あれから数日…まめおは店で寝泊まりしながら手伝いをしてポナはナワバリに行き始め、まめみは家で1人悩む日々を過ごし…
あの日以来ポナとまめみは互いに顔を合わさず、食事も別々に取っていた。
ポナ「(…まめみちゃん、僕は……)」
複雑な気持ちを抱えたまま、今日もポナはバレルスピナーを抱えてナワバリに出掛けて行き…
まめみ「……………。」
リビングで椅子に座って、テーブルに置かれたコップの中に注がれたお茶を眺めるまめみ、そこには悲しげな自分の顔が映っていて…
まめお…ポナ君…
あたし…どうしたらいいの…
桃色の瞳に涙を溜めて俯いていたまめみだったが…
ハイドラント「(まめみ。)」
その様子を見ていたハイドラントが声をかけた。
まめみ「ハイドラント…。」
ハイドラント「(悩んでいるのか、まめみ……まめおとポナの間で…。)」
まめみ「……うん…。」
ハイドラント「(だが…いずれは答えを出さねばならないぞ。)」
まめみ「うん…それは分かってる…分かってるけど…。」
ポタッ…
まめみの瞳から涙が零れ落ち…コップの中のお茶に落ちて消えた。
ハイドラント「(まめみ…まめおとポナは、まめみの中ではどんな感情になる?)」
まめみ「どんな感情…?」
ハイドラント「(あいつに対して思う気持ちと…ポナに対して思う気持ちに…何か違いはあるか?)」
まめみ「まめおとポナ君に対して…。まめおは…一緒にいると安心して…気が許せる従兄で…小さい頃からずっとあたしを守ってくれた。」
ハイドラント「(ポナに対してはどうだ?)」
まめみ「ポナ君は………ポナ君は………。」
ハイドラント「(……………。)」
まめみ「ポナ君は…まめおと同じ様に安心して…暖かくて…でも…すごくドキドキして…ずっと…傍にいたいって思うの…。」
ハイドラント「(…答えは出ているではないか、まめみ。)」
まめみ「えっ…?」
ハイドラント「(まめみ…ポナに対して抱くその感情こそが「恋」だ。)」
まめみ「恋…ポナ君に対して思うこの気持ちが…ドキドキが恋なの?」
ハイドラント「(まめみ…お前とまめおはずっと一緒だったな。)」
まめみ「うん。」
ハイドラント「(ずっと一緒だが、お前もまめおも「外の世界」を知る時が来たようだな。)」
まめみ「外の…世界…?」
ハイドラント「(従兄妹同士…ずっと傍にいて離れなかった者同士で生きていくよりは…外の世界へ旅立ち、様々な交流をして…色々と知る必要があるだろう。ポナの存在は…そしてまめみが抱くその気持ちは…外へ踏み出す大きな一歩となるのだ。)」
まめみ「でも…でもまめおは…。」
ハイドラント「(まめみ、自分の気持ちに正直になるのだ。今、お前の中ではどちらの姿がより強く思い出される?)」
まめみ「あたし…あたしの中では…」
まめお…。
『まめみ!』
『俺が守ってやるよ。』
『へへっ、お前はすぐムキになるな~!』
ポナ君…。
『まめみちゃん!』
『僕がまめみちゃんを必ず守るからね。』
『大好きなんだ…まめみちゃんが大好きなんだ。』
ポナ君…あたし…あたしポナ君が…
ハイドラント「(答えは出たようだな、まめみ。) 」
まめみ「……うん、ありがとうハイドラント。」
ハイドラント「(礼ならいつものを頼みたい。)」
まめみ「ふふっ…ありがとうハイドラント、大好きよ。」
そう言ってまめみはハイドラントにキスをした。
ハイドラント「(まめおと話をするのか?)」
まめみ「うん、スルメさんのお店に行ってくる…行ってきます、ハイドラント。」
ハイドラント「(うむ、気をつけるのだぞまめみ。)」
そう言うとまめみはF-190を着て、タコゾネスブーツを履いて家を出た。
ありがとう、ハイドラント
まめお…あたし、まめおの事が大好きだよ
でも…ポナ君の事も大好きなの
あたし…やっと気がついた
だからあたしの話を、気持ちを聞いて…
一方でまめおはあの日すぐに店に戻り、それ以来ひたすら働き続け…スルメさんの腰も良くなりお店に復帰してからも家に戻ろうとはせず、お店からナワバリに通いつつ手伝いを続けていた。
まめお「…ナワバリに行ってくる。」
そう言うとまめおはナイトビジョンをつけてナワバリへ…
スルメさん「よっちゃん、まめおは何があったんや…あの日、家に帰ったと思ったらすぐに戻って来て…しばらく店で寝泊まりする言うて全然家に帰ろうとしないんや…。」
よっちゃん「私にも分からないのよ、聞いても全然喋ろうとしなくてね…。」
2人が困り果てていると…。
まめみ「スルメさん、よっちゃん!」
お店の裏口から、息を切らしてまめみが入ってきた。
スルメ「まめみ、お前どうしたんや!?」
まめみ「まめおに会いに来たの、今ここに居る?」
よっちゃん「まめお君なら、ついさっきナワバリに行ったわ。」
まめみ「そうだったのね、行き違いになっちゃったかぁ…。」
そう言って少し残念そうにしているまめみに、スルメさんとよっちゃんはただただ驚くばかり…
驚くのも無理はない、2人共まめみに会えたのはあの日以来なのだから…
しかし今、目の前にいる彼女は明るくて…
そう…まるであの日が嘘の様に以前のまめみに戻っているのだ。
スルメさん「まめみ…お前、明るさも笑顔も…!?」
まめみ「うん、2人共心配かけてごめんなさい。でもあたし…笑顔も明るさも取り戻したよ、だからもう大丈夫!」
そう言うとまめみは満面の笑顔を見せて…
その笑顔は昔から知っている「最高の笑顔」で…
スルメさんとよっちゃんは嬉しさのあまり泣き出してしまった…。
よっちゃん「よかった…よかったわ…まめみ…ちゃん…うぅ…!」
スルメさん「ホンマやでまめみ…ボク達はお前の笑顔と明るさを取り戻せる日をどんなに待ち望んでたか…ホンマによかった…!」
まめみ「ありがとうスルメさん、よっちゃん…!」
そう言うとまめみは、2人をぎゅっと抱きしめた。
しばらくして…2人が落ち着いた頃、スルメさんが口を開いた。
スルメさん「まめみ…まめおと何かあったんか…?」
まめみ「…うん…。」
よっちゃん「私達にも何も語ろうとしないのよ…だからすごく心配で…。」
まめみ「まめお…。」
スルメさん「まめみ、ボクらに出来る事があるなら話してくれへんか?」
よっちゃん「解決は出来なくても、何かアドバイスが出来るかもしれないわ。」
まめみ「スルメさん…よっちゃん…実は…」
そう言うとまめみは全てを語りだした
まめおが店に行った日の出来事…
ポナとの事…数日前の事…
ハイドラントに諭された事…まめおとポナへの想い…
自分の本当の気持ちを話し、その間2人は真剣な表情で話を聞いていた。
そして…
スルメさん「なるほどな…それでまめおは…。」
よっちゃん「確かにまめお君とまめみちゃんはずっと一緒だったものね、ポナ君の存在が2人にとってとても大切な存在であると同時に…大きな変化も生れたのね。」
まめみ「スルメさん…よっちゃん…あたし…。」
スルメさん「気にしたらアカンまめみ、これは巡り合わせなんや。」
まめみ「巡り合わせ…?」
よっちゃん「まめみちゃんの巡り合わせ…それがポナ君だったのね。」
スルメさん「まめおも気持ちの整理がつかないやろうし…ボクらの出番かいな、よっちゃん。」
よっちゃん「そうねスルメさん、まめみちゃん今日の所は帰りなさい…まめお君、きっと今の状態では話を聞いてくれないわ。」
まめみ「でも…。」
よっちゃん「スルメさんと私からお話しするわ、今日は私達に任せてちょうだい。」
まめみ「うん、分かった。」
そう言うとまめみは裏口から出て帰って行き、結局まめおが帰って来たのは夕方で…
まめお「…ただいま。」
スルメ「お帰りまめお、ちょっとええか?」
まめお「何だよスルメさん、俺疲れてるから明日に…」
よっちゃん「大事なお話なの、お願いまめお君。」
まめお「…分かった。」
そう言うともう閉店したお店の椅子に座ったまめおに対し、スルメさんとよっちゃんも椅子に座って話し始めた。
よっちゃん「…昼間、まめみちゃんが来たの。」
まめお「まめみが…!?」
驚いて目を見開くまめおに、今度はスルメさんが口を開いた
スルメさん「まめお、話はまめみから聞いたで。」
まめお「……………。」
スルメさん「気持ちは分かるけどな、まめお…それでもまめみは…」
まめお「…でだよ…。」
よっちゃん「えっ…?」
まめお「何でだよ…何で俺じゃダメなんだよ…!!」
よっちゃん「まめお君……。」
スルメさん「……………。」
まめお「あいつは赤ん坊の頃から俺が守ってきたんだ…この背中の傷もあいつを守れた証なんだよ…!なのに…なのにポナはまめみを…!!」
スルメさん「……まめお、お前がまめみの事を大事にしてるのはよく分かっとるんや。」
まめお「ならどうして…」
スルメさん「けどなまめお…今のお前はその気持ちを一方的に押し付けてるんやないか?」
まめお「押し付けてる…?」
スルメさん「ハイドラントがまめみを諭したそうや。」
~回想~
ハイドラント「(従兄妹同士…ずっと傍にいて離れなかった者同士で生きていくよりは…外の世界へ旅立ち、様々な交流をして…色々と知る必要があるだろう。ポナの存在は…そしてまめみが抱くその気持ちは…外へ踏み出す大きな一歩となるのだ。)」
まめみ「でも…でもまめおは…。」
ハイドラント「(まめみ、自分の気持ちに正直になるのだ。今、お前の中ではどちらの姿がより強く思い出される?)」
まめみ「あたし…あたしの中では…」
ポナ君…あたし…あたしポナ君が…
~回想終~
まめお「………あのオッサン…。」
外の世界…今まで考えた事も無かった…
生まれた時からずっと一緒だったから、俺はこれまでもこれからもまめみだけだと思ってた…
あいつも同じ…ずっと一緒に生きていくと…
あいつを守れるのは俺だけだと思ってた…
まめみ、お前が望むように俺も…外の世界に旅立つ時なのか…?
スルメさん「ポナはまめみを心から想ってるんや、そしてまめみも……本当は分かっとるんやろ、まめお?」
まめお「……………。」
よっちゃん「…今はゆっくり考えなさい、そして…まめみちゃんとよく話し合ってね。」
まめお「……分かった。」
まだ険しい表情ではあるものの…話をする前よりは明らかに雰囲気が違っていて…スルメさんとよっちゃんは少し安心したが…
…コンコン。
よっちゃん「あら?こんな時間に裏口から…誰かしら?」
スルメさん「まめみやないの?心配になって来てしまったんやろ。」
コンコンッ。
よっちゃん「は~い、今開けるわね!」
そう言ってよっちゃんが裏口の扉を開けると…
そこに立っていたのは………ポナ!
ポナ「…こんばんはスルメさん、よっちゃん。」
よっちゃん「ポナ君!?」
スルメさん「ポナ、どうしたんや!?」
ポナ「……まめお君。」
まめお「……ポナ……。」
ポナはゆっくりと歩いてきて…まめおの前で足を止めた。
そして…再び口を開いた。
ポナ「…まめお君………僕とプラべで勝負して!」
まめお「!?」
スルメさん「ポナ…!」
よっちゃん「ポナ君…!?」
ポナ「まめみちゃんの事、僕は諦めないよ。」
まめお「ポナ…!」
ポナ「僕の全力を出して君に勝つよ、まめみちゃんへのこの想い…君にも認めてもらいたいからね。」
まめお「……………!!」
スルメさん「ポナ、ちょっと待つんや!」
よっちゃん「そうよポナ君、今まめお君にも話したばかりだし…!」
ポナ「…ごめんねスルメさん、よっちゃん…でも僕は本気なんだ、これはまめお君と僕の問題だから。」
スルメさん「ポナ…!」
よっちゃん「………!」
そう話すポナの黄色の瞳に迷いは一切無く、強い決意が込められていた。
まめお「………分かった。」
スルメさん「まめお…!」
まめお「ポナ、お前が本気でまめみを好きなら俺を倒していけ!」
そう言うとまめおは席を立ち、ポナに対峙した。
まめおの青い瞳と、ポナの黄色い瞳はお互いを捉えて離さない。
ポナ「本気でいくよ、まめお君。僕は一切容赦しない…僕の一番得意なスピナーで君を倒すよ。」
まめお「俺も同じだ…一切手加減はしない俺の持つ力全てを出し切ってお前を倒す。」
ポナ「決まりだね…プラべは3日後に。」
まめお「あぁ、いいぜ。」
ポナ「それじゃあ、僕は帰るね。」
そう言うとポナは店を出て、まめみの待つ家に帰って行った。
まめお「……………。」
ポナ…俺は…
To be continued…