小説「夢結ぶ星りんご」~大人なネズミとお子様タマゴ~

アイシェ「よかった…2人共…!」

ボロボロだが、2人が無事なのを確認したアイシェは安堵した…しかし当の本人達はまだ戦いを止める様子は無く…

マルク「いい加減ボクが上だって認めるのサ!」

マホロア「ボクが上に決まってんダロ!」

お互いに殴り合いに発展してしまった!

アイシェ「ねぇやめて…お願いだから…!」

泣きそうになりながらアイシェが懇願するが、それでも2人の耳には届いておらず、喧嘩を続けている…

どうすれば…そう思っていたその時!

カービィ「2人共、そんなに不満があるなら…喧嘩じゃなくて歌で発散しようよ!」

アイシェ「えっ……。」

ドロッチェ「っ……!!」

その言葉に、アイシェとドロッチェの表情は凍り付いた

そしてそれは殴り合いをしていた2人も同じで…

マルク「………え?」

マホロア「………今、何て言ったカナ?」

カービィ「だから、歌だよ!歌って発散しちゃえばみんな仲良しだよ?」

そう話すカービィの青い瞳はキラキラしていて、どこからか取り出したマイクで歌う気満々だ!

ドロッチェ「逃げるぞ、アイシェ!」

アイシェ「きゃあっ!」

危険を察知したドロッチェは、アイシェをお姫様抱っこして飛び去って行き…

マホロア「オイ!ボクのアイシェをドコに連れて行くんダヨ!!」

魔法空間の中から怒るマホロアだったが、マルクが鉤爪でマントをグイッと引っ張って…

マルク「おい、早く逃げるのサ!!」

青ざめた表情で言うマルクに、マホロアも「魔法空間を消さないと逃げられない」状況に気づいて…

マホロア「…ボク達、チョー大ピンチジャン!!」

そう叫んだマホロアは、マルクと共に慌てて魔法空間を消そうとしたが…

カービィ「まずはボクからいっくよーーーー!」

満面の笑顔でカービィは大きく息を吸いこんだ

マルク「止めるのサ!!」

マホロア「歌うなヨォ!!」

しかし、そんな2人の叫びも虚しく…

カービィの歌声が響き渡った!!

ビキビキ…バリッ!!

ガシャアァァァァン!!

魔法空間はヒビが入って、空間もろともマホロアとマルクを吹き飛ばし…

ドロッチェ「…終わったか…?」

歌声が静まったので、ドロッチェがアイシェを連れて戻ると…

そこには地面に顔からめり込んで、ピクピクしているマホロアとマルクの姿…

カービィ「え、2人共どうしたの!?」

そんな2人の様子を見て、驚くカービィの姿があった…。

その後、2人は救出されたが…

アイシェ「もうっ、どうしてあんな事したの!」

珍しく怒るアイシェに、2人はその場に座ってしょんぼりしていて…

マホロア「ダッテ…マルクが寝転がってたボクの顔にボールぶつけテ、謝らないんだモン!」

マルク「お前がこの前ボクにした仕打ちに比べれば、あんなもん謝る必要ないのサ!」

マホロア「ソンナワケネーダロ!」

アイシェ「やめて!マルクはまず謝るの、そしてマホロアも!」

マホロア「エェ~~~ボクもナノ!?」

アイシェ「だって酷い目に遭わせたのは本当なんだから、ちゃんとお互いに仲直りして。」

マホロア「エェ……デモ…デモ…。」

マルク「…悪かったのサ。」

マホロア「ナッ…!?」

アイシェをこれ以上怒らせて嫌われたくない…そう判断したマルクは、マホロアに謝罪をしたが…マホロアは意地を張って黙り込んだまま両手をぎゅっとしていて…

アイシェ「マホロアも…ね?」

マホロア「………………。」

優しく言うアイシェだが、マホロアは無言のまま俯いている

ドロッチェ「やれやれ…随分とお子様だな。」

マホロア「オイ、初対面なのに失礼ダナ!?」

呆れたドロッチェがそう言うと、マホロアは黄色い瞳をつり上げて怒ったが…彼は赤い瞳を向けたまま見ていて…

ドロッチェ「君はアイシェの大切な友達なんだろう?何故、彼女を悲しませる様な事をするんだ。」

マホロア「友達じゃネーヨ!アイシェはボクの大切な恋人ダヨ!!」

激怒するマホロアに、ドロッチェは赤い瞳を見開いて心底驚いた顔をして…

ドロッチェ「恋人…何という事だ…。」

アイシェ「やめてマホロア、ドロッチェは何も悪くないでしょ…!」

マホロア「アイシェ…ドウシテ庇うんダヨォ…!」

アイシェ「違うよ、私は…」

マホロア「まさかコイツに誘惑されテ…!?」

アイシェ「マホロア…!」

やきもちを妬くマホロアに困ってしまうアイシェを見て、ドロッチェが再び口を開いた。

ドロッチェ「だとしたら、どうする?」

アイシェ「えっ…?」

マホロア「ふざけんなヨ、テメーーーー!!」

ドロッチェ「オレは君みたいに子供では無いし、アイシェを幸せに出来る自信があるけどな。」

マホロア「ソンナワケネーダロ、ボクだけがアイシェを幸せに出来るノ!!」

アイシェ「マホロア、やめて…ドロッチェも!」

フーッ、フーッと息を切らして怒るマホロアを宥めるアイシェだが、ドロッチェは含み笑いを浮かべていて…

カービィ「とにかくマホロア…ちゃんと仲直りはしようよ。」

そう言ってカービィが助け船を出してくれたが、マホロアは頑なに拒否して…

マホロア「ボクは謝らないヨ、ダッテ悪くないモン!」

アイシェ「マホロア…!」

マホロア「アイシェ~ボクと~っても痛いヨォ…手当てして欲しいナァ…。」

そう言って甘えながら、アイシェの前でコテンと転がり上目遣いで見たが…

アイシェ「もう、謝らないマホロアなんて知らない!」

マホロア「エ…エェェーーーーー!?」

アイシェ「ドロッチェ、後は1人で大丈夫…送ってくれてありがとう。」

ドロッチェ「ん、あぁ…またなアイシェ。」

アイシェ「うん、ドロッチェもカービィもまたね。」

そう言ってドロッチェとカービィに優しく微笑むと、マホロアに対してはツーンとしながら1人で歩いて行ってしまい…

マホロア「ア…アイシェ、待ってよアイシェーーーーー!!」

起き上がったマホロアは、大慌てでアイシェを追いかけて行ってしまい…その場に残されたカービィ達は…

カービィ「アイシェがあんなに怒るの珍しいね…。」

マルク「ありゃ相当なのサ…。」

ドロッチェ「……………。」

驚くカービィとマルクをよそに、歩いて行くアイシェの姿を見つめるドロッチェの口元は僅かに笑みを浮かべていて…その赤い瞳は彼女を離さなかった。

その後ローアに戻った2人だが、マホロアはアイシェの周りをウロウロと浮かびながら忙しく動いていて…

マホロア「アイシェ〜アイシェちゃ〜ん、キミのマホロア君が呼んでるヨォ〜?」

そう言ってゴマすりをするマホロアだが、当然アイシェの機嫌が直るはずもなく…

アイシェ「呼ばれても知らない。」

マホロア「アイシェ~ボク反省してるヨ…ホントダヨォ!」

アイシェ「ちゃんと謝れない悪い子なマホロアは知りません、ご飯も作ってあげない。」

マホロア「ソンナ事言わないデヨォ~ボクそういう冷たくされチャウ系のプレイはチョット…。」

アイシェ「マホロア!」

マホロア「ヒッ…冗談ダヨォ…!」

アイシェ「やっぱり反省してないじゃない…。」

そう言って困った表情のアイシェに、マホロアは慌てた様子で…

マホロア「反省はホントにしてるヨォ!」

アイシェ「…ほんとに?」

マホロア「ウン…。」

しょんぼりしているマホロアは、耳もペタンと垂れて泣きそうな顔をしていて…少なくとも演技では無く、本気で反省している様子だ。

アイシェ「マルクにちゃんと謝れる?」

マホロア「…すごく癪だケド…出来るヨォ…。」

アイシェ「……ふふっ、約束してね。」

マホロア「アイシェ…!」

許してくれて優しく笑う彼女に、パアァッと表情も明るくなるマホロア…するとアイシェは頬に手を伸ばしてきて…

アイシェ「怪我の手当てしなきゃ。」

マホロア「最低限の怪我は魔法で治すヨォ…デモ、大きい怪我はお願いするネ。」

アイシェ「うん。」

その後…アイシェはマホロアの大きな怪我をした部分に、薬を塗り包帯を巻いていった。

To be continued…