フーがオフの日にカフェに通う日が続いていたある日……
この日ベリアはお花のブローチを帽子に付けていた。
まめみ「あ、可愛いね。」
スー「よく似合ってるわ。」
ペコ「えぇ、とっても素敵よ。」
ベリア「えへへ、ありがとう!フーさんがこないだプレゼントしてくれたの!」
ペコ「……………。」
ズキン…ペコの心は痛みを覚えた…。
まめみ「(ペコちゃん…。)」
スー「(ペコ…。)」
満面の笑みで喜ぶベリアに対して、ペコはとても切なげな表情で…まめみとスーも心配していた。
その日の夜…スーはフーの部屋に行った…。
フー「どうした、スー?」
スー「…どうしたじゃないわよ…兄貴、最近ずっとカフェに…ベリアの所に通い詰めてるわよね。」
フー「ん…それがどうかしたのか?」
スー「…ペコとの時間は取ってるの?」
フー「ペコ…何か最近忙しいのか…俺が一緒にベリアの所に行こうと誘っても、都合が悪いからごめんなさいって言われるんだよな…。」
そう言って頭をポリポリと掻くフー…
ブチンッ!!ついにスーの堪忍袋の緒が切れた!
スー「兄貴は何にも分かってないわね!ペコは兄貴がずっとベリアの所に行ってて寂しいのよ!!」
突然怒り出してテスラのローラー部分をフーの目の前にドンと置き、睨み付けるスーの表情とテスラのその迫力にフーは思わず震え上がった…。
フー「うぉ…な、何だよ突然…!」
スー「とにかく!ペコとの時間ももっと作りなさいよ!泣かしたりしたらテスラで成敗するからね!!」
そう言うとスーはドアを勢いよくバタン!と閉めて出て行ってしまった…。
フー「な…何だったんだ…。」
…俺だって寂しいさ…最近全然会ってくれないからな…。
…ペコに渡したくて…準備したのに……
フーは深いため息を吐くと、部屋の隅に置かれた小さな袋を見た。
別の日…
この日もフーはペコを誘ったが断られてしまったので、ベリアの元へ行く事に…。
一方ペコは断ったものの、やはりフーと話がしたい…そう思ってこっそりと後を追いかけた…。
ブドーは買い出しに出ていて、カフェにはアマナツが居て…フーはベリアと遊んでいる…ペコは気づかれぬようにそっとカフェの外から様子を伺っていた…。
まめおとスーはナワバリに出かけていたが、カフェの店内にはまめみとポナも居て…ペコは心が締めつけられる…
すると…こんな会話が聞こえてきた…。
ベリア「ねぇねぇフーさん、フーさんはこいびとはいる?」
フー「……………!?」
ベリア「わたし、フーさんがだいすき!だから、しょうらいフーさんのおよめさんになるの!」
フー「ベリア…!」
これには遠くで聞いていたまめみ達も驚いてしまった。
しばらくの沈黙の末…フーが口を開こうとしたその時!!
ペコ「っ………!!」
ガタンッ!!外で大きな音がして…その方を向くとペコが走り去る姿が!
フー「ペコ!」
ベリア「フーさん、どうしたの…?」
フー「…………ベリア……ベリアの気持ち、すごく嬉しい…けどな…俺…俺…ペコと恋人なんだ……。」
ベリア「……え………?」
アマナツ「…………。」
フー「……本当にごめんな……。」
そう言うと、フーはお店を飛び出してペコを追いかけて行った!
残されたベリアはその場で俯き、震えている…。
まめみ「ベリアちゃ…」
近づいて手を差し伸べようとしたまめみだが…
アマナツ「まめみちゃん…手出しは無用よ…。」
まめみ「アマナツさん…でも…。」
アマナツ「……ベリア、あなたがフーを大好きなのは分かるわ…でもね、フーはずっと前から…ペコちゃんと恋人だったの…。」
ベリア「…どうして…おしえてくれなかったの…みんなあたしをからかってたの!?」
そう言って振り返ったベリアは泣きじゃくっていて…
アマナツ「ベリア…!」
ベリア「ママも…みんなもきらいー!!」
そう言うとベリアは飛び出して行ってしまった!
アマナツ「ベリア!」
まめみ「アマナツさん、あたし達が代わりに行きます。」
ポナ「アマナツさんは後からゆっくり来て下さい。」
アマナツ「ごめんなさい…頼んだわ2人共…。」
身重のアマナツを走らせるわけには行かない、まめみとポナが代わりにベリアを追いかけて行った。
一方その頃…
ペコ「はぁ…はぁ…っ…!」
フー「待て、ペコ!」
追いかけて来たフーが、ペコの細い腕を掴んだ。
ペコ「やめて…離して…フー…!」
フー「ペコ…!」
ペコ「見な…いで……っ……!」
そう話すペコの茶色の瞳からは涙が溢れていて…フーは心がズキンと痛んだ…。
フー「ペコ…俺は…こんなに泣く程…寂しい思いをさせて…傷つけてしまったのか…。」
ペコ「…フー…私…私…やき…もち…を…っ…ひっく……!」
フー「済まない…済まなかったペコ…!」
泣いているペコを、フーは彼女の後頭部にも手を回して強く抱きしめた。
ペコ「フー…フー…うっ…うぅ…!」
フー「…俺…幼い頃にスーと一緒に捨てられて…小さい頃の親の愛情知らねぇで育ったから……ベリアが思う存分に甘えられる様にって…つい…構ってしまった…。けど…それだけじゃ駄目なんだ…何よりも大切な…ペコとの時間を…もっと…作らないといけなかった…。」
ペコ「フー…っ…!」
フー「…ペコ…こんな時にこんな話するのはおかしいかもしれないけど…けど今、ここで伝えたい…。」
そう言うと、フーはペコから離れて真っ直ぐ向き合って立ち…ズボンのポケットから小さな箱を取り出した。
そしてペコの前にひざまずいて…箱をゆっくりと開けた。
そこには…美しく輝くダイヤがあしらわれた指輪が……
ペコ「フー…これ…は…!」
その指輪を見たペコの茶色の瞳は大きく見開かれ…目尻に溜まっていた涙が零れ落ちた…。
フー「…今までずっと…少しずつ溜めて…買ったんだ…。…もう少し先になっちまうけど……約束の証…渡しておきたくて…。」
ペコ「フー…!」
フー「ペコ…俺と結婚してくれ。」
そう話すフーの緑の瞳は真っ直ぐで…ペコの茶色の瞳だけを見つめていた。
ペコ「えぇ…もちろん…もちろんよフー…喜んで!」
そう言うとペコは大粒の涙を流しながらも優しく笑い、その頬は赤く染まった。
フー「よかった…。」
そう言うとフーは立ち上がり、指輪を箱から外した…そしてペコの薬指を取り、指輪をそっと嵌めた。
手をかざすと、指輪は太陽の光でキラキラと輝き…ペコは目を細めた。
ペコ「綺麗…とても綺麗…。」
フー「ペコの方がずっとずっと綺麗だよ…。」
ペコ「ふふっ…フーったら…。」
そう話す2人の頬は赤く染まっていて…でもとても幸せそうな笑顔だった。
同じ頃…まめみとポナはベリアを見つけていた。
ベリア「ひっく…ひっく…!」
まめみ「ベリアちゃん…。」
ポナ「帰ろう…みんなが心配してるよ…。」
ベリア「ひっく…ひっく…まめみちゃん…ポナくん…ど…して…なの…。」
まめみ「ベリア…ちゃん…。」
ポナ「……………。」
そう言って泣きじゃくるベリアに、まめみもポナも困り果ててしまった…。
しばらくすると…フーとペコがやって来た…。
ポナ「姉さん…フー…。」
フー「ベリア…。」
優しく声をかけると、膝を抱えて泣いていたベリアの小さな体はビクッと大きく震えた。
まめみ「フーさん…。」
フー「大丈夫だ、まめみ。…ベリア…フーさんはベリアの事が大好きだよ。」
ベリア「ほん…とに…?」
フー「あぁ。…けどな…ベリアに対する大好きは…妹のスーに対するのと同じなんだ。」
ベリア「スーちゃんと…?」
フー「ベリアが小さい頃のスーみたいで、お母さんがお腹大きいから…お姉ちゃんだからってたくさん我慢してたから、少しでもわがまま聞いてやりたいって…そう思ったんだ。」
ベリア「フーさん…。」
フー「ベリアは小さくても立派なレディだ…俺のお嫁さんになりたいって思ってくれた気持ちはすごく嬉しい……けどな…フーさんペコとずっと前にお嫁さんに貰うって約束してるんだ。」
ベリア「ペコちゃん…。」
ペコ「……………。」
フー「ベリアはまだ5歳…これからもっともっと素敵なレディになって…フーさんよりいい男がたっくさん言い寄ってくる。そしていつか…ベリアだけを大事にしてくれる王子様が現れるんだ。」
ベリア「あたしだけの…おうじさま…?」
フー「あぁ、その王子様を…ベリアだけの王子様を待ってやろう?」
ベリア「……………。」
まめみ「ベリアちゃん…。」
俯いていたベリアだが、ゆっくり立ち上がるとゴシゴシと涙を拭った。
そして…口を開いた。
ベリア「あたし…がんばる…!もっとすてきなレディになって、フーさんもおどろいちゃうくらいのすてきなおうじさまをみつけるんだから!」
その瞬間、みんなからは優しい笑みが零れた。
フー「あぁ、俺が敵わないくらいカッコイイ王子様だろうな。」
ベリア「うん!」
フー「さぁ、もうすぐ日が暮れる…帰ろう。」
ベリア「うん。…まめみちゃん…抱っこして…。」
まめみ「ふふっ、甘えんぼさんだね~ベリアちゃん。」
そう言いつつ、まめみは優しくベリアを抱き上げて…ベリアはまめみの胸をむにむにと触った。
そして一行は帰り道へ…
ベリア「まめみちゃんとポナくん…おなじペンダントしてる…?」
ポナ「うん、そうだよ。四つ葉のクローバーだったのが欠けちゃったんだ…でもお互いにペンダントにして、この葉っぱを合わせると四つ葉になるんだ。」
ベリア「あたしも…まめみちゃんとポナくんみたいなすてきなこいびとになりたい。」
ペコ「あら、私達は目標にならないのかしら?」
ベリア「みーんなもくひょうなの!なかよしで、だいすきなこいびとどうしになりたいの!」
そう話すベリアは笑っていて…まめみ達もつられて笑った。
その後…歩いて来たアマナツと合流してこれまでの経緯を話し、ベリアも謝って無事に解決したのだった。
少女の大きな恋は終わったが、その大きな夢は決して終わらない。
それを示すかの様に、ベリアの瞳も周りの木々や花達もキラキラと輝いているのだった。
To be continued…