小説「緑風と桃花は愛を紡ぐ(葛藤編)」~悪夢に決着を~

朝6時…フー達は起きて準備を終えて、出発の時を迎えた

まめみ「……………。」

目を瞑り不安な表情を隠せないまめみ…足下は少し震えていて、ポナの服の裾を強く握っていた

ポナ「まめみ、やっぱり待ってた方が…。」

まめみ「すごく怖い…でもスーちゃんの為だもの、あたしも頑張る…!」

まめお「まめみ、2年前と同じ事は繰り返さねぇ…今度こそ必ず俺達の傍を離れるな。」

まめみ「うん。」

フー「リスティヒは俺を狙ってくるはずだが、あいつの事だから何をしてくるか分からん…まめおとポナはまめみを囲って護衛していてくれ。」

ポナ「分かった。」

こうして一行は約束の場所、ホッケふ頭に向かった。

7時…約束の時間になっても辺りに人の気配は無く、早朝という事もあり辺りは少しだけ霧が立ちこめていて恐ろしい程に静かだ

まめみ「誰も居ない…?」

その時!

フー「危ない!」

まめみ「きゃあ!」

フーがまめみを庇って抱きしめたまま倒れ込んだ!

そして…

ポナ「まめみ、フー!」

まめお「大丈夫か!?」

まめみ「んっ…大…丈夫…。」

フー「んぅ…っ…!」

むにゅっ…フーの顔に柔らかい感触が…

まめみ「ふ…フーさぁん…!」

頬を真っ赤に染めるまめみ…そこでフーは気づいた

まめみを庇って倒れ込んだ時に、彼女の胸に顔を埋める様な感じに倒れてしまった事に…

フー「す、すまないまめみ!」

まめみ「ふぇぇ…だ…大丈夫…!」

慌てて離れたフーに、まめみはまだ頬を真っ赤に染めつつ返事をしたが…

ポナ「フー、どういうつもりなのかな?」

ターコイズブルーの瞳をギラギラと光らせながら怒るポナ、背景にはズゴゴゴゴと黒いオーラが見える気がしてさすがのフーも震え上がった…

フー「違う、事故なんだ…!」

まめお「お、落ち着けポナ…今はそんな事してる場合じゃないからな…?」

まめみ「ポナ君、あたしは大丈夫だから…!」

2人がポナを宥めてその場は落ち着いた後、フーが口を開いた。

フー「さっきまめみを庇ったのはこれなんだ。」

そう言って足下を指差したフー、そこには紫のインク…痕跡からしてブラスターの類だろう

ポナ「大きさからすると…ラピッドブラスター?」

フー「あぁ、これが飛んできたという事は…。」

まめお「あいつがいるのか…!」

まめみ「っ……!」

フー「気をつけろ、どこから来るか分からない。」

ポナ「まめみ、俺から離れないでね。」

まめみ「うん。」

自分の傍に抱き寄せてN-ZAP85を構えるポナに、まめみは安心感を覚えた

すると霧の向こうから声が聞こえてきて…

リスティヒ「その洞察力の高さ、今でも健在だったなフー!」

フー「リスティヒ、そこにいるのか。」

リスティヒ「あぁ、スーも一緒にいるぜ。」

霧が少しずつ晴れ…そこにはリスティヒと手足を拘束されたスーの姿が!

まめお「スー!」

スー「兄貴…みんな…!」

リスティヒ「…俺はお前とまめお、まめみちゃんと言ったはずだけどな…まぁいい、すぐに片付けてまめみちゃんを手に入れてやるぜ。」

フー「ルールはどうするんだ?」

リスティヒ「ガチホコだ、撃ち合いだからホコは運ばねぇぞ。」

フー「分かってる。」

リスティヒ「待っててねまめみちゃん、すぐにお迎えに行くから。」

まめみ「……っ…!」

そう言ってリスティヒはスーを連れて行き、お互いにそれぞれスタート地点に向かい…試合が開始された!

リスティヒ「おらっ!」

フー「くっ…何の!」

リスティヒ「よっと!」

2人の戦いは互角で、見ているまめみ達にも緊張が走る

その後もしばらく戦ったが決着しないまま第2試合へ…

まめみ「フーさん…。」

フー「リスティヒの奴、元S+なだけあって腕は落ちてない様だな…だが次の試合で決着させる!」

一方リスティヒも…

リスティヒ「フーの野郎、しぶといな。」

スー「兄貴があんたなんかに負けたりしない…絶対に!」

リスティヒ「おっと、人質の身なのに随分と強気だなぁ?」

そう言うとリスティヒはラピッドブラスターの手入れを終え、厭らしい笑みを浮かべながらスーに近づいてきた…

スー「な…何よ…!」

リスティヒ「…まめみちゃんみたいにそそられねぇけど、少しくらいなら足しになるかもな。」

スー「…………!」

リスティヒ「少しだけ味見だ。」

そう言うとリスティヒはスーを押し倒し、彼女の首筋に吸い付いた。

スー「んっ…いやっ…やめてよ!」

手足を拘束されてるので思うように抵抗出来ないスーに対して、リスティヒは下品に笑いながら口を開いた。

リスティヒ「お前でもなかなかイイ声出すな、よく覚えておけよ…相手がお前でも俺がその気になれば抱けるんだからな。」

スー「っ………!」

リスティヒ「さて、本命をお迎えに行くとするか。」

そう言うとリスティヒはスーを連れて歩き出し、フーは言われた通りまめみ達と共にステージの真ん中に来ていた…

すると、スーを連れてリスティヒが現れた。

フー「一体何をするつもりだ。」

リスティヒ「お前、俺を捕まえるつもりなんだろ?ご苦労なこった。」

フー「それが今の俺の使命であり、2年前の悪夢を終わらせる為だからな。」

リスティヒ「なら…これでも俺を撃てるか?」

そう言うとリスティヒは、スーを自分の前に出して盾にした。

フー「なっ…!」

まめお「テメェ、どういうつもりだ!」

リスティヒ「可愛い妹を盾にしても俺を撃てるなら撃ってみろ、お前がほんの少しでも迷いを持てば照準はズレてスーを撃ち抜いちまうぜ?」

スー「この卑怯者!」

リスティヒ「うるせぇ、黙ってろ!」

ギリッ…!

スー「痛っ…!」

乱暴にゲソを引っ張られ、スーは痛みに顔を歪めた。

まめみ「スーちゃん!」

まめお「やめろ、スーに手を出すんじゃねぇ!」

ポナ「あいつ、2年前と変わらず卑怯な手を!」

フー「くっ…リスティヒ…!」

4Kスコープを構えるフーだが…もし盾にされているスーに当たってしまったら…その不安が頭をよぎって照準が定まらない…。

リスティヒ「ほら、撃たねぇとこうなるぜ!」

パァンッ!

フー「ぐぅっ…あっ……!」

リスティヒの撃った弾…その一発にはガラス片が1つ混ぜられていて、フーの左足にはガラス片が刺さり血がズボンを赤く染めていく…。

まめみ「きゃあぁぁぁ…フーさん!」

ポナ「フー!」

まめお「フー兄!」

スー「兄貴!」

フー「くっ…うぅ…スー…!」

リスティヒ「さぁ…撃てるなら撃ってみろ!」

フー「くそっ…!」

強い痛みと迷いで照準を合わせる為の集中力に欠けてしまう…どうすればこの事態を打開できる!?

迷うフーだったが……

スー「兄貴なら大丈夫よ、あたしは信じてる。」

フー「だがスー、万が一お前に当たったら…!」

スー「そんなはずない、兄貴は必ずリスティヒを撃ち抜ける。」

フー「……………!」

目を見るとスーの瞳には一切の迷いも無く、自分を信じているのが伝わってきて…

妹がここまで自分を信頼しているのに、いつまでも迷っていてどうする!

フーは強い決意を込めて、4Kスコープを構えた。

左足からは今も血が流れ続けているが、その激痛も今のフーには感じられなかった

リスティヒ「お、撃つのか?妹を撃ち抜いても後悔するなよ?」

フー「後悔しないさ、俺はお前を撃ち抜く…2年前の様なことは繰り返さない!」

リスティヒ「ならやってみろよ!」

そう言うとリスティヒはラピッドブラスターを構えて撃った!

スー「兄貴!」

フー「……………!」

ズドォンッ!!

リスティヒ「………チッ………くっ…そ………!」

フー「はぁ…はぁ…!」

ガタンッ…4Kスコープを落として、フーは膝を付いた。

ポナ「フー!」

まめみ「フーさん!」

彼の傍にはポナとまめみが駈け寄り…

リスティヒもラピッドブラスターを手放し、スーをその場に解放して頭から後ろに倒れた。

まめお「スー!」

スー「まめお…!」

まめおがスーの傍に駈け寄り手足を解放し、2人は強く抱きしめ合った

フー「ぐっ…うぅ…!」

ポナ「すぐに止血を!」

フー「大丈夫だ…それより…。」

そう言うとフーはゆっくりと立ち上がってリスティヒの傍へ行き…

リスティヒ「………………。」

気絶しているリスティヒの両手首を合わせ…

ガチャン…手錠を掛けた。

フー「リスティヒ、お前を逮捕する!」

スー「兄貴。」

フー「スー、ありがとうな。」

スー「あたしにとって最高の兄貴だもの、信じてたわ。」

そう話すスーの瞳には涙が光っていて…2人はお互いを抱きしめた。

その後リスティヒは警察に連れて行かれ、フーはペコに負傷した左足の手当をしてもらった。

ペコ「少し深いけど、縫うほどの大きな怪我では無くてよかったわ。」

フー「痛て…しばらくは痛みが残りそうだな…。」

ペコ「お疲れ様、今日はゆっくり休みましょう…安静にしてないと傷に障るわ。」

フー「そうだな……1つ頼んで良いか?」

ペコ「何かしら?」

フー「…お前に膝枕をして貰いたい。」

ペコ「フー…!」

驚いて目を見開いて頬は赤く染まり、白いゲソを弄るペコにフーは優しく笑った

フー「ペコの膝の上なら、ゆっくり休めそうだ。」

ペコ「えぇ、喜んで。」

そう言うとペコは膝枕をして彼の頬を優しく撫で、フーも彼女の優しい手つきと温もりに安心したのだった

一方まめみはポナと共に彼の家に行き、まめおはスーを連れて家に向かった。

To be continued…