小説「束の間の春」~輪廻からの再会~

試練を乗り越え、騒がしいものの平穏な日々が戻り…季節は冬の終わりから春になっていた。

思い思いに過ごすまめみ達であったが、ポナとツネは相変わらずで…

ツネ「君は呼んでないんだけど。」

ポナ「まめみに何するか分からないからね、俺が傍でしっかり守らないと。」

ツネ「僕はもうあんな事しないよ、正々堂々とまめみを振り向かせるって決めたんだからね。」

ポナ「そう言っても分からないだろ。」

ツネ「へぇ…言うね。」

ポナ「そっちこそ。」

まめみ「2人共…会う度に喧嘩しないでよ…。」

ツネ「ごめんねまめみ…でもこれは僕達の問題だから。」

ポナ「ツネが諦めて俺達を祝福してくれれば解決するんだけどね。」

ツネ「それは僕が言いたいよ。」

まめみ「も~ポナ君、ツっくん…とにかくナワバリ行くよ…。」

困りつつもまめみは2人を連れてナワバリに…

しかしここでも2人は相変わらずで…

ツネ「まめみは僕が守るから安心してね。」

ポナ「ちょっと、それは俺のセリフなんだけど。」

ツネ「君は遠くから援護してればいいよ。」

ポナ「俺に張り合う気?スピナーの的にしてやるよ。」

ツネ「上等だ、クアッドの餌にしてあげるよ。」

まめみ「喧嘩しないでよぉ…。」

試合中も2人はまめみの近くでもの凄い強さを見せて…試合は圧勝

しかし試合終了後も2人は言い争いをしたままで…もはや勝利した事すらも気づいてない…。

ポナ「何でいちいち俺に張り合うかな。」

ツネ「それはこっちのセリフだから。」

まめみ「もうっ、いい加減にしてよ2人共…どうして喧嘩ばかりするの!」

2人「だってコイツがちょっかい出してくるから!!」

そう言って2人はお互いに一差し指をビッと指した…

まめみ「……はぁ…。」

そんな2人の様子に、まめみは深いため息を吐いたのだった…。

ある日、新しいスピナーが追加されたと知ったまめみは、ナワバリの後にまめお、ポナと3人でブキチのお店へ向かった。

ブキチ「いらっしゃいやし~!」

まめみ「ブキチ、新しいスピナーが出たの?」

ブキチ「これがその新しいスピナー、その名も『ノーチラス47』でし!」

まめみ「ノーチラスかぁ…わ、軽いね。」

ブキチ「軽量級のブキでしが、このスピナーは今までのスピナーとは違う特徴があるでし!」

ポナ「違う特徴…?」

まめお「見た感じは普通のスピナーと変わらねぇけど…?」

ブキチ「試してみれば分かるでし。」

そう言ってブキチは3人を練習場へ連れて行き、床にまめみと同じ色のインクが入ったバケツをバシャッとかけた。

まめみ「ブキチ、ノーチラスは何が違うの?」

ブキチ「まずチャージをするでし。」

まめみ「うん。」

そう言うとまめみはノーチラスのチャージを始めた

普段ハイドラントを使う彼女にとって、ノーチラスのチャージはとても早い。

ブキチ「そのまま床に撒いたインクの中へ潜ってみるでし。」

まめみ「え…?」

まめお「そんな事したら、チャージが無効になっちまうぞ?」

ブキチ「ふふふ…とにかくそのまま潜ってみるでし。」

まめみ「う、うん…分かった。」

そう言ってまめみはインクへ潜った…

すると…?

カチッ…特殊な音が聞こえた。

ポナ「あ、今の音は!」

まめお「チャージキープの音!」

ブキチ「気づいたでしね。」

驚いたまめみもインクの中から顔を出して口を開いた。

まめみ「ブキチ、スピナーなのにチャージキープが出来るの!?」

ブキチ「その通り、このノーチラスはスピナーでは初のチャージキープを搭載したでしよ!」

まめみ「すごい…!」

ブキチ「射程こそスプラスピナーと同じくらいでしが、チャージキープで間合いを詰めて仕留めるでしよ。これまでに無い新しい戦いが出来るでし。」

ポナ「面白いスピナーだね!でも俺は、これを使いたいな。」

そう言ってポナが手に取ったのは同じスピナーの『クーゲルシュライバー』

ノーチラスと同様…射撃中にも再チャージが可能で、何よりの特徴は「射程が変わる」事である

撃ち始めは短いが、終わりになるとブレが大きくなる代わりに射程がハイドラントに近いくらいに伸びるのだ。

スピナーを好むポナとまめみは従来のスピナーに加えて、それぞれ新しいスピナーへの可能性も見い出していた。

しばらく試し撃ちをした後、まめみはノーチラスを、ポナはクーゲルシュライバーを購入し…

まめみ「よろしくね、ノーチラス。」

ノーチラスを優しく撫でながらまめみは声をかけた。

すると……

ノーチラス「(ほう…この小娘がわらわの主か?)」

まめみ「あ、ノーチラスの声が聞こえる。」

まめお「この喋り方、すげぇ聞き覚えが…。」

ポナ「ノーチラスはどんな口調なの?」

まめみ「ほう…この小娘がわらわの主か?って喋ったよ。」

ポナ「それ…確かハイドラントもそんな感じの口調じゃなかったっけ?」

ハイドラント「(…ノーチラス…その声……まさか…!?)」

まめみ「ハイドラント…?」

まめお「ノーチラスと知り合いなのか?」

ノーチラス「(その声、ハイドラントか…久しいのぅ。)」

ハイドラント「(お前…何故こんな姿に…。)」

まめみ「ノーチラスは、過去に何かあったの…?」

ノーチラス「(ハイドラントが認めた小娘なら実力は確かじゃ、話してやるかの…わらわの過去を。)」

そう言うとノーチラスは語り始めた。

ノーチラスはかつてハイドラントカスタムだった

1人のイカに買われ大切に使われていたが…部品が大破してしまい、廃棄せざる終えなかった…

その後、ブキチによって解体され…しばらく眠りについた後に、タンク部分を再利用されてノーチラスの本体として生まれ変わったのだ。

まめみ「そんな過去があったのね。」

まめお「でも前の持ち主は、とても大事にしてくれてたんだな。」

ポナ「どんな事があったのかな?」

ブキチ「ボク達には聞こえないでしからね…教えて欲しいでし。」

その後まめみ達はポナとブキチにも今の話を伝えた。

ポナ「そんな過去があったんだ…でもこうしてノーチラスとして生まれ変わって、今度はまめみの元へ来たのも運命なのかもしれないね。」

まめみ「うん。」

ノーチラス「(自分で言うのも何じゃが、わらわは癖が強く使いこなすのはそれなりの忍耐がいる…それでもわらわを扱える自信はあるのじゃろう?)」

まめみ「もちろんだよノーチラス、ハイドラントの時もたくさん時間をかけてここまで来たんだもの、貴女の事も使いこなせるようになりたい…仲良くなりたいの。」

ハイドラント「(まめみは生半可な根性の娘では無い、我をここまで扱えるのだからな…大船に乗ったつもりで任せておけば良い。)」

まめみ「ハイドラントったら…褒めすぎだよ…。」

そう言って恥ずかしそうに頬を赤く染めつつも、まめみは嬉しそうに笑った。

ノーチラス「(ふふっ、気に入った…それでこそわらわの主にふさわしい。わらわの力、お前に託そう…頼んだぞ小娘…いや、まめみ。)」

まめみ「うん、よろしくねノーチラス!」

まめお「やれやれ…また癖の強い奴が来たな。」

そう言いつつも、まめおの口元も優しく笑っていた。

To be continued…