オリジナル小説「恋に落ちた王子と王女」

ネグロ一族王ラクトへの遣いで向かったアクアは、そこで身分を隠した王子スマラと出会う

王子と知らず心を奪われたアクアだったが、手紙を持ち帰る為に城を後にしたのだった。

 

~恋に落ちた王子と王女~

 

スマラ「アクア王女…噂通りの…いや、噂以上の美しさだった…。」

アルマ「スマラ、どうやらあの王女に恋をしたようだな?」

スマラ「アルマ、お前いつからそこに!?」

アルマ「俺達は幼馴染みだぞ、どこに居るかくらい分かる。そんなに驚く事もないだろ?」

大人びた顔とは裏腹に、子供っぽく無邪気に笑うアルマに、スマラは少し困った様に笑った。

スマラ「全く…お前には全部お見通しか…。」

アルマ「記憶無き王女…今回の『あの情報』で記憶が戻るきっかけになればいいんだが…。」

そんな事を話している内に空が曇り、雨が降ってきてしまった。

スマラ「雨か、さっきまであんなに晴れていたのに…。」

ラクト「こりゃあ随分降り出したな…。」

アルマ「ラクト様。」

ラクト「アクアが心配だな、スマラ?」

スマラ「ち、父上!それはどういう事だ…よ?」

ラクト「私はお前の父親だぞ?息子のお前が何を考えているかくらい分かる、この傘を持っていってやってくれ…更に仲良くなるチャンスだぞ。」

スマラ「父上…ありがとう。行って参ります!」

ラクトの気遣いにより、スマラはアクアに傘を持っていく為に城を後にした一方で、アクアは近くの木の下で雨宿りをしていた。

早く雨が止まないかと思っていたその時!!

ズプ…シュルッ…

突然アクアの足下に黒い何かが巻き付いた!

アクア「きゃあ…な、何これ!?」

謎の声「マリン様の娘ですね…さぁ、一緒に来て下さい!」

アクア「嫌…ぁ…!!」

逃げようとする度に『黒い闇』は足に巻き付き、とうとう体中に纏わり付いて…アクアが闇に包み込まれそうになったその時!

スマラ「その方を離せ!」

アクア「スマラ様!」

謎の声「貴方は、ネグロ一族の…!!」

スマラ「お前…ダーク・ガビアル一族の者だな?アクア様をお離ししろ!さもなくば、ネグロ王宮騎士隊長スマラがお相手しよう。」

謎の声「くっ…ひとまず退こう!」

そういうと、謎の人物はアクアを解放して消え、その場に座り込んでしまったアクアに、スマラは優しく手を差し出した。

アクア「ありがとうございます…でも何故ここに?」

スマラ「雨が降ってきたので、ラクト様から傘をお届けするようにと……城までお送りいたします、私に貴女をお護りさせて下さい。」

アクア「…はい…よろしくお願いします。」

ポツポツと降る雨の中、1つの傘の下で互いに頬を真っ赤に染めた2人が歩いていた。そして、無事にアクアをスノウの元へ送り届け、スマラは帰って行った。

その後、アクアがラクトから預かってきた手紙を読んだスノウは目を見開き愕然とした。

スノウ「これは…!」

マリン「どうしたのスノウ、一体何が…?」

スノウ「ブルースの手がかりが分かったぞ、ラクトが色々と手を尽くして探してくれたおかげだ!」

マリン「あぁ…ラクトに何てお礼を言えばいいか…それで、あの人は今どこに!?」

スノウ「ここからずっと北『セイレーン・ケイヴ』という洞窟に居るらしい、すぐに騎士達を集めて…」

マリン「私も行くわ。」

スノウ「マリン、気持ちは分かるがお前は王族だ。お前にもしもの事があったらブルースは…!」

マリン「ありがとうスノウ、でも待っているのはもう嫌…不安で胸が張り裂けそうなの…。」

スノウ「マリン…。」

その時、突然部屋が薄暗くなり…

ズプッ…カシャン!

マリンとスノウの足下から闇の腕が現れ2人の手足に巻き付き、次の瞬間少し離れた所から闇に包まれた人物が姿を現した。

アクア「何…このとても嫌な感じは…!?」

一方で自分の部屋にいたアクアも異変に気付き、居ても立ってもいられず母達の下へ。

ガーラス「お久しぶりです、スノウ様、マリン様。何十年振りでしょう…。」

スノウ「その声はガーラス…これはどういうつもりだ!?」

ガーラス「話は全て聞かせていただきました、ブルース様に会いたいのでしょう?すぐに会わせて差し上げます。」

アクア「ママ、スノウ!」

スノウ「アクア!」

ガーラス「…アクア様、大きくなられましたね………マリン様は我々が頂いて行きますよ、お二方。」

そう言うとガーラスはマリンを闇で包み込んで共に姿を消し…解放されたスノウはその場に崩れ落ち、床を拳で何度も叩いた。

アクア「ママ!」

スノウ「くっ…何と言うことだ!」

すると…スノウの目の前に小さな紙切れが現れ、そこにはこう書かれていた

『マリンはセイレーン・ケイヴに居る。そこへ行くにはそれぞれの一族の王族が来る事。』

スノウ「…すぐに準備しよう。アクア、お前はここで待っていなさい…マリンは必ず助け出す!」

アクア「私も行くわ!」

スノウ「言う事を聞くんだアクア、お前に危険な思いはさせたくない…いいな。」

アクア「スノウ…!」

こうしてブルースとマリンを救出すべくスノウ、ラクトは準備を進めセイレーン・ケイヴに向かう為の船を用意した。

そして出発の時…

スノウ「アクア…必ず2人を連れ戻すからな。」

ラクト「スノウ、出発するぞ。」

スノウが船に乗り込もうとしたその時!

謎の声「待って!」

振り向いた先に居たのは…!?

~To be continued…~