小説「束の間の春」~甘い香りは波乱の予感~

ノーチラスを迎えたまめみ、最初こそ癖の強さに苦戦したもののじきに扱いに慣れてきて…

まめみ「やった、チョーシサイコー!!達成!」

ポナ「おめでとうまめみ!」

ツネ「流石まめみ、すごいね。」

まめみ「えへへ、ありがとうポナ君、ツっくん!」

ノーチラス「(大した者じゃまめみ、ここまでわらわを扱えるとはな…さすがはハイドラントとわらわが見込んだ娘じゃ。)」

まめみ「ふふっ…褒めすぎだよノーチラス。」

そう言いつつ、まめみの頬は赤く染まってて嬉しそうに笑っていた。

ポナ「まめみ、お祝いにケーキ食べに行こうか!」

ツネ「いや、僕とワッフル食べに行こう。」

2人「…………………。」

ポナ「俺が先にまめみを誘ったんだけど?」

ツネ「順番なんて関係無いね、まめみがどっちを食べに行きたいかが重要だよ…まぁ、聞くまでも無いけど?」

ポナ「俺に喧嘩売ってんの?」

ツネ「他にどんな解釈が出来るんだよ。」

睨み合う両者の間にはバチバチと火花が散っていて…

まめみ「も~会う度に喧嘩しないでよ…。」

もはやいつもの見慣れた光景と化した2人のやりとりに、まめみは盛大にため息を吐いた…。

すると…

まめお「スーお前…さっき大福をたらふく食ったのに今度はケーキかよ…。」

スー「よっちゃんの手作りのお昼ご飯も食べたわよ。いいじゃない、まだいくらでも食べれるわよ。」

まめお「ほんっとお前の胃袋どうなってんだよ。」

そんな話をして笑いながらまめおとスーが歩いて来た。

まめみ「まめお、スーちゃん!」

まめお「お、まめみ。ポナにツネも…みんなでナワバリか?」

ポナ「うん、まめみのノーチラスがチョーシサイコー!!になったからお祝いする所だよ。」

ツネ「誰かさんが口を挟むからまだ決まらないんだけどね。」

ポナ「テメェが口挟んでるんだろ…。」

苛立つポナは口調も変わり、口元はピクピクとしている…。

まめお「相変わらず大変そうだな、まめみ…。」

まめみ「うん、大変…。」

スー「あたしは初めて会うけど…あれがツネ?」

まめみ「うん、紹介するね…幼馴染みのツっくん。ツっくん、あたしの友達のスーちゃんだよ。」

スー「まめみから話は聞いてるわ、よろしくね。」

ツネ「…こちらこそよろしく。」

ポナ「(俺以外には普通なのか…。)」

てっきり敵意を剥き出しにするのかと思ったが…無愛想なもののちゃんと挨拶をしたツネに、ポナは内心ちょっと驚いていた。

しばらく話をした後に2人と別れ、結局ポナとツネの誘いも断って…まめみは家でホットケーキを作る事にした。

まめみ「はい、完成したよ!」

そう言って五段くらいに重なったホットケーキを出したまめみ。

ほかほかの湯気と甘い香りで、食べる前からとても美味しそうなのが伝わってくる。

ポナ「今日も美味しそうだね。」

まめみ「ありがとう、それじゃあ食べようか。」

3人「頂きます。」

ツネ「ん、すごく美味しい。」

まめみ「ふふっ、ありがとうツっくん。」

ポナ「…ねぇツネ…地下世界ってどんな所?」

ツネ「君に教える必要はないね。」

ポナ「(この野郎…!)」

まめみ「あたしも知りたいな、どんなお店があるの?」

ツネ「…地下世界は太陽の光こそないものの、地上とほとんど変わらないよ。」

ポナ「(まめみには答えるのかよ…。)」

内心ツネに対して毒づきつつ、ポナはまめみと共にツネの話に耳を傾けた。

まめみ「ツっくんはオクタリアンとの混血って言ってたけど…。」

ツネ「僕の母がウト族、父がオクタリアンの研究員だったんだ…今は両親共に故人だけどね。」

ポナ「……………!」

まめみ「ごめんなさい…あたし…。」

ツネ「大丈夫だよ、両親はいないけどお爺様がいる…それに兄妹の様な存在の2人もいるからね。」

まめみ「兄妹の様な存在の2人…?」

ツネ「うん、オクタリアンで歳が近いんだ…片方は兄の様な存在、もう片方は妹の様な存在だよ。」

そう話すツネの表情は穏やかで、口元はうっすらと笑みを浮かべていて…普段は見れない彼の一面に内心ポナは少し驚いていた。

まめみ「タコワサもその2人も、ツっくんにとっては大事な家族なんだね。」

ツネ「うん、かけがえのない大切な家族だよ。…まめみの事も家族としていつでも僕の傍に迎える準備も出来てるからね。」

まめみ「えぇ…!?」

ポナ「それは無いから、まめみは俺と一緒にいるって決めてるからね。」

まめみ「ぽ…ポナ君…。」

ツネ「君の考えでまめみの将来を決めないで欲しいね。」

ポナ「まめみ本人が俺と一緒にいるのを望んでるの。」

まめみ「やめてよ2人共…!」

言い争いを始めた2人をなだめつつホットケーキを食べ終えて、その後ツネは帰って行った…。

ポナ「はぁ…やっと2人っきりの時間が来た…。」

リビングでくつろぎつつ、ぎゅっと抱きついてすりすりしながら甘えるポナに、まめみは優しく抱き返して頭を撫でた。

まめみ「ポナ君…どうしていつもツっくんと喧嘩しちゃうの…。」

ポナ「あいつがいちいち突っかかってくるからだろ、それに…まめみを失うあんな思いはもう二度としたくない。」

そう言ってポナはまめみをさらに強く抱きしめた。

まめみ「あたしは離れないよ、もう二度と、ポナ君の傍を離れたりしない。」

ポナ「まめみ…まめみ…ぃ…。」

ちゅっ…ポナはまめみにキスをして…そのままゆっくりと押し倒した。

角度を変えながら何度もキスをして…濃厚な時間を堪能すると、ポナはまめみの胸に顔をうずめた。

まめみ「んん…ポナ…君…。」

ポナ「まめみ…シたい…。」

まめみ「まだ昼間だもの…夜までは…。」

ポナ「一昨日からお預けされてる…もう…我慢出来ない…。」

そう言ってポナは起き上がり、まめみをひょいと軽々と抱き上げて…

まめみ「ぽ…ポナ君…!」

ポナ「離さない…。」

結局…ポナはまめみを連れて自分の部屋に行き…その後、まめみと濃厚な愛の一時を過ごしたのだった。

一方…ツネは地下世界へ戻っていた。

タコワサと話をした後、ある部屋に向かうと…

むにゅっ…ソファに座って本を読んでいた、その部屋の主であるタコボーイの柔らかい頭に顔をうずめた。

タコボーイ「帰ってたんですね、ツネ。…何か嫌な事でも?」

ツネ「…まめみの傍にいるあの男がウザくてね…はぁ…この柔らかさに癒やされる…。」

タコボーイ「今日はこちらで休んでいくんですか?」

ツネ「いや、もう少ししたらまた地上へ行くよ。」

タコボーイ「あの子に挨拶は…?」

ツネ「今日はいい…また寂しがるだろうからね…。」

タコボーイ「ツネを慕ってますからね、あの子は。」

ツネ「慕ってると言っても兄としてだろう。」

しばらく会話をした後、ツネは地上へ戻る準備を始めた…。

すると…

ふわっ…甘い香りが漂ってきた…。

香りの方を向くと…そこにはボトルに入れられた飴玉が…まめみの瞳と同じ綺麗な桃色で…

まめみにあげたら喜ぶかな…そう思ってツネはボトルを手に取りバッグに入れた。

その後地上へ戻り…次の日の朝、まめみの家へ遊びに行った。

まめみ「いらっしゃいツっくん、何か飲む?」

ツネ「コーヒーを貰おうかな。」

まめみ「分かった、待っててね。」

ツネ「うん。」

持ってきたボトルをテーブルに置き、椅子に座り待っていると遅れて起きてきたポナがリビングへ来た。

ポナ「…朝一番に会うのがよりによってツネだなんて…。」

ツネ「僕で悪かったね。」

すると、まめみがコーヒーを持って来た。

まめみ「あ、おはようポナ君、ツっくんコーヒーお待たせ。」

ポナ「おはよう、まめみ。」

ツネ「ありがとう。」

朝から顔を合わせてしまったツネに対してポナはがっかりしつつも、その後にまめみの顔を見れたので嬉しい気持ちのままテーブルに座ろうとした。

しかしポナは気づいた、昨日まで無かった飴のボトルに…。

ポナ「あれ…この飴は…?」

まめみ「あ、ほんとだ…あたしのじゃないよ?」

ツネ「僕が持って来たんだ、まめみにあげようと思ってね…どうぞ。」

まめみ「ありがとうツっくん、甘い香りで美味しそう!」

嬉しそうにまめみは飴のボトルに手を伸ばしたが…。

ポナ「待ってまめみ。」

まめみ「ポナ君…?」

ポナ「ツネが持ってきたやつだろ…何か入ってるかもしれない。」

ツネ「失礼だね、さすがに僕だってそんな事はしないよ。はい、どうぞまめみ…」

ポナ「させるかっ!」

ツネ「くっ…やめろ…!」

まめみに飴を渡そうとしたツネの腕をポナが掴み、2人は揉み合いながら床にバタンと倒れ込んだ!

そして更に…倒れた飴のボトルから飴玉が転がり…

2人「うぐっ…!」

何と2人の口に入り、驚いた拍子にゴクリと飲み込んでしまった…。

まめみ「2人共、大丈夫!?」

驚いたまめみだが、何やら様子がおかしい…

ポナ「う…ぐぐ…!」

ツネ「体…が…!」

まめみ「ポナ君、ツっくん!?」

苦しみ出した2人を見て更に驚いたまめみであったが…次の瞬間…!

パアァァァァァッ!!

2人は強い光に包まれて、まめみは思わず目を瞑った!

そして…次に目を開けた時には…

2人「あれ…まめみ…おおきい…?」

自分の声なのに…いやに幼く聞こえる…

それに…まめみが何だか急に大きく見える…

まめみ「あ…あぁぁ…ポナ…くん…ツっく…ん……!!」

青ざめているまめみ…不思議に思ってお互いを見た2人は…

ポナ「あぁ!?」

ツネ「えっ!?」

まめみの目の前に映る2人は…

To be continued…