小説 「幼き記憶とダイオウイカ」 ~恐怖の音~

ハイカラシティの離れに住んでいるインクリンク族のまめおとまめみの2人は早くに親を亡くし、イカのスルメさんとよっちゃんに助けられながら力を合わせて生きてきた。

ある日の晩、まめおは「あの光景」の夢でうなされていて…

幼い頃いつもの様に遊んでいた2人

すっかり日が暮れて、ヒラメが丘団地に戻ろうとした時…風が吹いて、まめみのお気に入りの帽子がBバスパークに飛んで行ってしまった。

まめみ『あぁ…あたしのぼうし!』

まめお『まめみ、まてよ!』

そう言ってまめみは走ってBバスパークの中へ入り、まめおも追いかけて入っていった。

2人はしばらく探して、帽子を見つけ…

まめみ「あった!あたしのぼうし!」

まめお「よし、かえるぞまめみ。かあさんたちがしんぱいしてるからな。」

まめみ「うん。」

そう言ってまめみが立ち上がった瞬間

ファンファンファン!!

近くで不思議な音が聞こえ、何かが泳ぐ音がする

まさかこれは…そう思った次の瞬間!

真ん中の高台からライムグリーンのダイオウイカが現れ、そのまま2人に突っ込んでくる!

まめみ「きゃあぁぁぁ!!」

まめお「まめみ!!……うわぁぁぁ!」

咄嗟にまめおはまめみを庇い抱きしめた!

ダイオウイカは2人をギリギリ避けたが…

長い触手がまめおの背中に当たり、まめおはまめみを抱きしめたまま地面に転がった!

しかしダイオウイカが再び2人の元へ向かってきて、まめおは激痛に耐えつつまめみを更に強く抱きしめた。

その時!

カカカカカカカキン!!

謎の声「待って、小さい子供達がいる!」

若い男性がわかばシューターでダイオウイカを足止めしている。

薄暗い視界の中、オレンジ色の頭が見え…

まめおとまめみは恐怖のあまり、そのまま気を失った。

次に目が覚めた時は病院のベッドの上で…。

まめみはかすり傷で済んだが、まめおの背中には今でもダイオウイカの触手が当たった時に出来た傷痕が残っている。

めお…

まめお…!

まめみ「まめお!まめお大丈夫!?」

名前を呼ばれてハッと目が覚めた。目の前には心配して覗きこむまめみの顔が…。

まめお「まめみ………!」

まめみ「目が覚めたら、まめおが酷くうなされてて………またあの夢を……?」

まめお「……あぁ……。」

まめみ「まめお……あたしのせいで…!」

するとまめおが、まめみをギュッと抱きしめた。

まめお「まめみ、お前のせいじゃない…お前はずっと気にしてるけど、俺はあの時お前を守れたからそれで良い…背中に残るこの傷もお前を守れた証だ、だからそんなに泣きそうな顔をするな。」

まめみ「まめお…!」

まめおの背中に手を回して抱きしめるまめみの手は震えていて…閉じた目尻からは涙が零れ落ちた。

ある日、2人はナワバリバトルに行く事にした。最初はダイオウイカを見ると恐怖で足がすくみ、まめみは試合後に気を失う事もあった…

最近は耐性が出来てダイオウイカとの接戦も平気になったが、未だに自分達がダイオウイカになるブキは避け続けていた。

そんなある日のナワバリバトル…

まめお「今日はBバスとキンメダイか…行くぞまめみ。」

まめみ「…………………。」

まめお「まめみ?」

まめみ「……あっ!えっ…何、まめお…?」

まめお「大丈夫か?顔色が悪いぞ。」

いつも元気なまめみだが、この日は酷く青ざめた顔をしていた。

まめみ「大丈夫だよ!大好きなキンメダイもあるし、行こうまめお!」

まめお「お、おいまめみ!」

心配は残るものの、ナワバリに出かけた2人

しかし…まめおの心配は現実となった…。

~Bバスパーク~

まめおはハイドラントカスタム、まめみはパブロを装備して、見事なコンビネーションで敵を圧倒しピンチに追いやったが…!

ファンファンファン!

残り1分の所で、相手がダイオウイカになった音が聞こえた。

まめみ「っ……!」

まめお「まめみ!カモン!」

危険を察知したまめおがまめみにカモンを飛ばすが、まめみは反応しない。

ダイオウイカの音が聞こえた方向…

あの時の記憶が蘇る…

そして、高台からダイオウイカが!!

まっすぐまめみの方へ向かってくる!

まめみ「あ…あぁ…!!」

足が震えて動けない。まめみはパブロをギュッと握りしめて迫り来るダイオウイカを恐怖の目で見ていた。

パブロ「(まめみ、ダイオウイカが!)」

ダイオウイカが目前に来たその時!!

シュピン!

まめお「俺が相手だ!」

間一髪の所でまめおが駆けつけてバリアを分け、そしてダイオウイカをハイドラントカスタムの弾で防いでいる。

シュパーーーン!!ダイオウイカは諦めて飛んで行った。

まめみ「まめお…!」

まめお「話は後だ!まずはこのバトルに勝つぞ!」

まめみ「う…うん!」

この後まめおはまめみの傍で戦い続け…無事に勝利

仲間の誘いを断り、一戦だけでロビーから出てきたが…。

ドサッ

まめお「まめみ!」

まめみ「……………。」

ロビーから出てきた直後、まめみはその場に倒れてしまった。

まめおはまめみを抱き抱え、あるイカの元へと走った。

まめお「スルメさん!よっちゃん!」

彼が向かったのは、イカした若者達の集うお店、イカすバー。

そこの店主のライムグリーンのイカのスルメさんとオレンジのイカのよっちゃんは、若者達の悩み事を聞く良きアドバイザーであり、みんなから慕われている。ちなみによっちゃんはオネェ口調で何故か2人とも人にならず、イカの姿である。

スルメさん「どないしたの、まめお?」

まめお「まめみが倒れたんだ!」

スルメさん「な、何やて!?そら大変や!よっちゃん!」

よっちゃん「どうしたの、スルメさん?」

スルメさん「まめみが倒れたんや!急いで介抱せな!」

よっちゃん「まめみちゃんが!?分かったわ、急いでお布団を敷くから待ってて!」

そう言ってよっちゃんは大慌てで布団を敷き、まめみを寝かせた。

まめおはその間、ずっと手を握っていた。

スルメさん「何があったんや?」

まめお「…ナワバリでBバスに当たって、ダイオウイカを見たら足がすくんで動けなくなって、俺がバリア張って追い返したから間一髪だったけど……ロビーから出た直後に倒れて…!」

よっちゃん「そんな事が…!」

まめお「行く前から様子はおかしかったんだ。酷く青ざめた顔をしてて…俺があの時止めてれば…!」

スルメさん「まめお、気にしたらアカンで…まめみもこうして助かったんやから。」

まめお「スルメさん…。」

眠っているまめみの顔は、相変わらず青ざめているが…まめおが握っている手は温かかった。

あたしは夢を見てた…幼き頃の…あの夢を……。

ファンファンファン!

黄緑色のダイオウイカが自分に迫ってくる…!

その先にいるのは…幼い頃のあたし。

まめみ『やめてぇぇぇ!!』

そう叫ぶと…幼い頃のあたしとダイオウイカは消えて…

…気がつくと一面真っ暗だった…

場所はBバスパーク

あたしはパブロを握りしめている。

ファンファンファン!

あの「嫌な音」が聞こえて…

その方向は…センターの高台で…

そこから来たのは…あの時と同じ…

黄緑色のダイオウイカ…。

まめお『まめみ!カモン!』

あたしの耳に、微かにまめおの呼ぶ声が聞こえた

でも…足が震えて動かない…

息が出来ない…声が出ない…

怖い…!その恐怖心があたしを支配して…

ダイオウイカが向かってきて…あたしの目の前に来た!

まめみ『いやぁぁぁぁぁ!!』

そう叫んだ次の瞬間!…目が覚めた

そこはハイカラシティのロビーの前では無い、良く見慣れた…お店の天井…。

まめお「まめみ、大丈夫か?」

スルメさん「気がついたかい?酷くうなされてたで、まめみ…。」

よっちゃん「大丈夫?まだ顔色が悪いわよ…。」

まめみ「まめお…スルメさん…よっちゃん…あたし…。」

まめお「お前、ロビーで倒れたんだ。覚えてるか?」

まめみ「う…ん…微かに…覚えてる…。」

まめお「無事で良かった、お前を失ったら俺は…。」

まめみ「まめお…。」

よっちゃん「…あら、まめお君!服に血が!」

まめお「ん…本当だ。」

まめみ「あっ…足すりむいてる…。」

よっちゃん「運ぶ時に付いたのね。シミになるといけないから洗ってあげるわ。脱いで。」

まめお「助かるよ、よっちゃん。」

そう言ってまめおが服を脱いだ時、背中の傷跡が露わに…!

スルメさん「まめお…その傷は…!?」

まめお「あっ…。」

まめみ「まめお…!」

よっちゃん「その傷、ダイオウイカの触手…!?」

スルメさん「…2人共、よかったら話してくれへんか…どうしてそんなにダイオウイカが怖いんや…?」

まめお「……………。」

まめみ「……………。」

よっちゃん「無理には聞かないわよ。ただ…私達も何か力になりたいの。」

まめお「……昔…俺とまめみがまだ小さい頃…」

そう言うと、まめおは静かに話し始めた…。

幼い頃ダイオウイカに襲われた事…

まめみを庇って負った傷の事…

いまだに消えないダイオウイカへの恐怖や嫌悪感…。

スルメさんとよっちゃんは真剣な顔で聞いていたが、何か思う所があるのかスルメさんとよっちゃんの表情に徐々に曇りが……

スルメさん「…まめお。そのダイオウイカ……何色だった?」

まめお「色は…黄緑…。」

よっちゃん「…そのダイオウイカを止めていた若者は…何色の髪だったの?」

まめみ「オレンジ色…。」

スルメさん「…………!」

よっちゃん「…………!」

まめお「…スルメさん、よっちゃん…どうかしたのか?」

まめみ「どうしてそんなに青ざめてるの…?」

スルメさん「…………。」

よっちゃん「………スルメさん…この子達は…!」

まめお「…俺達がどうかしたのか?」

まめみ「スルメさん…よっちゃん…?」

スルメさん「…………。」

目を瞑って黙り込むスルメさんに、よっちゃんも申し訳無さそうな顔をしている…。

よっちゃん「……スルメさん…言わないと…ちゃんと言わないと…。」

スルメさん「…………そうやな……まめお…まめみ…。」

まめお「…何だよスルメさん…そんな深刻な顔して…。」

まめみ「…よっちゃんも…どうしたの…?」

スルメさん「……これから何を言われても…最後まで聞けるかいな?」

まめお「な…何だよ…いつものスルメさんらしくな…」

スルメさん「聞いて欲しいんやっ!」

まめお「!」

まめみ「っ…!」

突然声を荒げたスルメさん…今まで見た事の無い彼の姿に、2人はビクッと震えた。

よっちゃん「…大切な話なのよ。…だからお願い…。」

まめお「……あぁ、良いぜ。」

まめみ「…うん、あたしも大丈夫…。」

スルメさんは2人の頭を触手で優しく撫でて…

深呼吸をして…静かに話し始めた…。

To be continued…