて、まめみは勇気を出して打ち明け2人も真剣な表情で聞いていた

フー「ん……ポナ…そんな事を…。」

ペコ「ポナったら…!」

まめみ「あたしが悪いの…ポナ君の気持ちに気づけなくて……。」

ペコ「まめみは本当に優しい子ね、だからポナも私達もまめみの事が大好きなのよ。」

まめみ「ペコちゃん…。」

フー「ポナも男だしな…まめみにカッコいい所を見せたいというか、あまり弱い所を見せたくないっていう男のプライドもあったんだろう。」

まめみ「前にスーちゃんも同じ事を言ってた…。」

フー「スーが?何だ…兄妹揃って同じ事言っちまったか。」

そう言って優しく笑いながら頭をポリポリと掻くフーに、ペコとまめみも優しく笑った。

ペコ「ポナは決して本心では無いはずよ、だってあの子はいつだってまめみの事を大切に想っているもの。」

フー「あぁ、感情が爆発して自分でも抑えきれず、心にも無い事を言ってしまったんだろう。」

まめみ「ペコちゃん…フーさん…。」

フー「もう一度、ポナと2人でお互いによく話をすればいいさ。」

ペコ「お互いに謝ってたくさん気持ちを伝え合う事で、更に想いと絆は深まっていくのよ。」

まめみ「うん…ありがとう2人共、あたしもう一度ポナ君とお話してくる。」

そう言ってまめみは立ち上がり、2人に手を振って来た道を戻っていった。

フー「大丈夫そうだな。」

ペコ「えぇ。」

まめみの姿を見送ると、2人は再びスルメさんのお店へ向かって歩き始めた。

まめみは急いで走った

ポナ君への気持ち…想いを全て伝えよう

強い決意を胸に走っていたが……目の前に誰かが立ち塞がった。

まめみは走るのを止め、ゆっくりと近づくと…そこに立っていたのはツネだった

ツネ「まめみ。」

まめみ「ツっくん…どうしたの?」

どうしてツネが立っているのか…不思議に思うまめみであったが…彼の口からは驚くべき言葉が発せられた。

ツネ「あいつのどこがいいの?」

まめみ「えっ…?」

突然何を言い出すのか…怪訝な表情をするまめみに対してツネは目の前に来て、続けて言葉を発した。

ツネ「僕はまめみが好きだよ、あいつなんかよりもずっとずっと前から…。」

そう言うと、ツネはまめみを抱きしめて……

その唇にキスをした。

まめみ「…………!!」

驚いて桃色の瞳を見開くまめみ

その直後にドンッとツネの胸を押して突き放した

しかしツネがまめみの手首を掴んで離さない!

ツネ「まめみ。」

まめみ「嫌っ…何するのツっくん…!」

ツネ「僕なら泣かせたりしない、まめみをずっとずっと傍で守り続けるよ。」

まめみ「ツっ…くん…!」

ツネ「僕と行こう、まめみ。」

そう言った瞬間…ツネの瞳孔がタコの目と同じ形に変化した!

まめみ「その目は…!?」

ツネ「…まめみは『タコワサ将軍』を知っているよね?」

まめみ「タコワサ…まさか……!」

ツネ「僕はタコワサお爺様の孫…タコとイカの混血なんだ。」

動じずに答えるツネに対して、驚きを隠せないまめみは目を見開いたまま絞るように声を出した

まめみ「そん…な…それじゃあ…ウト族の末裔…は…まめおとあたし以外の最後の1人は…ツっくん…なの…!?」

ツネ「そうだよ…僕がウト族の末裔…最後の1人だ。」

まめみ「それじゃあ…ツっくんもブキと会話が…?」

ツネ「…僕はブキと会話する力は受け継がなかった…でもね、その代わりに同族…ウト族を見分ける力とタコの力を受け継いだんだ。」

まめみ「タコの…力…!?」

ツネ「僕の所へおいでまめみ、ずっと一緒だ…永遠に。」

そう言って瞳を閉じ、再び開けたツネの瞳は…

瞳孔はタコのままで、黄色の目は赤く染まっていた

次の瞬間、まめみの体は催眠術にかかった様に動かず…ツネの瞳からも目を反らせず声も出せない…!

まめみ「っ……!!」

ツネ「大丈夫、僕がずっと一緒にいるからね。」

まめみ「…………………!!」

ポナ…く…ん………!!

脳裏でポナの名前を呼んだ直後…まめみはそのまま意識を失った。

ツネ「…………………。」

意識を失うまめみをツネは優しく抱き上げ、ニヤリと口角を上げた後に舌舐めずりをすると…

そのまま暗闇へ姿を消した。

しばらくして…ポナはまめみを捜していた

しかし行方は分からないままで、彼女のイカスマホも電源が切れていると言っていたので繋がらず…ポナはずっと捜し回る最中、買い物帰りのペコとフーに会った。

ポナ「姉さん、フー!」

ペコ「ポナ、どうしたの?」

フー「まめみと一緒じゃないのか?」

ポナ「まめみに…まめみに会ったの!?」

ペコ「えっ…まめみならさっき会って泣いてたから、落ち着かせて話をした後にポナともう一度お話するって戻って行ったわよ?」

ポナ「そんな…だってあの道は一本道…俺はまめみと会ってないよ…!」

フー「おかしいな…まめみが戻って行くのを見届けて俺達もここまで来たんだが…。」

ペコ「まめみのイカスマホは?」

ポナ「繋がらないんだ…充電が切れてるって言ってたから…。」

フー「一度スルメさんの店に行こう、まめおがいるからもしかしたら連絡が来てるかもしれない!」

3人は大急ぎでスルメさんのお店へ向かった。

まめおにも事情を話したが、やはりまめみからの連絡は来てなくて…

その後全員でまめみを捜すも彼女の姿は見つからない…

ポナ「まめみ……どこへ…!」

ドクン…ドクン…ポナは胸騒ぎを覚えた…

無事でいてくれ…!そう願いながら、ポナは首からかけられたペンダントに手を当てた。

一方…ここはツネの家

ツネ「まめみ、起きて。」

そう言って優しく頬を撫でると…まめみは目を覚ました。

しかし、その瞳は桃色ではなくて……血のような赤

目を覚ました彼女はポナとの記憶は全て塗り替えられ、ツネが最愛の恋人になっていた。

まめみ「…ツっくん…。」

ツネ「まめみ、大好きだよ。」

まめみ「あたしも大好きだよ…ツっくん。」

ツネはまめみの名を愛おしく呼び、まだ眠そうにしつつも自分へ向けられた彼女の反応に満足そうに口角を上げ…

そのまま彼女の唇に口づけた。

To be continued…