小説「夢結ぶ星りんご」~迷子のネズミと…~

アイシェ「もう大丈夫、ありがとうタランザ。」

着替え終えるとアイシェはタランザの方を向いて、マントをそっと返したが…

タランザ「マントはもう少し羽織ってていいのね。」

アイシェ「えっ…?」

タランザ「アイシェ、まだ震えてるの。」

そう言うと、タランザはマントを再び優しく掛けてくれて、アイシェは彼の優しさに心が暖かくなった。

アイシェ「ありがとう…。」

タランザ「どういたしましてなのね。」

すると…

ガサガサッ

再び草むらから音がして…2人に緊張が走る!

アイシェ「っ………!」

タランザ「誰なのね!?」

怯えるアイシェを守る様に前に立ち、攻撃の構えを見せるタランザ

すると草むらから出てきたのは…

チューリン「チュッ!」

アイシェ「チューリン!」

タランザ「知ってるの、アイシェ?」

アイシェ「うん、ドロッチェ団の子だよ。」

チューリン「チュッ、チュッ!」

黄色いチューリンは大喜びでアイシェに飛びつき、胸元に顔を埋めてスリスリしている

アイシェ「貴方、もしかしてあの時の…?」

チューリン「チュッ!」

アイシェ「やっぱり、元気そうでよかった!」

優しく笑ってチューリンを撫でると、嬉しそうにアイシェの手をペロペロ舐めてきた。

タランザ「ドロッチェは旅立ったはずなのに、どうしてこの子がここに居るのね?」

アイシェ「確かに…もしかしたらこの星に来てて、またドロッチェとはぐれちゃったのかな。」

そんな事を話していると…

ガサガサガサッ!!

再び草むらが動いたが、今度は大きくて…

タランザ「また誰か来るのね。」

アイシェ「ドロッチェがお迎えに来たのかな?」

しかし…ドロッチェが姿を現すものだと思っていた2人の目の前に現れたのは、巨大な水色のネズミ!

タランザ「んなぁぁぁぁぁーーーーー!?」

アイシェ「きゃあぁぁぁぁーーーーー!!」

驚いた2人は悲鳴を上げたが…よく見るとそれは幹部の1人「ストロン」で、後ろからドロッチェが姿を現した。

ドロッチェ「アイシェ!」

アイシェ「ドロッ…チェ…!」

ドロッチェ「何故ここに…いや、それよりも大丈夫か?」

アイシェ「うん…大丈夫……じゃないかも…。」

驚いたアイシェは腰を抜かしてしまい、その場に座り込んだまま動けなくなってしまった。

一方でタランザは落ち着きを取り戻すと、アイシェを守る様に立ちはだかった。

タランザ「…一体何が目的なのね?」

ドロッチェ「落ち着けよ、オレ達は何も企んではいない。休憩でこの星に寄ったらチューリンがはぐれて捜していたんだが、アイシェの所に居たのか。」

アイシェ「やっぱり…もうはぐれちゃダメだよ。」

チューリン「チュッ!」

そう言ってチューリンをそっと地面に下ろすと、ストロンの差し出した手に飛び乗った。

ドロッチェ「驚かせてすまなかった…改めてアイシェ、どうしてここに?」

アイシェ「カービィ達とお花見に来たの、そして温泉に入って帰ろうとしてた所で…。」

ドロッチェ「そうだったのか、邪魔をして悪かった…お詫びに送って行くぜ。」

アイシェ「あ…えっと……タランザが居るから大丈夫。」

これ以上ドロッチェに心配をかけたくなかったのもあるが、何よりも離れた場所で埋もれているマホロアとマルクの事が気がかりで…暗いので気づかれていないのが唯一の救いだった。

ドロッチェ「そうか?なら良いんだが…それじゃあオレ達はこれで。本当にすまなかった…。」

そう言うとドロッチェはアイシェの手にキスをして、そのまま去って行った。

タランザ「アイシェ、ちょっと失礼するのね。」

アイシェ「きゃあっ!」

腰を抜かして動けないアイシェをタランザは優しく抱き上げ、頭から埋まっているマホロアと顔からめり込んでピクピクしているマルクを残った手で引っ張り出し、そのまま糸でグルグル巻きにした後に服も回収して引きずって帰った…。

その後ローアに帰還したが…

カービィ「マルク、マホロア?」

メタナイト「一体何があったのだ?」

外で着替えてきたとはいえ、マルクとマホロアはボロボロで心配するカービィ達だったが…

マルク「な…何でもないのサ…。」

マホロア「帰り道が暗かったカラ、躓いたマルクがボクにぶつかって2人デ盛大に転んじゃったんダヨォ…。」

そう言って何とかその場を取り繕うのだった。

その後…無事にローアはポップスターへ帰還してカービィ達は家に戻って行ったが、マルクとタランザはそのまま泊まる事になった。

アイシェ「マホ…ロア…。」

マホロア「アイシェ~…エットォ……。」

温泉の件で気まずい雰囲気が漂う中、何とかしようと思考を巡らせるマホロアだったが…

ガシッ!

後ろからタランザの手がマホロアの頭を鷲掴みし、ズゴゴゴゴとドス黒いオーラを感じて…マホロアはフードの下で冷や汗が止まらない

タランザ「安心してアイシェ、今夜はボクが絶っ対にコイツを部屋から出さないのね。」

アイシェ「タランザ…ありがとう。」

マホロア「エェーーアイシェ…助けてヨォ…!」

タランザ「うるさい!キミにそんな事言う資格は無いのね!」

そう言ってタランザは、マホロアを再びグルグル巻きにしてしまった!

マホロア「タランザ、テメー余計な事すんなヨ!」

タランザ「ボクはド変態を懲らしめただけなのね!」

マホロア「ド変態ッテとんだ言いがかりダヨォ!」

タランザ「事実なのね!」

マルク「…アイシェ…その…悪かったのサ…。」

ギャアギャア騒ぐマホロアとタランザをよそに、バツが悪そうに頬を赤く染めつつ謝ったマルクは、そのまま逃げる様に客室へと行ってしまった

アイシェ「マルク…。」

マホロア「アイシェ~ボク反省してるカラァ…!」

そう言ってアイシェに近づくマホロアだが…

タランザ「さっさと来るのね!」

マホロア「ンーーンンーーー!!」

とうとう顔までグルグル巻きにされて繭状態になったマホロアは、何かを言っているがタランザに引きずられて行ってしまった…

アイシェ「マホロア…。」

少し気の毒な気もするが、とりあえず今夜はゆっくり眠れそうだ…ホッとしたアイシェはそのまま自分の部屋へ戻って眠りにつき、一方マホロアの部屋では、解放されたマホロアがタランザに猛抗議していた。

マホロア「ダ~カ~ラ~ボクはマルクと覗きに行ったんじゃなくテ、アイシェの悲鳴が聞こえたカラ助けに行ったんダヨ!」

タランザ「見苦しい言い訳なんて聞きたくないのね!」

マホロア「ホントだっテ、アイシェとマルクに聞けば分かるんダカラ!」

タランザ「じゃあキミがアイシェを襲ってたのは、どう説明するのね?」

マホロア「アレは守ろうとしたんダヨォ!」

タランザ「どう見ても、嫌がるアイシェに自分の欲望をぶつけてたのね。」

マホロア「グゥ…ッ…!」

核心を突かれて苦虫をかみ潰した様な表情のマホロアに、タランザは溜息を吐いた。

タランザ「全く…愛する人が出来たのは良いけど、自分の欲望を無理矢理押しつけるのはダメなのね。」

マホロア「ダッテェ…アイシェがチョー魅力的なんだモン…。」

耳をペタンと垂らしてしょんぼりするマホロアだが、ちょっとずつ扉に向かって移動していて…

タランザ「…どこに行こうとしてるのね?」

マホロア「エットォ…水でも飲もうと思っテ…。」

タランザ「嘘をつくんじゃないのね!」

マホロア「痛タッ!」

バチッ!タランザボウルをおでこにぶつけられたマホロアは、そのままポテンと転がった。

タランザ「全く…隙あらばそれなんだから、もうここに繋いでおくのね!」

怒ったタランザは、糸でマホロアをベッドに繋いでそのまま眠ってしまった。

マホロア「クッソォ~~タランザ、覚えてろヨォ!」

ビキビキしつつも、疲れもあってマホロアもじきに眠りにつき…

翌朝、タランザは眠るマホロアに「術」をかけて部屋に残し、アイシェの部屋へ向かった。

To be continued…