オリジナル小説「出航、ミラージュアイランドへ向けて」

声の主…それは怪我をしたキラープラントの子供であった。

しかし伝説上の生き物と伝えられ、色や食すもの、性質までが似ても似つかない上アクアが気に入り育てる事を決意した為、様子を見る事になった。

 

~出航、ミラージュアイランドへ向けて~

 

ラクト「出航するが、大丈夫か?」

アクア「全く問題ないわ。」

ブルース「ようやく我が故郷へ帰れるのか。」

ガーリル「そうだな…みんな元気でいるだろうか。」

ガーラス「皆ガーリル様のお帰りを待っております、お帰りになられたのを知れば喜ぶ事でしょう。」

マリン「ここともお別れね。」

スノウ「救われた魂に滅びた悪魔と色々あったがひとまず終決したんだ、帰ろう…故郷ミラージュアイランドへ!」

ラクト「では行くぞ、出航ー!!」

みんなの様々な思いを乗せて、ミーティア号は出航した。

アルマ「救われた魂達よ、どうか安らかに…。」

そう言ってアルマは白い花を海へに向けて投げ、どんどん小さくなっていくセイレーン・ケイヴを皆はいつまでも見ていた。

ミラージュアイランドへ向けて走っている間、皆はそれぞれ好きな事をする事に…

また、ブルースとマリンが少し力を使う事により、波は穏やかになり、海水を使って船を押す為セイレーン・ケイヴに向かう時よりもずっと早く進んでいた。

ブルース「このまま行けば、2週間位でミラージュアイランドに着くだろう。」

スノウ「セイレーン・ケイヴに行くまでに一ヶ月はかかったから…随分早く帰れるな。」

ガーリル「…その2週間の間にアクアの気持ちが決まると良いんだが…。」

ラクト「焦ってもしょうがないだろうガーリル。最終的に決めるのはアクア自身なんだから。」

ガーリル「ん…そうだな。」

一方、アクアはキラープラントの名前を一生懸命考えていた。

アクア「貴女の頭と尻尾に生えてる蕾はとても綺麗な紅ね、紅い薔薇の様な…そうだ!貴女の名前『ロゼ』はどうかしら?」

キラープラント「クウッ!」

彼女の提案した名前が余程気に入ったのか、とても嬉しそうにコクコクと頷いた。

アクア「決まりね!貴女の名前はロゼよ。よろしくね、ロゼ!」

ロゼ「クゥッ!」

今だに正体の分からないロゼだが…アクアは毎日蜂蜜を与え、可愛がり、たくさんの愛情を注いだ。それに応える様に、ロゼもすくすくと育っていった。

数日後…。

スマラ「いくら何でも…随分育つのが早すぎないか…?今のロゼなら俺らも喰えるぞ。」

助けた頃、まだとても小さかったロゼは、たった数日の間にかなり大きくなってしまった。

とは言ってもアクアの膝より少し下位の大きさだが…確かに育つのが早過ぎだ。

アクア「でも、スノウも言ってたでしょうスマラ。キラープラントならいかなる時でもワニを襲う本能は決して忘れないって。もし仮にロゼが…キラープラントだったとしたら?」

スマラ「まぁ確かに…今頃俺達はとっくに喰われてるだろうな…。しかし本当にロゼは一体何者なんだ…?キラープラントの様な姿をしていながら全く俺達を襲わない…。」

アクア「焦ってもしょうがない、ミラージュアイランドへ帰ればきっと全てが明らかになるわ。」

それからもロゼは少しずつ成長し続けたが…ある日の事。

マリン「ロゼ、この前大きくなったのを最後に成長が止まったわね。もうこれ以上は大きくならないって事かしら?」

アクア「でも甘えん坊は相変わらずなのよ。ね、ロゼ?」

ロゼ「クゥ!」

マリン「すっかり懐いて…。そういえば、ロゼの頭の花の蕾。もうすぐ咲きそうね。薔薇の花かしら?とっても綺麗な紅だわ。きっと愛情をたっぷり貰ったからね。」

たわいもない家族の会話。これも全て平和になった証…だったはずなのだが。

夜…。

甲板で1人、夜空を眺めているのはスマラ。すると、もう1人甲板にやってきた。

ガーリルである。

スマラ「………。」

ガーリル「お前とまともに話をした事が無かったな。スマラ。」

スマラ「どうしてここに?」

ガーリル「お前と話してみたかった、とでも言っておこうか。」

スマラ「アクア王女の事か…?」

ガーリル「それもあるが…まずはお前の体が心配だった。」

その言葉を聞いて、スマラは目を丸くして驚き、ガーリルはそんなに驚かなくてもと苦笑した。

スマラ「…ごめん。でも、どういう意味だよ。俺の体が心配って。俺結構体は丈夫だぞ。それは自他共に認めて…」

その時だった…ガーリルは突然スマラを自分の元へ抱き寄せたのだ。

彼の突然の行動に、スマラは先程よりもっと驚いた。

ガーリル「強がるなスマラ。お前が呪いのせいで辛い思いをしているのは俺だって分かってるつもりだ。時折疼くんだろう?お前が1人で声を殺して耐えてるのを俺も兄上も知っていた。それなのにお前は俺だけじゃなくラクト兄上にまで隠して平気なフリしやがって…。バカ、俺達は家族だろ…もっと頼れ…父を、そして俺を。」

スマラ「ガーリル…!うっ…うぅ…!!」

ガーリル「泣け、今は好きなだけ…。俺達はお前を見捨てたりしないんだから、な?」

泣き続けるスマラを、ガーリルはただ強く抱きしめていた。

そして…必ず呪いを解きこの苦しみから解放するとより一層、強く決意するのだった。

しばらくして…落ち着いたスマラに、ガーリルはアクアの事を話し出した。

スマラ「俺は…今こうして呪われている身だ。だから今はアクア王女に気持ちを伝える事はできない。でも、いつかこの身が解放された時は…この気持ちを全て彼女に伝えたい。」

ガーリル「それは俺も同じだ。例えお前とあろうども、譲る気持ちは無い。」

2人は自信に溢れた笑みで互いを見ていた。そして安心したのか、大きなあくびをしてスマラは部屋へ戻っていった。スマラが行った後、ずっと影に潜んでいたラクトが姿を現した。

ラクト「お前があんな事を思っていたとはな…。ありがとう。」

ガーリル「…ああでもしなきゃ、中々話してくれないだろ?全く…そういう所だけ俺にそっくりなんだからあいつは。いや、アクアに対する想いも同じか…。」

ラクト「俺はいい弟と息子に恵まれたな、幸せだよ。ガーリル、必ずあの子を助けような。」

ガーリル「勿論だ兄上、スマラを救うまではこの魂…尽きてなるものか…!」

月明かりに照らされた2人の瞳は、より一層輝くのだった。

 

~To be continued…~