小説「緑髪の少年(出会い編)」~惹かれる心とぶつかる気持ち~

夜空を見ていたポナとまめみだが…。

まめみ「…くしゅんっ!」

寒さでくしゃみをしてしまった。それを見たポナは、まめみをぎゅっと抱きしめた。

ポナ「これで少しは寒くないかな?」

まめみ「うん、暖かい。」

ポナ「いつか、まめみにちゃんにも姉を紹介したいな…もちろんまめお君やスルメさん、よっちゃんにもね。」

まめみ「ふふっ、楽しみ。…ねぇポナ君、お姉さん白インクだって言ってたよね。」

ポナ「うん。」

まめみ「実はね…まめおとあたしのお母さん黒インクだったの。」

ポナ「え…えぇ、黒インク!?」

まめみ「うん、珍しいよね…だからポナ君のお姉さんのお話聞いて、不思議な縁みたいの感じたの。」

ポナ「そうだったんだ…確かに珍しいね、黒インクではないけど髪の色が黒いのはシオカラーズのアオリちゃんしか見ないし。」

まめみ「見た目も珍しいのに、ブキと会話出来るこの力があったから…あたし達以上に酷い目にあってたみたい。」

ポナ「そんな事が…。」

まめみ「だから…外に出る時はいつも、あたし達みたいな青や桃色で髪を染めてたの。」

ポナ「そうだったんだ…それじゃあ、まめお君とまめみちゃんも?」

まめみ「ううん、あたし達は生まれつきこの色だよ。瞳の色だけはお母さん達と一緒なの。」

ポナ「まめお君のお母さんは青い瞳…まめみちゃんのお母さんは桃色の瞳だったんだね。」

まめみ「うん。」

ポナ「お父さんは?」

まめみ「お父さんは…生まれた時からいないの。」

ポナ「えっ…?」

まめみ「…2人共、未婚のままであたし達を産んだから…お父さんが誰かは分からない。」

ポナ「…そうだったんだね…ごめん…僕…何も知らないとはいえ…。」

まめみ「ううん、大丈夫だよ。お父さんはいなかったけど…お母さん達と、まめおもいたし。」

ポナ「話してくれてありがとう、まめみちゃん。」

まめみ「あたしこそ聞いてくれて…ここを教えてくれてありがとう、ポナ君。」

そう言うと2人は笑い合って、互いのおでこを優しく当てた。

ポナの黄色の瞳とまめみの桃色の瞳は、互いを映していて…。

その頬は赤く染まっている。

ポナ「夜も更けてきたし、そろそろ帰ろうか。」

まめみ「うん、そうだね。」

ポナが先に立ち上がり、まめみに手を差し出した。

その手をまめみが取り、立ち上がろうとした瞬間!

ズルッ!まめみが足を滑らせた!

ポナ「まめみちゃん!」

まめみ「きゃあっ!」

ドサッ!

まめみは後ろに倒れ…その上にはポナが覆いかぶさり、体勢的には押し倒してる形だ

そしてその唇は…

ポナ「…………………!!」

まめみ「…………………!!」

ポナ「あっ…ご…ごごごめん!ごめんねまめみちゃん!!」

偶然とはいえキスをしてしまったのだ。

ポナは急いで起き上がって離れたが…

まめみ「………………。」

ドキン…ドキン…!!

まめみの心臓はポナに聞こえてしまうのではと思う位に煩くて…

その頬は真っ赤に染まり…唇には…まだポナの唇の感触が…温もりが残っていて…

ポナ「僕…僕…な…何て事を…!」

瞳の色は青に変わり、頬を真っ赤に染めるポナだが…

まめみ「…大丈夫だよ…ポナ君。」

ポナ「で…でも…!」

まめみ「……嫌じゃなかったから………大丈夫…。」

ポナ「えっ…?」

まめみ「………………。」

驚いて目を見開くポナ、一方まめみは頬を真っ赤に染めて俯いてしまった。

ポナ「……立てる?」

まめみ「……うん……。」

ポナ「…帰ろう、まめみちゃん?」

まめみ「…うん。」

再びポナが手を差し出して、まめみはその手を取って立ち上がり…2人は手を繋いで家へ戻った。

同じ頃、まめおは今日の手伝いを終えて寝る準備をしていた。

まめお「ふあぁ…今日も疲れた…。」

そんな独り言を言ってると、よっちゃんが入ってきた

よっちゃん「お疲れ様、まめお君。」

まめお「ありがとう、よっちゃんもお疲れ様。」

よっちゃん「ふふっ、ありがとう。」

スルメさん「まめお…。」

まめお「スルメさん、大丈夫か?」

スルメさん「あぁ、まだ痛むけど…昨日よりはええわ。」

まめお「ならいいんだけど…。」

スルメさん「明日は店が休みやから、まめおも1回帰ってええで。」

よっちゃん「そうね、まめみちゃんもポナ君も心配だし。」

まめお「助かるよスルメさん、よっちゃん。」

スルメさん「まめみも、まめおの顔を見れば安心するやろ。」

よっちゃん「まだまだ道のりは遠いけど、頑張ってまめみちゃんの明るさと笑顔を取り戻しましょう。」

まめお「そうだな、ありがとうスルメさん、よっちゃん。」

おやすみの挨拶をしてスルメさんとよっちゃんも部屋に戻り、まめおは眠りについた。

まめみ…

明日には一旦帰るからな…

一日だけど、ずっとお前の傍にいる

俺がお前を守る

だから待っててくれ、まめみ

~次の日の朝~

スルメさん「明日にはまた来てもらわなアカンけど…よろしく頼むわ、まめお。」

まめお「おう、任せとけ。」

よっちゃん「本当にありがとうね、まめお君。帰り道気をつけるのよ。」

まめお「ありがとう、よっちゃん。」

スルメさん達に見送られて、まめおは家に帰った。

しばらくして家に着き…

ガチャ…パタン

ポナ「まめお君、お帰り。」

まめお「ただいまポナ、まめみの様子は…」

そう言ったまめおだったが…

まめみ「まめお、お帰りなさい!」

まめお「…………………!!」

目を疑った。

自分の目の前にいるまめみはあの頃と変わらない満面の「笑顔」で…。

まめおはそのまま、その場に立ち尽くしていた。

まめみ「どうしたの、まめお?」

まめお「まめみ……お前…笑って…」

まめみ「あたしまた笑えるよ、改めて…お帰りなさい、まめお。」

まめお「……まめみ…まめみ…!!」

まめおは靴を脱ぐと、まめみを強く抱きしめた。

まめみ「まめお…痛いよ…。」

まめお「よかった…よかったまめみ…!俺は…俺は…!!」

痛いと訴える彼女を抱きしめる腕は震えていて…青い瞳からは涙が零れ落ちた。

まめみ「まめお…。」

まめお「まめみ…!」

ポナ「………………。」

2人が抱きしめ合うのを見て、ポナはそっと…リビングの方へ姿を消した。

その瞳は、ほんの少しだけピンク色になっていて…

…まめお君が…まめみちゃんを抱きしめているだけなのに、僕の心の中で嫉妬の感情が生まれたんだ

僕だけがまめみちゃんを抱きしめていたい…

…例えまめお君であっても…嫌だ…

玄関先でしばらく抱きしめ合っていた2人。

その後まめおは手洗いを済ませ、スルメさんの様子や、明日店に戻る事などを伝えた。

まめお「まめみ…明日にはまた店に戻んなきゃいけねぇけど…今日はずっと、お前の傍にいる。」

まめみ「まめお…。」

ポナ「…………………。」

まめお「ちょっと俺の部屋に来てくれないか、まめみ。」

まめみ「え…えぇ…!?」

まめお「嫌か?」

まめみ「えっ…えっと…あの…。」

返答に困ってしまったまめみだったが…。

ポナ「…………僕は大丈夫だよ。部屋で音楽聴いてるから。」

そう言うとポナはスッと立ち上がり、部屋に戻ってしまった。

まめみ「…ポナ君……。」

まめお「ポナ、どうかしたのか?」

まめみ「……………。」

まめお「…とりあえず、俺の部屋に行こうぜ。」

まめみ「う…うん…。」

まめおに手を引かれまめみは部屋へ向かったが、心の中ではまめおへの想いよりもポナへの申し訳なさに似た感情の方が上だった。

その後も…まめおは楽しそうに話をするものの…まめみは上の空で…

…み…まめみ…

まめお「まめみ、大丈夫か?」

まめみ「…えっ?…あぁ!ご…ごめんねまめお…。」

まめお「まだ調子よくなさそうだな…ごめんな…。」

まめみ「ううん…大丈夫…。」

まめお「本当に大丈夫か?」

ゆっくりとまめおの顔が近づいてくる…。

でも…その時まめみの脳裏に浮かんだのは……

まめみ「……………っ…!」

ぐっ…!

まめお「……まめみ…?」

まめみ「…ごめん…ごめんね…まめお…。」

まめおの胸をぐっと押して…『拒絶』してしまったのだ。

まめお「何かあったのか?」

まめみ「………何も…ないよ……。」

まめお「……そんな訳ねぇだろ、俺はお前の事を何でも知ってる…何を隠してるんだまめみ。」

まめみ「…な…何でもないってば…!」

まめお「何でもねぇなら、何で今拒絶したんだよ!」

思わず声を荒げてしまったまめおに、まめみの体はビクッと震えた。

まめみ「まめ…お…!」

まめお「まめみ…!」

何も言わず、まめおはまめみぎゅっと抱きしめた。

まめみ「………!」

まめお「…………。」

まめみ「まめ…お…!」

まめお「…まめみ…。」

一方ポナは…部屋で音楽を聴いていたが、イライラが収まらずにいた…。

ポナ「………………。」

外したヘッドホンをやや乱暴にベッドに投げて、飲み物を取りに部屋を出たが…

まめみ「いや…あ…やめて…まめお…!!」

ポナ「まめみちゃん…!?」

まめおの部屋から、嫌がるまめみの声が聞こえてくる!

ポナは考えるよりも先に…体が勝手に動いていた。

ガチャ!まめおの部屋の扉を開けると…!

まめみ「…ポナ…君…!」

まめお「ポナ…!?」

ポナ「……………!!」

立ち尽くすポナの目の前では…まめおがまめみを強く抱きしめていて…

まめみ「ポナ…君…ポナ君…!」

驚いて腕の力を緩めたまめお、一方まめみはその隙に彼の腕から抜け出してポナの元へ行きしがみついた。

ポナ「まめみちゃん…!」

まめお「……………どういう事だよ……。」

まめみ「まめお…!」

まめお「…………ポナ、どういう事だ!!」

そう言うとまめおは立ち上がり、ポナの胸ぐらを掴んで睨みつけた!

まめみ「まめお…やめて…!」

まめお「黙ってろまめみ!!俺はポナに聞いてんだ!答えろポナ!」

ポナ「………まめお君、僕は……僕はまめみちゃんが好きだよ。」

まめお「っ!……お前…意味が分かってんのか…!?」

ポナ「うん、分かってるよ…まめお君はきっとまめみちゃんに家族以外の気持ちがあるんだという事も。」

まめお「じゃあ…何で…何でだよポナ!!どうして俺からまめみを…!!」

ポナ「……ごめん、まめお君…それでもまめみちゃんの事が好きなんだ。誰にも渡したくない、例えそれがまめお君であっても。」

まめみ「ポナ…君…!」

まめお「…本気なんだな?お前は本気なんだなポナ!?」

胸ぐらを掴んだまま、青い瞳をぎらつかせて…凄い剣幕で怒るまめお。

しかしポナは………微動だにしなかった。

ポナ「…本気だよ、僕は最初から本気で言ってるよ。」

その瞳は色が変わる事なく黄色のままで…強い決意を秘めていた。

まめお「……………!!」

掴んでいた手を離し…ポナを解放したまめお。

そのまま部屋の外へ…。

まめみ「まめお…!」

まめお「………店に戻る。」

ガチャ…バタン…。

そう言い残し…まめおは家を出て行ってしまった…。

まめみ「ポナ君…ポナ君…あたし……ひっく…ひっく…!」

そう言ってまめみは、ポナにしがみついて泣き出してしまった。

ポナ「まめみちゃん…!」

かける言葉が見つからず…ポナは静かにまめみを抱きしめる腕の力を強めた。

To be continued…